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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

社内恋愛がはじまる世界線9 恋愛未満からの離婚直前編

注意......

続きものだけど、別に前を読まなくても読めるかも。
そしてはじめに諸々書くのが面倒になってきたので、contentsを作った。

sevmin.hateblo.jp

 

社内恋愛がはじまる世界線9 恋愛未満からの離婚直前編

雨が降っていた。
台風が来てるらしいから、だからだろう。
風も強くて、地下で暮らす人たちには早めに避難の情報も出てた。
家にはリモート用のパソコンもあって、出勤しなくたって仕事はできるってのに、ウジは当然のように出て行った。しかも会社までかかる平均的な時間の倍以上の時間の余裕を持って。
遠回りすることになるかもしれないし、最悪は歩くことだって想定したのかもしれない。
元から仕事命みたいなところはあった。
働くのが好きだというし、実際に働いてるウジは嫌いじゃない。
でもこんな雨が強い日に、傘なんてさしても意味のないような日に、ウジなんて突風で飛ばされるかもしれないような日に、仕事に行くのなんて止めろよと言ったら、「あ? 何様のつもりだよ」と強めにキレられた。
だから「だ、旦那様のつもりだよッ」と言い返したけれど、思いっきり舌打ちされただけのホシだった。それにウジはやっぱり仕事に向かったし。
誰よりも真面目な訳でもない。ウジは普通だろと簡単に言う。
でもウジの普通は、他の人が簡単には届かないような場所にある普通だった。
俺の出来ることなんてちっぽけなもんだしとウジは言うけれど、ウジのそのちっぽけな仕事量で、色んなプロジェクトが支えられているのを知っている。
ホシこそ普通ぐらいしか仕事はできないし、勢いはあるかもしれないけれど落ち着きがないだけとも言える。でもウジは、「働きアリとか働き蜂がいないと、回らない世の中があるのと一緒だろ」と言う。
褒められてるのか貶されてるのかはよく判らないけど、「お前だって必要だってことだよ」とウジが言うから......。
騙されてる訳じゃないけど、自分は簡単だって自覚だってある。普段ならそれで何も問題ない。
だけど窓の外は暴風雨で、誰かが打ち捨てたのか飛ばされたのか、ビニール傘とかがあちこちに当たりながら地面の上を流されていく。たぶんもう少ししたらそれは本当に空中を飛んでいくのかもしれない。凶器になって。
ウジは小さいけれど、強い。心も身体も。それに判断力があって、無謀に見えて冷静で。
でも案外無茶をすることがある。いつだって自分以外の誰かのために。
「今どこ? 着いたら連絡して」
だからとりあえずそうカトクをしたら、「まだマンションの下。もう少しで出れそう」って、全然進めてない状態で返信が来た。
だからホシは慌ててスマホだけ手に家を出た。
引き止めるためか、それとも一緒に行くためか。自分でもどうしたいのかなんて考える間もなく......。
「ジフナッ」
エレベーターからウジの名前を呼びながら飛び降りたのに、マンションのエントランスには人影がなかった。
これがドラマとかなら絶妙なタイミングで2人は出会えるはずなのに。
マンションの外には、誰が出したのか土嚢が準備してあった。さすがにここで水が貯まるなら、あちこちがダメになるはず。
でもだからって大丈夫とは言えそうにないほどの風と雨だった。
慌てて部屋へと戻る。待つにしたって後を追うにしたって、この後どうするかにしたって、ホシには情報が足りなが過ぎたから。
「どっかで足止めくらうようなら連絡して」
「会社に着いたら連絡して」
「無事かどうか、今の現状を連絡して」
「写メも希望」
「テレビ電話でもいいけど」
