注意......
「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。
No War! Seventeen's Story 14
「スングァニが帰ってきたッ」
ウォヌがそう最初に言ったのは、バーノンがいなくなって、数か月した頃のこと。
その時一緒にいたのはミンギュだけで、その言葉に驚いて、喜んで、泣きそうになって、頭の中ではバーノンにどうやって知らせたらいいんだってことまで考えたのに、どこにもスングァンはいなかった。
「でも今、いたのに」
本気で喜んでるウォヌだって、不思議な顔をしてて。当然そんなことで騙そうとなんてするはずもなくて。
見たのは陽炎か、幻か。
ジョシュアやバーノンや、ジュンやディエイトのことを見たことは一度もない。ホシやウジや、エスクプスやジョンハンのことも。
今一緒にいないってことをちゃんと理解してて、どこにいるかもわかっているからだろう。
ただ時々ウォヌは、スングァンの姿を見ては、本気で「スングァナッ」って叫んでた。
でもその姿はウォヌにしか見えなくて、いつだって次の日には落ち込んで、ミンギュの横に座り込んで「ほんとにいたのに」って呟いて。
何度それを繰り返しても、気づけば「スングァナッ」って叫ぶ日が来て。
ジュンとディエイトが帰ってきた時にも、バーノンとジョシュアが帰ってきた時にも、ホシが1人で戻ってきた時にも、もちろんエスクプスとジョンハンを訪ねた時にも、その話はミンギュの口から伝えられていて、「驚かせるかもしれないけど、ウォヌヒョンには、見えてるんだよ、ちゃんと」って話をして、事前に伝えておいた。
いつだってスングァンを見つけたと叫ぶウォヌの姿は必死で嘘なんてついてるようには見えなくて、本当にそこにスングァンを見つけてるようで。
「うん。わかる。だって俺も時々、「ハンソラッ」って呼ぶ声が聞こえるもん」
バーノンが「大丈夫」って言いながら笑って、自分と同じか、それ以上にスングァンのことを愛してくれてる人がいるみたいで嬉しいとも言った。
だからドギョムがスングァンに会ったと嬉しそうに口にするのを見た時、誰も否定もせずに、だけど一緒に喜んであげることもできなかった。
いつだってスングァンと2人、セブチのメインボーカルとして頑張ってた姿が目に浮かんで。時折ドギョムが空を見ながら、スングァンに向かって話しかけているのを見たことがあったミンギュは余計に、ただ辛くて、哀しくて、泣きそうになった。
それでも、一瞬でもいいからウォヌやドギョムのように、自分だってスングァンに会いたいとも思ったけど。あの声が聞きたかった。「ミンギュヒョン」って甘えた声も、「ヒョンなにやってんだよもぉ」っていう生意気な声も、「待って待って」って後ろを追いかけてくる声も。
だって一緒に、学校にだって通ったのに......。
どこかが壊れてしまったとしても、会いたいと願ってる。
「嘘じゃないって。嘘じゃないんだって」って言いながら、ドギョムが焦ってた。ジョンハンがそんなドギョムを抱きしめながら、「わかってる。わかってる」って何度も頷いていて、「ハニヒョンやめてよ。そういうのじゃないんだって。あいつがほんとに、俺の前に立ってたんだって」とドギョムが必死になっていた。
「ほら、やっぱり。スングァニが帰ってきたんだよ」
ウォヌがそう言って辺りを見回しはじめる。どこかそこら辺にスングァンがいるんじゃないかって顔で、今にも探しに行ってしまいそうで。きっとまたスングァンを見つけられなくて、夜には泣いて、明日は落ち込むっていうのに。
キョロキョロしながら期待した目をして、ウォヌがスングァンを探しに行こうとするから、引き留めたくてその手を握ったのに、ウォヌが嬉しそうに笑いながらミンギュのことを引っ張って行こうとする。
『スングァンはもう、どこにもいないんだって』
思わずそう言いそうになった。バーノンとジョシュアを引き留めなきゃいけないから、絶対に口にはできない言葉だっていうのに。
「ほら、早く」
そう言って、ウォヌがミンギュの手を引く。
The END
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