子どものようにワンワンと泣いてもいいと言われたけれど、耐えようとしても耐えられない涙が溢れ続けて、時折嗚咽が堪えられずに、次から次えと顔にティッシュをあてられて時折背中をさすられて。
何時間そうしてたのか。
目元は腫れるし頭は痛いし。
ただただ泣きつかれて寝た日、遠くに「俺が一緒に、ずっと一緒にいるよ」って声を聞いた気がする。
別々の仕事だってあるから、ずっと一緒にいられる訳もない。それでも一緒に暮らしてるからその時間はどう考えても僅かだっていうのに、30分も経ってない再会の時だって、ミンギュは「ヒョン、元気だった?」と抱きしめてくる。
それをみんなも見てたのに笑われることもなかった。熱烈な再会の抱擁は、いつだって優しく見守られていた。
何もしてないのに気づけば涙が出てた日。
はじめて見る景色に、はじめての出来事に、話したいことはどんどん溜まっていくのに、それを嬉しそうに笑いながら聞いてくれる人がいないと気づくたびに泣いていた日々。
見守る方だって辛かっただろうと、後になって気づく。でもその時は他のことなんて考えられなくてただ泣いていたけど。
もっと何かできたはずなのにと、悔やむことは尽きない。ただそばにいるだけだって良かったのに、忙しさを理由にできなかったことの多くは、やらなかったことと同意だった。
そんな時はただ胸が苦しくて、後悔なんて言葉じゃ足りなくて。泣くことすら許されない気がして。
「いっぱい泣いたあの日」
ウォヌがそう言って話しはじめると、ミンギュは決まって困った顔をする。
多分「どの日のことだよ」とでも思ってるのかもしれない。
「俺、お前の言葉に救われたんだ」
でもミンギュは何かを言い返すことも、ツッコむこともなく、「うん。そりゃあ良かった。でも俺も、ウォヌヒョンの存在にいつも救われてる」ってウォヌが欲しい言葉をくれる。
「なにお前、俺が欲しい言葉を生成するAIかなんか仕込んでんの?」
笑いながらそう言えば、「AIなんかじゃどうにもならない、これは人間だけにできる匠の技だよ」と謎に強気の発言をして、意味不明すぎるとウォヌのことを笑わせる。
「どの日もいっぱい泣いてたよ」
「だな」
「泣いてても泣いてなくても、俺にはウォヌヒョンが大切なのは変わりないよ」
「今さら口説いてどうするんだよ」
涙はやっぱりふと流れる。
でもいっぱい泣いた日は少しずつ減って行った。
そしてそのどれもにミンギュはいて......。
「ありがとな」
本当は「ごめん」とも言いたかったけど、ミンギュは「当然だよ」と笑うから。
「いつかお前が泣く日が来たら、その時は俺が側にいる」
それにもミンギュはまた「当然だよ」と答えた。
The END
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