妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

Rock with you

Rock with you......

今ちょっと言葉が出ないもので。とりあえず、blogを作って、いろいろ張るだけにする。幸せ。

 


SEVENTEEN (세븐틴) 'Rock with you' Official MV

 


SEVENTEEN (세븐틴) 'Rock with you' 응원법


SEVENTEEN(세븐틴) - Rock with you (Music Bank) | KBS WORLD TV 211022


SEVENTEEN Performs 'Rock With You' | #MTVFreshOut


[Choreography Video] SEVENTEEN(세븐틴) - Rock with you


SEVENTEEN(세븐틴) ‘Rock with you’ M/V BEHIND THE SCENES


[INSIDE SEVENTEEN] SEVENTEEN ‘Rock with you’ MV Reaction


[SPECIAL VIDEO] SEVENTEEN(세븐틴) - 'Rock with you' (Attacca Ver.)


[SPECIAL VIDEO] SEVENTEEN(세븐틴) - 'Rock with you' Band Live Session


[SPECIAL VIDEO] SEVENTEEN(세븐틴) - 'Rock with you' (007 Edition)


[INSIDE SEVENTEEN] ‘Rock with you’ Special Video BEHIND


[SPECIAL VIDEO] SEVENTEEN(세븐틴) - 'Rock with you' (Attacca Ver.)


SEVENTEEN (세븐틴) 'Rock with you' ENG Lyric Video


SEVENTEEN (세븐틴) 'Rock with you' Official MV (Choreography Version)


[INSIDE SEVENTEEN] ‘Rock with you’ 활동 비하인드 (‘Rock with you’ BEHIND)

 

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Rock with you

あの頃僕らは、世界を敵にしたってずっと一緒にいる......みたいな気持ちでいた。

敵なんてきっとどこにもいなかったはずなのに。でもいつだって誰かに何かあれば、全員が走ってたはず。絶対守るみたいな感じで。

今思えば、ただの笑い話だったけど......。

 

エスクプスはゴリゴリに見えて、他のチームや後輩たちからはちょっと怖がられてたけど、それは謎に統括とか呼ばれてたからで、普段は当然怖くもゴリゴリでもなく全員いれば幸せで楽しそうに笑ってることが多くて、印象で言えばビビってることの方が多かったヒョンだった。

チームだからって別にケンカ上等みたいなチームじゃなくて、最初は誰かの父親が言い始めて野球チームを作ったはず。日曜日に自分たちが集まって飲みたかっただけだったから、誰も真面目に練習なんてしなかったけど。

それからフツトサルチームにもなったし、バレーボールチームにもなったし、ホシの強い希望でダンスチームにもなったけど、それでもなんでか周りからはケンカ上等な、しかも地元最強説まであるチームだと思われていたのは謎だけど。

「アンネミョンジンダ~、カゥィバゥィボッ!」

代表してエスクプスが出てるのに、なんでか恥ずかしがって何も出さず。負けていた。当然ながら「ヤー何やってんだよッ」ってジョンハンに怒られてたし、勝負欲ハンパないホシやスングァンにも怒られてたけど、エスクプスは「ミアネ」って言いながらも、「だってなんか、勢いに負けたんだもん」とか言うヒョンだった。

いつだって「誰かいないのか?」って言うヒョンでもあって、寂しがり屋だからかも。
みんなと一緒にいると強気なのに、見知らぬ人がいると全然ダメなくせに、いざって時は一番前に出て全員を守ろうとする。そんなヒョンでもあったかも。

でも自慢のヒョンだった。だって皆がカッコイイっていうから、男らしいって言うから、強いっていうから。でもほんとのほんとは、物凄い優しいヒョンなんだけど。

 

 

キムミンギュはデカかった。
子どもの頃から一緒だったのに、いつの間にそんなに育ったのか。
でもそれ以上になんでもできる器用な奴で、弟たちの面倒見も、ヒョンたちの面倒見も、チングの面倒見も良かったから、いつだってキムミンギュはキムミンギュだったけど。
なんでもできるのに、なぜかやらかす。それもまたキムミンギュだった。
だいたい、地元最強説が出たのは明らかにミンギュのせいだろう。
盛大にケンカをしたことが2回だけあって、その2回とも、ミンギュの勘違いではじまったケンカだったから。

それはウォヌが顔に傷をつくっていたのを見たミンギュが、ケンカをふっかけに来た誰かにウォヌが殴られたんだと勘違いしたから。

「は? お前ら、何やってくれてんの?」

そう言って、ミンギュがその長い脚で、その場にいた三人ぐらいをなぎ倒して、そのまま別の誰かに殴りかかってしまったから。
もちろんそんなミンギュのことを後ろから殴ろうとしてた奴がいたけれど、そんな奴には当然のようにディエイトが蹴りを入れていた。

大人しそうに見えて、全然そうじゃない闘争心の塊のようなディエイトは、ケンカがはじまってしまえば絶対に負けたくない派だったりして......。
なんでか「ヒャッハー」って一瞬で狂気な雰囲気を醸し出してホシが参戦しに行ったし、ジュンだって冷静な顔のままで、向かってくる奴らだけはしっかり沈めてた。

でも結局ウォヌの顔の傷は、倉庫の片隅に入り込んだ子猫に手を伸ばし続けた際に、つくったものだったっていうのに......。

 

 

普段は絶対ケンカなんてしないけど、「なんかちっせぇのいるけど」とか言われると、「ぁあッ? もう一回言ってみろよッ」とブチギレるのはウジだった。

いやなんならケンカ相手の人たちだって、一応『女子どもには手をださない』と思っていて、さらには小柄でひ弱そうな人間には、ちょっと押したり程度はしても殴りかかったりもしない。まぁ正々堂々とケンカしてるというよりは、殴ったらふっ飛んで行って何かに当たって大怪我しそうだからってのも、あるかもしれない。

なのに『俺はいつだって冷静です』みたいな顔をして、「お前だけは許さないからなッ」とか啖呵切ってケンカに参戦しに行くんだから、信じられない。

知的なイメージで、戦略とか組み立てそうにも見えるのに、案外感情優先で、負けるのは大嫌いなのに誰よりも小さくて、ケンカなんてしそうには絶対に見えないのに。
でもウジが参戦してしまうと当然のようにウォヌとジュニがそんなウジの横に立つ。2人ともその長い脚で、ウジを守りながら戦うことになるから。

だって本当にウジは小さいから、ちょっと殴られたら簡単にふっ飛んで行く。
相手はウジの小ささに驚いて、少しだけ引く。でもウジの気合が凄いから、放置もできなくて胸倉をつかめば簡単に持ち上がってしまって驚くけれど、ウジに向かって拳をあげようもんなら、横から長い脚で蹴られるわ横から無表情の男前に殴られるわ。
相手にしてみれば、散々だろう。

だからかは知らないが、地元以外でも『ウジだけは怒らせるな』って言葉が独り歩きしてて、一番小さいけどケンカじゃ負け知らずらしいとか、そんなことだって言われてたけど......。

