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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Seungwan & Vernon 's Story

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

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No War! Seungwan & Vernon 's Story

ニューヨークに行くための準備をしてる時、「手伝ってあげる」とスングァンが部屋に入ってきたのを、「必要ないよ」と素っ気なく断った。だってほぼほぼ準備はできていたから。

出かける日、見送るというスングァンに「まだ寝とけって」と言ったのはホシで、それでも玄関までついてきたスングァンに軽く「行ってくる」と言ったのが、直接言葉を交わした最後だった。
後悔は後からするから後悔なんだろうけど、それにしたって......。それにしたって......。ニューヨークで二度、スングァンと電話した。一度は声だけ。二度目は顔を見ながら。

「やっぱり俺も行けば良かった」

悔しそうだった。寂しそうだった。普段十三人もいたら、一人は寂しいだろう。

「お土産買って帰るよ」

そう言ったら、嬉しそうに笑ってた。
それがスングァンの最後に見た笑顔だった。
でもそんなことって......。そんなことって......。

 

 

事務所があった場所は瓦礫の山だった。宿舎のマンションは辛うじて無事だった。でもどちらにもスングァンはいなかった。ウォヌは事務所があった場所から動かなかった。

「どこかにいるなら、絶対にここで会えるから」

そう言って、ただひたすら待つ体制。
72時間の壁って言葉は知っていたけれど、その頃バーノンはまだアメリカにいて。
ただ祈ってた。教会にちゃんと通ってた訳でもないのに、ただただ「神様」って祈ってた。そうすれば自分の知り合いは家族も含めて全員無事なはずって信じられたから。

「ボノナ。お前、シュアのとこに行け」

でも気づけば、帰ってきてから半年が経とうとしていた時、ジョンハンに言われた言葉。妹だけが助かって、それはとっても嬉しかったし神様に感謝もしたけれど、スングァンは見つからなかった。

病院にいた副社長が見つかってはじめて、その時、スングァンが副社長と一緒に車の中にいたと判った。気づけば車ごと吹っ飛ばされて……と、話すのも辛そうだったのに、語ってくれた。

事故だと最初は思ったけど、閉じ込められた車の中、少ししかない視界の中でも次々と周りの建物が崩れていくのが判って、テロだと思ったと言う。

車から放り出されたのか、それとも抜け出せたのか判らないけれど、車の外にスングァンはいた。副社長からは足首しか見えなかったけど、スングァンの「ムォヤ? ムォヤ?」って声は聞いたと言う。

「スングァナッ!逃げろッ!」

「オットケ……。車のドアが、開かないよ……」

あちこちから、あらゆるものが壊れていく音や悲鳴が鳴り響いていたのに、スングァンの途方に暮れたような呟きが、何故か聞こえたと言う。

「走れ! 行け! スングァナッ! スングァナッ!」

スングァンが逃げてった記憶はないという。そこで、意識を失ったから。
逃げろと言ったことを後悔してると、副社長が謝ってくれた。
逃げる場所などどこにもなかったのに、一人であてもなく逃げ惑うのは怖かっただろうに。それならせめて一緒にいてやれば良かったのに。一緒に、逝ってやれば良かったのに。

誰のせいでもない。それはほんとに誰のせいでもない。判ってるのに、判ってるのに……。
もしも責めるべき相手がいるのなら、それはきっと、何もしてこなかった自分だ。幸せな日常が、何もしなくても、いつまでもこのまま続いていくんだと勝手に思い込んでいて、平和な世界を維持する努力なんてしたこともなかった自分だ。争いごとは嫌いだと、いつだって思ってた。でも何かしたのかと言われたら、何もしてこなかった、何も言えない自分が残るだけ。

スングァンが最後にいた場所の周りは瓦礫ばかりで、ただただ、立ち尽くしてただけ。
逃げる場所なんて、見当たらなかった。どうしていいかも判らなくて、バーノンはその場で立ち尽くしては絶望して、誰かが迎えに来てくれれば帰って、次の日また同じ場所で立ち尽くして。
この場所のどこに、スングァンがいた証を探せばいいのかも判らなかった。
毎日立ち尽くすだけのバーノンに、ジョンハンが見兼ねて言ったのが、「ボノナ。お前、シュアのとこに行け」だった。

なんであの時、スングァンのことを諦めたのかは判らない。

アメリカに渡る船の上で、二度と神様なんて信じないと思ったのは覚えてる。それ以来、祈ったことも願ったことも、感謝すらしてこなかった。
アメリカには従兄弟がいたから、最初に身を寄せたのはそこだった。でも上手くいかなくて、結局、ジョシュアのもとに行ったのは別れた日から一年後のことだった。

驚いた顔をしてた。でもそれよりも喜んでくれた。抱きしめてくれた。でも言えたのは「スングァンを見つけられなかった」だけ。
やっぱり驚いた顔をして、それから黙ってもっともっと強く、抱きしめてくれた。

それからはただ、生きていた。

ジョシュアと話す時も妹と話す時も英語で、広い空の下で疲れるまで働いて、夜は夢も見ずに眠って、まるでキラキラしてた昔が、全部全部夢だったような気持ちで。
でも、時折「ハンソラッ」って呼ぶ声が聞こえる気がして、何度振り向いただろう。「もうちょっと俺のこと、探せよなッ」って、いつかスングァンが来てくれるんじゃないかって思い続けた数年だったかもしれない。

ジョシュアの母親が亡くなってしばらくして、妹が嫁いで行った。

「もう好きにしていいからね。やりたいことを、したいことをしてね」

妹がくれた言葉に、したいことを考えた。
考えて、考えて、考えて。ジョシュアに打ち明けたのは数日経ってからだった。

「ヒョン、俺、スングァニに会いたい。どうしても会いたい。だからもう一度、探してみる。済州にも行ってみる。それでも、それでもやっぱり見つからなかったら、俺があいつのところに行くよ。だって一人は寂しすぎるから」

ジョシュアはバカなことを言い出したバーノンのことを叱ったりしなかった。否定もしなかった。ただ泣いてくれて、抱きしめてくれて、「一緒に帰ろう。俺たちの家族のもとに、帰ろう」と言ってくれただけ。

準備に半月はかかったかもしれない。もう戻ってくるつもりもなかったから。
ジョシュアは色んなものをバーノンの妹に残してくれた。

それから旅をした。船に乗った。神様にはやっぱり何も願わなかった。

 

The END
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