注意......
続きものだけど、別に前を読まなくても読めるかも。
1はクパン編で、2はミーニー編で、3でまたもやクパン編です。
社内恋愛がはじまる世界線 3
ZOOM会議なるものに参加する時に、ラフな格好でいっかとジョンハンはパンツ1枚に上だけシャツを身に着けて、なんだか見てたら押し倒したくなるような姿でいる。
そんな恰好で足を組んだりするもんだから、ちょっと覗き込めば見えそうで。
「何見てんだよ」
器用にミュートにしながら、ガッツリ覗き込もうとしてたエスクプスに文句を言ってくる。
でも笑顔だし、仕事用の顔はどこまでも綺麗だった。
足首あたりから膝裏に向かって手を出せば、もう片方の足で器用に叩き落とそうとする。でも嫌がってないのは見てれば判る。本気で仕事中なのも知ってるから、それはただの悪戯程度だったけど。
「いやお前ら、何やってんの?」
会議終わりに、残ってたジョシュアがそう言うから、思わずエスクプスは慌てて「え? まさか見えてた?」と顔も声も出してしまった。それに対してジョンハンが「あ、釣られてやんの」と言ったから、見えてた訳ではないようだった。
「自分の発言以外の時に、口の端で何度も笑うから、判るやつには判るだろ」
とジョシュアは言う。そうしたら当然のようにジョンハンが、「じゃぁ判ってんのはお前だけじゃん」と言うから、確かに......とエスクプスも思う。
「そのうちセクハラで訴えるからな」
ジョシュアはそう言ったけど、「なんだよ役得だろ」と言ったのはジョンハンで、「逆に訴えるぞ」と言ったのはエスクプスで、ジョシュアが本気で舌打ちして落ちてった。
「あいつ、抜群にタイミングいいっていうか、悪いっていうか」
エスクプスがそう言えば、ジョンハンも思うところがあったようで、「ほんと、実は後をつけてきてんじゃね?」とか言う。
つい先日も会社で遅くまで働いていて、ひと休憩するのにエスクプスとジョンハンは役員室的なフロアのトイレまで出かけていったのに、そこにはジョシュアがいた。
「何お前、俺らのこと興味ありすぎだろ」
ってその時も確かジョンハンが言ったはず。まぁでも冷静に「先に来てたのは俺だろうが」と文句を言われたけれど。まぁ確かに。
でもなんでかジョシュアとの遭遇率が高い。そう訝しがるジョンハンに、「まぁ俺ら基本つるんでたし、どの時間にどこ行けばサボれるとか、楽できるとか、だいたい判ってるから」とエスクプスが言えば、「なんだそっか」とあっさりしたもんだった。
「まぁでもアイツ、ピンチの時には結構心強いよな」
ジョンハンがそういうぐらいだから、ジョシュアはかなりの高評価なんだろう。
ジョンハンは相変わらずよく働く。周りを巻き込みながら、誰もが思ってる以上の成果を出す。それを鼻にもかけなければ、自慢したりもしない。
判るやつには何も言わなくても判るだろうし、言わなきゃ判らないような奴に判ってもらってもしょうがないしと、さらりとカッコイイことを言う。
何度エスクプスが、仕事と俺とどっちが大事なんだよと言いかけたぐらいには働いていて、「それはお互い様だろうが」と言うけれど、待っているのはエスクプスの方が多い気がする。
素直にそう言えば、「え、違うって。俺も結構待ってるけど、ただ待つのもあれだし、その間に仕事はじめちゃうから」とジョンハンが照れたように笑う。
妖艶に見える時もあれば、男前に見える時もある。なのにふと見せる表情がとてつもなく可愛く見える時がある。
「なんだよそれ」って言いながらも、ついつい抱きしめるために手を伸ばしてしまう。
そういう時ジョンハンはいつだって嫌がらない。
「え? なに? するの? 結構昼間だけど」とか言いつつも、「全然いいけど」って言いながらノートパソコンを片手で器用にパタリと閉じたりする。
結局のところ2人とも忙しいから、休みをあわせることは至難の業で、仕事終わりにどうにか時間をつくってやりくりしてる感じ。
