妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Seventeen's Story 2

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

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No War! Seventeen's Story 2

洗濯ものがいっぱい入ったカゴを持って裏庭に向かったはずのウジが、駆け戻って来た時。何があったかは判らないが何かがあったことには気づいたホシだった。

だってウジは真っ青だったから。
大抵のことには驚いたりしないし、小さい割にはでっかく構えているはずのウジなのに、滅多とはかない靴を取り出して、驚くほどの速さで身支度を整えて、細々と貯めててお金を掴んで。
北で戦闘があったらしいと聞いたその日のうちに、ウジは歩き出した。

本当なら一緒に飛び出していきたかったけど、さすがにホシは我慢して、色々後始末してから追いかけることにした。
ウジが腰を落ち着けるというのなら動くのは自分の役目だし、ウジが脇目も振らずに突き進むというのなら全体を見渡すぐらいのことはする。それが自分の役目だとも思ってる。

誰も知らないけれど、ウジはあの時と一緒。目指す場所を決めたら、黙々と歩くだけ。弱音もはかないし、辛いとも、休みたいとも言わずに歩くだけ。

ウジが立ち去った後、驚く人たちや引き留める人たちに頭を下げて、世話になった礼を伝え、子どもたちとも別れを惜しみ、「元気で」って手をたくさん振って、ウジの後を追ったホシだった。

思えば数年暮らした場所なのに、「北で戦闘があった」と聞いただけで、ウジの心の全てを持っていってしまうとは、さすがウリマンネとでも言えばいいのか。

いつだってウジは、マンネなディノとはあわないって風でいたけれど、誰よりもディノを大切にしてた気がする。

だっていつだって、ディノが出すアイデアは、最終的には採用されたから。やってみたい踊り。歌ってみたい曲。使いたい小道具。どのコンセプトも粗削りで時々はダサかったけど、ウジがひと手間かけてブラッシュアップすればカッコよくて、ディノはいつだって嬉しそうに喜んでいた。

そんなディノのために、ウジが睡眠時間を削ってたなんて、ずっと一緒にいたホシぐらいしか知らないだろう。

マンネなだけでウジから愛されるなんてズルイ......。
そんなことを言えば、「俺だってたまに、真剣にそう思うことあるけど?」ってウジが言うもんだから、嬉しいやら、恥ずかしいやら。
そうホシだって、ディノが愛おしかった。
いつだって真剣な顔してホシの踊りを見てた。鏡の向こう側にいつだって真剣な視線があって、悔しそうな表情があって、楽しそうな笑い声が響いてきて。

最初に「あいつは俺たちの未来だ」って言ったのは確かウジだった。
それをいつだったか「K-POPの未来」と言い出したのはホシで。

ふざけてるように見えて、二人とも本気だった。
頑張り屋なディノが、負けず嫌いなディノが、幸せそうにいてくれるディノが、なんでかホシとウジの中ではいつのまにか曲作りの、踊りの方向性の指針にだってなっていた。

だからディノだけは幸せでいてくれないと困る。
そんな話をウジとしたことはほとんどない。セブチとして生きてきた時も、こんな世界に変わってしまった後も。
先に行ったウジに追いつけるとは思ってなかったのに追いつけたのは、ウジがその歩みを止めたからだった。
待ってた訳じゃなくて、ただ進めなかっただけ。

目指す方向は見てる。でも足は動かなかった。遠くから、そんなウジのことには気づいてた。遠目だったから小さかったけど、それでもすぐにそれがウジだってことは気づいてた。

少しずつ近づいているってのに、その姿は全然大きくならない。
もう見慣れてしまったけれど、小ささは際立っていたかもしれない。
だってあんまり食べないから。
それにもう踊らないからか、キレイについていた筋肉も落ちてしまっていたかもしれない。

どんどん近づいて。たぶんもうホシの足音だって聞こえてるはずで。
どうしたと口を開こうとしたら、ウジの方が少しだけ早く、声を発した。

「なぁ......」

やっぱりどうしたとは言わないで次の言葉を待った。
言葉が発せられるまでにかかった時間の理由は、きっと言葉にしてしまえばそれが事実だと認めてしまいそうだったから......かもしれない。

「なぁ......、今の俺見て、ウォヌは傷つかないかな?」

その言葉に、ホシは思わず泣きそうになって、堪えるのにちょっと顔を歪めたほど。
いつだって平気な顔して、一番繊細な奴で。
無愛想に見えて、誰よりも弟たちを大切にしてた奴で。
楽しそうに笑うのがよく似合うのに、優しすぎるからか、動けなくなってしまった奴で。
自分たちだって生きることに必死で、傍にいてやれなかったことが悔やまれる。
あの場所に居続けるウォヌと、自分たちは何も変わらない。
逆に自分たちは、帰ってくることが怖かっただけだから、いまだ動けないウォヌのことを、責めることなんてきっとできない。

「傷つくに決まってるじゃん。あいつが、傷つかない訳ないじゃん」

でもきっと、会えたことに喜んでもくれるはず。
会いたかったと、きっと泣いてくれるはず。
生きててくれるだけでいいと、思ってもくれるはず。

「でも、あいつは喜んで泣くよ」

そう言えば、ウジが心を決めたのか前を向く。それから笑って、「俺が言うよ。あいつに、『お前いつまでそうやってんの?』って」と言う。

あぁきっと、それからウジは「一緒にいてやれなくてごめんな」とも、言うような気がする。
それから、それから、三人で一緒に泣くはず。
会えたことを喜んで、一緒にいなかった時を振り返って、でもこれからは一緒にいようと励ましてあって、それからまた、ジュンがいないことを悲しんで。

歩くウジの後ろを、ホシがついて行く。
時折歩くウジの前を、ホシが行く。
見慣れた街並みを探しながら、思い出を見つめなおしながら、それでもウジはもう立ち止まらなかった。


The END
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