ミンギュが楽しそうに鼻歌を歌いながら、クローゼットの中に、サンタクロースの服をしまっていく。
定番のサンタクロースの服というよりは、本当にシュッとしたスーツの、サンタクロースバージョンのようで、見た目にもかなりカッコイイ。きっと背の高いミンギュとウォヌが揃って着れば、さぞかしカッコイイことだろう。
だけどそこはウジの部屋で、ウジのクローゼットだったけど......。
「で、お前は俺の部屋で何やってんの?」
しかもベッドにはウジがいて、ミンギュが勝手に部屋に入ってきたところから全部見てるってのに......。
「だって、俺とウォヌヒョン同部屋じゃん?」
ミンギュが言うには、ウォヌに内緒でクリスマスの準備をして、「サプラ~ィズ」って言いたいらしい。
ほとんど寝るためにしか帰って来ない、しかもフロアが違うウジの部屋は、いろいろ隠しておくにはもってこいだからってミンギュが熱く語るのに、そう言えばと見回してみれば、クリスマス的なオーナメントやらが勝手に増えている。
「まぁいいけど」
「うん。ウジヒョンはそう言うと思った」
どうでもいいとばかりにミンギュの存在すらふる無視してスマホをいじってるウジと、なんだか楽しそうにクリスマスソングを歌いだすミンギュだけが知るはずだったその色々は、当然ながら一番にジョンハンにバレた。
どうしたって楽しいことには目がないからってのもあるし、秘密の匂いに敏感だっていうのもあるだろう。でもまぁ何より、コソコソするにはミンギュがデカすぎるからってのが一番だったかもしれない。
そしてジョンハンはそれを「ウジの部屋になんかいいもんがあるっぽい」ってホシとスングァンにリークした。
それを聞いたホシとスングァンが、「ふ~ん、そう」なんて言うはずもなく、当然のように聞いた瞬間にはウジの部屋に向かってダッシュして、そのまま主不在の部屋に押し入ったのは言うまでもない。
ウジの部屋の中は、クリスマス的なもので溢れてて、見るだけでテンションがあがった3人だった。
そこで一番に気づいたのはやっぱりジョンハンだった。
「全部2人分ずつあるじゃん」
見れば本当に2人分ずつ揃ってて、スングァンが「凄いホシヒョン、これ、サプライズだよ絶対」とか言うもんだから、ホシが完璧勘違いして「チンチャロ?」って驚きつつも喜びつつも、夢じゃないかとジョンハンのことをツネってみようとして、当然のことながら逆にツネられていた。
まぁでも、クリスマスまみれのその部屋に「いいないいな」って言ってるスングァンと、謎にテンションあがりつつもなんでか照れてるホシだったけど、ジョンハンは『いやこりゃ絶対ウジじゃないわ』って気づいてた。
だいたい、サプライズなんてするタイプでもないし......。
クローゼットの中にはサンタクロースなスーツがこれまた2着あったけど、ウジのサイズでもなかったから、ミンギュが持ち込んだこれらがウォヌへのサプライズだってことも、だいたい察していた。
でもその頃には、「サップライズッ、サップライズッ」ってなんでか、スングァンとホシは手拍子しつつも盛り上がっていたから、言い出せなかったけど......。
でもサプライズだって気づいたんなら、気づかないフリをするのが普通だっていうのに、テンションあがりすぎて我慢できなかったスングァンは、ディノとバーノンに話しちゃったし、嬉しすぎて我慢できなかったホシは、ウォヌとドギョムに話しちゃったし、ひとり『あちゃ~』って思ってたジョンハンは、当然ながらエスクプスとジョシュアに話しちゃったし......。
作業部屋に籠ってたウジと、クリスマスグッズを買い集めるのに必死で宿舎にいなかったミンギュには、誰も話さず。
ちなみにドギョムがディエイトに、ウォヌがジュンにカトクでそれを話したもんだから、結局セブチ全員がそのサプライズを知っていた。
