妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

ウジ、セブチを考える

 

「は?」

ベストプロデューサーアワードを貰った翌日から、いつも以上に忙しかったのは、色んな人たちからお祝いのメッセージが来たりしたからっていうのももちろんあったけど、それ以上にブソクスンな3人に邪魔されたから。
それもようやく追い返して、さぁ隙間時間も睡眠時間を削ってでも仕事をするぞって覚悟を決めたっていうのに、目の前には95ラインの3人がいた。

「今なら、ウジがソロ曲を作詞作曲込みのプロデュースしてくれるって聞いたから慌てて来たんだけど」

ジョシュアはそう言いながらも肩で呼吸をするほどだから、本当に必死になって走ってきたんだろう。
ほぼ同じタイミングだったけど、僅差でジョシュアが一番で、次にジョンハン、エスクプスと並んでる。

「俺が一番だったのに、お前が俺のこと引っ張るから」

後ろではジョンハンがエスクプスに向かって文句を言っていて、「先にお前が俺を押したじゃん」と言い返されたいた。

「押すのはアリだけど、引っ張るのはナシだろ」
「あ? なんでだよ」
「当然だろ」

何が当然なのかは判らないが、そんな感じで後ろが煩いってのに、ジョシュアは何も気にならないのか「讃美歌みたいなはじまりだけど、ロックな曲が良くて、愛の歌に見えて案外攻撃的な歌がいい」とか、物凄い難しそうなことを言っている。

一応頭の中に、いつか役立てようとメモるけど、「ヒョン、誰にもソロ曲作ったりする約束してないけど、誰から聞いたの?」と聞けば、ジョシュアにその情報を流したのがドギョムだと言う。

「シュアヒョン、今ならベストプロデューサーなウジヒョンが、作詞作曲プロデュース付きのソロ曲作ってくれそうだよ」

とか言ったらしい。
普段は落ち着いていてなかなか猛ダッシュとかしないのに、案外面白がっちゃうジョシュアは結構腹黒いことだってする。

それでも優しいし、ジェントルマンだと思われてるし、会社からもなんでか全幅の信頼を受けている。
なんだか優しく笑ってる雰囲気だけで、色んなものを勝ち取ってるような気もして、ある意味尊敬するヒョンだったり。何よりこう見えて、95ラインでは一番強かったりするから。

「はいはい、次々。俺はねぇ」

本当にジョシュアを押し退けて、ジョンハンが目の前に出てきたと思ったら「俺にしか歌えない歌がいい」って、謎かけのような希望を口にしたジョンハンだった。

「じゃぁ飛び切り恥ずかしい歌にしてやればいい。誰も歌わないから」

順番に負けたエスクプスが、後ろからチャチャを入れる。一番ヒョンなはずなのに、時々、いやいや結構な頻度で子どもっぽい姿を見せてくる。

「天使の雰囲気で、でもエロくて、それでいて圧倒的なの。俺が」

エスクプスのチャチャなんて全然聞いてないのか無視してるのか、ジョンハンは勝手に語る。聞けば聞くほど意味不明な感じの希望を。

でもきっと。
そう、絶対きっと、ジョンハンはどんな曲だって嬉しそうに笑って、普通に努力してその歌を好きになってくれるだろうって思う。
一番自分勝手で、一番トンチキなことも言いそうで、なんでも一番じゃなきゃ嫌なんだろうなって思われがちなヒョンだけど、実際はそうじゃないから。

カメラを回してるゲームとかなら楽しそうにイヒヒヒって笑ってズルでもなんでもして一番を勝ち取っていくけれど、そうでなければ色んなものもことも、譲ってくれるヒョンだった。

仕事仕事で宿舎には寝に帰ってくるだけのウジが宿舎にいれば、風呂だってなんだって、ジョンハンは譲ってくれる。
仕事場では眠る場所だって、何かを食べる時にはウジの前に一番に料理を並べてくれる。
もちろんその場に体調が悪いメンバーがいれば、ウジよりも優先されて座る場所を確保したり水が渡されたりする。
なにより凄いのが、それを気を使ってやってる訳じゃないところで。

「あいつは、基本気づいちゃうからな。人より先に」

そういつだか、エスクプスが言っていた。
我が儘も一番言ってるように見えて、そんなこと絶対ないのに。
まぁでも、文句は一番言ってるかもしれないけど。
暑いとか。寒いとか。疲れたとか。
でもそれだって、全員が辛そうな時に声を出すのがハニヒョンなだけで、寝不足すぎてウジが疲労困憊してて、さすがにもうダメかもって思った時にはいつだって、「俺疲れたから、一回休憩しよ」って言ってくれるから気づいたことだった。

