注意......
「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。
No War! Seventeen's Story 11
ウジがエスクプスに「話がしたい」って言った時、「ちょっと待って」と止めたのはジョンハンで、95と96ラインだけの時に話そうと言われて、ウジは素直に頷いた。
ディノには一度家に顔を出せと言って、ミンギュとディエイトがバーノンと一緒に出かけた日。
「なんの話がしたいのか、ヒョンたちはもう知ってる?」
時間が勿体ないとばかりに、ウジが切り出した。それにジョンハンが「知らない。正確には、何かあることは判ってるけど、まだちゃんと聞いてない」と事実だけを述べる。
「シュア?」
ジョンハンに問いかけられて、ジョシュアが困った顔で笑う。
いつだって優しい男なのに、何かを決めたらいつだって強かった。だからもう、ジョシュアは何かを決めてるんだろう。
「シュアヒョンは、知ってたんだろ? 最初から」
ウジが問うのに、シュアは「何を」とは聞かずに、ただ頷いた。
それからジョシュアは、「ごめんな」って謝った。誰に言うでもなく、やっぱり困ったような顔で、でも笑いながら、謝った。
「なんで笑うんだよッ」
ウジが珍しく感情を露わに露わにして、ジョシュアに掴みかかった。
「ジフナッ」
名を呼んだのはエスクプスで、ウジの手を掴んだのはジョンハンで。
「だって、だって............。ボノニはスングァンのところに行くために、アイツは死ぬために戻ってきたんだよ」
滅多に泣かないウジが、そう言いながらボロボロと泣く。
衝撃的な言葉だったから誰も何も言わないのか。それとも知っていたからか。薄々、気づいていたからか。
「ウジヒョン、何バカなこと言ってんの?」
そこには95ラインと96ラインしかいないはずで、ウジをヒョンと呼ぶ人間はいなかったはずなのに、気づけばディノがいて、「そんなこと、ある訳ないよ。なんでみんな否定しないの?」って信じられないって顔をしてた。
「ごめん」
今度そう謝ったのはジョシュアじゃなくて、ディノの後ろに立っていたバーノンで。
そこにはミンギュとディエイトと一緒に出かけたはずのバーノンがいた。
「ディノが戻って行ったのが見えたから、不味いことになるんじゃないかと思って、俺たちも、戻ってきたんだ」
そう言ったのは、やっぱり信じられないって顔をしたミンギュだった。
「ウジヒョン、ごめん。みんなも、ごめん」
バーノンが謝る。でも辛そうでもなくて、悲しそうでもなくて、柔らかく笑ってる。きっとそれはもう、決めてしまったからだろう。
エスクプスもジョンハンも、何も言えなかった。でもお互いを思わず見て、それからやっぱり何も言わなかった。
ウォヌもミンギュも、ウジもホシも何も言わない。
だからディノが苛立ってるのを隠しもせずに、「なんでみんな何も言わないんだよ! ボノニヒョンッ、ダメだよ、そんなの絶対ダメだよ」って怒ってた。
でも............。
「わかるよ」
そう言ったのは、いつもは静かにみんなの話を聞いてるだけのディエイトで、「俺も1人残されたら、きっと生き残れなかったと思う」って言いながらジュンのことを見てた。
エスクプスとジョンハンだって。ウォヌとミンギュだって。ホシとウジだって。
きっと同じことを思ってた。
もしも1人だったら、耐えられたかどうか判らないって。
「何度も、ハンソラッって呼ばれた気がして振り返ったんだ。その度に、いないとダメだって気づくんだ。思いも言葉も、優しさも笑顔もいっぱいいっぱい貰ったのに、その半分も返せてないんだ。スングァニも1人はきっと、寂しいと思う。だから............」
だから? だからなんだ。だから自分たちはお前を失わなきゃいけないのか。
お前だって失えない家族の1人なのに。
全員の頭の中に、色んな言葉と、色んな思いと、色んな記憶が浮かぶ。当然そこにはとびきり明るく笑うスングァンもいて。
1人は確かに寂しいし辛いだろう。だって13人もいたから。
ディノが「それでもダメだよ。そんなの、ダメだって」って小さく呟くのに、誰も何も言えなくなっていた。だってやっぱり、バーノンの思いもわかってしまうから............。
絶対に失えないっていうのに、引き留める言葉を口にできなくて。
ウジの握りしめた拳は震えてた。それを見てたホシが口を開こうとした時、僅差で発言したのはジョシュアで、「大丈夫」って笑って口にしたその言葉の続きを、誰もがすぐには理解できなかったほど。
「大丈夫。もしもの時には、俺が一緒に行くから」
誰かが困ってたら、いつだって助けてくれた。闇雲にじゃなくて、「手助けはいる?」って聞いてくれて、「大丈夫」って言えば見守ってくれて、「やっぱり」って言えば笑って助けてくれる。
いつだって優しくて、ジェントルマンで、不機嫌なことなんて滅多になくて。
でも澄ました顔して時々毒を吐いたりもして。
95ラインの中で一番常識人で知識人で自分は普通みたいな顔をして、全然どうして、時々は独り勝ちをしてたのを誰もが知っている。
そんな、いつだって面白くて頼もしくて、優しいジョシュアが、いつもと変わらずに笑ってたから、全員がその言葉の意味を理解するのに時間を要した。理解してからは、その言葉の衝撃に、それぞれがそれぞれ、打ちのめされてもいたかもしれない。
「な、なに言ってんだよヒョン。ダメだよそんなの」
さっきまでディノがそう言ってたのに、今度そう口にしたのはバーノンで、「そんなの俺、困るよ」って戸惑っていた。
The END
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