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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

君と歩いたこの世界の 9 MYMY 2

注意......

「MYMY」contentsページです。

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君と歩いたこの世界の 9 MYMY 2

ウォヌには弟がいた。
大人しい感じの少しボーッとしてるウォヌとは違って、明るくて、いつだって楽しそうで、行動的で、友達も多くて、年上の彼女までいるらしいとか、そんな噂まであった弟がいた。
仲が悪いとかもなく、「ヒョン」って普通に呼んでくれたけど、一緒に遊ぶことは少なかったかもしれない。
ちょっとだけウォヌとテンポがあわなかったからかもしれない。
あの日、空に船を見つけたのは弟だった。
珍しく弟が、「ヒョンッ、行かなきゃッ」って言ってウォヌを誘ってくれた。それから一緒に走り出したのに、弟は何かを思い出したと言って引き返していった。

「ヒョンは先に行ってて。俺ならすぐに追いつくから」

あの日、ウォヌたちを乗せた船が空に飛び出した日。弟はどこまで追いついて来てたんだろうか。
その船にウォヌが乗っているとも知らず、船が飛び去っていくのを見ていただろうか。
もしも一緒に弟が船に乗っていたら............。
考えは尽きない。

でもきっと、弟が一緒にいたら、ウォヌの隣りにはミンギュはいなかった気がする。
普段からそれほどキビキビもしてないのに、今は考えごともしてるからかさらにトロイ。それなのにウォヌの横にいて、一緒の速度を保ってる。
気づけば先に行ってしまうってこともなく、足元が危なそうな場所では手を掴んでくれて、身体を支えてくれて、当然のように横にいる。

「ミンギュは俺の弟に似てる」

何も考えずに、自分と真反対だからそう言ったのに、その言葉を聞いたミンギュは不機嫌になった。船の中で、2ヶ月が過ぎた頃だったはず。
船の中、料理もできるミンギュは1番役立っていたかもしれない。でも、勢いに任せて船のドアを壊したり、デッキブラシを船の上から遥か彼方の地上に落としてしまったり、やらかす時は盛大だったりもして、いつだってウォヌはミンギュといると笑ってたかもしれない。

別にいつも一緒にいた訳でもないけど、気づけば一緒にいることが多かったのは、何も考えてなかったウォヌのせいか、色々考えてたミンギュのせいかは判らない。

「弟とか、嫌なんだけど」

そうミンギュがわざわざ言って来た時、それがどんな意味かも気づかずに「うん、わかった」と答えただけだった。
きっと気づいてなかったのはウォヌだけで、チングたちとヒョンたちは、とっくに気づいていたのかもしれない。

「ウォヌは付き合って欲しいって言われたら、確実に「どこに?」って聞くタイプだからな」

そう言ったのはホシだったか、ジュンだったか、ウジだったか。確かに、ミンギュにそう言われた時に、船の中、そんなに移動できる場所はないのに、「いいけど、どこに?」って言った記憶がある。

「と、とりあえず船の上にでも?」

目の前ではなんでかガックリしてたミンギュが、自分が誘ったくせに疑問形で、『なんだこいつ?』って思ってたほど。でもまさか、交際の方の付き合って欲しいだなんて、そう言われないと気づけないと思う......。

船の中、最初の頃はビクビクしてばかりで、トイレに行くのでさえ誰かと手を繋いでいくのが普通だったし、眠る時にも誰かにしがみついていたほどだから、好きとか嫌いとか関係なく手を繋いでたし、よく一緒に寝てもいた。だからそんなスキンシップに意味があったなんて、気づきもしなかった。

だからミンギュの中に、ウォヌのことを想う気持ちがあって、それを伝えてくれてるんだとちゃんと理解した時、驚いた。
「は? 何バカなこと言ってんの?」的な驚きじゃなくて、その気持ちが嬉しいと思ってしまった自分に驚いた。