その姿を見てジョシュアは「若いな」と呆れたように笑ってた。
でもそんなチングが気を使って席を外してくれたりするから、2人きりの時間を楽しめているのも事実で、その分ちゃんと、出前だって3人前頼んでたりはするけど。
会議中とかに、『腹減った』みたいなカトクが飛んでくることがある。それだけでもニヤニヤしてるってのに、『あ、俺間違って、ジョシュアにこの後ホテル直行しようぜってカトクした』とかも送ってくるから、驚きを通り越して笑いそうになる。
まぁだから、ジョシュアには結構世話になってるし迷惑だってかけている。
なのにジョンハンはけろっとした感じで「チングだからいいだろ」とか言うのだ。
どうしてだかジョンハンの中では、チングとはそういうものらしい。ある意味あってはいるけれど、そうじゃない場合もある気もする。
ということでエスクプスばかりがジョシュアに気を使ってるかもしれない。
まぁウジにも迷惑はかけている。でもジョンハンはやっぱり「直の後輩だもん。いいだろ」とか言う。必然的に、エスクプスはホシとウジとセットで飯を驕る回数は増えた。
「え、でも俺が幸せじゃないと、皆も幸せじゃないもん」
ジョンハンは本気でそう言って笑う。仕事でも恋愛でも、自分だけ我慢して影で頑張ってどうにかするなんてことは、絶対しないと言う。そんなのいつか無理がきて長くは続かないからって。それなら全員で頑張った方がいい。ダメだったとしても一緒に頑張ったって思いは残るからって。
そう言いながらいつだって、「だから俺が幸せになることを考えるのが一番なんだって」と笑うのだ。
時々強引に見えて、でも優しさはあって。無理難題を口にして、でも頑張った以上の何かをくれて。いつだって楽しそうに笑ってる。悪だくみしてるようにしか見えないってのに。
やりにくそうに見えて上司としては優秀な方だろう。チングとしてはちょっと微妙な気もするけれど、楽しくはあるだろう。部下に持ったらどうだろうか。でも部長はいつだって楽しそうだ。まぁ時々は頭を抱えてるけど。
恋人としてはどうだろうか。
「え? なに? するの? 結構昼間だけど」
ジョンハンはそう言った後に、「全然いいけど」って言った。そして真っ昼間だっていうのに潔い脱ぎっぷりで、思わずエスクプスが「恥じらいは?」って聞いたほど。
「今は............ないな............」
ちょっとだけ考えたような素振りでそう言いながら、ジョンハンが当然のようにエスクプスに乗りかかってくる。
「なに、ダメ?」
そう言われて首を振る。それから「全然ダメじゃない」とも付け加えた。
だって本当にダメじゃないから。
恥じらいだって起用に操るだろうけど、思ってることを隠しもしないその姿は、ジョンハンらしい。
誰に対してもそうだと判っていても、それでもすべてを見せてくれるのは自分にだけだと判ってる。
出来る男とか、男らしい姿とか、誰に対してもそんな姿だけ見せたいと思ってたはずなのに、いつの間にかジョンハンには、甘えたければ甘えて、泣きそうになれば泣きそうと伝えて、寂しいとも言えてしまえるようになっていた。
「俺なんか、お前以外無理になりそう」
だから正直そう言えば、「そんなの、当然じゃん」と結構本気にムキになってジョンハンが言う。
何度抱き合っても、「なんで熱が冷めないんだろう」って言えば、「ヤーッ。だからそれだって、当然じゃん」とジョンハンが怒りながら言う。
「愛かな?」
「愛だけど、それだけじゃないって」
こんなにも欲に溺れてるってのに気怠さもなければ、重たい空気もない。
「運命かな?」
「そうかも。だってなんか、キスがこんなに気持ちいいもん」
ジョンハンが今度は納得した感じで笑う。
少しだけ覗く舌がもう魅惑的すぎて、目が釘付けになる。
「ヤバイ。なんか、何回でもできそう」
