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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

Who is the real MAESTRO?

Who is the real MAESTRO?


SEVENTEEN (세븐틴) 'MAESTRO' Official MV


SEVENTEEN (세븐틴) 'MAESTRO' 응원법


SEVENTEEN (세븐틴) 'MAESTRO' Official Teaser 1


SEVENTEEN (세븐틴) 'MAESTRO' Official Teaser 2

 


[Choreography Video] SEVENTEEN(세븐틴) - MAESTRO

 


SEVENTEEN (세븐틴) 'MAESTRO' Official MV (Choreography Version)

 


[4K] SEVENTEEN - “MAESTRO” Band LIVE Concert [it's Live] ライブミュージックショー

Who is the real MAESTRO?

ディノには友達がいない。でも、4匹も犬がいる。
なにものからもディノのことを守る4匹の犬たちが、チングであり家族であり、シモベであり仲間であり、時々はディノそのものだった。
なのにウォヌは犬たちを殺そうとする。
「ウォヌヒョン、辞めてよ」
「でもディノ、まだ今ならギリギリ間に合うのに」
この世界がロボットたちに乗っ取られるとウォヌは言うけれど、それがなんだってんだって感じ。
「だいたい、ロボットってダサくない?」
そう言ったら「別に、AIでもなんでもいいけど」とちょっとだけ口籠ってたから、きっと自分でもダサいとは思ってるのかもしれない。
まだ生きられたはずのウォヌの母親の生命維持装置を、ただのロボットが止めたらしい。そこにあったのは、結局は助からないという判断だったのか、苦しむ時間を長引かせたくないという愛情だったのか。
「だからってウォヌヒョンが俺の犬たちを殺していいってことにはならないよ。俺にとっては家族なのに。だからダメだよ。いくらウォヌヒョンだってダメだよ。どうしてもって言うなら、俺の犬たちは最後の最後の最後にしてよ」
犬たちは賢いから、ディノの後ろに隠れてる。
いざとなれば戦うだろうが、今はディノの後ろに隠れることが一番勝利に近いと知っているからだろう。
ウォヌはそれ以来、ディノの犬たちのことは見て見ぬふりをしてくれる。最後の最後にしてくれるつもりなのか。
たくさんのロボットたちを叩きのめして、マエストロを探してる。ロボットたちの命を司っているらしいマエストロを止めれば、ロボットたちも止まるからって。
嘘かほんとか判らない。
当然のようにミンギュがウォヌに加担するから、結構な勢いでロボットたちが駆逐されていく。だからディノは犬たちに紐をつけた。
ディノのことを守る犬たちをディノが守るため。
だってディノには、犬たちが家族なんだから。

 

ホシは昔から、よくロボットたちを怒らせた。
言動も行動も予定調和に行かないからか、ロボットたちだってイラッとするらしい。
「いや、ロボットがイラッとするなら、それはもうロボットじゃないんじゃないか?」
真面目な顔してジョシュアは言ったけど、確かにホシはロボットたちを怒らせている。
「うん。だからさ。俺は別に、アイツらと一緒の世界でも、そんなに悪くないって思うんだよね」
懐が深いのか、何も考えてないのか。
「でも俺は、誰も失ってないから言えるのかも。それにもしウォヌみたいにウジが動きはじめたら、俺だってミンギュみたいに手伝いはじめるかもしれないし」
ホシはいつだって自分の気持ちに素直だ。悩んでることも、考えてることも、思いも、全部を口にしてしまう。矛盾してるようなことだって全部。
そこがロボットたちをまた惑わせるのかもしれない。
「でもウォヌが探してるのは、マエストロなんだろ?」
嘘かほんとか。誰かがすべてを掌握してるらしい。
「俺はそれがウジだって言われても、驚かないけどな」
ジョシュアがそういうのを、ホシはなんでもないような顔で聞いていた。
もしもそうなら、ウォヌはウジのことも叩きのめすんだろうか。
「その時はジフニの前には、俺が立つよ。俺を倒してからいけって言ってみる」
「いや、ウォヌのあの必死さじゃ、あっさり倒しにくるだろう」
「そうかも」
仲なんて良くない。近くにくればちょっと離れてって言ってしまうようなヌナがホシにはいるけれど、もしもヌナがウォヌの母親と同じような亡くなり方をしたら、ホシだって戦うだろう。
でもその相手がジフニだったらどうしよう......。
「ほんと、どうしようだよな」
考えてるだけだったはずの言葉を声にしていたようで、ジョシュアが同意してくれる。
「シュアヒョン、その時は俺、勝つけど負けると思う」
どっちだよ......みたいなことをホシが言う。
でもそれはホシにしてみれば事実で、だからこそやっぱりホシの周りのロボットたちは惑わされるんだろう。