「生きてるよな?」
「愛してる」
ホシのカトクばかりが増えていく。既読にもならないところを見ると、スマホなんて見てる余裕はないんだろう。
テレビの中では、動けなくなった人が道路脇のポールに捕まってる映像が映ってた。
「いやそれどこだよ」とテレビにツッコみながらも、ホシはどこかにあったはずのリュックを探す。
そうしたらホシのスマホが鳴った。
見れば「お前ウザすぎ」ってカトクが来てて、「今カド曲がったところ」って言葉と写メも来てて、ホシはひっくり返りそうになった。
それが、まだマンションを出て最初のカドを曲がったところだったから......。
しかもいつもなら曲がらないカドだから、つまりそれは強風とかから避難するために一時的に曲がったってことだろう。
ウジはしっかりしてるけど小さい。だから飛ばされるかもしれない。飛ばされなくても何かは飛んでくるかもしれない。
結局ホシはリュックを探すことすら諦めて、スマホだけ片手にもう一度家を飛び出た。
「そこまで行くから、待ってろッ」
って、誰も聞いてないのにそう叫びながら。
マンションから勢いよく飛び出したかったのに、強風過ぎてマンションのドアさえスムーズには開かなかった。まだ道はかろうじて道としてあったけど、あちこちの排水溝は水がギリギリな状態だった。
傘なんてもう持ってたってどうしようもない風と雨の中、人影なんて全然なかった。必死になって走る。幸いだったのは向かい風じゃなかったことぐらいだろう。
2分も走ってないのにもうビシャビシャで、それでもウジがいるはずのマンションのカドを曲がったら、マンションの消火栓とかがある一角に隠れてしゃがみ込んでるウジがいた......。
「俺一瞬飛んだ気がする」
ホシを見上げて言ったウジの言葉がそれだった。
雨の音だって凄いけど、風の音だって凄いから、それは嘘じゃないのかもしれない。
でもウジはビビってるって訳でもなくて、そこには一時的に避難してるだけだった。
隙を見て進んでいくという。
「なんの隙だよ」
思わず笑ってしまいそうになった。
ウジのそれは、もしかしなくても台風の時に畑を見に行くお年寄りみたいな、後から考えたら無謀以外のなにものでもないものだった。でも当事者だけは気づかない。そういうものなんだろう。
「でもほら」
ウジがそう言って見せてくれたのは、ネットの雨雲レーダーだった。
ほぼ全面濃い青に染まってるっていうのに、「あと少しで一瞬途切れそう」とか言う。
いやそれって、台風の目とかに入るあれじゃないのか......という気がしないでもない。
そしてそんな雨雲が秒速いくらで動いてるのかは知らないが、途切れるのは一瞬だろうし、そもそもそれは雨雲レーダーであって、風も一緒に収まってくれるとは言い難い。
「ジフナ、帰ろう」
ホシは結構真剣な顔をして言った。
ウジはそんなホシをちゃんと見たけれど、頷くことはなかった。
仕事と俺とどっちが大事なんだよと言いたいけれど、前にそれであっさりと「仕事」と言われたことを思い出す。
「ジフナ。俺の言うこと聞けって」
結構強めに言ったのに、拭き続けてる突風に声がかき消される。ホシはとりあえずとばかりにウジの横にしゃがみ込む。
それから「ちょっと待ってな」って言ってから、ホシはスマホを操作する。自分の言うことを聞いてくれないのは哀しいが、絶対にウジを動かせる人間を知っている。きっとジョンハンならば止めてくれるし、ウジだって止まるだろう。
「どうした?」
電話は繋がったのに声は遠かった。だから「ちょっと待ってヒョン」とテレビ電話に切り替える。
「卑怯だぞ」とウジがぼそりと言ったけど。
「卑怯とかないだろ。俺の言うことを聞けばいいだけじゃん。こんなの、普通なら離婚案件だかんな」とホシだってボソリと言い返した。
きっと風が吹き消しただろうけど。
