最近飲み会があるたびに、ディノに酒が入るたびに、そして夜が明けていく頃になるたびに、ディノは小さい声で「もっとずっとずっと、長く一緒にいたいなぁ」って言う。
それはまだ帰りたくないっていう意味でもあって、13人で居続けたいって意味でもある。
ディノの願いの大抵は叶う。
ヒョンたちのところに行って、「お願いヒョン」と言えば大抵叶う。
それをディノ自身も知っているっていうのに、何をそんな小さい声で言ってるんだと、13人での食事会の時に、1人酒の入ってないウジはいつもそう思う。
「あいつのさ。誕生日のケーキのローソク吹き消す前の願い事って、もしかしたらさ、13人でずっと一緒にいられますように......とかじゃないの？」
ウジがそう言えば、近くに座ってたミンギュとスングァンとドギョムが「ありえる」とすぐに同意してくれた。
「いやそれってさ、願い事のチャンス、毎年損してるってことじゃん」
ミンギュが真面目な顔をして言う。
「まぁそうかも。だって願わなくても絶対に叶うことを、毎年願ってるならね」
スングァンも言う。
「でももしかしたら、ディノが願ってくれてるから、それが当然叶うっていう状態になってるのかもしれないよ」
優しいドギョムはそう言った。
でも速攻でミンギュとスングァンに、「ぇえい、そんなの、あいつが願わなくたって決まってるじゃん。だって全員がそう思ってるんだから」と文句を言われてた。
「じゃぁ俺ら、ディノの願い事1回分、損してるじゃん」
ミンギュが謎なことを言う。
「ほんとだよ。その願い事を別に回してくれたら、俺らまた一歩、進めるじゃん」
しかしスングァンはミンギュに乗っかって、なんだかプンスカ怒ってる。
「なんだよそれ、ディノの願い事なんだから、好きにさせてやれよ」
酔ってたってドギョムは優しい。
でも強くはないからか、ミンギュとスングァンにはすぐに言い負かされる。
「じゃぁウジヒョンは何を願ってる訳？」
そう聞かれてウジが答えたのは、「いつだって、いい曲ができますように......だな」だったから、ミンギュとスングァンはさらに「ほらほらほらほら」とドギョムにどうだと言わんばかりだった。
それからミンギュとスングァンとドギョムは、ディノを説得に行くと言っていなくなった。誕生日のお願い事を有益に使えと言いにいくらしい。
3人のいなくなった場所には、追い出されたのか、エスクプスとホシとバーノンがやって来た。
「なにあいつら息巻いてんの？」
エスクプスがそう言うから、願い事の話題になったことをウジが教えてやる。
そうしたらホシが「え？ 願い事って、セブチ限定だったの？」と何故かあわあわしてた。
「ヤバイ。俺もセブチじゃないわ」とエスクプスまで言えば、「俺はギリセブチ関連」とか言ったのはバーノンだった。
「俺、去年は宝くじ当たりますようにって願っちゃった」
ホシはそう言ったけど、「お前宝くじ買ってないじゃん」とウジからツッコまれていた。多分ミンギュとスングァンが今ここにいたら、ボコボコにされたかもしれない。
「俺は大抵、ハニと旅行行けますようにとか。ハニと温泉行きたいとか。ハニと一緒に暮らしたいとかだしな」
エスクプスは開き治ったのかカカカと笑う。
「いやそれ、直接本人に言いなよ」
ウジがそう言えば、「本人にも当然言ってる。それでも叶わないから、願ってんじゃん」と言い返されたので、本気で願っているんだろう。やっぱりエスクプスもミンギュとスングァンにボコられるはず。
「俺はセーフだよ。お風呂入らなくていい身体になれますようにだし」
風呂に入らなくても綺麗なままなら、確かにアイドルとしては役立つかもしれない。
でも「ボノナ、お前、絶対に叶わないことを願ってどうすんだよ」とホシに言われていたから、やっぱりミンギュとスングァンにボコられるだろう。
「まぁでも、みんなそんなもんじゃないか？ シュアとか絶対自分の成功しか願ってなさそうだし。ハニはもう少し寝たいとか願ってそうだし。ジュニは1プラス1がもうプラス1になりますようにとか願ってそう」
エスクプスがそう言い出したら、当然ホシだって言うだろう。
「あ、判る。ウォヌとかもどうでもいいこと願ってそうだし、ミョンホは物凄い現実的なことを願ってそう」
願い事ばなしで何故か盛り上がっていたけれど、ディノの願い事が本当は何かなんて、誰も知らない。結局「願いが叶わなくなるかもしれないから、誰にも言わない」と言われたらしいから。
それを聞いてエスクプスは凹んでいたけれど............。
でもディノの願いはきっと、いつだって叶い続けるだろう。
12人もいるヒョンたち全員が全員、ディノの願いはいつだって叶えてやりたいと思ってるんだから............。
The END
1949moji