 

ミンギュに「お前はウォヌヒョンの味方をするってことを、もっと真剣に考えた方がいいよ」と言ったのはディエイトだった。
「ちゃんと考えたよ」
ミンギュはそう言ったけど、「じゃぁお前のちゃんとっていうのは、その程度なんだよ」とディエイトは首を振った。
もしもジュンが戦いはじめたら自分はどうするだろうか。もう長く一緒にいて、背中を預けるのもその背中を守るのも自分だと思っているけれど、それでも何かあった時に静止するのもまた自分だと思ってるから。
なのにミンギュは闇雲にウォヌの希望を叶えようとする。そのバカだけど真っ直ぐさは、真似はしないけど真似もできないとも思う。
「ちゃんと考えたんだよ。ほんと」
「それで誰を敵に回すのかも?」
「............うん」
小競り合いのようなやり取りは頻繁だけど、それでもミンギュはディエイトにとって長くチングだった。いや今からだってずっとチングには変わりない。
ただ、戦わなきゃいけなくなっただけだ。
「俺は、ムンジュニを守るよ」
「うん」
「後から謝ったって、許してやらないからな」
戦うなら、どちらかは何かを失うかもしれないのに。
「俺、お前のこと好きだよ」
バカみたいなことをミンギュが言う。
「知ってるよバカ」
俺だって好きだよとは言わなかったけど、多分伝わっただろう。
でも次に会った時にはもう、こんな話はできないかもしれない。

 

「ウォヌヒョンは、ロボットたちを殲滅するつもりなんだって」
スングァンがそう言っても、バーノンは「ふーん」としか言わない。
「ジュニヒョンを守るために、ディエイヒョンは戦うって」
そう言ったらさすがに何か言うかと思ったのに、バーノンはやっぱり「ふーん」としか言わなかった。
「俺は当然みんな好きだけど、それでもハニヒョンのことは弟として、支えないとダメかなって思ってるんだ」
きっとまたバーノンは聞いてるんだか聞いてないだかみたいな返事をすると思ったのに、「なんでお前が?」といつになくハッキリとそう言った。
しかもスングァンのことをじっと見てくる。
「ハニヒョンはだって、なんでもないって顔をして、全部自分でどうにかしようとするはずだから」
頼りがいがあるヒョンだけど、全部を1人で背負うのは違うと思うし、それでも笑ってるヒョンだとも知ってるけど、俺は支えたいよとスングァンが説明するのに、バーノンは珍しく真っ正面からスングァンのことを見ながら聞いている。
それから「アンデ」って言ったから、スングァンは嬉しそうに笑った。
でも、周りではもう高い音階でソナタを響かせられるのは、スングァンとドギョムしかいないのに......。2人揃ってもきっとAIのプログラムを書き換えることなんてできない。それでも何かの助けにはなるだろうから......。
えへへってバーノンに笑いながら、でも最後まで「わかった」とは言わなかったスングァンに、バーノンは気づいただろうか......。

 