マンションの外壁を背に、明らかにビシャビシャの状態で濡れそぼってる2人の姿を目にして、「外ッ? 嘘だろッ?」とジョンハンは驚いていたから、きっと止めてくれるだろう。
仕事なら家でだってできるだろうとジョンハンは言った。でもウジが「停電があったんだよ」と言った瞬間、「ぅお?」って変な声を出していた。
会社のパソコンの電源が入っていなければ、確かにやりたくてもリモートできないかもしれない。ホシにはよく判らないが、会社のサーバーに繋がってるのは会社にあるパソコンで、リモートする時にはそのパソコンにアクセスしてるらしいから。
「ほんとだ。俺もダメだわ」
仕事が1日できなくたって、死にはしない。それにそれでクビになるような仕事ならこっちから願い下げだし、万が一にもクビになったら俺が養ってやる......とホシは言いたかったっけれど、同じことを言ってくれると思ってたジョンハンはちょっと違った。
「会社のパソコンの電源はこっちでどうにかするから、一旦家まで戻れるか?」
全然普通に働くのには賛成らしかった。
こんな天気の日はベットの中でゴロゴロとしまくったって、誰にも文句なんて言われないはずなのに。
「でもヒョン、電源どうやって?」
それにしても、ウジは本当にジョンハンの言うことだけはちゃんと聞く。今だって真剣な目をして電話の向こう側の人を見ているし、その電話が終われば、ホシがあれほど言っても聞かなかったのに「家に帰ろう」とか言い出すし。
でもまだまだ強風すぎて、戻るのにはそれから15分以上もかかったけれど......。
2人してしっかり手を繋いで走った......というよりは、もうガッツリ腕を絡ませていたかもしれない。でもそれぐらいしないと、飛ばされる勢いの時もあったから。
帰り着いた時には2人ともビショビショで、とりあえず順番にシャワーした。それから着替えた。テレビを着けたら一瞬の晴れ間が映ってたけど、それとほぼ同時にどこかの道や階段が川になってるような映像も映ってて、まだまだ危険だと言っていた。
「あー参った」
ウジは着替え終わった後に自分のカバンを覗いていたけれど、中身も結構濡れていたんだろう。参ったと頭を抱えていたけれど、そう言いたいのはホシの方だった。
「俺、風邪ひきそう」
だからそう言ったのに、無視られた。
「なぁ聞いてる? 俺、風邪ひくかも」
もう一度言い直したら目はあったのに、「大丈夫か」の一言もなく、ただ頷かれただけだった。
その間にもウジは自分のカバンから中身を出すのに忙しそうだった。
もちろんわざと無視してる時もあるかもしれないけれど、今はウジなりに必死なんだろう。いつもと違うから。それは判ってる。全然判ってる。でも......と、ちょっとだけ思う。
それでもホシは「もぉなんだよ」って言いそうになったのをグッと堪えて、冷蔵庫を開けた。
怒ってても不機嫌でも何も考えてなくても、何かを取り出す時には基本2人分。気づけば癖のようになっていて、そのことに気づいた時には1人照れたほど。
今だってホシは、ペットボトルを2本手にしてた。もちろん1本を回しのみしたって全然いいし、分けたっていい。
まだまだバタバタしてるのに、ホシが差し出せばウジはそれを当たり前のように手に取る。まぁ自分の近くに置くだけだけど。
「なんか俺ら、長くやってきた夫婦みたい」
なんだよもぉって思ってたはずなのに、ホシは自分で言ってエヘヘと笑う。
「でも離婚案件なんだろ」
さっきまでは返事もしなかったのに、ウジがボソリと言った。聞こえてなかったはずのホシの言葉はしっかりとウジに聞こえていたらしい。あんなに風も強かったのに......。
「そ、そうだよ。もう少しで実家に帰らせていただきますって言うところだったよ」
ちょっとだけ強気で言ってみた。
でもウジは笑って、「お前どこに帰んの? お前のオンマもヌナも、何かあったら遠慮なくうちを実家だと思って帰って来いって俺に言ってくれたのに」と言ってきた。