 

 

ケンカの原因......って訳でもないけれど、ケンカを売られる原因は明らかにユンジョンハンだった。
大抵が、「俺の女に手を出したユンジョンハンってどいつ?」って感じで、ケンカというか、決闘しろって感じでやってくる人が多かったから。

「お前今度は何したんだよ」

って、エスクプスもジョシュアも言っていたけど、「ほぇ? 俺? 何もしてないけど?」ってとぼけてたジョンハンがいたけれど、それは嘘でもなんでもなかっただろう。

だって親切に道を教えてあげただけなのに、なんでか惚れられてたりするから。
落とした財布を拾ってあげただけで、なんでか勝手に子どもができたと騒いだ高校生とかもいたっけ。

とにかく、老若男女かかわらず、振り向いただけで魅了していくもんだから、笑顔なんて向けちゃったらイチコロかもしれない。
だって決闘上等みたいに威勢よくやって来た人たちが、結構な確率でユンジョンハンを見た瞬間には驚いて固まって、その後なんでか顔を赤らめて、緊張した面持ちで自己紹介なんかしはじめる姿を何度も見たから。

でも見た目通りの人では全然なくて。平気でえげつないことも言うしやるし。なのに綺麗に笑ってたりするし。しかもケンカが嘘でしょってぐらいに強かったりもするし、多分ケンカでは負けたこともないはず。

だって誰も考えないような反則技出しまくりで、『え、今の卑怯すぎない?』って思わず身内なのに言いそうになるぐらいの姑息なこともするし。

でもどんな時でも、エヘへって感じで楽しそうに笑ってて、それが物凄い綺麗なんだけど。

だから多分、地元でやたら有名だったのは、ユンジョンハンのせいだろう。

 

 

「チッ」って舌打ちをすると、敵どころか味方もビビる。それがディエイトだった。
滅多と怒らないし、ケンカにだって参戦することは稀だし。大抵は後ろに控えてるだけなのに、時々ブチ切れる。

「ぅお?」

ディエイトがキレると、そんな声を出して驚くのはジュンだった。
ミンギュが2、3発で倒す相手を、1発で確実にシトメル感じのディエイトだったから、慌ててジュンが駆けていく。
本気の1発が相手に届くその前に、そこに手を出して止めるのがジュンの役目で。

「なんで邪魔すんの?」

ケンカ中なのに息も乱さずにジュンに文句を言ってくるその声は冷たくて鋭くて、しかもその間にも身体をキレイに回転させた勢いで回し蹴りとか決めちゃうし。
それはなんだか、普通のケンカに殺し屋が入ってきたぐらいの勢いとか雰囲気とかがあって。

ジュンが合間合間にディエイトの攻撃を防ぐそれも結構なスピードで、結局数分も経たない間に2人の周りには目に見えて空間ができるという......。

「あ? ジュニヒョンが邪魔するからケンカにならないじゃん」

とディエイトは怒るけど、ジュンが邪魔しないと、それこそケンカにならないはずで。
プリプリ怒ってるディエイトも、結構それで発散はされたのか、「弱いなら、ケンカなんてなんでするの?」って、冷めたことを言いつつも、いつもの様子を取り戻す。

恐ろしいのは見た目では判らないの典型で、そんなディエイトが一番前にいるだけで、ケンカにまで発展せずに勝つ......ってこともあるぐらいで、そんなこんなで、地元で負け知らずな伝説が生まれたのかもしれない。

 

 

そんな中間たちの中で、1番マンネなのはディノだった。
いや正確にはディノにも弟がいたし、もっと下の誰かの妹とかもいたから、1番マンネってのは嘘だったけど、ケンカ上等な仲間内では、ディノはマンネだった。
謎に最強なヒョンたちを見習って育ったっていうのに、あろうことかディノは中学校の時に虐められた。
それを「俺は別に平気。気にしてもないし。あんなの無視しとけばいいよ」とディノは言ったけど、そんなこと、ヒョンたちが許すはずも納得するはずも我慢するはずもない。
けど「回し蹴り禁止だから」ってまずディエイトがディノに厳しく言われてた。
ディエイトはこっそりとディノの後をつけて、ディノを虐める奴らを片付けてやる......って思ってたことは、秒でバレたってことだろう。
当然、「ウォヌヒョンも、毎日俺の学校に来るの禁止だから」って、俄然様子を見に行く気だったウォヌも釘を刺されてた。
さらには、「ユンジョンハンは絶対動かないで」って呼び捨てられて頼まれてたのか命令されてたのか判らないが、「絶対絶対絶対お願いだからやめて」って言われてたのはジョンハンだった。

だってユンジョンハンはいつだって強すぎるほどに強いから。
しかも笑ってさらっと物凄いことをする気がするから。
昔、えこひいきする教師がディノの担任になった時には、「反面教師って、こういう奴のことを言うんだぞ」って皆の前で言い切ったから。

だからか、ディノは強く育った。
自分が弱かったら、強すぎるヒョンたちによって、周りに被害が及ぶから。

 

優しいとは言われるけれど、誰にでも優しい訳じゃない。
ただ、優しい雰囲気をまとってはいる。それだけのこと。
ジョシュアはいつだって優しそうに笑ってるし、話し方だって柔らかいし、基本困ってる人には親切だし。
だけど、決して優しい訳じゃない。
それに密かにユンジョンハンは、ジョシュアだけは怒らせないようにしようと本気で思っているから。

「ウリマンネが、イジメられてるって? は? 何言ってんの?」

ということで、ジョシュアの耳にその話題が入ってしまって、「あ、ヤバッ」って言ったのはエスクプスで、『うひぃ』みたいな顔をしたのはジョンハンだった。

「シュアヒョンたんまッ」

慌ててそう言ったのはウジで、「俺らがなんとかするからッ」って珍しくも焦ってたのはホシで、「シュアヒョンが動くほどのことじゃないって」とジョシュアを本当に押し留めたのはウォヌで、首がもげるんじゃないかってぐらいに力強く何度も頷いてたのはジュンで......。

なんでかジョシュアが出るぐらいなら俺らが......って真剣に思ってる96ラインの4人がいて、いつだって物事の解決を図ろうとするから、結果ジョシュアの出番は来ないという。
だからいつも97ライン以下は不思議な顔をするばかりだけれども、それだけいざって時のジョシュアは凄いのかもしれない......とも思ってるけど、やっぱりそれを見たことはないから、弟たちにとってはジョシュアは優しいばかりのヒョンだった。

 

 

しらって顔と態度で何にも興味ありません......みたいな顔をしてるのに、案外面倒見が良いのはウォヌだった。
ウジがキレてる時にはそのフォローに回るし、ミンギュが頑張ってたらちゃんと褒めてやるし、ディノのことはいつだって見てる。
それからヒョンたちのことも気にしてて、チングなホシとジュンが迷走しはじめたら一番最初に気づくのもウォヌだった。

