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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Wonwoo & Mingyu 's Story

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

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No War! Wonwoo & Mingyu 's Story

人生に良いことと悪いことは半分ずつあるという。
じゃあ今は、幸せすぎた報いなんだろうか……。

ウォヌは会社の跡地から離れない。

最初の半年は、ただただ座り込んでいた。
その後、手で動かせる瓦礫を少しずつ片付けていった。でも瓦礫をどこにやったらいいかなんて判らないから、結局は同じ敷地内で移動してるだけ。そしてその後は諦めた。

いつだって何でもできるミンギュが、気づけばウォヌのためにテントを張ってくれた。一年も経つ頃には小屋まで建ててくれた。

「ボノニが、ジスヒョンのところに行くよ」

ミンギュが確かそう教えてくれたはずなのに、バーノンの不在をちゃんと認識できたのも、一年ぐらい経ってからだった。

ゲームの世界の中では、どんなことだってありえたのに、夢幻の世界では、颯爽と駆けていたのに。
ウォヌは自分でもおかしくて笑いそうになるぐらい、そこから動けなかった。
でもそんなウォヌに、ミンギュはどこまでも優しかった。

「ヒョンがここにいてくれるから、誰かとすれ違う怖さを考えなくてすむもん。俺があちこち行けるのも、ヒョンがここにいてくれるからだよ」

そうミンギュが言ってくれるから……。

 

 

訪ねてくる人たちは、何年経ってもいた。
誰かを探してる人。懐かしさに訪れる人。なかにはミンギュが旅の途中で親切にした人たちもやって来た。お礼の言葉を届けにだったり、時には借りを返しにだったり。

明かりの無くなった世界だったから、火の番がウォヌの唯一の仕事だった。

もう、誰を待ってここにいるのか、それすらも判らなくなっていた。
時にはこの場所を寄こせと言ってくる輩もいた。でも結局は、ウォヌはここに居続けている。

「一人なら、好きなだけここにいなよ。どこかに待ってる人がいるなら、ここで休んでいきなよ」

どんな相手にも、ミンギュがそう言って火のそばをすすめてしまうから。
気づけば見知らぬ人がウォヌに伝言を残して行くようになった。

懐かしい顔も訪ねてくる。
ウジと一緒に釜山に行ってしまったホシは、ウォヌの様子を見るためだけに、来てくれた。

「生きてるか〜〜」

そう言って現れた一度目の時は、ウォヌの隣りに座り込んで、長かった二人の釜山までの話をしてくれた。
ホシも、ウジも、家があった場所には何もなかった話を。
しばらくホシはウォヌの隣りで泣いてたけれど、帰る頃には笑ってた。 

「生きてるな〜〜」

そう言って現れたのが二度目。
その時もホシはウォヌの隣りに座り込んで、痩せてしまって一層小柄になってしまったけれど、小さい子ども相手にも決して甘くないウジの日常を話してくれた。
確かあれは、ディノが徴兵されてった後のこと。
すぐ横にいたホシに手を差し出せば、しっかり握り返してくれた。
もう何年も経ったはずなのに、もうさすがに前を向いてここからも歩き出さなきゃ行けないはずなのに……。

「なんで俺ら、こんなバラバラなの?」

口からこぼれ出たのは、今さらな言葉。でもウォヌの中でいつまでも凝り固まっていた言葉。

95ラインの三人は、いつだって優しかった。三人で楽しそうだった。誰かが何かをやりたいと言えば、いつだって反対なんてしないで、お前たちがやりたいことをやればいいんだよと、背中を押してくれる兄たちだった。

96ラインの四人は、てんでバラバラに見えて、驚くほどに団結力があった。いつだって熱いホシがいて、テンション高いジュンがいて、バカみたいに才能の塊なウジがいて、いつだって四人で笑ってた。

97ラインの三人は、いつだって絡みあってもみくちゃになりながら笑ってる感じの三人で、じゃれあいながらケンカしながら、仲直りしながら、励ましあいながら。一番子どもな三人だった。

98ラインの二人は、二人でいることが自然だった二人。ちょっとのんびりさんなバーノンに、いつだって楽しそうなスングァンが、一緒になってよく笑ってた。

でも今はもう、どのラインもバラバラで……。
ディノまでいなくなってしまった。

「ヒョン、俺行くね。ちゃんと帰ってくるからね」

そう挨拶に来たのが最後で、ディノらしい笑顔だったことしか覚えてない。
兄弟で生き残った家には必ず徴兵の連絡が来るって噂があって、今度は北に送られるって話があって、そこではまだ戦いがあるかもしれないとも言われていたのに、弟も生き残ったディノは当然のように志願して、行ってしまった。

