ご注意ください
ナナツアーネタです。
読んだってネタバレではないと思うけれど、嫌だなって言う方は、ナナツアー見てからお読みください。
いやでも、見なくたって全然いいと思うけど......。
いつかの約束1
最初の誘拐騒動の後、バスに乗るまでの僅かな時間の間に、「ケンチャナ?」って、メンバーからもマネヒョンからも身内のスタッフたちからも、ディエイトは山程言われた。
まだ頭ははっきりしてないし、カメラはもう回ってるし、だからディエイトは「うん」と頷く程度で答えていた。
大丈夫かどうかは、自分でも正直わからない。
あまりにも突然だったから。でも笑ってきっと、あれは嘘だったんだよって言える気がする。でもでも、最初に聞いた時にとっても嬉しくて、本当にすぐに母親に電話したのに。
電話の向こう側では母親が、一緒に行く先輩たちの名前を聞いても誰のことか全然理解してなくて、ディエイトは中国で活躍している先輩たちの名前を口にして、あの人みたいな人なんだと言えば母親が驚いてくれて、それがまた嬉しかったのに。
その話だって、メンバーたちにもそれぞれにした。
あぁだから少しだけ残念だけど、でもきっと、全員で行く方がもっと楽しいはず。だから......。
笑ってばかりの旅だった。一瞬だったけど。
みんなが少しずつディエイトに優しかった。笑っててもちょっとだけ残念って気持ちが残ってることに、全員が気づいていたからかもしれない。
希望の部屋をゲットできたり、素敵な店を見つけたり、食べたいものを食べられたり、はじめての体験だってした。気球にだって乗った。素敵な写真はいっぱい撮って、お土産もゲットして、たくさん笑って感動して。
なのにやっぱり心のどこか、ほんのちょびっとだけど残念って気持ちが残ってたんだろう。
「いつか、俺たちがもっと力をつけて、幻に消えた旅を実現させよう」
帰りの飛行機の中、ジュンがそう言った。
「できるかな?」
「できるよ。当然。これはいつかの、行くはずだった旅なんですよって、カメラの前で絶対言おう」
叶う日は来ないかもしれないけれど、でも信じたら来るかもしれない。
「約束」
そう言って、ジュンが小指を伸ばしてくる。
今更ながらに不貞腐れた顔をして、ディエイトも小指を伸ばした。
いつかの約束2
たくさんカトクした。一緒に行けなかったから。
いつだってクプスは楽しそうに、「大丈夫か?」ってメンバー全員の心配をしてた。
旅には行けたけど聞いていた番組がニセモノだったディエイトのことだって、復帰したばかりのスングァンのことだって、寝てばかりになると予想されてたウジのことだって。もちろんテンション高くなりすぎるホシのことや、案外人見知りなウォヌのことや、自由人なバーノンのことや、頑張り過ぎしまうドギョムのことや、頼りがいはあるけどやらかしそうなミンギュのことも。当然頼りになるはずのジョシュアやジュンのことまで心配してた。
だから当然マンネなディノのことは1番心配してて、「チャニは楽しそうにしてるのか?」とか、「チャニは失敗してないか?」とか。
2人のやりとりはそんなことばかり。
色んな出来事や失敗エピソードは山のようにカトクに流れてるし、写真や映像で楽しそうな雰囲気も伝わってもいるだろう。
だから余計に、グループトークとは別に、ジョンハンはエスクプスだけにカトクを送り続けたし、やっぱりエスクプスはそんなジョンハンに「楽しそうにしてるけど、スングァニは無理してるんじゃないか」とか、心配のカトクばかり送り続けた。
旅ももう終わりで、明日には会えるって時、「早く会いたい」ってカトクしたら、「俺も」って返ってきた。韓国は夜中だっていうのに。
長時間のフライトが終わって空港さえ出てしまえば見慣れた道を走れば会えるって時、「もうすぐ会える」ってカトクしたら、「待ってる」って返ってきた。
時間的にはリハビリに行ってる時間なのに。
本当はもう一度全員で行こうと言ってやりたかった。いつか、絶対って。でもそれは嘘っぽくて。
「いつか、2人で行こう」
だからそうカトクしたら、「約束したからな」って返ってきた。きっと守らないとエスクプスはしつこい。
きっと、2人で巡るイタリアも悪くない。でもバレたら弟たちには文句を言われそうだけど......。
いつかの約束3
「本当は俺、気球に乗りたかったんだ」
帰りの飛行機の中、スングァンの撮ったセルカを見て、ディノがそう言った。
じゃんけんで負けてウジが気球を選んだ時、大丈夫って言ったけど本当は結構凹んでた。
後からミンギュに見せてもらった動画は、雄大な景色に自然の織りなす色が素敵すぎたけど、それは自分で経験したらもっと素敵だったはず。
「じゃぁ次は一緒に乗ろう」
スングァンが普通にそう言って、「ボノニも、次は一緒に気球乗ろう」とバーノンまでもを誘ってた。
すぐに行ける距離でもなければ、それだけスケジュールを開けるのも大変だってのに。
「気球って、どこで乗れるんだろう」