ケンカ中はその無表情が際立って怖がられることがあるけれど、密かに『ふふん』とか思いながら動いていることを身内は気づいてる。
無表情に見えて楽しそうだし。
時々レンガとか持って、ケンカ相手とレンガを見比べてたりする。そうすると大抵の奴は「ごめんなさい。すみません。許してください」って言いながら逃げていく。

「いやお前、何悩んでんの?」

ってホシが聞いたりすると、はたから見れば『悩まずに行けよ』って言ってるように見えるらしく、そこら辺にいたケンカ相手がさーっていなくなったりもする。

そうすると、ウォヌ的には『あぁ、良かった』って感じで口元だけで笑うけど、ウォヌを知らない人からすると、それが物凄く恐ろしいらしい。

ほとんど自分から仕掛けることなんてなくて、誰かを庇ったり守ったりする時ぐらいしか、手を出さないウォヌなのに。

 

 

バーノンはケンカに参加したことがない。
大抵が、ワンテンポどころか、かなりズレているから。そしてだいたいが、ヘッドホンで音楽を聴いているし、スマフォで子猫の動画とかも見てるから周りが目に入ってないし、1人だけのんびり寝てる時とかもあるし。

子どもの頃からそれは変わらなくて、のんびり屋さんな上にちょっとズレていたから、猫が良く寝てる場所に自分も寝てみようとして、階段の途中で眠って朝になったら当然のように階段から落ちてあちこち青あざを作っていたり......。雨が降ったら学校を休んでもいいと本気で思っていたり......。

「いやそりゃどこの世界のルールだよッ」

思わずそう、優しさの塊みたいなジョシュアが驚きすぎてツッコんだほどだった。
雨が降れば誰かが絶対に迎えに行かなきゃ、「でも今日は雨だから」とか本気で言うバーノンは確実に休んでただろう。
ちなみに風が強い日もバーノンの中では休んでもいいというルールになっているらしい。

とぼけすぎてるけれど、でも本気でケンカ上等みたいな集団になってないのは、「なんでケンカなんてするんだよ」って言うバーノンがいるからで。

ケンカ中なのに、しかもケンカ相手なのに、殴られて外れたコンタクトを、何故か気づいたバーノンがしゃがみ込んで探し出したりするから。

「みんなストップ、ストップッ」ってドギョムあたりが叫んで、結局全員で探すはめになる。「ケンカするのにコンタクトなんてつけてくんなよ」ってジョンハンあたりが文句を言うけれど、そんなジョンハンだってしゃがみ込んでるから。

やっぱりバーノンがいるから、ケンカはふわっとした感じで終わって、さっきまで殴り合っていたっていうのに、なんでか「じゃぁな」って別れたりする。

 

 

ドギョムはバカだ。
どれぐらいバカかというと、とてつもないバカだ。でも愛すべきバカだけど。

ケンカ相手とかがユンジョンハンを偵察に来てたりするのに気づかずに、ホイホイ案内して来ちゃったりするけど、ドギョムだけが気づいてなかったりする。

それはもうもう性格で、勉強ができるとかできないとかじゃない。
お人好しで、優しくて、誰にでも親切で。だから騙される。
絶対もう騙されないぞって言いながらも、困ってそうな人にはやっぱり手を差し伸べちゃうんだから、しょうがない。

ディノのことが心配でコッソリ後をつけると言って出かけても、なんだか楽しくなるとでっかい声で歌いながら歩いちゃうから、「ドギョミヒョン、後ついてこないでよ」ってすぐにバレる。それを自分のせいとは全然思わずに、「ディノは凄いな」って関心してたりするけど、ほかの誰かにならムキになって怒るディノも、そんなドギョムのことはついつい笑って許してしまう。

「で、お前なんでイジメられてんの?」

のほほんと、普通なら聞きにくいことも聞いてしまうのも、ちょっと微妙だけどドギョムならではかもしれない。

他の誰かに聞かれたらきっと答えなかっただろうに、ディノは「内緒だよ」って言いながら答えてくれたから。

「ハニヒョンがさ。ディノは誰の赤ちゃん?って聞くじゃん。あれを同じクラスの奴らが聞いてたみたいでさ。バカにされただけだよ。殴って黙らせてやってもいいけど、無視しとけば全然大丈夫なんだから、ハニヒョンには絶対言わないでね」

っていう内緒の話を、ドギョムがみんなに話してしまったのは言うまでもない。

「絶対内緒だよ」って言いながらも、ひとりひとりに。
いやもう全員の前で話した方が絶対早いのに。

そんなドギョムはやっぱりバカだ。
でも愛すべきバカだけど。
それにどんな時もユンジョンハンだけはドギョムのことを、「でかしたッ」って認めてくれるから。

 

 

いつだってテンション高くいるように見えて、実は地味だったりするホシは、普段はあまり目立たない。
ウジと一緒に行動してて、時折変な笑い方をしてるけど、そんな時はウジの方が盛大に笑ってるから、やっぱりそれほど目立たない。

でもなんでかケンカになると、どっかのネジが飛ぶのかいきなり「ヒャッハー」って一瞬で狂気な雰囲気を醸し出してたりする。
普段は素で「およよ」とか言ってたりするのに不思議だ。

目がいいのか、攻撃はスレスレで避ける。
足の動きが早いのかそれとも体幹が良いのか、手が出る時には同時に身体が前に出るから、ホシの攻撃は早い上に重い。

それでも楽しそうに笑ってるから、逆に怖いと思われている。
でもその笑顔が消えて真顔になった時が一番怖いことは、仲間たちしか知らないけれど。
その大抵が、大切なヒョンやチングや弟たちが傷つけられた時で......。
当然ディノが虐められてると聞いて、静観してるなんてできるはずもないホシだった。
しかも思い立ったら行動するのは爆速に早い。

こっそりディノの後をつけて様子を見ようとか、何かあったら出て行こうとか、ちゃんと考えて外堀を埋めていこうとか。そんなこと考える訳もない。

だからホシはとりあえずディノの通う学校の、だいたいディノと同じぐらいだろう学生を捕まえて、「なぁ、誰かがイチャンを虐めてるってほんと? ほんとなら、俺が殴り飛ばしたいんだけど、ソイツがどこの誰だか知ってる?」って誰彼かまわずビビらせていた。
当然たまたま捕まった学生の中には、ディノの虐めてるつもりもなく揶揄って笑ってる学生もいて............。
そんなホシのおかげか、ディノを虐める人間はいなくなったらしい............。
でもそんなホシのせいで、ディノがケンカ上等な集団の1人だと、学年で恐れられるようになったらしいけど............。

 

 

ジュンは大変だった。
普段はぽやぽやしてて、1人違う世界にいるようで。のんびりしてる時もあれば、誰かと交信でもしてるのかって感じの時もある、そしてイタズラするのも大好きで、大抵は笑ってる。

それなのにケンカとなると、ウジのことを周りから守ってたり、ディエイトから周りのことを守ってたり、それでも案外余裕があって色んなことに目がいくからか、ディノのことを守ったり、ボーッとしてるバーノンのことを守ったり。