いやでも目の前では、「なんか、甘い匂いする感じの曲がいい」とか言い出してるジョンハンがいたけど。

「じゃぁ俺はな。長く聞いて貰える歌がいい。本当はガツンとした歌がいいとかも思ったけど、それよりも、いつ、どんな年代の人でも聴けるような、へぇ、この人セブチだとHIPHOPチームなんだって言われるような、歌がいい」

エスクプスが語る。
アバウトな希望だけれど、それでも3人の中では一番マシだったかもしれない。
が、しかし。そう、がしかしだ。そもそもウジはセブチ全員の、作詞作曲プロデュース付きのソロ曲を出そうだなんて思ってもないし、考えてもないし、誰にも言ったことすらないし、今のところ嬉しいことに忙しすぎてそんな暇はない。

「ヒョンたち、とりあえず希望は聞いたけど、当分忙しすぎて無理だから。それに、こういう話は早いもん勝ちとかでもないし」

冷静にそう言えば、「いや、スングァニは早く行ったほうが良いって言ってた」とジョンハンが言い、「スニョイも早いもの勝ちかもよこれ」って言ってたぞとエスクプスが言う。

結局自分たちのカムバを望むブソクスンが、それぞれヒョンたちに自慢しがてら話をした結果だったようで、ウジは密かに心の中で、『くそぉ、ブソクスンめ』とか思ってた。

「いやでも俺ら、一応希望は伝えたから、その時が来たらでいいから、な」

諦め悪くそういうジョシュアを先頭に、邪魔したな〜と言いながら、ウジの作業部屋を出てった95ラインの3人だった。

ブソクスンの3人が、ヒョンたちだけに話して後は黙ってるとは思えない。
下手すりゃ今は国に戻ってるチャイナな2人にだって伝わってそうだ......と思っていたら、当然のようにディエイトから電話がかかってきた。

『ウジヒョン俺何番目?』

元気だった?とか、今ちょっといい?とかをすっ飛ばしてそう言うのは、案外せっかちなディエイトらしい。それにディエイトは順番なんて気にしてませんって顔をして、負けず嫌いだったりするから。

「97ラインでは、ビリではない」

3人しかいない97ラインなんだから、そう言えば何番目かはわかるだろうに、電話の向こうでは『よしッ』って声がする。
とりあえずビリではなかったから良かったのかもしれない。

『ウジヒョン俺ね、壮大な曲が歌いたいんだよ。いやでも、甘い恋の歌も、誰かのこと思って歌う歌も、たった1人に向けての歌とか、誰もが晴れやかになれる歌とか、あぁでも、誰かのことを支えられるような歌も歌いたくて。ヒョン俺、この話、物凄い時間かかるし電話なんかじゃ伝えきれないんだけど、希望きいてくれるのって今だけなの?』

どうやらディエイトは、考えただけで次から次へと希望が浮かんできて、今は決められないと焦っているようだった。
思わず笑ってしまう。それはあまりにもミョンホらしいから。
自分の欲しいものに対して物凄く貪欲なその性格は、見た目と反して激しすぎるほど激しい。
だから95ラインのヒョンたちも会社の偉い人やヌナたちも、ディエイトが言葉の壁を乗り越えた暁には97ラインは上手くいかないんじゃないかって心配してた。

でも気づけば一番仲良しで、ケンカもたくさんしてるけど気づけば3人でご飯を食べに行ったり買い物に行ったり、いつだって楽しそうに笑ってる。
一緒に何かやろうとして衝突してケンカになっても、3人がそれぞれ楽しめるような折衝案をちゃんと考えて、不思議と良い関係を築いてる。

「97ラインは全員、基本が優しいからな」

そういつだか、エスクプスが言っていた。
多分本当にそうで、それをお互い気づいてるから物凄く大きな衝突をしても、ケンカ中でも、何かあれば一番にお互いのもとに駆け寄って「ケンチャナ?」って言えるんだろう。

電話の向こう側では、『春夏秋冬とか、人の営みとか、宇宙とか、そういうものも歌いたい』とか、本当に壮大なことを言ってるディエイトがいて、やっぱりちょっと笑いそうになるウジだった。