確かに、ホシの家族の中ではウジの人気は高い。どちらかというとホシよりも可愛がられている。
ウジと揉めたとか言って実家に帰ったら、その日のうちに追い出されそうな予感もする。
ちょっとだけ必死にうぬぬぬぬってなりながらも考えてたら、「そんなことより、みんな無事か聞いてみろよ」とウジが言う。
だからホシは当然のように「おぉ」って言って、それから自分の両親にも姉家族にも、それからウジの両親にも無事かどうかを確認するカトクを打ちはじめた。
当然のように全員からは返事があり、無事も確認できた。気を付けて。何かあったらすぐに連絡してと皆と言い合いながら、「全員大丈夫だって」とウジに報告したら、「良かった。ほら、嵐の時って、畑とかを見に行く年寄りとかいるから」と、どの口が言うんだ......みたいなことを言っていたけど。
でもまぁウジの言いたいことも判る。だから追加とばかりに、皆に「畑とか見に行かないでね」とカトクしたら、まぁ当然だろうけどほぼ全員から、どこの畑だよ的なツッコミが返ってきた。
でも無事ならいい。
テレビではやっぱりあちこちで水が溢れてたり、何かが流されてたり、吹き飛ばされる屋根とかが写ってた。
「あ、今の、俺の母校」
大抵はこっちが大荒れだったら、釜山の方なんて晴れてたりするのに、今回はあっちもこっちも大変な状況なんだろう。
「ミンギュとウォヌは問題ないと思うけど」
ウジの言葉に被せるように、「連絡してみる」と早速カトクを打ちながら、一瞬だけテレビに映ったウジの母校のことも調べ始める。
ミンギュからはすぐに「こっちは無事だから邪魔しないで」と返信が来た......。なんの邪魔をしないでなのかは微妙ながらも、「あっちは無事みたい」とウジには伝えておいた。
それから「ウジの学校、窓ガラスとか全滅みたい」と調べた内容を伝えたら、「まぁ元からボロかったからな」と笑ってた。でも、「怪我人とかがないならいいんだけどな」とも言ってたからやっぱり気にはなるのかもしれない。
「ウォヌも同じ学校?」と聞けば、「いや、アイツは違う」と教えてくれた。
「ハニヒョンは?」と聞けば、「あの人もとはこっちだろ」とも。
じゃぁウジだけなのか......って思いながらも、募金サイトを通じて寄付をしておいた。イジフン名義で。
それは当然で当たり前のことで、自慢することでもなくて。でもやっぱり自分的に嬉しくて。
ホシは一人でニコニコとしてたら、ウジが「あ、そうだ。釜山支社に俺のID残ってるわ絶対」とか言い出した。そっちのパソコンに繋げばリモートができるらしい。
「悪いけどって、ウォヌに会社のパソコン電源入れてって言って」
「...............お、おぉ」
ミンギュに邪魔しないでって言われたことを、黙ってるんじゃなかった......と思っても、時すでに遅し。ホシがかなり微妙な返事をしたというのに、ウジはこれで仕事ができるとばかりにさらにバタバタしはじめていて、全然気づいていなかった。
きっとミンギュは怒るかもしれない。だけど何もしないと、なにやってんだよとウジはもっと怒るかもしれない。
だからホシはさっさとミンギュにミアネ〜ってカトクを送ってから、用件を続けた。
既読にはなったけどしばらく返事はなかったけど、少ししてから『無理ッ💢』って返信が来てた。きっと何かの邪魔をしてしまったんだろう......。
そしてそれをホシはウジに、「なんかあっちもバタバタしてて、今はちょっと無理みたい」と大分ほわっとして伝えてみた。
「ほら、雨風、あっちも相当だってテレビでもやってるし」ってホシが言ってるのに、ウジの中ではじゃぁしょうがないな......とはならなかったようで......。
『ウォヌや』
『無事か?』
『会社までひとっ走りできそうか?』
『お前が無理ならミンギュでもいいけど』