なのになんでかスングァンに、「ヒョン、ちょっと撮影もして」ってなんでかスマフォを渡されたりする。

「ほぇ? 撮影? なんで?」
「いいから、ほら、早く早く」

そう言われれば素直に撮影をはじめるジュンがいて、片手が埋まってるけど、長い足で相手を倒したりはしてるけど、あちこち見てもいるけど。何せ撮影しながらだったりするから、いつもならもう少しゆとりがあるのに、手加減ができなくて思いっきり蹴り倒してしまったりして。

「ぅわ、ごめん」
「あ、ごめん」

最初は勢いよく蹴り倒した相手に謝っていたジュンも、そのうち面倒になってきたのか、「あぁもぉ、なんだよ」とか言いながら、次々とそこら辺の人を蹴り倒していく。もうとっとと倒してケンカを終わらせた方が早いとでも思ったのかもしれない。

気づけば1人で無双状態だったりして。
結局、ジュンが結構テンパってることに気づいてウォヌがフォローにやって来ることになる。
さすがチング。

 

 

スングァンは可愛い。
よく笑うし面白いし誰かのモノマネをしてたりもする。最新のアイドル曲も歌って踊れるけれど、親世代ですら懐かしいって言うような曲だって知ってる。
それから誰よりも早く、人を見つける。
だから誰よりも早く、「クプスヒョンおかえり〜」とか、「ホシヒョンお疲れ〜」とか、いつだって一番に誰かの名前を口にして、駆け寄って、本当に嬉しそうに笑って「聞いて聞いて」って言うこともあれば、「どうだったどうだった?」って話を強請ってくることもある。
そんな行動すべてが弟の鏡みたいな感じで、可愛いし愛おしいから、いつだってちょっとしたお願いは聞いてしまうことになる。

怖がりだからケンカなんかに首を突っ込むことはしないけれど、雰囲気だけは体感したいと思ってるからか、ジュンにカメラを回させていた。
でもスングァンは真剣に、ジュニヒョンのことを心から尊敬してるとか言う。
いやいや、無理難題押し付けといて、尊敬の言葉の意味を間違えてるんじゃないかって、ホシに言われる始末だったけど。

いつもやったりやられたりな関係のディノのことだって一番心配して、密かに俺がどうにかしなきゃ......って言いながらスングァンは出かけて行った。ホシがあっさりと問題を解決したなんて知らずに。バーノンのカトクに、「俺が帰ってこなかったら、ヒョンたちに連絡して」って謎な言葉を残して............。

 

 

あの頃僕らは、世界を敵にしたってずっと一緒にいる......みたいな気持ちでいた。
敵なんてきっとどこにもいなかったはずなのに。でもいつだって誰かに何かあれば、全員が走ってたはず。絶対守るみたいな感じで。
今思えば、ただの笑い話だったけど......。

 

 

「は? スングァニが? 帰ってこない?」

まだ夕方。でも少しずつ夜が忍び寄ってきてて、たぶん油断すれば一瞬で暗くなる。そんな時間帯。

「あれ? スングァニは?」

いつもは五月蠅いぐらいに騒がしく、どこかで歌ってたり騒いでたり笑ってたりする声が聞こえないと気づいたミンギュがそう言ったのと、バーノンが自分のカトクに残されたメッセージに気づいたのはほぼ一緒ぐらいで、「ボノナ、スングァニは?」っていうミンギュに、バーノンが自分宛のカトクを見せたのはその直後で。

「ヒョンッ! スングァニがッ!」

カトクの内容を見てミンギュが叫んだのは言うまでもなくて。
全員が事情を理解した時には、ジョンハンはもう走りはじめてた。瞬発力はさすがだけれど、どこに行けばいいかは絶対判ってなかっただろう。

「ヤーッ。お前らスングァニに何かしたらタダじゃおかないからなッ」

いきなり電話に向かってそう怒鳴ったのはディノで、咄嗟に自分に文句ばかり言ってくる同級生の先頭切ってる奴に電話したみたいだった。いやでもそんなことを突然言われた方は、かなり困っただろう。

慌ててスングァンの日記帳を持ってきたのはバーノンで、見知らぬ誰かの自転車に跨ったのはドギョムでそのままジョンハンを追いかけて行った。
それから一瞬でブチ切れたのはジョシュアで、「チッ............」って舌打ちしたと思ったら、そのままゆっくり歩きはじめる。

「シュアヒョンが舌打ちしたけど?」って慌てたのはウォヌで。
「いや、ドギョミは自転車盗んでったけど?」ってこれまた慌てたのはジュンで。
「見てない見てない」って気づかなかったふりでやり過ごそうとしたのはウジで。
「俺らも行こうぜ」って、なんでか本気のスイッチ入っちゃったのはホシで。

ウォヌもジュンもウジも、諦めたのか溜息つきつつ動き出す。
落ち着いてたのはディエイトで、ミンギュが急ぎカトクで情報を集めだしたのを傍目に「ヒョンたちはどっか当てがある?」と聞いてきた。

96ラインの4人はお互い顔を見合わせたけれど、当てなんてあるはずもない。ケンカ相手と後からいつの間にか仲良くなってたりするミンギュのような社交性は持ち合わせてないし、元から友達だって少なければ、自分たちだけで楽しく過ごしちゃう4人だったから。

『俺、チェスンチョルだけど。悪いけど、弟を探してるんだ。俺に借りがあるなら今返して。借りがないっていうなら、俺に借りさせて』

エスクプスは普段は同じ道も通らないような相手だけれど、そんなことは気にしてる場合じゃないと、長いこと対立してた相手に電話をかける。
別に、頭を下げろっていうなら土下座だって厭わない。イチゴウユを買ってこいというなら、喜んで走って買いにだって行く。

スングァンの無事をこの目で確認できるなら、そんなことは屁でもないから。

『誰かを殴ったりするような奴じゃないから。もしも弟が無事じゃなかったら、お前んとこの奴だろうが誰だろうが、許さないけど』

エスクプスの声が落ち着いてるだけに、本気に聞こえる声だった。

「凄い、クプスヒョンがカッコいいとこ、俺はじめて見たかも」

ディエイトが地味にヒドイことを言っていたけど、それに笑ったのは96ラインだけだった。
まだディノもバーノンもそこにはいたのに、2人とも別々のことに必死だったから。

ディノは今度も誰かに電話をかけていた。もはや誰にかけていいかも判らないのか、同じクラスの数人に次から次へとかけて、もはや連絡網でも攻めてるんじゃないかって勢いで、「ブスングァンを見なかった? 今日、学校で。俺のことを聞きにきた奴いなかった?」って必死だった。

バーノンはさらに必死で、繋がらないのにスングァンに電話をかけては留守電に繋がることを繰り返し、「日記見るぞ。いいのか、日記見ちゃうからな」って、留守番電話に向かって脅しをかけている。それをスングァンが聞くのはたぶん後日だろうが、そう言って脅せばスングァンがどこからか走って戻ってくるような気がするのかもしれない。