「帰ってきて落ち着いたら、また聞くよ。でも言っとくけど、ソロ曲にとりかかるなんて誰も言ってないからな」

ちゃんとクギは刺したけど、きっと最後の言葉は聞いてないだろうなってぐらい、電話向こうでテンション高く『ウジヒョンありがとッ』って言ってたディエイトは、またねとか、それじゃぁねとか、そんなことは一切言わずに電話を切った。いやまぁいいけど。うん、別にいいけど。

忙しいのに邪魔されてばかりだったから、それならもう後の面子もさっさと希望を伝えに来やがれとか思い始めたウジだったけど、そもそも残りの面子を考えてそれは諦めた。

だってウォヌとジュンはチングだから知ってるけど、結構のんびりしてる方だ。あんまり慌ててるところを見たことがない。ちょっとヌけてるところもある。

ウォヌは案外、後出しジャンケンで負けるタイプだし、ジュンは一番に並んでるつもりで全然関係ない場所に並んでたりするタイプだし。
チングだから良く判る。

しばらくしたらジュンからテレビ電話がかかってきて、『まだ仕事してるのか?』って聞いてきた。
テレビ電話の向こう側では、普段着ないような服を着てるジュンがいたから、それは衣装なんだろう。

「お前だってそうじゃん」

そう言って笑えば、ディエイトとは真逆で、ソロの希望なんて何一つ口にせず。『もうすぐ帰るよ』って笑うジュンがいて、「うん。早く会いたいな」って言えば、『なんだよ、照れるだろ。お土産はそんなこと言わなくてもちゃんと買ったよ』って慌ててるジュンがいる。

「スングァニが、お前が痩せた痩せたって心配してる」
『知ってる。ヒョンだけ勝手に痩せるなんてズルいって、昨日も電話で言われた』

こっちにいたって過密スケジュールだったのに、決まった期日内でドラマまで撮ってそれ以外にも山ほどスケジュールをこなしてて、忙しいだろうにそれでもこうやって電話をかけてきてくれる。

チングなジュンはいつだってウジに、「無理するなって言ったって無理だろうけど」って言いながら、気遣いを見せてくれる。

1人で遊んで1人で怒って1人で騒いでってしてそうなのに、全然そんなことなくて、寄り添ってくれる相手としてはこれほど楽な人間はいない。

「お前のとこには、誰が連絡してきた?」

笑いながらそう聞けば、『ハオとスングァニからそれぞれ大興奮で連絡来た』ってジュンも笑ってた。
たったそれだけの会話なのに、ジュンとの時間はどれも心地よいから不思議だった。

「96ラインは生まれた場所も育った場所も性格も考え方も全部バラバラだけど、一緒に何かするなんて考えられないように見えて、揃うと馴染むのな」

そういつだか、エスクプスが言っていた。
頷いたはず。ちょっと自分たちが自慢で、ちょっと恥ずかしくて照れて。97ラインの3人とは違ってわざわざ集まってまで何かしようなんてなかなかないけど、でも集まったらなんだってできる。そんな感じで。

それからウォヌとミンギュは一緒にやって来た。

「ソロ曲のはなしなんだろ?」
「そうだけど、もう一回一緒にやったっていいじゃん。bittersweet2的なやつ」
「また雨に濡れるのかよ」
「いや今度は晴れてて、撮影も昼間だけでいいよ」

何やらそういう話はちゃんとまとめてから来てくれって感じなのに、ウジの作業部屋の中、ウジが作業してる後ろで、2人は揉めていた。

「なに? ウォヌヒョンは俺とやるの嫌なの?」
「そうじゃないけどやったばっかじゃん。それに今回はソロ曲プロジェクトなんだろ?」
「希望聞いてくれるだけってドギョミが言ってたから、そこまでしっかり決まってないと思う」
「でもブソクスンはカムバするんだろ? ミニアルバムひっさげて」
「そんなの、あいつらがテンション高くその気になってるだけに決まってるじゃん」
「あ、そうなんだ。じゃぁ俺らも、必死になってビタスイの続きとかアピんなくてもいいんじゃね?」
「いや、そこは強く押しとこうよ。そうじゃないと後回しにされちゃうじゃん」
「別にいいじゃん。俺らはこないだやったんだし」
「何言ってんだよウォヌヒョンッ」

