妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Everything is Shining

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

sevmin.hateblo.jp

 

No War! Everything is Shining

空も山も風も水も。スングァンをスングァンとして取り戻したその時から、バーノンには全てが輝いて見える。
世界がキラキラしてて、これまでもそこにあったはずのものが輝いていて眩しくて。掘り起こしたばかりの茶色の畑の土だって、鮮やかで生命力に溢れてる。
「ボノナ、なにサボってんだよ。今日はあそこまで、土を掘り起こしていくんだからな」
サボってた訳じゃなくて、輝いてるあれやこれやに感動してたんだけどって言えば、「はいはいはいはい。感動しながらでいいから手を動かせって」とスングァンは五月蝿い。
ウォヌとスングァンが畑の占有率で争ってばかりだからか、畑の拡張が決まった。葉物系を育ててるウォヌには少しだけスングァンが使ってた畑の場所を譲り、芋系を育ててるスングァンが広がった分と、残りの元の場所を使うことになった。その時いなかった全員で頑張って畑の拡張は無事に終わったはずなのに、バーノンはまた畑の拡張に勤しんでいる。
それはやっぱり、ウォヌとスングァンが揉めたから。
「ここは俺の畑になったはずなのに」
そう悲しげな顔をしてたのはウォヌで、せっかく葉物の苗を植えたっていうのに、芋の根が伸びてきて蔓延りはじめたらしい。
「そんなの俺のせいじゃないじゃん。ちゃんと土を掘り起こして、芋の根っこが残らないようにしなきゃいけないのに、ちゃんとしなかったヒョンのせいだよ」
言ってることは間違ってないけど、スングァンは手厳しい。
「別に文句なんて言ってないだろ」
悲しげな表情のまま、それでもムッとしてウォヌが言うのに、「俺なんて新しく拡張した分で、1回か2回は育ったってまだまだな状態なのに、栄養たっぷりな畑を貰ったのに、そんなこと言わないでよね」とスングァンはプリプリ怒ってる。
まぁ確かに、新しく畑にした場所はまだまだ土も硬かったりして、スングァンの言う通り育てた野菜をそのまま肥料にして、それを何度か繰り返さないとちゃんとした畑にはならないだろう。
「そ、それなら、ヒョンも大変だねって言えばいいだろッ」
なかなかに悔しかったのかウォヌも言い返す。
「はいはい。ヒョンも大変だね」
「なんだよ。スングァニはヒョンに冷たすぎる」
自分の名前を思い出した後のスングァンは、楽しそうに毎日生きている。遠慮って言葉も、我慢って言葉も、ひっそりとって言葉も。とにかく色んな言葉を忘れたのかのように、快進撃が続いてる。
もちろん優しいままのスングァンではあるけれど、こと畑のことは譲れないらしい。
「そんなのしょうがないじゃん。だって俺知ってるからね。ウォヌヒョンが、クプスヒョンにもハニヒョンにも、ミンギュヒョンにもオンマにも言いつけたこと」
「べ、別に言いつけた訳じゃないよ。た、たまたま話題に出たから話しただけだし」
ウォヌの一瞬見せた動揺だって、スングァンは見逃さない。
「言いつけたよ絶対。だってみんな、その後に俺に言いにきたもん。オンマなんて俺に、ウォヌヒョンと仲良くしなさいって言ってたし」
「で、でも俺は言いつけてないもん」
「言いつけたもん」
「ないもん」
「したもん」
いやもう子どものケンカみたいなもんだろう。
バーノンは2人と一緒に畑にいることも多いから、どっちの味方もしないようにしていた。まぁそれが無難だろう。
でもまぁウォヌが言いつけたのは事実のようで、その時も次の日にはミンギュが畑に出てきて、「芋の根が張ってる所は俺が耕し治すから」とウォヌのことを甘やかしていた。
「俺の畑の方が、もっとずっとずっと大変なのに」
ちょっとだけスングァンが悔しそうだったから、「ほら、俺がもうちょっとだけ、お前の畑拡張してやるから」と、ついつい言ってしまったバーノンだった。