そんな状況を見て96ラインの4人は笑ってたのに、ミンギュが「え? どこらで?」って言った声には反応して、電話をしてるミンギュに向かってウジが「どっちだ?」って言えば、ミンギュも器用に電話しながらも指で方向だけ示す。

「俺ら先に出るから」

そう言いながら、ホシとジュンが走り出す。4人で出なかったのは、その情報の正確さを疑ったから。

「クプスヒョンッ! こっちビンゴかも」

でもミンギュがそう言った時点で、ウォヌとウジが行く。

「エイサッ。俺らも出るから、詳細判ったら連絡して。あとそれから、ハニヒョンたちには、念のためそっちで待機って伝えといて」

ウジがそう言うのにディエイトが頷いたそばから、「あっち足止め作戦だね」とか言うから、ウジとウォヌが同時に笑い崩れそうになっていた。
まぁでも確かに、暴れられたら困るから、それは確かに作戦ではあったかもしれない。

『連れ去られたのか、自分でついてったのかは関係ない。問題はまだ帰って来てないってことなんだよ』

エスクプスが電話の相手に言う。ミンギュがそんなエスクプスに、自分のスマフォを見せていた。

結構色々動きはじめたというのに、バーノンはそんな色々を見過ごしたし聞き逃したし、気づけば「あ? ヒョンたちは? え? スングァニの場所が判ったの?」って、残ってるディエイトに詰め寄っていた。

「まだ確定じゃないけど、たぶん」

バーノンだって、いざって時は早く走れる。ボーっとしてるように見えるけど、機敏にだって動ける。
ただ時々天然が出るけど......。
スングァンの居場所が判ったと聞いて、バーノンが駆けだして行った。ディエイトが止める間もなく。
ウジたちを追って行った訳でもない。学校の方に向かった訳でもない。なんだか1人、全然関係ない方向に走り出したけど、なんでそっちに走り出したのかはディエイトにも判らない。

「ボノニは? あいつ、どこ行ったの?」

電話中だというのにミンギュがディエイトに聞いてくる。でも「え? 知らないけど?」としか言えないディエイトだった............。

結局、連れて行かれたのかついて行ったのかは判らないけれど、悪ガキに毛が生えたような奴らの溜まり場が、寂れた遊戯場の2階にあって、多分そこだろうって話しだった。

そこにガキが集まり出してるって話があって、普段は塾に通ってるような時間帯なのに、中途半端に勉強もしてる奴らも塾に行ってる場合じゃないとばかりに集まっていた。何が理由か、何のためかは判らないけれど。

『悪いけど、ママゴトしてるガキに知り合いはいないな』

エスクプスの電話相手は溜まり場を聞いただけでそう言って、電話を終わらせた。

「ミンギュやッ、ここらの塾に片っ端から電話して、子どもたちがちゃんと揃ってるか確認するようにしむけろ」

なんだかエスクプスから無理難題をふっかけられたのに、ミンギュは笑って「了解」って答えて、さらには「ついでにいないガキの親に連絡取るようにも言っておく」と、なんでもないことのように言う。

「96ラインだけでも問題ないと思うけど、俺も出るわ」

それからエスクプスはそう言って、駆けて行ってしまった。タチの悪い連中に捕まってる訳でもないというのに。でも最近はタガが外れてしまえば素人だって加減を知らない分だけタチが悪いからかもしれない。

「ヒョン、俺は? どうしたらいい?」

ディノがそう言って、ミンギュのことを見上げた。
本当なら96ラインが駆けて行ったのを追いかけて行きたかった。だけど自分が動くことで物事が悪い方に向いたらどうしよう......って気持ちもあった。だって多分、スングァンと今一緒にいるのは、少なからず自分のことを虐めてた奴らだろうから。
真面目に塾に通って成績も良くて教師の覚えも良くて、でもきっと裏では悪いこともしてそうな感じの生徒たちの顔が何人か浮かぶ。

もしもスングァンが一発でも殴られていようものなら、誰ひとり、絶対に許さない。それだけを心に決めて、でもちゃんと自分の動きはミンギュに確認したディノのことを、ミンギュもディエイトも、嬉しそうに見てた。

「お前は俺らの隠し玉だから、もうちょっと待ってな」

ミンギュがそう言うのに、ディノがちょっとだけ驚いた顔をする。
自分が隠し玉だなんて、思ったこともないからだろう。
誰よりも強い訳でもないし、インパクトがある訳でもないし、怖そうでもない。ハッタリも聞かないし、いつだって何かあった時には思わず一瞬ヒョンに視線を送ってしまうし、もっと小さかったころは自分たちの中で自分は確実に弱点でもあったはずだから。
キョトンと首を傾げながら不思議顔をするディノに、ミンギュが笑う。

「万が一にもヒョンたちが暴走したとしても、お前の声なら届くだろ」

そう言われたらディノだって気づいただろう。遊んでてもケンカしてても、ディノが何か声を発すれば、誰かはいつだって答えてくれるし助けてくれるから。もうチビっ子でもないよ俺って言ったって、そうだなそうだなって言いつつも、やっぱり扱いは変わらなかったから。

「それに多分、最終激キレしてるかもしれないシュアヒョンを、止められるのもお前だけかもしれないし」

そうもミンギュが言うから、やっぱりディノは首を傾げてしまう。
ジョシュアはいつでも、どこまで行ってもディノにしてみれば優しいの塊でしかないのに。

「激キレしてても笑うから、あの人は怖いんだよ」

ディエイトまでそんなことを言う。
それからミンギュが、「俺らも移動しよう。96ラインが揃ってるから、問題はないと思うけど」って言うから、ディエイトとディノと3人で、地味に歩き出した。
それはまるでちょっとそこまで............みたいな感じで、焦ってる風でもなくて。

「ヒョン、俺らも走って行こうよ」

思わずディノが焦ってそう言ったほど。
でも結局3人は走らなかった。
場所が特定できて動き始めてからはずっとミンギュはウォヌとリアルタイムで繋がっていて、ウォヌの隣りにはウジがいて、そのウジはリアルタイムでホシを誘導してて、ホシと一緒にいるジュンが現状をディエイトに冷静に伝えて、ミンギュはその場で完璧に状況を把握できていたから。

当然ミンギュはあちこちの塾に連絡を入れた。
「お宅の塾の生徒かは判らないけど、騒いでる生徒たちがいて迷惑してるから、お宅の塾ではちゃんと生徒を管理してるのか。騒がしいのが続くようなら警察に電話するぞ」って。

きっと言われた方は、子どもたちが来ているか確認するだろうし、いなければ親に連絡も入るだろう。警察に電話でもされて、世間からの評判が落ちても堪らないが、塾に子どもを通わせている親たちの信頼も失いたくはないだろうから。

