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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

君と歩いたこの世界の 3 MYMY 2

注意......

「MYMY」contentsページです。

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君と歩いたこの世界の 3 MYMY 2

バーノンの妹は、幸せに結婚して生きて死んでいた。
息子を2人産んだらしいが、大きな町に引っ越して行ったという。
ディノやスングァンと同じように、自分が暮らしてた家に向かって、知らない人が住んでいたことを冷静に受け止めたバーノンだった。

どんな時でも案外ボーっとしてると言われるけれど、衝撃は後からやってくる。
冷静に見られたりもするけれど、決して落ち着いてた訳じゃない。

大切な家族だった。そんな中でも妹のことは、物凄く可愛がっていた気がする。
なのに妹はいつのまにか勝手に成長して、バーノンには手紙を残していた。

昔はオッパって言いながら後をついてきた妹だったのに、触れれば崩れ落ちそうな年代ものの手紙には、『兄貴へ』って言葉ではじまっていた。

『どこかで生きてるって信じてる。私は幸せになったよ。兄貴も幸せに』

たったそれだけの手紙だったけど、女の子の割には大胆でサッパリした性格だった妹らしいと言えば、妹らしい手紙だった。

手紙を持っていたのは、妹の友達だと言ったけど、今のバーノンからしてみれば年上な人だったけど、年老いた妹からしてみればかなり若い人だっただろうに、誰とでも友達になれるのも、妹の良い一面だった。

もしもその手紙がなければ、バーノンだって妹を探し続けたかもしれない。
妹すら逝ってしまったんだから、両親は当然もう逝ってしまったんだろう。
哀しくもあったし、涙だって流しはしたけれど、それでも呆然とするほどではなかったかもしれない。

それよりも、途中から別行動をしたスングァンとディノのことの方が気になっていた。
ヒョンたちはきっと大丈夫だろうと思えるのに、スングァンはいつだってしっかりして自分がいないとボノニは全然ダメだよとか言うくせに、人一倍甘えただったし、ディノは鋭いことを言ったりするくせに、肝心のところで誰かを疑うってことをしないから騙されそうだし......。

だから急いで自分たちが暮らした村まで戻ってみれば、道端に座り込んでスングァンが泣いていた。

「ボノナ、俺、1人になっちゃったよ~」

そう言って、抱きしめてやっても泣き止まずにずっと泣いてた。
でもそれもそうかもしれない。だって船で旅をはじめた当初は、ずっと「オンマ......」って口にして、驚いても怖がっても「オンマ~ッ!」って叫んでたほどなのに。

最初はヒョンたちだって余裕なんてなかったから、気づけばマンネラインの3人は固まっていた。はじめてのことも危ないことも謎なことも、全部最初はヒョンたちが試してから、安全が確認されたことから自分たちに落ちてくる。

それは有り難かったけど、その分空の旅に慣れるには時間がかかったかもしれない。
風が強い日には、「オンマ~ッ!」って叫ぶスングァンと、「わーわーわーわー」って煩いディノと一緒に、船の一番奥の、多少どこかが壊れたって船の外には飛び出さないだろう部屋で、耐えていたから。

ヒョンたちに守られながら、3人で一緒に頑張ってきた。
色んな面白いことだって危ないことだって驚くことだってたくさんあったけど、3人での思い出がやっぱり多くて。気づけばほんとの兄弟みたいだった。
ヒョンたちも含めて家族のようで。あの船はきっと、家だったはず。
だから「俺がいるだろ」って言ったのに、泣くことに精一杯なスングァンは全然聞いてなかったけど。
でもいつだって、守ってきたつもりだったのに。
ゲームとかでは負けず嫌いで必死に勝とうとするくせに、誰かに暴力を振るったりは絶対しない。バーノンだってそうだけど、それでもスングァンを守るためなら、誰かに手を出すことだって厭わない。それぐらいには守ってきたつもりだったのに。
ちょっとだけチェって思いつつも抱きしめ続けてたら、スングァンは少しずつだけど泣き止んでる時間の方が多くなってきた。
それでも山の中を歩きながら、思い出してはグズグズと泣いていたけど。
手を掴んで引っ張って歩けば、素直についてきてたのに。
汽笛が鳴ったから。

