妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

自然の摂理に反してる

 

噛みたい。本能はそう言ってたけど、グッと我慢した。キレイな首筋が残像のように残ってた。あぁゾンビのように、何も判らずにただ闇雲に誰彼構わず襲うぐらいの存在だったなら、友達はできなくても仲間は瞬く間に世界中に蔓延っただろう。
でもジュンは1人、孤独だった。
キレイな顔だと言われる。その背の高さと身体のバランスと雰囲気とその目が素敵だと、かつて誰かに言われたこともある。
でも1人だった。
それも長く、長く長く1人だった。
時々はジュンに気づく人はいる。でも大抵本能で怖がって寄っては来ない。
同じ場所に居続けることもできなくて、数年から、長くても10年ほどで場所を変える。
嫌われ者なんてどこにでもいる。誰からも必要とされてないような人間だって、たまにいる。少しだけ昔はそんな人たちに近づいてみたこともあった。どうしても寂しい時とかには。
ジュンと同じように孤独なはずなのに、それでもジュンのことを受け入れてくれる人間はいなかった。
見えなければ大丈夫かと目の見えない人に寄り添うように近づいた時だって、見えないから余計に何かに敏感なのか、ただただ震えられただけだった。
一度は諦めた。もう本当に諦めた。
これはもうずっと1人で、それならもうどこか、自分の気に入った場所を見つけて、そこでこの人生を終わらせようとすら思ってた。
朽ち果てるまでそこに居続けてもきっと簡単ではなくて、終わりすらもなかなか訪れないだろう。でも寂しすぎて咽が乾くほどで......。
大きな川のある町だった。都会ではなかったけれど田舎でもない。商売で人が売られるような町でもあった。
闇夜でそれに気づいたのはジュンだからだろう。
産まれたばかりの臍の緒がついたままの状態の赤児が捨てられたその時、まだ寒い時期だったから、数時間もすれば子どもは死んだはず。
捨てられた子どもが翌朝誰かに見つかっても、騒ぎが起こったりすることもない。普通に暮らす子どもたちだって、時々は間引かれるのか消えることがあるんだから。
でも誰もいらないなら、貰ってもいいかもしれない。そう考えた時にはもうジュンの腕の中には産まれたばかりの子どもがいた。
それはジュンのもので、ジュンだけの子ども。
これまでの人間たちと同じようにジュンのことを本能で怖がって、育たないかもしれない。育ってもジュンのことを避けるかもしれない。長くは一緒にいられないだろう。
それでもずっとずっと1人だったから、その僅かな間でも誰かと一緒にいられるのなら......。
大切に大切に育てた。
愛を注いだかと言えば、注いだ。どれぐらいの愛があれば子どもが育つのかなんて判らなかったから、ありったけの愛を注いだ。
そしたら育った。