なんだか、ツッコみどころが満載な会話が繰り広げられているけれど、いやいや、いやいやいやいや。

「お前らそれ、ここでやる必要ある?」

思わずそう言ってウジは振り返ってしまった。
邪魔すぎるミーニーは、声だけでも邪魔だけど、視界に入っても邪魔だった。

基本ウォヌは一度気を許した相手には、距離を詰められても気にしないところがあるけれど、小さいソファにでっかい2人が並んで座ってると、そりゃ肩でも組まなきゃ収まらないのは判るけど、それでも距離が近すぎる気がする。

まぁ2人が良いなら良いんだけど。邪魔だし、鬱陶しいけど、気にしなけりゃいいだけだし。

「あの2人は地味に、いや全然地味じゃないけど、破壊力がハンパないよな。しかもそれをわざとやってる訳じゃないってところが、凄いよな」

そういつだか、エスクプスが言っていた。
まぁそう言ってたエスクプスだって、ハニヒョンとも弟たちとも距離の取り方は間違ってる気がするけど。

ウジが気を取り直して2人を無視することにしてパソコンに向かっていたら、その後も2人は延々と言い合っていた。しかも結局ソロ曲で行くか2人で一緒にするかが決まらなくて、場所変えてご飯しながら話そうって消えてった。
いや邪魔だった。何もかもが邪魔だった。

せいせいしたって思いながらもふと考えると、バーノンがまだ来ていなかった。
絶対スングァニからは聞いてるはずなのに、基本バーノンはトロイというか、時間がのんびり流れてるというか。それでも本人は全然焦ってないし、なんならじっくり自分のペースで考えてるつもりでいる。

個性としか言いようがないけど、それにしても全然来なくて、思わずウジは自分からバーノンに連絡してしまった。

『ボノナ、お前何してんの? 寝てたの?』
「お? ウジヒョン? なに? 何か約束してたっけ?」
『そうじゃないけど、みんな、ソロ曲の希望伝えに来たけど』
「お? なに? あれもう締め切っちゃったの? スングァニも早く早くって言ってたけど、俺もうダメなの?」

そう言いつつも、電話の向こう側では焦った風でもない。
よく出来てると思う。時間に追われる仕事で、セブチ全員で一つ一つ、同じゴール設定のもと動いてて、ディノやスングァンは焦ってばかりなのに対してバーノンは特に時計を気にすることもない。

スングァンなんかは「なんでボノニはいつもそうなんだよ」ってイラついてる時もあるけど、でもそんなバーノンを見て、落ち着きを取り戻すメンバーもいる。
だからやっぱり、よく出来てると思う。

「ほんとはアイツが、天使なんじゃないかって、思う時があるよ」

そういつだか、エスクプスが言っていた。
セブチの中では異質かもしれない。
でもみんなに愛されていて、ちゃんとみんなのことも愛してる。
音楽が好きで、音楽に愛されてもいるんだろう。

「で、希望は?」

そう聞けば、『俺が作った曲でもいい?』って言いながら、電話の向こう側からボノニの作った曲が流れる。
リズミカルで、ちょっと変わってて、時々音がズレるような感覚になる変調があるのに、気づけばまたメインに戻ってきて。それはまるで、セブチの中にいるボノニのようだった。

「いやでも、ソロ曲出すなんて、一言も言ってないけどな」

そう言い訳しながらも、「じゃぁな」と電話を切って、なんか忘れてるかも......とか思いながらも、その日はようやく仕事を終わらせたウジだった。

そして翌日、現場の楽屋の中で、顔を真っ赤にして泣きそうな顔で、でも泣いたらメイクが崩れるから必死に我慢しながら「ズルいよッ」って怒ってたのはディノだった。

だって楽屋の中ではみんながみんな、ウジに頼んだソロ曲のことで盛り上がっていたのに、自分だけが知らなかったから。
慌てて「ウジヒョンッ俺はね」って言いかけたのに、バーノンが「もう締め切ったみたいだよ」とか言ってくるし、ホシが「お前はソロ曲あるじゃんもう。ほら、オーダーなんとか?」とか言い出して、ディノのソロ曲を知らないフリをする。