ここが船の中で、限られた人間しかいないからだとか、一緒にいる割合が高くて何か勘違いが入ったんだとか、最初はいつ船が落ちてもおかしくない状態だったから、まさに吊り橋効果だったんだとか。言い訳はそれこそ山のように浮かんだけれど、「俺もって、言っていいのかな?」ってチングなウジやホシやジュンに相談すれば、それぞれ、全然役に立たない言葉が返された。

「黙っとけば? 面倒だし」って言ったのはウジだった。
「言えばいいだろ。まぁ勘違いだったら、なんちゃて〜って言えばいいし」って言ったのはホシだった。
「好きにしたらいい。ウォヌの人生なんだし」って言ったのはジュンだった。

なんだかジュンだってそれほど大したことは言ってないけど、ウジとホシが微妙だっただけに、ちょとだけしみじみした。まぁでも結局は役に立たないチングたちだったけど、誰かに相談したっていうことで、自分の気持ちが整理できのは確かだったかもしれない。

でも、「多分、俺も、お前のこと、好きだと思う」って、物凄く小さく呟いたその日に、押し倒されることになるとは思ってもみなかったけど。

「アンデェ」って言ったのに、「大丈夫。ちゃんとやり方はヒョンたちに聞いたから」とか言われて、なんの相談してんだよとも思ったし、何の相談にちゃんと答えてんだよヒョンたちも.....って思ったけど、結局それは、物凄く役に立ったような気がする。

何がしかの変化が自分にあったかは判らない。チングたちもヒョンたちも何も言わなかったし、その態度も変えなかったから。
きっとミンギュのチングたちも、そうだったんだろう。
ただマンネラインには、言えなかったけど。

「そのうち、自然に気づくだろ」

ミンギュは平気な顔して笑ってた。
だからそんなミンギュの横で、ウォヌも笑ってた。

ジョシュアがみんなに文字を教え始めた頃、ミンギュはみんなに簡単な料理を教えてた。それからジュンは操縦の仕方を、それからウジが空の読み方を。
元から本が好きだったウォヌは文字を習う必要はなかったし、きっとずっと一緒にいるだろうから料理を覚えることは放棄して、ウォヌはジュンから操縦の仕方を習った。だけどジュンだって感覚で覚えたからか、「こういう時はザッて感じで」とか、「ふわりと行けばだいたいは行ける」とか言われても判らなくて、早々に諦めた。

ウジにも空の読み方を教わろうとしたけれど、「ほら、あそこの切れ目から、明日の風がやって来る」とか謎々なのかみたいなことを言われて、これも諦めた。

結局船を操る方法は、エスクプスやジョシュアから教えて貰って、多少は覚えたけれど、それは大分後になってからのことで、同じようにどれもダメだったドギョムとスングァンと3人で手持ち無沙汰でいたらユンジョンハンに捕まって、謎に「絶対バレない嘘のつき方」とかを教えて貰ったけれど、やっぱりそれはユンジョンハンだから出来る技なんだろう。

ドギョムはそれを実践して、すぐバレて、ディエイトとミンギュと大喧嘩になっていたし、スングァンもディノと揉めていたはず。
それにウォヌがついた嘘は、どうしたってミンギュにバレるから、上手くはいかなかった。ドギョムとスングァンと違うのは、ケンカになんて、ならなかったことぐらい。

だから楽しいばかりだった。
ウォヌは船の中で幸せを見つけたから。

ジュンとディエイトは、2人でも船を飛ばせると言ったけど、もう2人ぐらい人間がいた方がいいだろう。
だから「俺たち戻ってくるから」って言うつもりだったのに、それを止めたのはウジだった。
万が一にも空約束になったら、あいつらが飛び立てないかもしれないからって。

帰り着いた場所に母親や弟がいたら。ミンギュだって妹や家族がいたら。
その時にまた船に戻れるかといえば、絶対とは言い切れないだろう。

でもいなかったけど。2人して、山道を戻って来ただけだったけど。
もう取り戻せない家族もあったけど、手に入れた家族も確かにあった。
横にずっといてくれて、辛い時は手を握ってくれて、楽しいことは一緒に笑ってくれて。絶対に1人にしないって決意を固めて、横にいてくれる存在を得た。