『俺のIDとか変わってないから、それでログインさせて』
と、怒涛のようにウォヌに向かってカトクを打ちまくってるウジがいた。
そして「なに? あいつらの家は今、暴風雨でも通過中なの? 既読にもならねぇじゃん」とプンスカしてるウジがいた。
消音モードとかにしてるならいいけど、そういうのもしてなければ、邪魔されたくないことをしてる途中に思いっきり邪魔されて、ミンギュはプンスカどころじゃないだろうな......とか思いながら、釜山の方に向かって頭をさげたホシだった。
ウジはカトクが既読にならないとプンスカしながら、続けざまにミンギュにも似たようなカトクを連投してた。まぁとりあえず最初には『無事か?』と打ってたから、かろうじて......って気はする。
だけどさすがにウジだって、カトクが既読になっても返事がないとかなら、何かがあるぐらいは気づくだろう。普段なら放置で終わりな案件も、今回だけはそうとはいかないからと、今度は電話を鳴らしはじめた。まぁでも当然出ないけど。
「あ?」
そしてどうやら、着拒されたらしい......。
当然のようにウジはホシのスマホに手を伸ばしたけれど、「俺も着拒されるじゃん」と避けてみた。「まだされてないだろ」とは言われたけれど、ほんとにまだ......なだけで、時間の問題そうだった。
「いや、とりあえず俺が連絡するから。もう少し落ち着いた感じで」
ホシがそんなことを言うなんて珍しい。大抵は誰かも少し落ち着け......って言われる方なのに。
そしていつだって勢いだけで生きてるようなホシに色々やられてるのはウジの方だったけど、さすがに天変地異の前触れみたいな天気の日は、それも逆転するのかもしれない。
「まぁいいけど。俺は働ければ」
そう言って、ウジが珍しくホシに譲ったほどだから。
とりあえずホシはミンギュに『ミアネ。でも俺にはウジを止められない』とだけカトクをしておいた。
それからホシは一応、「ワンチャン俺と、今からゆっくりするって考えは」って聞こうとしたら、ウジから「は?」って冷たい返事とも言えないような声が返された。
「でも家で仕事って言ったって、うちだっていつ停電するか判んないのに」
ホシのほぼ独り言のようなその言葉に、「......そうだな」って言いつつウジがいなくなった。どうやら家にある充電器の全てを充電しておくことにしたようだった。
普段、よく充電器を忘れて買ってしまうことの多いホシのことを残念な子を見る目で見ているけれど、こんな時は役立つとでも思ったのか、充電器を見つけるたびに「ナイスッ」とか言ってるウジがいた。
いや、ウジの気分を逸らせることができただけ、ホシだって自分にアジュナイスッとか思ってたけど。
それから大分経ってから、ミンギュからカトクに返信が来た。
『こっちも停電(嘘だけど)』って......。
嘘はいつかバレる。というか、ホシの嘘はウジにはバレる。
それが判ってるし、変なところ真面目で『俺はウジに嘘なんてつかない』とか真剣に思ってるホシは、ミンギュのカトクを全部読み上げた。当然、カッコ嘘だけどカッコ閉じまで。
「は? なんだよそれ」
でも嘘をつかなくて良かったと思ったのは、ウジが呆れたように言った後にクツクツと笑いはじめたから。何かにハマったのか。
「いやだから、あっちもバタついてるんだって。ほら、日頃充電器とか忘れたりなくさない感じのミンギュだから、絶対予備とかないんだって」
ホシがそう言えば、ウジもなるほどなって顔をしてた。
なにせウジは集めた充電器のバッテリー総合計を計算して、スマホとノートパソコンが最低どれだけ持つかの予測までしてたから。
少しだけ可哀想にとウジから同情されていたミンギュが後から『いや、うちは大丈夫。いざって時のためにポータブル電源持ってるから。バーベキューとかでも使えるし』とか言ってウジを悔しがらせていたけれど。
