妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Seventeen's Story 9

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

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No War! Seventeen's Story 9

「もぉ死にたい............」

一瞬何を聞いたのか判らなくて、でも驚いて振り返って、声を発した人間をマジマジと見たのはホシだった。
最後にスングァンがいた場所での出来事。

「なんて?」
「ん?」
「お前、今、なんて言ったの?」

近くにいたウジにも聞こえてたのか、ウジが物凄い驚いた顔をしてたのに、言った本人は何を聞かれてるのか判らないって顔をしてた。

「ん? ホシヒョン、なんてって、何が?」
「ボノナ、お前今、死にたいって言った」
「あ? 俺が?」

いつも通りのバーノンがそこにはいて、辛そうな表情もしてなくて、でもそれが余計に怖かった。
無意識に零した言葉なら余計に。

哀しいことや辛いことが、つもりつもって押し固まって。それが日常になって。
心がもう、本人すら気づかぬうちに、色んなものを諦めてしまったのかもしれない。

それでもお前は妹が助かったじゃないか......って、言いたかったけど、それを言わずにすんだのは、驚いて固まっていたはずのウジがバーノンを抱きしめたから。

「一緒にいれなくて、ごめんな」

そう言って、ウジがバーノンに謝ったから。

「ボノナ。俺たちがずっと一緒にいるから、スングァニのことだって絶対に諦めないから。だから、俺たちからお前のことを奪っていかないでくれ」

あぁ、天使みたいな弟は、いつだってマイペースで幸せそうに笑ってたのに。欲しいものが見つかると、困ったような顔して買うか買わないか悩んで、「じゃぁもうそれ俺が買うから、一緒に使えばいいだろ」ってウジがさっさと買っていたのだって、何度も見てきた。

どうせ余るんだから、残ったもので俺はいいよっていうバーノンのために、ウジはいつだって多めに注文してた。

そんなこと、きっとみんな知ってた。
いつだってふんわりと、幸せそうに笑う姿がみんな大好きで。
ウジがいなければ、さりげなく多めに注文するウォヌがいたり、ジョンハンがいたり。
争い事が嫌いで、ケンカする相手はスングァンぐらいで、それでもほとんどが小競り合い程度で仲良くて、奇抜な姿と、ほわほわの頭と、天然な発言と。
全部全部全部、失えないってのに。

怒ればいいのか、哀しめばいいのか、判らなかった。
あぁでも、それでもお前は妹が助かったじゃないか......なんて、言わなくて良かった。
だって自分にはウジがいたから。
バーノンがスングァンを見つけられずに過ごしてた間も、自分にはウジがいたから。

「ごめんな。驚かせたな」

気づけばジョシュアがホシの背中を叩いてくれていた。
少しだけ、困った顔で笑いながら。

「あぁ、そっか。俺、死にたいって言ったんだ............」

ウジに抱きしめられながら、バーノンがなんの感情ものせずに、そんなことを言う。
それはやっぱり、哀しいとか辛いを、通り越してしまった感じで。

「ヒョン、俺さ、あいつに、お前がいないと、生きていけないって、言ってやらなかったんだ......」

もう何年も前のことなのに、たったそれだけの言葉で、スングァンとバーノンの最後のケンカとも言えないような小競り合いを鮮やかに思い出す。

それは当時流行ってたドラマの中のセリフで、「お前がいないと生きていけない」って、ドラマの中で俳優さんが女優さんに言った言葉。
ドラマ好きなスングァンは、「俺も言われてみたい」って身もだえていた。
それに対して「俺はスングァニがいないと、生きていけないけど?」ってあっさりとジョンハンやウォヌやミンギュが次から次へと口にしていくのに、なんでかバーノンだけは「俺はお前がいなくても生きていけるし」と、言ってやらなくて。

「言いもん。俺だって全然平気だもん」

スングァンが、ちょっとだけ泣きそうになった後に、かなりムキになってプンプン怒ってた。
誰かがバーノンに、「それぐらい言ってやれよ」って言ってたはず。
でもバーノンは言わなくて。
やっぱりドラマはドラマだからな......って、みんなで笑った日は、ついこないだみたいな感じだった。

「あの時、俺、言ってやれば良かった............。だって俺、ほんとに、あいつがいないと、生きていけないみたいなんだ」

探しても。探しても探しても。
どうしても見つからなかったら、俺があいつのところに行ってやらないと。
あいつだって一人じゃ、きっと無理だろうから。

そう言ってバーノンは、物凄く優しく微笑んだ。
その優しい視線は、スングァンにいつだって向けられていたもので。

「ボノナ、ボノナ......。頼むから」

ウジの必死な声も悲痛だったけど、「ウジヒョン、ミアネ」っていうバーノンの声も優しすぎて哀しくて。

その日から3日ほど、ウジはバーノンのことばかり見て過ごしていたけれど、4日目の朝にはバーノンのことなんて気にせずに歩き出した。

「ぅお? ジフナ? ボノニのことはいいのか?」

そう聞けば、「ボノニのことは見飽きた」とキッパリ言い切って、「スングァニは絶対探し出す」と前を向く。

泣いたって立ち止まったって、いつだってウジは前を向く。
男前なウジがやっぱり嬉しくて、「そうだな。ホシウジコンビが無敵なところを見せてやろうぜ」って言いながら、ホシが後ろを行く。

 

The END
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