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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Seventeen's Story 15

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

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No War! Seventeen's Story 15

時々、夢を見る。
楽しくて楽しくて、物凄く笑ってる夢。
何がそんなに楽しいのか判らないけど、物凄くケラケラと笑ってて、誰かと一緒にいる夢。
目が覚めた時には、全部忘れちゃってるけど。

数日続いた長雨のせいで、畑の土が流れてしまったから、それでなくても収穫は少なかったのに、ほとんどダメになってしまったかもしれない。

「あの缶詰を食べな」

ハルモニが言う。
冬に備えて残しておこうって言ってたのに。冬はまだ遠いのに。でも我慢も限界で。でも今それを食べてしまったら、冬には食べるものなんて、何もなくなってしまうことも判ってるのに......。

去年まではまだこの土地にも若い人たちも少なからずいて、皆が助けあって生きていた。ハルモニと2人助けられてばかりだったけど、それでも細々と生きてはいけたのに。
裏山の一部が崩れたことが原因で、人がいなくなってしまった。
誰もケガはしなかったし、崩れた場所は獣たちしか通らないような場所だったから困ることはなかったはずなのに、村に唯一あった井戸が枯れてしまったから。

別の場所に井戸を掘るって話も出たけれど、それならもう少しマシな土地に移住した方が良いと考えた人が多かっただけのこと。
誰も悪くないし、仕方ないと判ってるけど......。
行き場のない人だけが残されたこの村には、もう元気な若い人なんていなかった。

力強く走れない自分の足を見る。
長く歩くだけでも引きずってしまう足は、山の中に入って何かを狩ってくることもできない。
川だって浅瀬しか歩けないから、岩場に罠を仕掛けることもできない。
それでも井戸のなくなったこの村で、朝早くから何度も川に行って水を汲めば、僅かな食糧を分けてもらえてたのに......。

きっと明日には、あの缶詰を開けることになるだろう。
中身が何かは開けてみないと判らないけど、少しでも長く持つものならいい。
数日ぐらい、できればもっと長い間、少しずつ食べられるものならいい。

時々ハルモニは、自分がいなくなった後は......って、そんな話をするようになった。最初は「ハジマ」って言えば口を噤んでくれてたのに、最近ではそれを押しのけてハルモニは話し続けるから。
いつだって満足に得られるものなんて何もなかったけど、いつだって2人で笑ってやり過ごしてきたっていうのに、「本当に困ったら......」ってハルモニはいろいろ伝えようとしてくれるけど、今がもう困ってる。

それでも毎日眠れば夢を見る。
毎日毎日、明日も見えないってのに、物凄く幸せで、空はどこまでも青くて、緑に囲まれてて、きれいな音楽が流れてて、楽し気な笑い声がたくさん聞こえてくる。そんな夢。
目覚めれば、辛いだけの現実があるっていうのに、不思議と、夢の続きを見たいとは思わなかった。

 

The END
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