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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Seventeen's Story 6

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

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No War! Seventeen's Story 6

ディノは、引き上げる部隊を見送りつつ、捕虜となった人たちの食事の用意をしてた。
別段捕虜と言ったって、劣悪な環境にある訳でもなく、情報を引き出すために拷問にかけられてるなんてこともなく、ただもう少しすれば、解放されることが決まってる人たちだったから、それこそ食事事情なんかも大分恵まれていたかもしれない。

その仕事は押し付けられた訳でもない。
他の人よりも言葉が判ること、それから、ディノが進んでその仕事が仕事と決まる前から動いていたからってのも、あったかもしれない。

体調不良のふりして三日凌げ。
そうジュンは言ったけれど、駆け戻った先でディノは本当に倒れ、高熱にも襲われて、結局一週間近く寝込んでる間に、色んな事が終わってた。

捕虜という名の、けれどある意味助け出された人たちがいる場所に顔を出したのは、もしかしたらそこに見知った顔を見つけられるかもしれないと思ったから......。

当然ながらケガしてる人の方が多かった。それでも比較的無事そうな人に、たどたどしくはあったけど話しかけた言葉は、話さなくなって久しいのにちゃんと通じたことが嬉しかった。

2人の名前を口にして、探してるんだと言えば大抵驚かれた。
最初は誰も、何も話してはくれなかった。
それもそうだろう。ディノはただの、敵兵でしかなかったから。

でも誰かがポツリポツリと、ジュンとディエイトの最後を語り始めると、「嘘だよ。あの二人が、死ぬわけないよ。だって、俺に会いに来てくれるって言ったもん。いつか、絶対って」信じないと言いつつも、涙を流すディノがいて。

信じないと言った言葉は自国の言葉だったのに、そこにあった思いは伝わったんだろう。国なんて違ったって、その身を心配して涙するほどの関係だってことも。

だからか、身体の傷が癒えてくると皆、少しずつジュンとディエイトの日頃の様子を教えてくれるようになった。
それは、ディノがよく知る二人の時もあれば、ディノが全然知らない二人の時もあったけれど、どちらにしても、そこにいるのはジュンとディエイトで。
小さく笑いながら、時には泣きながら、それでも一言も漏らすまいとして聞いていたディノだった。

「ジュニヒョンは、無駄に男前なんだよ。シュっとして見えて、ボケてる時あるし」

時々ディノは酷いことを言う。でもそれは、ディエイトに似てたかもしれない。
あちこちから、「俺らはあの人に大分助けられたけど、あの人に殺されかけたこともあるよな」って声が飛ぶ。
一度なんて、全員があの人についてったってのに、どこに向かってるかも判らず歩いてたし......。誰かがそう言えば、同じようなエピソードは数多くあげられた。

当然のようにディエイトの話題だって出た。物凄く儚げに見える時があるのに、いざとなれば鬼よりも怖かったりして......って。でも、何度もそんなディエイトに、助けられたって話も。

どんなに時間が経ったって、ディノと口も聞かなければ、目も合わせてくれない人もいる。生まれた国が違って、育った場所が違って、母国語と呼ばれる言語が違って、敵兵として戦っていたんだから、不思議なことじゃない。でもディノがジュンとディエイトを家族と思っていることも事実で......。

それはもう国とかじゃないんだと信じたい。だって同じ国の人でも、あわない人はたくさんいるから。芸能の世界にいたってだけで、ディノのことをバカにする人たちだっていた。争いごとはどんな世の中でもなくなったりはしないって、ディノだってもう判ってる。

愛だけじゃ、どうにもならないってことも。

一日中淡々と働いて、日が暮れたら自分も休む。それを繰り返して、哀しみが薄れていく。でもそれは癒えていくのとは違って、心が少しずつ壊れ始めていたのかもしれない。

だってもう一人でも、諦めない......とは、言えなくなってきたから。
ここから逃げかえって、誰でもいい、優しい兄たちの誰かに抱きしめてもらって、慰めてもらって、守られて、愛されて、なにもかも忘れてしまいたいと思う自分がいたから。