2人して盛り上がって半裸以上の恰好でベッドの上にいるっていうのに、「あ、ちょっとごめん」とそう言ったジョンハンが自分のスマホに手を伸ばす。
電話は鳴らなかった。ただちょっと振動しただけ。
「なに? 電話?」
そう言えば、「おぉ、ウジから」と言ってジョンハンはさっさと電話に出てしまった。もう引き返せないぐらいまでには盛り上がっていたはずなのに、「あ? それで何がどうなって契約が流れそうになったって?」と不機嫌な声を出したジョンハンが、エスクプスの下から抜け出して行く。
嘘だろ......とは思いはしても、何をしてたってジョンハンは一瞬で仕事モードに切り替わる。しかもイレギュラーな出来事が起きた時ほど強いし楽しそうにも見える。
「俺が3分でそっち行くから、資料全部揃えとけ。それから」
はだけ切ったシャツを着こみながら、脱げ落ちたズボンも探しながら。
一瞬『ヤー、ここで終わらす気かよ』と言いかけたけど、やっぱりそれもジョンハンらしいと笑ってしまう。それからエスクプスはジョンハンの着替えを横から手伝って、それを当然と受け止めながらジョンハンは電話越しにウジに指示を飛ばす。
そのまま颯爽と行ってしまいそうだったのに、電話だってまだウジと繋がったままだったのに、ぶちゅって感じの音がしそうなキスをした。
離れがたいと思ったその一瞬、2人は同じ思いだっただろうに、唇が僅かにも離れた次の瞬間には切り替えたのか、ジョンハンがバリバリ仕事モードになって去ってった。
きっともう仕事のことしか考えてない。
恋人としては不実かもしれないし、相手が普通の女性だったらそれは別れの原因にもなっていたかもしれない。
でもエスクプスは同じ男だったから、残されて、不発に終わった行き場のない熱をこの後冷たいシャワーとかで冷ます必要があったとしても、何かに立ち向かったり何にも負けたくなかったり強気の態度を崩したくないジョンハンのことだって理解してた。
それにきっと、次はもっと燃えるはずだから......。
とりあえずのんびりしようと思ったエスクプスだったのに、全然のんびりなんてできなかった。それはジョシュアから苦情の電話が入ったから。
『ユンジョンハンが普通に仕事してる俺にも仕事を振ってくるんだけど......』
チングのピンチはお前の大ピンチだと、勢いだけで仕事を押し付けて行ったらしい。
はははははと笑って、エスクプスは盛大に文句を言うジョシュアから、その仕事を引き受けた。
本当なら自分も駆けつけてジョンハンの真横ぐらいで働きたいが、働いてる姿も嫌いじゃないから、油断したら手を伸ばしてしまいそうだった。
だからもっぱら手伝うのはリモートで。
ジョンハンの求める仕事を鬼の速さでジョシュアが片付けていく。半分以上はエスクプスが裏で頑張ったからだけど、そんなことも知らない周りの人間は、ジョシュアの本気に震えたとか震えなかったとか......。
でも当然ジョンハンは気づいていただろうけど。
結局エスクプスの腕の中にジョンハンがおさまったのは、それから3日以上も後だった。もちろん会社ではすれ違ったり、時々はコッソリ手を握るぐらいはしたけれど。
もう少し進みそうな雰囲気にもなったけれど、タイミング良くウジからの電話が来る。それにジョンハンはいつだって、鳴った瞬間には「ごめん、ウジだ」と言って電話に出るもんだから、「ヤー、なんで電話が鳴った瞬間にはウジからだって判るんだよ」と文句を言ったけど、なんのことはない。
「え、だって俺に電話かけてくるのって、ウジだけだもん」
と飄々と答えたジョンハンがいて、なら自分も電話をかけてやろう......と思ったのに、「お前はかけてくんなよ」と言われたエスクプスがいた............。
The END
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