妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

NPC、ユンジョンハンが惑わす世界

LEFT&RIGHT


sevmin.hateblo.jp

 

NPC、ユンジョンハンが惑わす世界

ユンジョンハンは、ヘンガレにある幾つかあるエリアの一つで、ログイン時の入口となってる広場の掲示板横に、いつも立っている。だからNPCに間違われて、初心者はよくユンジョンハンに話しかける。

かくいうブスングァンも、はじめてログインした時にユンジョンハンに話しかけた一人だった。
多分スングァンはもう忘れてるだろうけど、ジョンハンはよく覚えてた。

このゲームにログインした人間の9割以上が、まずは自分の見た目を整える。
最初のログインボーナスで貰えるお金はほぼほぼそれに費やす人間がほとんどだというのに、スングァンが最初に買ったのは、公式戦でも使ってるサイズのバレーボールのポールと網のセットで、点数をはめ込むタイプの板の得点盤と、昔ながらの捲るタイプと、最新式の電工掲示板の得点のヤツで真剣に悩んで悩んで悩んで、ひとまず得点のは諦めて、プロ仕様のバレーボールを買っていた。

それからユンジョンハンに、「バレーボールのポールは、どこに建てても怒られませんか?」と聞いてきたのだ。

その時は何も考えずに「邪魔だから、砂浜に健てな。あっち」と適当に答えた気がする。
それなのにスングァンは目をキラキラさせて、「ビーチバレーは、足腰が鍛えられるから、良いかも」と喜んでいた。

見た目に一切お金を使わない人間は、最初に認証で使った自分の写真を元に、適当に見た目が整えられる。だから嬉しそうに笑ったスングァンは、きっと現実の世界でも、同じように笑うんだろう。

それからもスングァンは時々ジョンハンに話しかけてきたけど、ほとんど一人で、砂浜に建てたバレーボールのセットの廻りにコートの線を自分の足でひいて、サーブの練習をしてた。
せっかく買ったコートなのに、一緒に遊ぶ人間もいなくて......。

「そんなにバレーが好きなら、リアルな世界で部活でもやったら?」

と話しかけたのが、ちゃんと話した二回目かも。
でも今の高校にバレーボール部なんてなかったんだ......と、スングァンは哀しそうに教えてくれた。地元ではずっとバレーボールやってたから、転校してきた学校でもやる気マンマンだったのに、部活なんてなくて。それでも休み時間とかに友達と一緒に遊べると思ってたのに、休み時間に遊んでる子なんていなくて。それでもいいから、じゃぁ放課後にと誘ったけど、みんな塾に行くんだって......と、スングァンは寂しそうだった。

ユンジョンハンのところには、色んな情報が集まってくる。
何せみんな、ユンジョンハンをNPCと勘違いしてるから、結構なんでも話してくれるから。
まぁそれを悪用したりはしないから、何も問題はないんだけど。

不意にNPCではないと気づく人も多い。まぁ時々は動いて楽しそうにしてるユンジョンハンもいるから、それはそうだろう。
それでもNPCに似せて姿カタチを作った別の人間と勝手に勘違いしてくれる人も多いけど。

ゲームしてなくてもその場に放置して、自動返答モードになんてして放置してるから、よりNPCと勘違いされるんだろうってことは判ってる。
でも誰も惑わした覚えはない。
本当に特に何もしてないっていうのに、気づけば広場にはユンジョンハン宛のプレゼントが勝手に置かれてる。それは簡単には手に入らない武器だったり、お金だったり、色んなものが。

「俺が何したって言うんだよ」

よくウォヌやウジに、「ヒョン、また誰かを惑わしたの?」とか言われるたびにそう答えるけれど、実際、何もしてないし、実際、惑わすような言葉を口にしたこともない。
見た目だって、スングァンと同じ、実はまったくいじらなかった。

「いやだからさ、その、リアルな感じがダメなんじゃないの? もう魅力がさ、ヘンガレの中にも滲み出ちゃってるんじゃないの?」

そんなことを言われたって、どうしようもない。
だから気にせず放置してた。
誰かがじっと自分のことを見てたとしても、さすがにゲームの世界じゃ視線を感じることはないから。
個人的に話しかけられることは多すぎて、その中にイタイ人間がいるだなんて、選別しようもないから。

でも、ユンジョンハンをずっとずっと見てる人は気づいただろう。
NPCを辞めてユンジョンハンがその場から動いて遊びに行く時には、いつだってそこにはエスクプスがいて、楽しそうに笑ってるってことに......。

 

The END
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