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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

君と歩いたこの世界の 4 MYMY 2

注意......

「MYMY」contentsページです。

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君と歩いたこの世界の 4 MYMY 2

ロープを持って走るホシの後ろを、ミンギュはでっかい図体で走った。
ホシが勢いよく駆けていく。前を見てないんじゃないかってぐらいに、器用にステップを踏んで枝や木や茂みを避けて、さらには屈んで時にはジャンプして行くのに、後ろを行くミンギュは「うっそ......だろ」って言いつつ、枝には当たるし木には引っ掛かりそうになるしジャンプしたら飛びすぎて足を踏み外しそうになるし、時々は茂みを突っ切ったから、結構ボロボロだった。

しかも道は真っ直ぐ続いている風だったのに、野生の感なのか、ホシが突然左に曲がった。

「こっちだッ」

そう叫びながら。当然ミンギュはそれに続いたけど、すぐに行き止まりになった。
思わずその勢いのまま道なき場所に飛び出しそうになって、ホシに腕を掴まれてギリギリで止まった。

どうなったらこんなとこに出るんだよッって文句を口にしそうになったのに、ホシが必死に見てる視線の先には、スングァンが引っ掛かるようにしてギリギリの場所にいた。

思わずスングァンの名を叫びそうになるのに、「待て」とホシが止めた。
普段は楽しそうに笑ってふざけてばかりのヒョンなのに、真剣な顔をすればそこには何かがありそうに見えるから不思議で、その時だって一番冷静に、スングァンの状況を把握してたかもしれない。

ホシはミンギュに「こっちからは無理だ。さっきの道を戻って真っ直ぐ行けば、きっとクプスヒョンがいる」とだけ言ってミンギュを押しやった。

普段ならミンギュだって自分で判断しただろう。だけど何かに集中してる時のホシの言葉は外れることはない。だから後ろを振り向かずにロープを持って走った。

「スングァナッ! 無事かッ?!」

ミンギュが動きはじめてすぐに、エスクプスの声が聞こえた。

「ボノナッ! スングァニが見えてるかッ!」そうエスクプスが続けて叫ぶのに、バーノンの声は聞こえなかった。聞こえたのは、「ヒョンッ! クプスヒョンッ! ホシヒョンッ! ボノナッ!」って叫ぶスングァンの声。嬉しそうでもあり、辛そうでもあり、哀し気でもあったかもしれない。

「こっちからは見えるッ! スングァナッ、絶対動くなよッ!」

それでなくてもギリギリのところにいたのに、叫ぶだけでも危険だったのかもしれない。後ろからホシが叫ぶ声が聞こえてきて、それがいつになく真剣で怖いぐらいで。
それなのに「ダメだ。動くなッ!」っていうホシの声がまた聞こえてきて、ミンギュは必死に走った。

でもなんでか、もう少しでエスクプスのいる場所にたどり着くって時に、突然目の前にあらわれたホシに抜かされたけど......。
こんなに緊張した場面じゃなければ、絶対ミンギュは「どんなショートカットだよ」ってツッコんだはずってぐらい、自分だってあんなに必死に走ったってのに......。

たどり着いた場所にはエスクプスがいて、ジョンハンがいて、その向こう側に情けない顔で泣きそうになってるバーノンがいた。

「ボノナ。お前は? 無事か?」

思わずエスクプスやジョンハンの横をすり抜けて、バーノンのことを抱きしめれば、腕の中でバーノンが、「スングァニが」って小さく呟く。

数日前、船を降りたミンギュとウォヌは、のんびりと山をくだった。
見慣れたはずの場所がすべて、見知らぬ場所のようだったことにも、慌てなかった。
それは2人が、ジュンの言葉を真実だと思っていたからだろう。
家があった場所には見知らぬ人が住んでいた。
当然悲しくはあったけど、2人とも家族を探す行為すら、しなかった。
ミンギュはただ、妹が幸せに過ごしていてくれればいいと思っただけ。いつだって楽しむことがうまかった両親は、きっと悲しみばかりに縛られてはいなかっただろうと信じてただけ。
ジュンが空の上と地上とで時の流れが違うと口にした時から、諦めと覚悟と、それから両親を見習って、自分の人生を精一杯生きようと決めていた。辛くて泣くことはあっても、悲しみに囚われて笑わない人生なんて送らない。そう決めていた。

一緒に生きていきたいと思う人が側にいて、一緒にいれば楽しいばかりの家族がいて、それだけでも十分だとも思ってもいて。

「何か、フルーツを買って帰ろうか」

船の中では日持ちのしそうにないものを選んで、のんびりと山をのぼった。
ウォヌは全然覚えてなかったけれど、ミンギュはちゃんと船の場所を覚えてたのに、戻った場所に船はなかった。

ちょっとだけ焦ったけど、「大丈夫だろ? ジフニがジュニに、3日で戻る」ってちゃんと言ってたはずだからってウォヌが言うから、ミンギュはそれを信じて、「ジュニヒョンッ! ミョンホヤッ!」って叫んでみた。