結局ウジは、ホシのスマホを使ってカトクを打ちまくっていた。多分もうすぐホシのスマホだって着拒されるだろうし、ミンギュは相当怒ってそうだった。だって何かを邪魔しちゃったんだから。
でもそこまで行く前に、ミンギュはジョンハンに泣きついたようだった。
『シュアを動かしたから』
喜んでいいはずなのに、ウジはそのカトクを見た時に「うへぇ」って言った。
ジョシュアを動かしたって後に、『大陸の奇跡も動かした』とも続いていたからかもしれない。
ホシには意味不明なそれも、ウジには理解できたんだろう。
「15分考える」
何故かそう宣言すると、ウジはベットに潜り込んだ。考えるじゃなくて、寝るの間違いじゃないかって感じ。
15分なのは、それぐらいしたら仕事ができると予測した時間なのかもしれない。
「シュアヒョン、会社に行くってことなのかな? この、あちこちで道が川みたいになってるなか?」
ホシの言葉に返事はなかった。見ればウジは考えると言ったのにやっぱり寝てて、瞬殺って感じ。
だからホシはウジの寝顔を見ながら、ニコニコして過ごした。多分15分後に起こしてやらないといけないから。本当なら横に一緒に潜り込んで寝てしまいたいけれど、そんなことをしたら口を聞いてくれなくなるかもしれないから。
お互い濡れたから、風邪をひくかもしれない。
こんな日は出前だって来てくれないだろうから、何か自分たちで作らなきゃいけなくて、きっとウジは仕事だろうから、作るのは自分で。ウジが起きたら何を作るか考えよう。そんなことも思ってた。
でも気づけば、ウジが寝てたはずの場所でホシは寝てて、起こし忘れたウジは自分でちゃんと起きたのか、そしてパソコンは無事にリモートができるようになっていて、働いていた。
ホシはそんなウジのことを、ちょっとウトウトしながら見てた。
働くウジの姿を見るのも楽しいから。
どれぐらい時間が経ったのかは判らないけど、ミンギュとウォヌのところもようやく落ち着いたのか、ミンギュからウジに電話が来たようだった。まぁ着拒したこととかを、謝るためかもしれない。
「そっちも大変だったんだろ?」
って感じでウジはちゃんと、気遣いの言葉を口にしてたけど、何がどうなってそうなったのか。電話が終わる頃には何故か怒ってた。
まぁ、ミンギュは浮かれていたんだろう。ウォヌと楽しい時間が過ごせたみたいだから。
「いや、こっちは離婚案件だって言われて、珍しくホシがキレてるから、どうにかなるかは判らない」
と、横で聞いてたホシが驚きすぎて固まるようなことを言って、電話を終わらせたウジがいた。
「ケッ」
しかも切った後に「ケッ」とも言った。
「うちもポータブル電源買う」
ミンギュはそれを持っているらしい。自慢げに言われたのか知らないが、すぐにネットで調べはじめた。結構高かったけれど、色々動揺してるホシが反対するはずもなく、ウジはいつ使うかも判らないポータブル電源をゲットしていた。
そしてホシのカトクには、ミンギュやウォヌから「ごめん」とか「大丈夫か?」とか「どんな状況?」とか。返信する間もないほど連投されてた。しかもミンギュからジョンハンにも伝わったのか、電話だって鳴り始める。
当然ホシの指はスマホ画面にタッチしようとしたのに、そこはウジに邪魔された。
「よし。仲直りするぞ。離婚直前旦那」
そう言われて思わず指は止まる。電話は鳴り続けてるけど、大分期待を込めた目で見上げれば、ウジが小声で「ベットで」って言ったから、ホシは当然のようにスマホから音を消し、電源まで落としておいた。
だって、邪魔されてはたまらないから......。
あちこちの被害を報じてたテレビも切った。後であちこちに募金しようとか思いながら......。

The END
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