ミンギュがウォヌとの連絡を取ってない間は、ちゃんとディノがウォヌとの繋ぎを取っていた。

本当なら炙り出された生徒たちは、塾や親からの連絡に慌てて帰っていくはずなのに、その時にはもう一番最初に走って行ったホシとジュンが現場に着いていた。

建物から駆け出して来た生徒たちに、「なに? お前らがはじめたのに、抜けられると思ってんのか」ってホシが笑って言ったらしいから、相当ビビったことだろう。

「逃げてもいいよ。でも動画撮ってるから、そこら中の学校にばら撒いて、絶対探し出して訪ねて行くから、今話すのと、自分の学校の正門前で話すのと、どっちがいいか考えれば」

さらにそう言われて、そのまま逃げていく勇気は逆になかったのか、生徒たちがそこに溜まる。
当然動画なんて撮ってないし、ホシのセリフはイヤホン越しに伝えられたウジの言うままの言葉だったけれど、ホシはそんなこと言いそうにないなんて、それこそ一緒にいるジュンぐらいしか気づけなかっただろう。

「戻れよ」

そう言われて、全員が引き返す。
後から来た生徒は意味が判らなかっただろう。
でも目の前に、「運が悪かったな。俺が一番乗りだったんだよ」って笑うホシがいては、無理矢理走り抜けることもできなかったんだろう。やっぱりどうしたって、誰かを殴ったりなんてしそうにない生徒たちだったから。

ホシとジュンに追いやられながら戻った先に、果たして、スングァンはいた。
奥まった場所の椅子に座らされていて、ホシとジュンの姿を見て一瞬で笑顔になったスングァンを見つけて、どれほどホッとしたことか。
でもちょっとだけ、予想してたのとは違ってたけど。
だってスングァンの手には、美味しそうな食べかけのドーナツがあったから。

そこにはスングァンと、まだ塾からの呼び出しがかかってないのか、それとも塾には通っていないのか、数人が残っていて、慌てて出て行ったはずの生徒たちが全員で戻って来る様子に驚いていた。
たぶんその場で、ホシとジュンを見つけて嬉しそうに笑ったのはスングァンだけだっただろう。全員の表情は見れなかったけれど、それだけは確実そうだった。

「お前、何食べてんの?」

思わずホシがそう聞けば、「ドーナツだよ」ってスングァンが普通に答えた。それに思わずホシが頭を抱えてしゃがみ込む。

「甘いもんは我慢するって言ってなかった?」

笑ってジュンがそう聞けば、「大丈夫。これ、焼きドーナツだし、ほら、飲んでるのはゼロコーラだし」ってスングァンが答えたけれど、ジュンにだって何が大丈夫なのかはてんで判らなかった。

でもその会話を電話越しに聞いてたのはウジとディエイトで、一瞬で「スングァン無事」っていう情報だけは回って、全員でホッとしたけど............。

「俺がどうにかしなきゃって学校に行ったらさ、みんな、ディノのことはもう虐めないって約束してくれたし、ディノにも謝りたいって。なんか、物凄く狂った感じの凶暴そうな人が乗り込んできて、自転車から傘立てから蹴り倒してたとかで逆に助けて欲しいってお願いされたんだけど、そんな人、うちにいないよね?」

スングァンにして見れば、そんな怖い人いるかなぁ、うちに.........って感じだったけれど、まさに学校で「あ? 誰か知らないけどさ」って言っては自転車を蹴り、「誰かが、イチャンを虐めてるらしいんだけどさ」って言っては次の自転車を蹴り、「知ってたら教えて欲しいんだけどさ」って言っては誰かが跨ってる自転車にも蹴りを入れようとして寸前で止めたのはホシだった。

「あ、ごめん。もう少しで無関係な人を蹴るとこだった。な? お前は関係ないだろ?」

見上げられながらそう聞かれたら、誰だってビビるだろう。
関係ある生徒も、関係ないけど見て見ぬふりをしてた生徒も、そして全く関係ない生徒も、まるっと一瞬で震え上がらせたホシがいて、そのホシが今スングァンの無事を確認したからって全てなかったことにする............とは、到底思えなかっただろう。後ろ暗いところがあるだけに。

一瞬でそんなホシの情報が回って関係者をビビりあがらせた後に、スングァンがのほほんとやって来て、「イチャンと仲良くして欲しいんだけど」とか優しく言うもんだから、思わず全員で縋り付いたらしい。そしてスングァンは、やっぱり話せばわかるんじゃん......って感じで、なんの危機感もなく相談役をかって出た。
学校前じゃぁ邪魔だからって歩きながら話して、近くの公園に場所を移して話して、そこでも小さい子どもたちの邪魔だからってまた歩いて。商店街の中ではお菓子を買ってもらいながら歩いて。

きっとそれを知ったらユンジョンハンあたりに、「食べ物につられてついて行ってんじゃないッ」って怒られそうだけど、決して食べ物につられた訳ではない......とスングァンは言い張っていた。
でも心配されていたことに気づけば、「ヒョン、ごめん」って素直なスングァンもいて、何事もなく、すべては終わるはずだったのに............。

ディノが中学生の頃の話で、スングァンは高校生になったばかりで。
よくよく考えれば全員ただの学生だったのに、どこから情報を仕入れたのか、なんでかタクシーでその場に乗り付けたのはジョシュアだった。

「シュアヒョンッ」

ホシが叫ぶ。その声を聴いて電話の向こう側にいたウジが『ゲ......』って言ってその後しばらく言葉を失っていた。
たぶんその場で『ヤバイ』と思ったのはホシとジュンだけで、ホシのことを狂犬か何かと勘違いしてた人間たちは、物凄い笑顔でやって来たジョシュアのことを、救世主か何かと思っただろう。

多分スングァンだって、本気でキレたジョシュアなんて知らないだろうから、きっと判ってなかったはず。

『終わった。終わった。ヤバイ。終わった』

ジョシュアが来たことを知ってウォヌが慌てていたけれど、まだ少しだけ冷静だったミンギュが『クプスヒョンがもうすぐ着くだろ』って言えば、『ハニヒョン呼んで来いッ』ってやっと息を吹き返したウジが言う。

『いやなんで、シュアヒョンそもそも1人でそっち行ってんだよ。ハニヒョンどうしたんだよ』

ウジが珍しくも慌てて文句を言っていたけれど、その頃ジョンハンとディノは、中学校の近くに見つけた駄菓子屋で、「わぁ、懐かしいじゃん。これ俺らがガキの頃によく食べた」とかテンション高く楽しんでいて、ディノが「ハニヒョン、俺らも、あっちに行かなきゃ」って言うのに、「別にいいだろ? ジョシュアがもう行っちゃったもん。俺、あいつ止めんの面倒だし」とか言っていたとかいないとか。
まぁジョンハンは逃げたってことだろう。

「うっそだろ。俺が1人でシュアを止めんのかよ」

愚痴りながらもさらに速度をあげたのは、ミンギュからの連絡で状況を知ったエスクプスだった。ちょっと止められる自信はないが、いつもと変わらない笑顔のままでブチ切れると常識なんてあっさり捨て去ってしまうジョシュアのことは知りすぎてるほど良く知ってる。