エスクプスは寂しがり屋だから、ロボットたちでもいないと辛い時がある。
自分と同じ動きしかしないロボットたちだって、1人よりはマシだった。
「ヒョン、Updateしなよ。自我があるように見えるロボットだって、ファミリータイプだって、今や結構なんでもあるじゃん」
ドギョムが呆れたように言うけれど、エスクプスだってそれぐらい知ってる。
母親のように世話を焼いてくれるものから、兄弟のように側にいてくれるものまで。
でもそうしたら、例えロボットだったとしても、エスクプスには無くせない大切な存在になってしまう。守りたくなって、離れられなくなって、優しくしたくなる対象になる。
最初に買ってもらったロボットは犬だった。名前をつけて可愛がった。
ロボットだから一生側にいてくれるもんだと思ってたのに、ロボットだって一生ではないことを教えてくれた。
子どもの見守り機能もついた犬のロボットは、エスクプスが事故に巻き込まれるのを防いで死んでしまった。
ロボットだから同じ型はあると言われた。壊れたロボットからICチップを取り出せば、全く同じだとも。
でもエスクプスにとってはそれはもう同じではなくて、それ以来、犬は飼ってない。
どんなに無機質に見えるロボットだって特別だと思ってしまえばそれはもう大切な存在で、それを知ってるからこそエスクプスはUpdateなんてしなかったのに.....。

 

ジョンハンが不敵に笑った。
誰も気づかないかもしれないけれど、誰かは気づいたかもしれない。
普段は何も知らないような顔で笑うのに、何もかも知ってるような笑い方をして見せる。
それがわざとなのか、たまたまなのか。必然あのか偶然なのか。計画的なのか偶発的なのか。
「ハニヒョンはさ、いつもなんでも知ってるような顔をするよね」
ジュンがそう言えば、「少なくともお前よりは知ってるんじゃないかな?」と笑う。
「俺も笑って見せたらいいかな」
そうすればウォヌは他の誰かのところではなくて、自分のところに来るかもしれない。
そうジュンが思ったことが判ったのか、「お前じゃウォヌを止められないだろ」とジョンハンが言った。
ジュンが驚いたように目を見張れば、「な、お前よりも俺の方が、色々知ってるだろ?」と言いながらジョンハンがウケケケと、その見た目からは想像できない笑い方を見せる。
いやでもユンジョンハンという人は、そういう人だけど。
でも面白いことを楽しんでばかりの人に見えるのに、不意に表情を消す時だってある。
「で、ハニヒョンはどこまで知ってるの?」
ジュンが聞く。笑って何も答えてくれないかと思ったのに、ジョンハンは答えてくれた。
「ウジはきっと、否定も肯定もしない。言い訳もしない。あいつはちっさいのに、男気だけはあるからな。でも俺はそれが不正解だって知ってる。ただそれだけだよ」
じゃぁ正解は? それは聞かなかった。
聞きたかったけど、遠くから、誰かが戦ってる音がして、それが少しずつ近づいてきたから。

 

バーノンはロボットとを壊す仕事をしている。正確に言えばその耐久力を調べるために壊すだけだ。
でもそれだってロボットがすればいいのにと言えば、「そんなの可哀想だろ」と言ったのはエスクプスで、「きっとボノニよりも早く正確な数値を出すのにな」と笑ったのはジョンハンで、「ボノニがロボットを使役して数値を出してるんだから、結局はロボット同士みたいなもんだろ」と言ったのはジョシュアだった。
使役されてるのは、ロボットなのかバーノンなのか。支配者側は、どっちなのか。
でもバーノンの手には仕事柄、いざとなったらロボットがその動きを止めるリセットボタンがある。
止められる時間は僅か1分も満たない。その間にロボットたちは再起動をするだろう。でもその僅かな時間さえあれば、きっと、スングァンぐらいは助けられるはず。そしてその間にウォヌは、何かを成し遂げるだろうか。
バーノンは誰の味方でもない。ロボットがいたっていなくたって、それほどきっと変わらない。でもスングァンがいないと困る。それだけは確実に。

 

ジョシュアは一度、ウジに聞いたことがある。
その位置にいるのは辛くないのかと......。
好きに音を紡いでるだけだよとウジは笑ってみせたけど、できることもやらなきゃいけないことも多くて、そしてそこには責任や結果もついてくる。
俺は何もしてないよとウジは笑うけれど、でも何かを決めなきゃいけなくなった時、少なからずウジは考えるだろう。
優しいとよく言われる。そんな自分は嫌いじゃないけれど、結局それは何も決められないことと同意かもしれないとも思う。
「俺には選べない」
何を。どちらを......。とも言わなかったのに、ウジは「そういう人も必要だよ」と笑う。
俺を選ばないのか......とも言わなかった。
ジョシュアにできることなんて、その時がこないように願うことと、その時が少しでも後になるように、無駄にウォヌの前に出ていくロボットの数を増やすことと、でもウォヌが傷つかないように設定は弱めにすることぐらいで、ただただ意味のないことをするばかりだった。