だから国に戻ってから気球に乗れる場所を探すのかと思ったってのに、スングァンは「ぇえい、乗るのは当然イタリアに決まってるじゃん」と言う。バーノンはちゃんと聞いてるのか聞いてないのか、「ok」って軽く言っただけ。
「でもそんなの、いつになるか、わかんないじゃん」
「うん、でも約束」
スングァンはそう言って小指を出してくる。
「ボノナ」
スングァンはバーノンにも手を伸ばせとジェスチャーで指示してたけど、「俺のもまとめといて」とバーノンは適当だった。
「もぉ、英語ができるからって、確実に連れて行ってもらえると思ったら大間違いだからな。ディノがこれから、英語もペラペラになる予定なんだからな」
そんなことを勝手にスングァンが言い出すから、思わず笑ってしまった。
「なんだよそれ、それなら自分が頑張ればいいじゃん」
「無理。俺英語は全然ダメ」
「それならイタリア語を今から頑張ればいいじゃん」
「それはもっと無理。俺、この旅で覚えたのサルーテだけだもん」
スングァンが自信満々に言うのに、ディノだって「まぁ確かに」となって、やっぱり2人で笑ってしまった。
いつ叶うかなんて判らないけど、まだまだ当分しばらくは、セブチとして一緒にやっていけそうな気もして、ディノの中ではとても大切な約束の1つになった......。
いつかの約束4
「なんか楽しかった。お土産に買ったマグネット、冷蔵庫に張ってもいいだろ?」
シックにまとめたキッチンに、マグネットは場違いな気がする。そう思いながらも「いいよ」と言ったミンギュは、楽しかったとしみじみウォヌが言うたびに、「じゃぁまた行かないと」って言った。
今度は2人で行きたいと言えば、「そうだな」って言いつつもウォヌはあまり乗り気には見えなかった。
「イタリアは遠いだろ」
きっとウォヌの腰は重いだろう。行けば楽しめるはずなのに。
「近場から攻めてもいいよ」
だからミンギュはそう言って、韓国から飛行機で数時間で行ける場所をあげていく。
「どこも行きたいけど......」
「けど?」
「家が一番いい」
楽しいことばかりの旅だったのに、帰ると思うと2人で暮らす家が恋しくなったらしい。それにミンギュがウォヌのために整えた家だから、家が一番いいと言うのも当然かもしれない。
「じゃぁとりあえず、美味いイタリア料理の店を探すから」
そう言えば、それはあっさりと頷いてくれた。
だから色んな国の店を探すことになりそうだった。
「いつかでいいから、絶対また、イタリアに行こうよ」
そう言えば、「まぁ、いつかでいいなら」とウォヌが小さく笑う。
「気球俺でも乗れたから、一緒に乗りたいし」
「そんなこと言って、お前絶対しゃがみ込んでそうじゃん」
「でも他の場所も一緒に行きたいし」
あっという間の旅だったけど、一緒にいられることの方が少なかった気がする。
視界の端にはいつだって見えていたけれど、触れ合いなんてほとんどなかった。
そう小さく言えば「当たり前だろ、バカ」と言われた。まぁそうだけど。
「まぁでもいいや。いつか一緒に世界一周してくれるって、約束してくれたから」
そう言えば、ウォヌは声を出さずに驚いていたけど......。
いつかの約束5
「なぁ、俺らも、いつか、行く?」ホシが聞く。
「まぁいつか、行くかもしれないけど、多分行かない」ウジが答える。
「俺もそう思う。俺らどっちかというと、ついて行く方だもんな」ホシが言う。
「ん。間違いない」ウジも言う。
2人だけで行ける場所は限られている。
セブチを支えてる2人だけれど、色んなことに弱かったりもする。
何せ人見知りだから知らない人に話しかけるなんて無理だし。
「なぁ、俺らがさ、いつか行くならさ」ホシが言う。
「あぁ、わかる」ウジが最後まで聞かずに答える。
「だよな。これもう絶対、全員で行くしかないよな」ホシがそう言えば。
「じゃぁ次はイタリアじゃないだろうけど、全員で行けば、俺らも行けるしな」ウジが笑う。
「うん。それが一番楽しいし」そう言って、ホシも笑う。
全員で行く旅は、どこだろうときっと楽しいだろう。カメラなんてなくたって、絶対マフィアとかやって、笑って泣いて叫んで誰かは怒ってそれを誰かがまた宥めて。
「いつか、俺たち、行こうぜ」
ホシが昔みたいに言う。
大きな会場を目指した時みたいに、立ちたいステージを目指した時みたいに。
そう考えると、いつも色んな約束を掲げて、それを守ってきたみたいなものかもしれない。
2人では旅行なんて無理なように、色んなことが2人じゃきっと叶わなかった。
まだ見たことのない景色が、きっといっぱいあるはずだから。
「約束」ホシがそう言って手を伸ばすから。
「おぅ」とウジだって手を伸ばす。
2人の望む約束は、結果がデカイんだときっとスタッフたちには文句も言われるかもしれないけれど、いつかきっとそれは叶うだろう。今までもそうだったから。これからもきっとそうだから。
The END
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