「で?」

スングァンが「シュアヒョ」ぐらいで言葉を飲んだのは、目の前にいたジョシュアがいつもみたいに優しく笑ってたのに、なんでか物凄く怖く思えたから。

ホシよりも全然怖くないって判断した判断力なんて全然ない生徒たちは、すでにホシから離れて縋りつく思いでジョシュアの近くまで来ていたというのに、「で?」って問われて全員が立ち止まった。
なんか違うって、気づいたのかもしれない。

「先に言っておくけど、謝罪は一切必要ないよ。許すつもりなんて微塵もないから」

ジョシュアが今にも土下座しそうだった生徒たちの、逃げ道を塞ぐ。

「で、ディノを虐めたのは誰で、うちの子に何をしてくれたの? 誰かを傷つけることをしたのに、自分は傷つけられる覚悟はなかったなんてことは、当然ないよね?」

優しい笑顔のままで、言ってることも正論で、やっぱり逃げ道が閉ざされていく。でも許してはくれないと宣言もされていて、そうなってしまえば後は開き直りでもしない限りは動けないだろう。

それなのにジョシュアはまたしても、「で?」と問う。優しそうな笑顔のままで。

暴力的な言葉や態度でもないし、何かをしろと言われてる訳でもない。なのに足元の地面を少しずつ削られてるような怖さがある。
その不気味な怖さは、加害者側にしてみれば、ここで逃げても絶対に追いつめられるような、そんな怖さかもしれない。

「シュ、シュアヒョン?」

スングァンが思わずジョシュアの名を呼んだのは、やっぱりジョシュアが怖かったから。
今まで怖いだなんて1ミリも思ったことのない、優しいばかりのジョシュアだったのに、でもその怖さはディノのためだったり、心配をかけてしまった自分のためだって判ってるから、声をかけるのは怖くなんてなかった。

「俺は大丈夫だったし、ディノだって、大丈夫だよ」
「知ってる。大丈夫じゃなかったら、こんなに悠長に話してないよ」

ジョシュアがそう言って、スングァンの頭を撫でてくれた。
その姿は、声も態度もいつもように優しくて、怖さなんてやっぱり微塵も感じさせないのに。でもその優しさはスングァンにだけ向けられていて、視線を戻せば、やっぱりジョシュアは微笑んでいるのに微塵も笑ってるようには見えなかった。

「ディノもお前も無事じゃなかったら、生きてることを後悔させてやってる」

そんな言葉が優しく語られて、口調が優しいだけに怖かったかもしれない。
きっともう少ししたら、怖さが緊張を上回って誰かは叫んでいただろう。逃げ出す奴もいれば、逃げることもできずに追いつめられたネズミのように噛みついてくる奴もいたかもしれない。

多勢に無勢で、最初に連れていかれたのはスングァンで、ディノは虐められてて。さらには最初に手をだしたのがどっちかが明確だったなら、多少の反撃はそれこそ必死さ故とみなされるだろう。
結果がどうだろうと、責められる謂れはないし、そんな隙は見せはしない。

いつもは優しいばかりの人なのに、怒らせちゃいけないと言われるのは自分が泥をかぶるのなんて全く厭わずに、笑顔のままで刺し違えようとするからかもしれない。そんな気迫、普通は持ってないのが当然だからどうしたってジョシュアが勝つし。
機嫌が悪いぐらいじゃ怒らないし、理不尽な目にあったって多少のことなら困った顔程度ですます人なのに、仲間が、特に弟たちが関わると笑顔のままで怒り出すから、そうすると当然その怖さを知ってる96ラインが慌てだす。

今回は特に、マンネなディノで、マンネラインのスングァンだったから、その怒りはハンパなかったんだろう。

「ホシヒョン」

スングァンが今度はホシに縋って来る。それはもう、ジョシュアをどうにかしてくれってことだろう。大抵のことは「どんと任せとけ」って笑ってるのに、さすがのホシもお手あげなのか、本当に両手をあげて見せていた。

「シュアッ」

その場がどうにか収まったのは、エスクプスが飛び込んできてくれたからだろう。
追いつめられていた生徒たちはさらに真っ青になっていたけれど、一見すれば怖い存在にしか見えないエスクプスが、まさかの自分たちにとっての救世主だなんて、思いもよらなかったから。

「「「ヒョンッ」」」

声が揃ったのは、ジュンとホシとスングァンで、電話越しではウジも『間に合った......』と呟いていた。

「お前もうそこら辺にしとけよ」

エスクプスがど直球にジョシュアを止めるのに、「冗談でしょ」ってジョシュアは笑う。

「ガキどもに連絡がつかないって塾から親に連絡が行ってるはずだから、そのうち親どもが騒ぎはじめるぞ」
「騒がれても俺は困らないけど?」

なんでかもう誰も動かないし話さない。それでも視線だけは2人の交わす微妙に絶妙な視線に釘付けで、それはホシだってジュンだってスングァンだって一緒だった。
エスクプスが言ったことは決してハッタリでもなんでもなかったようで、動けなかった生徒たちの携帯が鳴る。きっとそれは連絡がつかない子どもたちに連絡を取ろうとする親からの連絡だったんだろう。でも誰も、電話に出ようとはしなかったけど......。

「チャニとスングァニが巻き込まれる」

そう言ったエスクプスの言葉が一番ジョシュアをハッとさせたかもしれない。

「お前は負けないだろうし、弟たちのためなら傷なんて厭わないだろうけど、そんなお前を見てチャニとスングァニは傷つくだろ」

さすがチングだからか、ジョシュアの弱い場所だって判ってる。攻めどころも、落としどころも。

「それに、あいつらだって誰かにとっては、大切な弟だろ? お前がチャニやスングァニを思うように、誰かは思ってるよ」
「..................」

スングァンを見て、それからジョシュアの目が泳ぐ。それはここにはいないディノを思ってだったかもしれない。
子どもはいつだってバカなことをする。ディノだってスングァンだって、それこそたくさん失敗をして、それをヒョンたちに怒られて諭されて育ってきたから。

「卑怯だぞ」

ジョシュアがそう言うのに、「お前には言われたくないわ」とエスクプスが返す。
やりとりはたったそれだけだったというのに、ジョシュアの雰囲気はガラリと変わった。

「みんな心配してるし、帰ろう。ほら」

ジョシュアがそう言って、ビビり散らかしてる生徒たちなんて目に入っていないかのように、スングァンのことを立たせて歩き始める。
優しく笑うその笑顔は、いつも通りのジョシュアで。

「ちゃんとディノにも謝るって言ってたよ。もうしないって」

聞いた話を必死に説明してるスングァンは、ジョシュアが怖かったことなんてまるで気のせいだったかのような感じでジョシュアに話しかけている。その話を聞きながら、ジョシュアだってさっきまでの怒りはどこへって感じで、「そうなんだ。じゃぁ良かった」とか答えてる。