「ケッ」

おかしい。ありったけの愛を注いで大切に大切に大切に、育てたはずなのに。
子どもはジュンの指を吸って泣いていたはずなのに。
ハイハイしながらジュンの後を追いかけていたはずなのに。
かまり立ちだってジュンの足でしたし、小さい手でジュンのズボンの端を掴んでて、走っては転びそうになってその度に手を伸ばしたのに。
綺麗な景色もいっぱい見せて、色んな国を旅して、広い広い心を培ってきたはずなのに。
あぁでもそう言えば2度か3度ぐらいは落としたあれが悪かったのかもしれない。いやでもあれぐらいで、こんな風に育つだろうか。いやでも常識を知らない人間でもない存在に常識なんて教えられなかったんだろう。
それならこれはもう、自分のせいだろう。
ジュンが反省しつつ諦めつつ、それでも「ケッ......ってなんだよ。全然ダメだろ? 人として」とは言ってみた。
ムカつくことがあっての「ケッ」だったとしても微妙だというのに、ハオのそれは、見知らぬ人がやってきて「はじめまして、こんにちは」に対する返答の「ケッ」だったんだから。
「ケッで、十分だよ。だいたい、最初は石を投げてどっか行けって言ってたくせに、今度は自分たちを助けろって言いに来たんだよ。助けて貰えると思ってるのが凄いけど」
小さかった子どもは育った。
ジュンのことを怖がりはしなかったけど、ジュンが人間たちに恐れられてる存在だといつか教えなきゃと思っていたのに、気づけば勝手に学んでた。
「なんでみんな、ジュニのことを怖がるの?」
小さい頃そう聞かれた時に、なんて説明しようかと思い悩みながらも「俺が男前が過ぎるから?」とか適当なことを答えて誤魔化していたっていうのに......。
人は生きてるだけで尊くて素晴らしい存在なんで、奇跡みたいなものなんだ......と教えたかったのに、人間は狡くて醜くて自分勝手で......。そんな風にハオは思ってるかもしれない。
「ケッ。黙って去って行かなきゃ、どうなっても知らないよ」
酷く暴力的な言い方なんて、教えもしないのに覚えたのは、それだけそんな言葉をかけられてきたからだろう。
「困ってる時は、助け合わないといけないんだよ」
ジュンがそう言っても、「全然助け合いじゃないだろ。助けて助けて助けて助けてばっかりじゃん。それでも心から感謝してくれるならまだしも、どうせすぐにまた化け物とか言って石を投げてくるのに」とハオが怒ってた。
ちょっと暴力的で直接的なものの言い方をするけれど、ジュンのことを考えてのことだというのなら、やっぱり優しい子に育ったんだと嬉しくなる。
でもジュンだって、ハオがいるから人に優しくしようとしてるのに......。
育てはじめたばかりの、子どもの抱き方すら判らなかった時。首を持てと教えてくれたのは人だった。もうくたばりかけのおばぁだったけど、乳を貰う必要があることも教えてくれた。
もちろん優しさばかりじゃなかっただろう。金だって使った。それでもハオがある程度育つには、色んな人間に少しずつ手伝ってもらったのも事実だった。
そう諭せばハオは「ケッ」ってまた言ったけど、「好きにすればいいだろ」とも言った。
まだ12,3歳ぐらいのハオは、そんな、間違ったことが嫌いなハオだった。

色んな世界を見せた。
人間の汚い面だってちゃんと見せた。
その代わり綺麗な景色はもっともっと見せた。
人としての深みが出るように。どんな人生を歩もうと世界は広いと知っていれば生き抜けるだろうと、そんな願いも込めながら。
できれば誠実な人になって欲しい。凛として、迷いなく立ち続けて欲しい。願いすぎってこともないだろう。それぐらい大切に育てたから。そうしたらちゃんと育った。

「金がないなら、何が出せる? あんたの命なんていらないし、あんたには売れるような娘もいないだろ?」

おかしい。そんなに大きなことは願わなかったはずなのに、気づけばハオは守銭奴みたいになっていた。
おおらかに、細かいことなんて気にしなくて大丈夫って笑って育てたはずなのに、ジュンがしっかりしてない分だけ自分がしっかりなくては......とでも思ったのか、もう子どもに見えなくなった頃からお金の管理は自分がすると言い出してジュンには触らせてもくれなくなった。
まぁジュンが大雑把だからかもしれない。
だけど100歩譲ってお金の管理はいいとして、何故に守銭奴になるのか......。
あぁでもそう言えば、キラキラしたコインをハオが喜ぶからと集めていたけれど、それでジュース1つも買えないと知ってハオはショックを受けていたっけ。
紙のお金だって結構持っていたこともあったけど、生きるか死ぬかっていう寒さに抗うために火にくべてしまったこともあった。あぁでもその時も後から、「なんで厚手の毛布を買わないのか」とハオに詰められたっけ。

 

珍しくチャイナ。書きかけ~<(_ _)>