でもさすがディエイトは、『それ、ウジヒョンじゃなくない?』って気づいたけど、それを聞いたドギョムは特にピン来てなかったから、残念。
とりあえずジョンハンがさりげなく、「ミンギュがウジの部屋にコソコソ入っていくのを何度か見たけど」って言ったのに、なんでかスングァンが「ミンギュヒョンがウジヒョンの手伝いしてあげたんだね」って決めつけて、全員が「なるほど」って頷いて、ミンギュのことを褒めたたえてた。
「ウジだけではサプライズなんて無理だもんな」ってホシがやっぱり照れて言う。
その横ではウォヌが何も気づかないのか、「あぁ、なるほどね」って言うだけ。
「いや、ウジはサプライズとか嫌いじゃないかな」
ジョシュアまでそれとなくそう言うのに、なんでかスングァンがまた「苦手なことを頑張るのって愛だよね」とか言って、全員が「愛のちからか~」ってしみじみしてた。
「どうしよう俺、幸せすぎて逆に怖いわ」ってホシが嬉しそうな顔で不安がっていて、その横ではウォヌが全然気づかないのか、「なんかいいな、お前」ってホシのことを羨ましがっていた。
「いや、ウジは絶対クリスマスも仕事だろ」
エスクプスまでもが事態の鎮静化をはかろうとしてそう言ったのに、またもやスングァンが、「だからミンギュヒョンに全部丸ごと頼んだんじゃない?」とか言って、全員で「さすが元同室」って納得顔。
「俺クリスマスイブイブあたりから、サプライズの邪魔は絶対にしないけど、ウジの側にいつでも走っていける距離にいるわ」ってホシが宣言してた。
その横ではウォヌが、他人事のように笑って、「じゃぁミンギュをクリスマスイブイブイブあたりから、貸しとくわ」って笑ってた。
「「「........................」」」
エスクプスとジョンハンとジョシュアは、何を言ってもテンション高いスングァンと、人生で一番幸せって感じのホシと、微塵も察しないウォヌと、それらに一緒になってワイワイガヤガヤする弟たちの前に力尽きかけていた。
だってホシはいくら待ったって、クリスマスのサプライズなんて起きないってのに。
スングァンは「愛だ愛だ」って喜んでたけど、ウジの中にはそんな愛はきっとないし、どうしたって絶対ウジは仕事しかしないってのに。
あぁそしてウォヌはそれら全部が自分のためだってのに他人事のように笑ってるだけ............。
結局エスクプスとジョンハンとジョシュアがとった行動は、その場にいなかったミンギュとウジを捕まえることだった。
「は?」
「お?」
ミンギュとウジが、ヒョンたちの説明に驚いていた。
ただ部屋を貸していただけのウジなのに。
そしてクリスマスに向けて、忙しい中必死に準備していたミンギュなのに。
いやもうそれなら全部バラしてしまえ......っていう案も出るには出たけれど、そんな話し合いのさなかホシがウジの作業部屋にやって来て、嬉しさ隠しきれないけど知らないふりをしてます......ってのが丸わかりの態度でいるもんだから、「いや無理だろこれは」ってさすがのウジが言う始末で......。
結局、ウジの部屋にあるのはクリスマスパーティの一部だったってことにしようと話し合って、急遽全員分のクリスマスのあれやこれやを集めることになった。
95ラインの全員とミンギュで、クリスマスまでもうあまりないってのに、年末に向けてのリハーサルが続く中でも走り回ったのは言うまでもなくて、仕事が詰まってて自分は動けないからと、「あれやこれやの分は俺が出すから」ってお金を担当したのはウジだった。
いやもう完全に巻き込まれ事故にあったようなウジだった。
でもきっとクリスマスには、95ラインとミンギュとウジ以外の全員がそのサプライズに喜んで幸せになるはず......。それだけは確実だから......。
The END
3153moji