妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

呪いの子

 

天気の子みたいなもんだと思う。俺も。とか元気に言うけれど、全然違うと思う。
スングァンは呪いの子で、呪いを生業とする家に育ったが、なんでか元気で明るい。
夜中に映画館でやってたアニメ祭りを見た帰り、スングァンは映画を見ながらポップコーンもチュロスも食べたのに、お腹減ったとか言う。
ミンギュは「焼き肉と冷麺とチキンと、どれがいい?」と聞いたのに、スングァンは「全部」と当然のように答えた。

スングァンは年齢的には1つ下んだけど、早生まれだから学年は同じ。昔から近しい人たちはスングァンの家の特殊性を知っていて距離を取っている中で、唯一能天気なミンギュだけがスングァンと普通に接してた。だから大人になった今でも、スングァンはミンギュと一緒にいることが多い。

「じゃぁ」

そう言いながら口にした店名に、スングァンは頷く。そうすればミンギュがタクシーを停める。
地元から引っ越してしまえば、スングァンが呪いの子だと知る人はほとんどいなくなる。
なのにスングァンは進学するタイミングでも社会に出るタイミングでも、外の世界に出ようとはしなかった。

日頃から誰もがスングァンを避ける。何も知らずに周りに流されて避けるだけの人もいれば、ちゃんと知っていて避ける人もいる。
大人だって同じだからこそ、子どもはそれを見てるのかもしれない。
でも大人たちは困った時には寄ってくる。それなのに助けてもらった後は、それまでよりもより、忌み嫌う。
きっとそれは、知られたくないあれこれを知られてしまったからじゃないかとスングァンはなんでもないように笑うけど。

「ミンギュヒョンぐらいだよ。俺と普通につきあうの」

そう言うけれど、スングァンは昔から普通に可愛かった。見た目もそうだし、性格もそうだし。
なのに周りの人たちは距離を置くから、ミンギュは逆に不思議だったほど。でも可愛いスングァンを独り占めできるからまぁいっかと、軽く考えていただけ。

「でもお前が別に、誰かを呪ってるのなんて、見たことないけど?」
ミンギュはお気楽そうに言うけれど、実は呪ったことはある。
「ヒョンそういうの、いつも忘れるというか、覚えてないよね」
「お? そうだった? なに? 何かあったっけ?」
「ほら」

そう言ってタクシーの中で話したのは、中学の頃のはなし。
大した見た目でもないのに、なんでか自分はイケてると思ってる先輩がいた。だけど1つ下の学年にミンギュが入ってきて、本当のイケメンとはこういうものだ......ってことを、誰もが知ったんだろう。
絶妙に微妙な嫌がらせをされた。
もちろんそれはミンギュにで、スングァンに被害なんて出なかったし、大抵のことは能天気にやりすごすミンギュにだって痛くも痒くもないようなことばかりだった。
でもスングァンはムカついたから、「大事な日には信号に全部引っ掛かりやがれ」って呪いをかけた。命に関わるような呪いではなかったけれど、それこそ絶妙に嫌な感じの呪いで、大切な試験の日には幾ら早く家を出ても信号に見事に引っかかって遅刻したらしいと後から聞いた。

「あぁ、あったあった。あの人、きっと入試とか入社試験とかお見合いの日とか相手のご両親への挨拶とか結婚式とか、全部そうなんじゃね?」
許してやれよとミンギュが笑う。
「いや呪いなんて、そんなに長くは続かないよ。本人の考え方次第だし」
スングァンのそんな説明に、「ふーん」とミンギュが適当に相槌を打つ。

大抵呪われる人間なんて、自分に何らかの原因がある人が多いし、謂われない理由で呪われる人は、大抵の場合はそんな呪いには負けたりしない。
後ろ暗いところがある人が、呪いの補強を自らしていくようなものだった。

「言霊だよ言霊。しばられるのは自分の中を見つめた時に、何かある人だけだよ」
スングァンは笑う。ケラケラと。
そんなに明るいからこそ、呪いの子と言われたって気にもしないんだろう。
「地元を出ないのか」そう聞いたこともある。
「だってヌナたちが誰かと結婚したいって時に困るもん」
もしも家を出たいと言うのなら、俺が家を継がなくちゃと、スングァンは真剣な顔で言う。
でもスングァンのヌナは2人とも、スングァンは自由に生きればいいと思っているというのに。
「やっぱり天気の子みたいなもんだよ」
スングァンがいいように言う。
「まぁそうかも」
ミンギュが適当に返す。

呪いの子と呼ばれてたって、不幸せなことなんて何もないもんとスングァンは笑う。まぁ頬もプニプニしてて、笑い顔もカワイイ。ダイエットしなきゃと言いつつ箸をしっかり動かすところも嫌いじゃない。

「なぁ、じゃぁさ。今までで一番凄い呪いって、何かけた?」

多分類友なんだろう。能天気なところは似てるから、ミンギュが肉を頬張りながら聞く。
「一生、微妙なネイリストにしか出会えないってやつ」
「え、大したことなくね?」
「え、絶対嫌じゃない? ネイルサロン行っても、出来に納得できない人生なんて」
「..................」
そうかなって思ってるからか、首を傾げながらも肉は食う。

あぁこんな感じなんだから、みんな、距離なんて取る必要はないし、一緒にいた方が楽しいのにな............。モゴモゴと食べながらそう言えば、スングァンがミンギュの皿に大きな肉を一切れ入れてくれた。

それから2人して、ネカフェでゲームするか腹ごなしにカラオケ行くか、それとものんびり散歩しながら帰るか......と話し合い、当然のようにカラオケに向かった2人だった。

「あ、もしかしてさ。俺こんなに男前なのに彼女できないのって、お前の呪いじゃね?」

歌ってる途中だというのに、マイク越しにミンギュが突然そんなことを言うから。
歌を歌うだけのはずなのに、なんでか爆笑につく爆笑で、2人してヒーヒー言いながらマイクを握りしめるはめになったりして。
やっぱり、類友なのかもしれない。

呪いの子と類友とかどうよ......と思えば、呪いの子は天気の子みたいなものかもしれない。と、ミンギュですら思うけど......。

The END
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