 

「俺も選べないよ」
ジョシュアが去った後、ウジは1人呟いた。
自分だって選べない。お前がマエストロかと言われれば、そうかもしれない。でも全てをお前が握ってるのかと言われれば、それは違うから。
ウォヌが戦う理由も知っている。
だからウォヌのことを止められないことだって判ってる。
世界を救おうだなんて思ったことはない。ただ13人が幸せでいられたら良かっただけなのに、1番起用にすべてを動かすことができたのが、たまたまウジだっただけだ。
でもそれを、どれだけの人が知ってるだろう。
きっと1番身近にいるホシは判ってない。
大した会話もしないのに、ジョンハンは知ってそうだけど。
そしていつもなら、その冷静な観察眼で色んなことに気づくはずのウォヌが、冷静さを失っていて......。
「俺も選べない。でも、俺はもうきっと選んだんだ。それなら俺がマエストロだ」
ウジの呟きは誰にも聞かれなかった。どこにも届かなかった。

 

ジュンはただ立っていた。
遠くに聞こえてたロボットたちがウォヌにぶち壊されてる音が少しずつ近づいてくるのを、他人事のように聞きながら、ただ立っていた。
チングだった男は、きっと今もチングだろう。
ウォヌに「ジュナ」と呼ばれるのは嫌いじゃなかった。そう思ってたら、ジュンのいる場所に通じる扉を壊す勢いで開けたウォヌが、「ジュナッ」って言った。
ウォヌだってロボット相手に無傷ではいられなかったのか、あちこちに傷をつくってた。肩で息だってしてる。
「お前に名前を呼ばれるの、嫌いじゃない」
そう言って笑えば、ウォヌは少しだけ辛そうな顔をした。
「今ならまだ間に合うんだ......」
ウォヌが喘ぐようにそう言った。
何がとは聞かなかった。ウォヌがそう言うなら、ウォヌにはまだ間に合うんだろう。
ジュンには戦う理由なんてない。でも生き残らないときっとハオが悲しむ。
もう右手も、左手も、右足も左足も。その両の目と脳以外は自前じゃないってのに。
時折唇が鈍色に光る。
身体中を流れるのは赤い血じゃなくてデジタルな信号だってのに、「ジュニヒョンはもうほんとに......」って呆れたような口調でハオが言うから。
後悔なんてしない。誰かを庇って右手を失った時だって、「よくやった」ってそうハオは言ってくれたから......。

 

まだ間に合うとウォヌは言う。
何に......とは聞かなかったけど、本当は聞きたかった。なにより、俺がいるんだから、それだけで十分でしょって言いたかった。
でもウォヌは戦うという。
それならミンギュは、それを助ける。
目の前に立つのが大切なチングだったとしても、大切な弟たちだったとしても。
「俺のことだけ見とけよって、ヒョンが言えばいいじゃん」
スングァンはドラマの見過ぎだろう。
「何を今更」
バーノンは言葉少なにそう言った。
確かにそうだった。何を今更。世界はもうロボットが大半を占めている。どんなに小さなものでもICチップは入ってて、希望すればAIが独自の発展を遂げていく。気づけば色んなものに助けられて人間は生きている。
ディノの4匹の犬たちが、ディノの心臓を動かしているように......。
「ミアン」
ミンギュは謝った。だってしょうがない。ウォヌを1人にはしないと決めているから。いつ決めたかも忘れてしまったけれど、もうただそれだけがミンギュのことを動かしている。ミンギュが動き続ける限り......。

 