「そんなこと言ったらホシヒョンだってスパイダーだって、ホランイパワーだってあるのに」
「いやでも俺らはブソクスンカムバック込みでのソロ曲プロジェクトだし」

誰もプロジェクトだなんて言ってないし、なんならブソクスンのカムバックだって約束してないってのに、話は決まったように語られるから余計ディノは焦るんだろう。

「なんでスングァニ俺に教えてくれないの?」

ディノは当然のようにスングァンに突っかかるけど、「俺ら宿舎が違うじゃん」と返された。

「騙されないよ。だって絶対スングァニはボノニヒョンに言ったはずだしッ」

どうやらディノは騙されなかったらしい。まぁでもスングァンは国を超えてディエイトにも言ったんだから、確かに宿舎が違うぐらいでは言い訳できないだろう。

「それに、なんでヒョンたちも教えてくれないんだよ」

ディノの矛先がヒョンラインにも向く。でもディノが怒ったぐらいでどうにかなる面子でもない。

「一緒に頼んでやるから、な」とジョシュアが言えば、「ほら、お前お得意のカトクで3ヶ月後ぐらいにしれっと希望を送りつければいいだろ」とジョンハンが言う。「ヒョンたちのソロ曲の、お前はカバーでいいじゃん。それなら1人で12曲歌ってアルバム出せそうじゃん」とエスクプスが言う。

ジョシュアの言葉は普通に優しかったのに、ジョンハンとエスクプスの発言にジョシュアが爆笑するもんだから、95ラインはまとめてディノから睨まれていた。

「いやいや大丈夫だって」ウォヌが言う。
「そうそう大丈夫だって」ホシが言う。

怒ってるディノも可愛いと思ってるのが丸わかりな感じで、2人とも適当なことを言う。
しかし何の根拠もないのがディノにも丸わかりだったからか、96ラインの2人もまとめて睨まれていた。

「じゃぁほら、お前も希望言えよ。でも、別にソロ曲のプロジェクトなんて本当にないからな」

しょうがないとばかりにウジが言えば、あちこちから「ウジはディノには甘いから」って声が聞こえてくるけれど、それは全部そっくりそのまま全員に言い返してやる......って感じ。
同じマンネラインのバーノンやスングァンですらディノのことを可愛いと思ってるんだから、その上のヒョンたちがディノのことを常から可愛いを通り越して愛おしいって思っててもしょうがないかもしれない。

嬉しいってことを隠しもせずに、それでも真剣な顔で悩みはじめたディノのことを、みんなが嬉しそうに見てる。

「ディノの前ではカッコよくて頼り甲斐のあるヒョンでいたいって思えるのは、アイツが真っ直ぐな目で、俺たちのことをヒョンって呼んでくれるからだと思う」

そういつだか、エスクプスが言っていた。
まだ子どもだったのはみんな一緒だったのに、なんでかディノだけはまだ子どもに思える。それはディノにとっては迷惑なはなしだろうが、いつまでも頼りない弟でいて欲しいとも思うし、その成長に喜びたいとも思う。

優しいディノは、ジョンハンに少し似てる気がする。踊りに妥協しないところは、ホシに似てる。負けん気が強いところとか、ケンカする時は強気なのに時間が経てば弱気になるところも、それぞれ、ヒョンたちから少しずつ何かを貰って育ってる気がする。

「色んな音を少しずつかぶせて、いつのまにか音楽になってる感じの曲がいいかも」

キラキラした感じの目で声で表情で、ディノが語る。それがもしかしたら、昔ボムジュヒョンを前にして自分の音を見つけたいって話した自分と似てたかもしれない。

「いやでもディノは焦らなくていいよ。ソロ曲でるの、来年じゃなくて再来年だから」

キラッキラなディノの表情を一瞬でフリーズさせたのは、嫌がらせとかでは全然なく、本当に慌てる必要はないと伝えたかっただけのジョシュアだった。

「まぁそうかも。だって俺ら13人いるし、毎月1人ずつ出していくにしても、ディノは最後だから再来年だな」

ミンギュが冷静に言う。

「なんで俺が最後なんだよ。ジュニヒョンだってディエイヒョンだっているじゃん」

当然ディノはそう言い返したけど、「いや、ミョンホはもう壮大な要望を伝えたって言ってたよ」とドギョムがいらぬことを言うから、「だからなんで遠い異国にいる人がこの情報を知ってて、俺が知る方が遅いんだよッ」って振り出しに戻ってディノが怒ってた。

本当ならちょっとの時間でも寝たかったというのに、現場のスタッフさんたちに「そろそろお願いしますッ」って言われるまで、一睡もできなかったウジだった。

ベストプロデューサーに選ばれると、色々あるってことを知ったウジだった。
でもセブチのことを考えるのは嫌いじゃない。
普段からメンバーそれぞれのことを考えながら曲を作ってたりするから特に。
でも想像なんかより、現実の方が面白いけど。
セブチはどうしたって、リアルに面白いけど。

 

The  END
8799moji