それからは毎日、水を汲んだり動物たちの世話をしたり普通に畑の用事もしつつ、暇を見つけては新しい場所に新たに畑の拡張をはじめてみた。
だからここ最近、バーノンはスングァンの指示のもと、土を掘り起こしてばかりいる。
それでも幸せだったけど。スングァンがいるだけで、世界が輝いてるんだから。
毎日生きていくために、食べる必要があるから食料になるものを育ててる。それはこれまでと何ら変わらないはずなのに、色んなことの合間にくだらないことで笑って、なんでもないことを必死に考えて、でも1人では見つからなかった答えが2人では簡単に見つかって。
そんなの、そんなのやっぱり幸せでしかない。
畑の拡張を頑張っていたら、ミンギュがそれなりな芋を持ってやって来た。
「ウォヌヒョンの畑で勝手に育って芋だけど、そっちの種芋とかにする?」
そう言いながら。
「食べてもいいし、売ってもいいし、動物たちのエサにしてもいいけど、勝手に育っただけあって力強そうだから、種芋がいいと思うけど」
ちょっとだけ悩んで、バーノンはそれらを貰うことにした。
すぐにそれをスングァンにも見せてやれば、嬉しそうに喜んでいた。そんな時は素直に、「ウォヌヒョンにもちゃんとお礼言うよ」と言うから、張り合おうと思って張り合ってる訳でもないようだった。
それはきっと、ウォヌも一緒なんだろう。
だってバーノンよりも2人は畑で一緒にいる時間が長いんだから。
それぞれ自分の陣地を必死に育ててるから、一緒に何かをするってことはないかもしれないけれど、いつだって視界の端にはお互いがいるんだろう。
風が強い日だって、雨が降りそうな日だって。日差しがきつすぎる日だって、寒さが堪える日だって。
何かがあった時には一番に駆けつけられる場所にいる。そうと決めている訳ではないかもしれないけれど、ヘビが出たとスングァンが叫んだ時だって、猪が突然あらわれた時だって、スングァンを守ったのはウォヌだった。
畑仕事でスングァンがケガをした時だって、足のバランスを崩して転んだ時だって、バーノンよりも早くスングァンのもとに駆けつけるのはいつだってウォヌで、それは当然スングァンだって判ってるんだろう。
ウォヌが体調を崩せば、当然のようにスングァンがウォヌの畑の面倒を見るから。
世界はやっぱりキラキラと輝いていて、だから時々、バーノンは涙が止まらなくなる。幸せが過ぎるんだろう。
こんなにバーノンの世界は輝いているんだからと、スングァンの世界だってそうだろうと思うのに、「世界が? キラキラ? うぅぅぅぅぅん、普通?」と言っていたから、それほどキラキラはしてないようだった。
「俺もウォヌヒョンに、ありがとうって言っとく」
「なんだよ。お礼は自分で言うから大丈夫だけど?」
「いや、俺も言いたいよ。だって半分以上は俺の畑じゃん」
こんだけ手伝ってるんだから......みたいな気持ちで言えば、「半分以上ってなんだよッ」とスングァンがプンスカ怒り出した。
あぁでもそれだってやっぱりキラキラだからしょうがない。
再会した日、畑を手伝おうとしたバーノンに、「何してんだよアンタッ。ここはうちの畑なんだぞッ」って叫んだスングァンを覚えてる。生きててくれるだけでいいって覚悟だって決めたはずなのに、心臓が痛かった気がする。
それでも側に居続けて、生きててくれただけでバーノンの時間はまともに動き始めて、呼んで欲しいと思ってた名前を呼ばれてスングァンの全てを取り戻してしまったら、ほんとにもう幸せしか残らなかった。
「このままで行ったら、世界はギラギラになっちゃうかもしれない」
結構本気でそう言ったのに、「お前、なんか変な草とか食ったんじゃないの?」と変な目で見られた。
それがまた面白くて、幸せで、幸せで幸せで幸せで。笑いながら泣いてたら本気でスングァンに心配された。「日陰で休憩していいよ」って。
素直に休んでたら、すぐに「いつまで休んでるんだよ」って言われるだろうけど......。
それでも世界はキラキラと、輝いてる。

The END
3190moji