ジュニヒョンの声が耳に残ってる。
あんなに会いたいと願ったヒョンたちの一人だったのに、それでもこんなに辛いなら、会えない方が良かったとも思い始めていた。
どこかできっと、生きていてくれる。ジョシュアとバーノンを思うのと同じ、ジュンとディエイトだって今まではそうだった。

どこかできっと............。
それでもって、いつかきっと............。

あとどれぐらいの年月を堪えたら、13人でまた笑いあえるんだろう。
その時が来るまで絶対口にしないと決めてる名前を、呼びたくなってしまう。

優しくて愛しくて、兄なのに弟みたいで、でもやっぱり兄で、ケンカばっかりしてたけど、大好きだった人の名を............。

やっぱり今日も一日中淡々と働いて、汗臭い自分を誤魔化すために、夜風にあたる。
いつだって1人じゃないと信じてるけど、それでも1人が辛い時の方が多い。
でもあの日ニューヨークで、確か翌日には帰国するはずだった日。確かミンギュヒョンが言ったはず。

「同じ太陽の下だから。同じ太陽を、スングァニも今、きっと見てる」って。

今はもう太陽は沈みはじめてて、もう少しすれば月があらわれるはず。月だって同じだから、きっと、ヒョンたちも同じ月を見てる。

ほとんどの日は大丈夫なのに、時々1人では堪えられそうにない日があって、今日はどうやらそんな日だったみたいで、そんな日は次から次へと涙が零れてくる。
何をやってもうまくいかなくて、楽しくなくて、辛くて。大分昔にもそんな時期があったけど、そんな時にはいつだって、ホシヒョンが側にいてくれて、ウォヌヒョンが来てくれて、ミンギュヒョンが頭を撫でてくれて、シュアヒョンが手を握ってくれた。それからクプスヒョンとハニヒョンが、一緒に寝てくれて。

次から次へと、ヒョンたちが来てくれたのに。
12人も兄がいたのに、今は1人。

あぁ、ほんとに、今度こそ。もう耐えられないかもしれない。
自分の胸を押さえて、「ケンチャナ。イチャン。ケンチャナ」って口にして。きっと今日を乗り切れば、明日になればまた同じ日の繰り返しで、どうにかなるはずと信じて。

「チャナッ」

名を呼ばれる前から泣いてたってのに、自分の名を呼ぶその声に、驚いて振り返る間もなく後ろから抱きしめられた。

「ヒョン、お、俺じゃなかったら、どうするんだよ」って言いながら振り返れば。
「俺がお前を見間違える訳ないじゃん」って笑うハニヒョンがいた。

髪が長くて、一瞬で昔に戻ったような気になる。
しかもハニヒョンの向こう側から、全部まとめて抱きしめてきてくれたクプスヒョンまでいて。

子どもみたいに泣いてしまったけど、抱き締めてくれてるハニヒョンもクプスヒョンも泣いていた。少しだけ落ち着いてから「なんで」とやっと口にできたっていうのに、なんでかクプスヒョンに「それはこっちのセリフだろうが」って怒られた。

「なんでお前、さっさと帰って来ないんだよ。お前がなかなか帰って来ないから、俺らがこんなとこまで迎えにくるはめになったんだろうが」

怒ってるクプスヒョンにすら感動して泣けてくるから、「ごめん」なんて言葉も言えなくて、ただ頷きしか返せなかった。あぁ早く泣き止まないとって思ってるのに、抱き締めてくれてたハニヒョンが「お前どこもケガなんてしてないよな」とか言い始めるから、涙は止まりそうもない。

翌日目覚めた時に、全部夢だったらどうしよう......って思ったのに、いつかの時のように、自分の左にはクプスヒョンがいて、右にはハニヒョンがいて。
ハニヒョンの手が、しっかりと自分の手を握りしめてくれていて。

「帰るぞ」

クプスヒョンがそう言って、思わず頷いていたけれど、手続きにはそれほど時間はかからなかった。
そこに残ってる人が、少なかったからかもしれない。
ディノと同じ前線に出てた人間は、もうほとんどいなかったから。

気づけば1人じゃなくなっていた。
うっかりすると泣きそうになったけど、ディノが「ヒョン」と口にすれば、「どうした?」って言ってくれるヒョンがいて。

 

The END
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