そうしたら、奥まった木々の向こう側から、「帰ってくんの、早くない?」って言いながらミョンホが顔を出す。
すげない感じがいつものミョンホで、「お土産」って色々出したってのに、「少なくない?」っていうのも、ミョンホらしかった。

次に帰ってきたのはホシとウジだった。
当然のようにミョンホが「お土産は?」って言ったのに、なんでかホシが「俺?」って言いながらクルって回って見せたけど、「は?」って冷たくミョンホに睨まれていた。横からウジが、「ほら、これ」って握ってたものを渡してた。
覗き込めばそこにはただのボタンで、しかも数個だけだった。でも確かに船の中でいつだったかミョンホが、「ボタンがもっとあればいいのに」って呟いてたのを覚えてる。それを聞くでもなく聞いてウジは覚えていたんだろう。

ミョンホが「少なくない?」って言うと信じて疑ってなかったのに、なんでかボタン数個にミョンホが喜んでいた。どうやら普通のボタンじゃなくて、赤いキラキラがついてるらしい。

なんだか負けた気がしたミンギュだったけど、それでも船の中に入ればいつも通り、狭いのに使い慣れたキッチンは自分の城のようでもあって、お土産だったはずのフルーツを切り分けて皆に振る舞った。当然まだ帰って来てない面子の分も取っておいた。

戻って来ない誰かがいるなんて、微塵も思ってなくて。
でもドギョムはおっちょこちょいだから、帰り道を忘れてそうな気もして心配してたけど、ジョシュアがついていてくれたのか、トボトボながらもちゃんと戻ってきた。エスクプスとジョンハンは何も持たずに帰ってきたくせに、1つ前に降りた街で買ったハンモックを船の中に隠してたらしく、それを差し出されたディエイトがエスクプスに抱きつかんばかりに喜んでいて、またしても負けた気がしたミンギュだったけど。
後は弟たちで、きっと3人は一緒だろうって言いながらも、一番に「様子を見てこようか」って言い出したのはホシだった。

「明日、昼まで待っても帰って来なかったら、汽笛を鳴らせばいいだろ」

そう言ったのはウジで。
汽笛が鳴れば、どこにいたって走り出す。きっとそれは身体に染み付いてるはずだから。

その時は笑って、慌てて走ってくるマンネラインを想って皆で笑ったのに。
まさか次の日、迎えに行けば良かったって後悔することになるだなんて思ってもみなかった。
もう家族で、大切で、何よりも守りたいって思ってるのに。

「ロープとこのシーツで、どうにかなりそうか?」

ミンギュが後悔してた一瞬の間にも、目の前ではジョンハンが真剣な顔でスングァンを助ける方法を探ってた。

「とりあえずロープとシーツを結んでスングァンのとこまで落として、それに身体を結ばせて力で引き上げるのは?」

エスクプスが「それが一番無難で安全だろ」って言うのに、「たぶん無理。アイツ、左足がもう浮いてるのに全然気づいてないし、血が出てたから、ほとんど力は入らないと思う」って冷静に言ったのはホシだった。
その言葉に驚いて、ジョンハンが叫ぶ。

「スングァナッ! お前ケガしてるのか?!」
「わ、わからないよ」

自分のことなのに判らないと、スングァンの情けない声が聞こえてくる。どことなく、声が弱まってきたように聞こえるのは、気のせいでもないのかもしれない。

「足は? 足はどうなってるッ?!」
「わからないってばッ! 痛くて熱くて怖くて、見れないんだよ」

情けないこと言うなと言いたいけれど、その言葉に「時間がないかもしれない」って小声で口にしたのはジョンハンだった。

「ホシや、上まで戻って船を出せってウジとジュニに伝えろ。クプスとミンギュは、どうにかしてスングァニの下に降りろ。俺とボノニがここでスングァニに声をかけ続けるから」

話を全部聞き終わる前に、ホシは駆けだしていって、すぐに見えなくなった。

「船を使うのか?」

エスクプスは驚いていて、ミンギュだって瞬間、それは無謀だって思ったっていうのに、「時間がない中での最善だろ。ここで船がダメになるなら、全員で船をおりればいいだけだ。船を操るジュニは最善を尽くすし、それでも無理だと判断したらウジは冷静に撤退させるだろうし、いざとなったら船を捨てる判断だってできる」って、思った以上に冷静にジョンハンが言うから、それはやっぱり最善だったのかもしれない。

なにより今は簡単には動けなくて、そしてスングァンの足からはまだ血が流れ続けているとしたら、確かに時間はかけられないから。
ホシは必要なことだけは確実に伝えるだろうし、ウジとジュンならそれを冷静に判断するだろうし、なによりホシが戻れば96ラインが揃って、揃ってしまえば96ラインは最強で。

それにもしもの時は、皆でのんびりと暮らせばいい。
別に空の上じゃないと、生きていけない訳じゃないから。
いつの間にか飛ぶのも嫌いじゃなくなってはいたけれど、誰かが欠けるぐらいなら、空を捨てたっていいとも思えるから。

「ヒョン、行こう」

ミンギュがそう言えば、エスクプスも力強く頷いて、まさかの時には下でスングァンのことを受け止めるつもりで、先の見えない道をくだりはじめたミンギュだった。

 

The END
4052moji