「お前ら、二度目はないし、バカ丸出しな報復なんかに走るなよ。次は俺だって止められないからな」

エスクプスが睨みをきかせてから去っていく。
残されたのはビビり散らかしている生徒たちと、ホシとジュンだった。
最初は物凄い怖い存在だったホシとジュンが、最終優しく見えたらしいので、相当怖かったんだろう。

『俺らも帰っていい?』

ウジがホシに聞いてくるのに、「ぅえ?」って間抜けな声を出したホシがいて、とっくに引き返しはじめたのか、ミンギュたちからも『おっさき~』ってカトクが来てた。

「悪かったな。ビビらせ過ぎたな」

ジュンがそう言って笑って見せたけど、整い過ぎたその顔と、完璧に見えるそのシルエットと、誰かに謝ることなんて絶対にしなさそうな見た目の人からの謝罪に、生徒たちは余計にビビったかもしれない。

その横ではホシが、「あぁ残念。俺がホランイパワーを見せつけるチャンスだったのに」とか言っていて、それが謎すぎるからやっぱり生徒たちをビビらせていたけれど、2人はやって来た時の勢いはどこへやら......ってぐらいの、のほほんとした感じで去っていった。

残された生徒たちがどうなったのかは、誰も知らないけれど、まぁ適当に帰ったんだろう。
ジュンとホシは、ジョシュアとスングァンとエスクプスを追いかけて走る。見つけてもそのまま追い抜かして走り続ければ、ウジたちにも会えるだろう。きっと戻れば、その頃には学校に向かったジョンハンたちとも会えるだろう。

いや、ボノニどこ行ったの?

って皆が気づくのは、もう少し先のこと。

「謝るなよ」って言ったのはスングァンで、「うん」って言ったのはディノで、「いや、お前が謝れって」って言ったのはジョンハンで、「心配かけてごめんなさい」って頭を下げたのはスングァンだった。
でも誰も、怒ってなんていなかったけど。

全員が集まって、点呼が取られた。人数が多いから。そしてバタバタしてると誰かを置いて帰りそうになるから。昔、まだ全員が小さい頃に川の中洲にディノが取り残されて大騒ぎになった頃からの習慣。
順調に点呼は進んでいったのに、「12」って言うはずのバーノンがいなかった。

「いや、あいつどこいったの? 最初の方、スングァニに電話かけまくってなかった?」

全員がそれなりに必死だったからだろう。でもディエイトが、「途中なんか、走り出したのは見た気がする」とか言い出したけど、どっちに向かってとか、どこに向かってまでは覚えていなかった。

「いや、どうする? なんかボノニ、全然違うところに奇襲かけてたりしたら」

ドギョムがふざけて言ったその言葉に、思わず全員で沈黙する。だってそういうの、バーノンは本当にやらかしそうだから。

「冗談だろ」

そう言いながらもエスクプスがどこかに電話をかけ始める。
当然ミンギュもスマホで情報収集を開始して、今度はスングァンが必死にバーノンに電話して、繋がった留守番電話に向かって「ハンソラ? お前どこにいるんだよッ」って叫んでた。

「いやなんか、誰かサイコロで振り出しに戻るとか出したの?」

ディエイトがそう言えば、「そうかも」ってホシとドギョムが本気で驚いていて、ジョンハンは「そんなことあるかよ」って呆れてたけど。
それからジュンがウォヌとウジに向かって、「今度はお前らが行けよ」と真剣な顔で言っていて、何故かウォヌとウジが今度は走ると約束させられていた。

だけど今度はそれほど時間もかからずにバーノンは見つかった。
慌ててたから忘れてたけど、スングァンが「あ、そうだ。俺ボノニのスマホの位置わかるアプリ入れてたんだ」とか言い出したから............。

「は?」
「え?」
「あ?」

あちこちからそんな驚きの声が聞こえてきたけれど、スングァンはそんな声もどこ吹く風で............。

結局バーノンは1人駅向こうの、タチの悪い奴らの溜まり場にいた。そこになんでスングァンがいると思ったのかは謎だけど、1人「スングァニを返してくれるまで、俺はここを離れない」と頑張っていたらしい。
全く関係ない人たちにとっては、いい迷惑だっただろうが、エスクプスがバタついてたのを知っていただけ、誰も手出しもせずにいてくれたらしい。

今度もエスクプスが走って、無事にバーノンが連れ戻されてきた。
もう怒ってなんていないからか、ジョシュアは笑って「いってらっしゃい」と言うばかりで、エスクプスからは文句を言われていたけれど、それでもジョシュアが怒ったりしていなければ、96ライン辺りは落ち着いていられるらしい。
結局スングァンはジョンハンにも怒られたけど、帰り道ではコンビニで好きなお菓子やジュースを買ってもらえたし、ディノに文句を言う奴なんて、そこからピタリといなくなったらしい。

スングァンはバーノンとディノに、ジョシュアがびっくりするほど怖かった話をしたけれど、それは全然、信じて貰えなかった。まぁ自分だって見てなければ、絶対信じなかっただろうからしょうがないけど。それに見てたとしても、優しい日ごろのジョシュアと触れ合っている間に、怖かったのなんて気のせいだったんじゃないか......とか思い始めてもいたから、しょうがない。

 

 

あの頃僕らは、世界を敵にしたってずっと一緒にいる......みたいな気持ちでいた。
敵なんてきっとどこにもいなかったはずなのに。でもいつだって誰かに何かあれば、全員が走ってたはず。絶対守るみたいな感じで。
今思えば、ただの笑い話だったけど......。

 

酒でも飲んで昔話をしようと集まって............って雰囲気で、コーラで乾杯をする。
ディノは1人で裏切ってスプライトなんて買っていたけど。
マンネラインの3人で懐かしい話をしながら乾杯してたら、ウジヒョンがやってきた。

「は? 何お前ら、まだ1週間も経ってないのに、なんでそんな昔話風なんだよ」

「時の流れは早いんだよ、ヒョン」とディノが言う。
「そうそう」バーノンが頷く。
「辛いこととか恥ずかしいこととか気まずいことは全部、思い出にしちゃうのがいいんだって」とスングァンが言う。

「なんだそりゃ」とウジは笑っていたけれど、どうせハニヒョンあたりの言葉なんだろう。
困ったことも大変なことも大失敗も、一瞬で良い思い出に変えちゃえる人だから。

あれ以来、ディノは友達が減ったとか。まぁ怖がられた結果だろうけど、ディノは楽しそうに笑ってる。
バーノンはスングァンの居場所が判るアプリを入れたらしいが、スングァンは「あいつはどうせ入れたことを忘れる」と言っていたとかいないとか。
それからスングァンは皆から怒られていたけれど、可愛い弟スキルを盛大に発揮して、すぐに許されていた............。

The END
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[SSSS CAM] SEVENTEEN(세븐틴) - Rock with you @Comeback Show 'Attacca'

 


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