きっといつまでも、手を繋いで歩くような、そんな存在。
船に戻ってみれば、普通だった。
もっと物凄く感動するかと思えば、本当に普通にただいまと、自分たちの家に帰ってきただけって感じで。
ミンギュは当然のようにキッチンで食材のチェックをはじめたし、特別なにかできる訳でもないからと、ウォヌはデッキブラシを手にとって船の掃除をはじめる。
それぐらいしか自分にはできないから。
と言っても、デッキブラシはすぐに側にいたホシに押し付けたけど。ホシはそれを手渡されると、『お?』って顔をしたけれど、「やっぱりお前が一番それ似合うよな」と言えば嬉しそうに笑ってた。

後は、弟たちの帰りを待つだけだった。
一番マンネなディノは、カワイイでしかない。
幸せでいてくれることだけを願う存在なのに、ディノは戻って来た時、ボロボロだった。

「ホシやッ!」

珍しく叫ぶジョシュアの声に顔を出してみれば、そこにはあちこち傷らだけのディノがいた。エスクプスが先に行き、その後をジョンハンにホシにミンギュまでもが走って行った。

「お前もあちこちケガしてるじゃん」

ディノの側まで言ってそう言えば、ディノが堪らなかったのか泣き出した。
それから何度もディノが「やっぱり俺も行くよ」と言うのを止めた。

「お前が必要なら、ヒョンたちは絶対にお前を呼ぶはずだから」

そう言って。
ディノはもっと我が儘を言ったっていいのに、ただただ頑張り屋だった。怒られそうなことは最初からしない。何が自分にできるのかを、いつだってちゃんと考えてる。
ただただ楽しそうに笑い転げるようになるまでも、そしてそうなってからも、甘えるのは酷く苦手そうで、いつだって平気な顔をしてみせて「ケンチャナ」って言ってばかりで。

器用そうに見えて酷く不器用なディノは、放っておけなかった。
ちょっとだけ、不愛想に思われることの多かった自分と重なっていたのかもしれない。
誰よりも可愛がられて、甘えてもいいっていうのに。

「俺は、俺にできることをするよ」

どんなに凹んだって、ディノは自分でそこから這い上がる。
失敗したって、きちんと学ぶ。
そんなディノには、ジョシュアが何かを頼んでた。
いつだって、何かあれば船の中に入っていろと言うはずなのに、ディノが頼まれた仕事は外に出してた荷物を集めてまとめる作業で、それだけでもピンと来た。思わず見てたら視線があって、ウォヌが気づいたことにジョシュアも気づいたんだろう。

「もしもの時には、ドギョムとディノは船には乗せないから」

ウォヌだけに聞こえる程度の声で言う。
飛び立ってしまって、万が一にも離れ離れになってしまわないようにと、船には基本全員が乗るって決めていたはずなのに。

きっとそんなもしもは訪れない。そう信じてたのに、気づけば船を出すことになっていた。
当然のようにウォヌは船に残った。ドギョムが下りないとゴネてる間にも、エンジン室にいたミョンホのもとへと降りて、「変わる」とだけ言えば、ミョンホが頷く。

「いざとなったら、俺も出るけど」

そう言えば、「そこまではなかなかないって」ってミョンホは笑ったけど、全員がいないのに船を出すんだから、きっとギリギリなんだろう。何かが。
何も見えない場所のはずなのに、エンジン室ではすべてのことが良く判る。伝声管を通してジュンが状況を逐一教えてくれるから。

「いざとなったら俺も出るよ」

ウォヌがジュンにそう言えば、「最後の最後な」ってジュンが笑う。
でもそう言ったジュンが、「ウォヌやッ! 出ろッ!」って叫ぶのは、もうちょっとだけ先の未来だったけど............。

THE END
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