咄嗟に3人とも必死に走りはじめた。
まだ船がいたんだっていう喜びと、行ってしまうかもしれないっていう焦りと。
それでも手を握ってたはずなのに、スングァンが足を滑らせたその瞬間には、その手は離れてしまっていた。スングァンの名前を叫ぶのと振り向くのとはほぼ同じだったのに、その時には身体1つ分はもう下に落ちていた。

それでも身体全体が地面に滑っていくのを見てホッとした。地面もない場所へと落ちていくのとは違って、そこはまだ斜面とはいえ大地の上だから。それに何かに引っかかれば、スングァンの身体は止まるはずだから。

でもまさか、物凄いギリギリの場所で止まることになろうとは、思いもしなかったけど。

ディノには先に行けと言って、自分はスングァンを探すために降りた。でも降りたと言っても、ほとんど滑っていた感じで、スングァンとの違いは不意に滑り落ちたか、自ら滑り落ちたかの違いぐらい。それでもなかなかスングァンの姿は見つけられなくて、何度も叫んで、きっとそんなに叫ぶ自分は珍しい方なはずなのに、求める姿は全然見つけられなかった。

「スングァナッ。無事かッ? スングァナッ!」
もうこれ以上はこのまま進めない。そんな場所まで出て、さらに叫ぶ。

「ボ、ボノナ......」
物凄い小声だったのに、自分を呼ぶ声を聞き取った時には物凄いホッとしたっていうのに、「今から行く。すぐに助けるから」って声には「ダメだよッ。来ちゃダメだッ」って叫び返してきた。

まだ声が遠くて、せめて今のスングァンの状況を確認したくて、少しでも近づこうとしたのに支える場所も少なく、ましてやその先には地面が見えない状態ではどうしようもなかった。
滑れば自分もまた同じように落ちるだけで、それではスングァンを助けられなくなってしまう。

途方に暮れつつも引き返すことなんてできるはずもなくて、「俺がいるから、絶対助けるからッ!」って叫びはしたけれど、小さい声で「スングァナ......」って呟いてしまったほど。

今は自分が弱気になってる場合じゃないっていうのに............。

どうしていいかも判らずに空気が止まったかのように思えた時間はきっと数分もなかったはずなのに、「スングァナッ! 無事かッ?!」って聞こえたエスクプスの声に一瞬で時が動き出す。

「ボノナッ! スングァニが見えてるかッ!」

その声に「見えない」ってバーノンが答える前に、見えないなりにもスングァンの叫び声が聞こえた。

「ヒョンッ! クプスヒョンッ! ホシヒョンッ! ボノナッ!」

スングァンの声が聞こえたと同時に、バーノンの前には駆け下りてきたエスクプスが見えて、でもなんでスングァンがホシの名前を呼んだのか判らなかったのに、すぐにどこからか「こっちからは見えるッ! スングァナッ、絶対動くなよッ!」ってホシの声が聞こえた。

野生の感なのかたまたまなのか、途中から道を違えただけなのか。それでもホシの方がスングァンの近くに出たんだろう。それでもそっちからも、スングァンのもとには近づけなかったようで、「ダメだ。動くなッ!」って声が聞こえるばかりだった。

「状況はッ?」

そう言って次にあらわれたのはジョンハンで、「こっちからは見えない。ホシの方からは見えてる。でもこのまま助けに行くのは難しいかも」とエスクプスが説明してる間にも、ジョンハンが叫ぶ。

「スングァナッ。お前は動けるのかッ」
「ぅわ~、ハニヒョ~ンッ」

ジョンハンの声にも感動したのか、見えないスングァンの泣きの入ったその声にジョンハンは「まだ泣くな。絶対助けるから、お前の状況を話せッ」ってその声に、泣きそうになったのはバーノンの方だった。

それから何度、『まだ泣くな。まだ泣くな』って自分に言い聞かせただろう。
でもすぐに、バーノンは泣いてしまったけど。
そこには回ってきたのかホシに続いて、ミンギュまでいたから。

「ボノナ。お前は? 無事か?」

そう言って、ミンギュがバーノンのことを抱きしめてくれたから。

 

The END
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