正直、どうなるか判らないと思ってた。
ウジは人見知りだし、はじめての場所と人だし、同い年といったって女子と男子だし。
見たことはあるけど、挨拶だってしたことはあるけど、そこまで話したことなんてなくて......。
だからウジは緊張しまくっていて、ホシのドキドキには全く気づいていなかった。
サナの苗字を聞いたらウジが「お前は......」みたいな顔をした。ちょっと斜めしたを向くその姿は、ホシの発言に対するもの。
大抵の人はホシの発言内容に気をとられてそんなウジの動きはスルーするのに、サナはそんなウジを笑った。
楽しそうに、女の子らしい笑い声で。
韓国人みたいに話すのに、日本人らしい愛嬌はふんだんにある。何よりカワイイ。声もその表情も。衣装と照明と化粧がなくたって、多分カワイイ。
ホシだってウジだって世界中のカラットたちに毎日のようにキヨォキヨォと言われるけれど、きっとサナの可愛さは本物だろう。
本当にドキドキしてたけど、ウジは安定の人見知りで、特に目の前のサナに視線を奪われるってこともなくて、ホシのドキドキは少し減った。
気に入った声を見つけるとウジは「お......」って謎な声を出してその声をより吟味する。きっとホシ以外なら気付かないような一瞬の間かもしれない。でも高い音域で笑うその声に、ウジは音楽家としても興味が惹かれたようでもなくて、ホシのドキドキはさらに減った。
ホシがウジのことを見てても、サナは笑う。楽しそうに面白そうに。
ウジがホシの視線を避けてても、サナは笑う。やっぱり楽しそうに。
何度も苗字を聞いてしまった。覚えられなかったけど、カッコ良かったから覚えたくて。それは放送されたのに、「色んなヒョンたちがサナにメロメロになった放送見てたからビビってたけど、俺、案外大丈夫だった」って言ったのは流れなかった。
サナはやっぱり笑ってたし、ウジは呆れてたけど。
「いやでも、ヒョンたち見てるとさ。まさかの自分までもがメロメロになるのかと、そんなことになったら妖怪じみてるから怖いなって思ってたけど、良かった。全然まだまだウジの方が」
最後までは言えなかった。
横からウジに「お前は黙れ」と殴られたから。
やっぱりサナは笑ってた。
まぁホシも笑ってた。
ウジも顔を引きつらせながらも笑ってた......。
The END
2025/5/19
965moji