大切な大切な、ウリマンネなのに。ディノだけは絶対幸せでいなきゃいけない弟なのに。

そう言ってホシの前で泣けば、「俺たちを見て育ったんだから、ディノは大丈夫だろ。小狡いハニヒョンをマネて、ちゃんとやってるよ」と笑ってくれた。
でも、ユンジョンハンがなんだかんだと言いつつも、気づけば色んなことを譲ってくれてたのを知ってる。誰よりも、優しかったことも。そしてディノが誰に似たのか、優しく真面目に育ったことも知っているから……。

「ウジがさ。キュウリばっか育ててんの。嫌いな子どもたちも多いのに。いつかドギョムや、ディノや、スングァンに食べさせてやるって」

今度来るときは、ウォヌにもキュウリを持ってくると言ったホシは、あれからまだ来ない。

誰もウォヌに、もうそろそろいいだろなんて言わない。
時々ミンギュが旅に出て、土産話を持って帰ってきてはウォヌのそばにいながらも、相変わらず器用にあれこれしてる。
誰かが見つかったとか、まだ見つからないとか。そんな話題は一切出ない。
ただ一度だけミンギュが、「落ち着いたらさ、俺らもどっかで畑でも作って暮らそうか」って言ったことがあったけど、それがいつのことになるかは、ウォヌ自身も判らない。

そこから動けないのは、ウォヌの弱さだろう。
でもそこに居続けたのは、ウォヌの強さでもあるだろう。

 

 

その日は、陽炎が見えるんじゃないかってぐらい暑い日だった。
まっすぐ前を向いて座ってたはずなのに、声をかけられるまで、その存在に気づかなかった。そして声をかけられてはじめて、目の前に並んだ二人分の足が目に入った。

「よぉ、兄弟」

驚くほど整った顔はそのままに、苦労した月日の分だけ精悍さが増した男前なジュンが、よく見知った楽しそうな笑い方をしてそこにいた。見れば松葉杖代わりなのか、右脚を庇いながら、木の棒を支えに立っていた。

「アンニョン」

ジュンの横には当然のようにディエイトがいて、これまた記憶の中にある、ふわりとした笑い方をしたディエイトが手を振っていた。

待って、待って、待っていて。もう何を待ってるかも判らなくなるぐらい待ち続けて。
幻を見た。
もう一度、ひと目でいいから会いたいと願い続けていたから、とうとう幻を見た。

「え? まさかのふる無視?」

目の前でジュンが勝手に喋ってるけど、騙されちゃいけない。きっと待ちすぎておかしくなってしまったんだ。

「ウォヌヒョン、ただいま」

でもディエイトがそう言って、ウォヌを抱きしめてくれたから。
幻が、抱きしめてまでくれるとは思えなかった。
「おかえり」と、ちゃんと言えたかは判らない。涙も鼻水も、止まらなくなったから。

「ブサイクすぎ」

そう言ってジュンが笑っていたけれど、涙は止まりそうもない。
ミンギュもやって来て、驚きと喜びと、泣き笑いの繰り返し。
でもスングァンが見つからなかったことと、バーノンがアメリカに渡って行ったことは、ウォヌの口からは言えなかった。
哀しい涙じゃないはずなのに、嬉しくて泣いてるはずなのに。それでも涙は止められなくて、「ヒョン、目玉がトロけちゃうよ」っていうディエイトの変な言い方にもまた泣いて。
結局、ミンギュが語るこれまでの話を、ただただ泣きながら聞いてるだけのウォヌだった。

「大丈夫! きっとスングァニもどこかで生きてるよ。俺たちだってこうして今ここにいるんだから」

いつだって前向きな発言をしてくれてたジュンが当時のまま、そこにいた。
やっぱりウォヌは涙が止まらなくて、寝てしまえば二人が消えてしまいそうで、「ジュナ」と何度も呼びかけた。
そのたびにジュンが「ただいま」って言ってくれるから、ウォヌの涙はやっぱり止まりそうにない。

会えてはじめて、ほんとに会いたかったんだと、切望してたんだと気づいたかもしれない。必要なんだと、いないと困るんだと。
失ってしまった家族と、取り戻せる家族と。

「今度ホシが来たらさ、帰って来てって、言おうかな」

泣きながら言えば、「待ってる必要なんてないよ」とジュンが言う。
あぁそうだ。待つ必要なんてない。会いたい人には会いに行けばいい。一緒にいられれば、場所なんてどこでもいい。二度と会えないと勝手に思ってるジョシュアやバーノンにだって、会いに行けばいい。

抱きしめて欲しければ、エスクプスやジョンハンを訪ねればいい。

いつだって、いつまでだって、彼らは兄で弟で、家族なんだから……。

 

The END
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