ウォヌの中のジュンの思い出は、メロンパンとメロンソーダを両手に持って歩く姿だった。
それとそれを買うかな......と笑った気もする。
いつだってその整いすぎた見た目に反して楽しそうに笑ってた。表情を殺せばロボットとのように精巧な美しさで、時々周囲をバグらせていた。
そして大抵のことは笑ってやり過ごす。
スングァンを庇って右手を失った時だって、ジュンは「ありゃ」って困ったように笑っただけだった。
今はもうそのほとんどがロボットと同じ素材で出来ている。そこまでして生きたいのかと誰かは言うかもしれない。でもジュンを前に戦うことを決めたウォヌでさえ、そこまでしてでも生きて欲しいと思ってた。
本人が望んでくれるなら、ずっとずっと生きていて欲しいと思ってて、それは母親だって同じだった。
何がそんなに許せないのか。理不尽に奪われた命か。
「今はただ、何かを恨みたいだけだよ」
そう言って、お前の好きにすればいいって言ってくれたのは確かジョンハンだった。
そうかもしれない。どんな最期だったとしても、ウォヌは同じことをしたかもしれない。
ジュンを前にして、ウォヌは少しだけその口を曲げる。ウォヌを前にして、ジュンは少しだけ口の端をあげた。

 

戦いは一瞬のようでいて、長かった。
ジュンの前に飛び出したスングァンがいて、それを守りたかったのか、リセットボタンを押したバーノンがいた。
僅か1分もなかったかもしれない。
でも確かに止まった時間。
その場にいる機械すべての動きが止まるだけ。全世界って訳じゃない。
ジュンも、ウォヌですら止まった。
予想してなかったのは、その場にディノが足を踏み入れたことだろう。4匹の犬たちとともに。
リセットボタンの影響を受けて、犬たちがピタリと止まる。
「え? あれ?」
そう言って、ディノはパタリとその場に倒れた。
ディノの心臓を動かしているのは4匹の犬たちなんだから、それは当然だったかもしれない。
「ディノやッ」
叫んだのは、ディエイトと戦ってたはずのミンギュだった。
いつもはケンカばかりしてるのに、「アンデッ!」って言いながらスングァンが駆けていく。
僅か1分もないのなら、心臓マッサージでどうにか乗り切れたかもしれない。でもディノの心臓は外からの刺激なんて受け付けない。その周りにはロボットのように硬い基盤があったから。だからこそ4匹の犬たちが半永久的に作り出すエネルギーでディノの心臓を動かすことができていた。
「アンデ」
そう次に口にしたのはウォヌだった。
1分心臓が止まったままでも、生き返った人は山ほどいるかもしれない。でもディノもそうだと、誰が言えるんだろう。
「あと何秒?」
震える声で聴いたのはディエイトで、「38秒」と答えたのはバーノンで。
たった38秒なのに、もう40秒もないのに、長すぎた。
「ハオ」
ジュンはそう言っただけなのに、「嫌だッ」とディエイトが叫ぶ。
「ハオ」
ジュンはもう一度その名を呼んだ。
「ダメだ」
ディエイトは抗った。
「残り30秒」
バーノンのその声に、ジュンはもう一度「ハオ」と言った。今度は「間に合わなくなる」とも。
あっという間だった30秒が経過した時、ディノの犬たちは何事もなかったかのように動き出した。でも自分たちの手綱を握っていたはずのディノがそこにいないと気づいて少しだけ動揺したようにも見えた。
それから少ししてからディノは目を覚ました。倒れた時と同じように「あれ?」って言いながら。
「どこもおかしなとこはないか?」
そう聞いたミンギュに、ディノは「うん」と答えながらも周りを見回した。
「俺、ウォヌヒョンがジュニヒョンと戦うって聞いたから、止めに来たんだけど」
そう言ってやっぱりディノはキョロキョロとする。
「ジュニヒョンいないじゃん」
そのディノの言葉に、その場にいた全員が何も言えなかった。
よく見るとディエイトもいなかった。それから95ラインもいなかった。それからウジと、ドギョムと。ホシもいないと思ったら、あらわれた。
「ヒョンたちが集まれって」
それはいつだって同じ。何かあればいつだって、集まってきたから。
でももうジュンは動かない。ディエイトはそんなジュンを引きずるようにして、どこかに行ってしまった。
ウォヌは黙ったまま何も言わなかった。でもスングァンは言った。
「ウォヌヒョンはこれで良かったんだよね? だってジュニヒョンのこと、倒そうとしてたんだから」
傷つけようと思ったのに、その言葉に傷ついたのはスングァンだったようで、それ以上は言えなくなっていた。
バーノンが「ごめん」と小さく、誰に言うでもなく謝った。
「もっと早く、来てくれたら良かったのに」
エスクプスとジョンハンとジョシュアが姿を見せた時、そう言ったのはミンギュだった。

