妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

背のび

 

ディノが背のびすることを辞めたのは、成人を過ぎた頃。
「実際にかかとをあげて身長を高くするっていう、あれ?」
「いやそっちじゃない」
「気持ち的に、自分を大きく見せる方な」

ディノの誕生日だからと、なんでか95ラインが揃って飲んでいた。
最近はめでたいことがあると、3人で集まって乾杯することが多い。誕生日だから当然めでたいけれど、よくよく考えれば2月はめでたすぎて大変ではある。

ディノの誕生日なんだから、当然話題はディノのことばかり。そこで「ディノが背のびを辞めたのって、成人越えた頃かな」ってジョンハンが言い出した。
すると実際に背を高く見せようとしてたのかとトボけたことを言いだしたのはジョシュアで、自分を大きく見せる方だと言いながらも笑ったのはエスクプスだった。

やりたいことがあれば、いつだってディノはそれを言いにやって来た。まだ幼さが表情にも態度にも体格にも出てた頃。
「頑張りたいアピール期な」
エスクプスがそう言えば、「なんだよそれ、どんな期だよ」とジョシュアが笑う。
「俺んとこに来てさ、俺もヒョンみたいに髪の毛伸ばしてもいいかなって聞いてきて、その後ヌナたちに大反対されて泣いてたよな」
ジョンハンがそう言えば、エスクプスが「あぁあった、ハニに憧れて一瞬で打ち砕かれてたな」と笑う。

頑張ることを決めた時は、「俺は決めた」ってのが良くわかるからカワイイやら可笑しいやら。失敗した時も凹んでる時もよく判るから、やっぱりカワイイやら可笑しいやら。

「その、変な「期」じゃなくてさ。あいつ、反抗期なんてあった?」
そうジョシュアが聞けば、「スングァニには今でも反抗的だから、そこで賄ってんじゃね?」とエスクプスが言えば、ジョンハンは「いや、あったよ。一瞬だったけど」と言う。

それこそディノは、背のびをして写真を撮ってた時期があった。
1センチも高くはできないだろうに、その1センチに命をかけてる時があったけど、全員がそれに気づいてた。
素知らぬ顔で肩を組んでやれば、「それやめてよ。上からかぶさってこないでよ」って文句を言っていた。せっかくの背のびした分が台無しになるからだろう。
でもすぐにスタッフヌナやカメラさんやマネヒョンたちから、「安定しないからちゃんと立って」って注意されて諦めてたけど。
それで凹んでたディノに、ウジが「厚底の靴」をネットで注文してプレゼントしたのが最初だった。それを履いたらジョシュアと並ぶという、脅威の厚底具合にディノ以外の全員のテンションは上がったっていうのに......。
ディノは逆にバカにされたと凹んで、その靴を履かなかった。
その時からディノの反抗期ははじまって、「あぁ、イヤイヤ期な」とジョンハンが言うように、色んなことに対して「嫌だ」っていうのがディノの中で流行ってた。
いつまでも唯々諾々とはいかないぞっていうのを、表現したがる時期だったのかもしれない。

でもそうしたら12人もいるヒョンたちは全員面白がって、ディノが嫌だって言うのがおしくなるぐらいの提案をする............。

「チキン一緒に食べに行く人」ぐらいの提案なら「嫌だ」って言葉も言いやすいけど、普段滅多といけない高い店の名を出されると、「嫌だ」とは言いにくい。でも「嫌だ」って言わなきゃ、あぁでも今回だけは。いや、どうしよう。っていうディノの葛藤が全部見えるから、やっぱりカワイイやら可笑しいやら。

「俺、最近何もかも、上手くいかない気がする」

でもそうやってディノがポツリと零す言葉には、12人もヒョンがいるから聞き逃したりはしない。

「ヤバイ。酒が旨過ぎる」
「そうだな。こりゃ酔うな」

エスクプスとジョンハンが、あんなことやこんなことがあったという度に酒を口にするからか、旨過ぎると笑ってた。

「あぁでも、なんでこんなに、愛おしいんだろう。俺ら、ディノのことが」

酔い始めてるのか、ジョシュアがしみじみと言う。
いつだって楽屋の中で、誰が笑ってるのか丸わかりな笑い声が聞こえるたびに笑顔が零れてしまう。
きっともう少し酒が進んだら、誰かがしみじみ、泣き出すのかも。
「ウリマンネは」って、今度は感動編に突入するから。

ディノが背のびしてた時にウジが買った厚底の靴は、その後ディノがちゃんと履いていた。「せっかく買ってくれたのにごめんなさい」って、ディノがウジに謝ったことだって、全員ちゃんと知っているから。

あぁでもウジが次は「高下駄」をネットで買っていたから、ディノはちょっとぐらい怒ったって許されるだろうけど。

 

The END
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