妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Jun & THE8 's Story

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

sevmin.hateblo.jp

No War! Jun & THE8 's Story

ジュンとディエイトは、軍で働いていた。
戦争が起こった後、世界中の全国民に帰還命令が出た。
帰らないっていう選択肢はなかった。「行くのか?」と聞いてきたエスクプスに、当然のように頷いた。

「家族がいるから。どんな状態だったとしても、俺たちの国だから」

アメリカに残るジョシュアとも、その場が最後だった。
ジョシュアが別れの言葉を口にしなかったから、当然のようにジュンとディエイトも別れの言葉なんて口にしなかった。

久しぶりに踏んだ自国は、変わり果てていた。
家族はどこにもいなかった。二人とも。一緒に居続けることを選ぶなら、志願するのが一番だった。その中でも誰も志願したがらない場所を選べば、確実にジュンとディエイトは一緒にいられた。

悪目立ちはしないでおこうと二人で誓いあいはしたけれど、何でも器用にこなすジュンがその見た目とあいまって、目立たないはずがない。ディエイトはいつだって溜息をついて呆れて見せたけれど、ジュンにしてみれば、ディエイトだって一緒だろう。

見た目の繊細さとはうらはらに、ディエイトのその豪胆な性格は最終的には一人勝ちする。だから目立たないはずがない。

医者もいないような戦場で、いつだって最終的に負傷兵を励まして怒鳴りちらして治療して、どんな場所からも仲間たちを連れかえってくるその姿は誰にとっても救いの存在だったし、どんな戦場だってその整った顔そのままに、平気な顔で駆けていくジュンの姿は誰にとっても畏怖する存在だった。

そんなジュンの横には常にディエイトがいて、ディエイトの横にはジュンがいるんだから、目立たないはずがない。

国土の広い自国の、数ある隣国との境に、二人は何度行っただろう。
最終的には北の国の地が、二人の最後の場所だった。
今更、国を広げてどうするのか。そんな疑問を誰もが持っていたけれど、それでも命令には背けない。

漆黒の闇の中、斥候として動いている人間がいるとジュンのところに報告があがってきたのはたまたまなら、一人で確認に出たのもたまたまで。
運命って言葉も、奇跡って言葉もキライだ。そんなものに、自分たちの未来を預けたくはないから。
でもはじめて、運命を、奇跡を信じたかもしれない夜だった。

漆黒の闇の中、一瞬の月明かりに懐かしい影を見たから。数秒もなかったのに、そこで踊る姿がディノだと一瞬で判ったから。
自国を守るために働いてはいるけれど、守るべきは家族で。ジュンにとってはディノは今も当然のように家族で、弟で。

皆がよく「ウリマンネ」と言って喜んでいた気持ちが、当時だって判ってたつもりだったけど、今こそその気持ちを実感したことはなかったかもしれない。
自慢のマンネだった。優しい、頑張り屋のマンネだった。はじめて会った時、ホシの後ろに隠れながら「ヒョン、俺、中国語って全然話せないけど、どうしたらいいの?」って言ってたのを覚えてる。それなのにすぐに中国語の挨拶を覚えてくれた。

斥候がいるのなら、数キロ以内には部隊がいるだろう。数十キロ以内にはきっと防衛線がある。
ジュンが戻ってしたことは、ディノが戻るべき防衛線の正しい場所の確認と、ディエイトを見つけることだった。

「エイサ」

小さく呟けば、ディエイトがいつも通りの態度を崩さずに、場所を移動した。今や誰も呼ばないその名を口にしたことで、何かがあるってことに気づいたからだろう。

「チャニがいた」

伝えたのは一言だけ。ディエイトは頷いて返しただけ。

世界が戦争で失ったものの大きさを知ったはずなのに、なんでまだ戦おうとしてるのか、意味が判らない。
敵としてそこにディノがいるのに、なんで人を殺すことのできる武器がこの手にあるのか、意味が判らない。
威嚇射撃で斥候を追い払うことは簡単だろう。だけどそれなら、まだディノはこの地に居続ける。戦いは終わらない。

「殲滅する」

ジュンが呟けば、ディエイトがちょっとだけ泣きそうな顔をしたけれど、それでも頷いた。

自国の仲間たちよりも、敵国の兵士たちよりも、ディノを取っただけ。守るべきは、弟だけだったから。ディノが逃げ戻っても、罰せられるようなことがないように。そして二度とこの地にディノが戻って来ることがないように。

「ごめん」
「一緒にいることを選んだのは俺だから」

ディエイトが長く話したのはそれが最後で、二人が一緒にいたのもそれが最後で。

その日。漆黒の闇の中、敵国の斥候が殺され、その後ろに待機していた部隊が殲滅された。戦闘は激しく、自軍にも死傷者が多数出て、北の地に消えたものは多かった。

バカみたいな領土争いで人が多く亡くなり過ぎたからか、北の国は不可侵と決まった戦いでもあって、その地への立ち入りは禁止された。

後に建てられた石碑には、殉死者として、文俊辉と徐明浩の名も刻まれた。

 

The END
1953moji