 

ドギョムは、動かなくなったジュンを引きずるディエイトを見ていた。
「重くないか?」
そう聞いたら、「それよりも先にどうしたとか、大丈夫かとか、聞くことあるだろ」とディエイトが言い返す。
「でももう大丈夫そうには見えないよ」
やっぱり重たかったのか、ディエイトはジュンの身体から手を離す。そうしたらジュンは当然のようにそこから動かなかった。
「ディノのことを、助けたんだよ。自分の身体に電流を流して、ディノの心臓を動かしたんだよ」
ディエイトがジュンの最後を語る。ジュンの指先からは、ディノの心臓を動かす程度の電流が流れたというのに、ジュンの身体を駆け巡った電流は、唯一自前だったジュン自身の脳にも目にも、強すぎたんだろう。
「ジュニヒョンらしいよね。誰かを助けるために色んなものを失って。それでも平気って笑ってて。まるで、童話の中の王子様みたいだ」
「俺は嫌だって言ったのに......」
もう動かないというのに、そんなジュンの側にディエイトは座り込む。
きっと離れるつもりがないんだろう。
いつだってそうだ。上手くいってても、世界はいつだって唐突に終わりを迎える。
何度試しても幸せは続かない。半分以上が作り物の世界で、ほんものではないからなのか。もう諦めなきゃいけなのかもしれない。
判ってるのに。判ってたのに............。
2人を置いてドギョムが向かったのは、どこかでピアノに向かってるはずのウジのもとだった。
この世界の仕組みを動かしてるのはマエストロだった。少なくともAIを支配してるのはそうだ。
何度も世界が滅びかけたからかもしれない。
ただ強いだけの人間や、暴力で何かを支配する人がきっと世界を壊しかけたからだろう。
気づけばAIを司るには少なからず音楽に愛される才能が必要で、音楽を愛して愛されるような人間が世界を壊すはずはないとでも思ったのか。この世界はマエストロが支配する。
だからなのか、社会の一部として働くだけじゃなく、踊るロボットまでいるのは、そういうことなのかもしれない。
良いことばかりじゃないけれど、悪いことばかりでもない。
「ウジヒョン......」
色んな音を作り出す。そこにはきっとマエストロと呼ばれてもおかしくないウジがいる。
「ウジヒョン......」
名前しか呼んでないのに全てを理解してくれる。
「いいよ。お前がそれを望むなら、俺は何度だって付き合うよ」
突如ラッパが鳴り響く。Accelerando。それから高音のソナタ。ウジしか知らないその旋律は、全てをやり直すための音。
もう一度はじめるために。何度でもはじめるために。

 

エスクプスの朝は隣りで寝てるはずの誰かの体温を探すところからはじまる。
もうとっくに昼だよとジョンハンは笑う。
優雅に過ごすための何かを毎日のように探すジョシュアは、昔は当たり前のようにあったという紙の新聞に憧れている。

ジュンは起きてすぐに「およ」って言った。
ホシは起きてすぐに「がぉ〜」と叫ぶ。
ウォヌはそんなホシに「クマネ」って言いながら。
ウジは何も言わずにホシを殴ってた。

ディエイトは起きたら昼だったことに凹んでて。
ミンギュはそんな日もあるだろって笑ってた。
ドギョムはなんでか泣いていて「俺、なんで泣いてるの?」って聞いて皆から「知るかよ」と笑われていた。

スングァンはむくみを取るための運動をはじめる。
バーノンはそれにつきあわされそうになりつつも、横で見ててやると回避した。
ディノは「俺、犬を4匹も飼ってた夢を見たよ」といい、マンネ愛の強すぎるウォヌあたりが「4匹も?」と話に食いついていた。

朝はいつだって明るくて、昼はいつだって温かくて、夜はいつだってちょっとだけ淋しいけれど、全員が一緒ならきっと大丈夫。
遠くで鳴るこの世界のメトロノームの音には、まだ誰も気づいていないけど............。

The END