妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

같이가요 -Go with me-

 

エスクプスが再契約の話を最初に副社長から聞いたのは、まだ6周年を迎える前のことで、「ちょっと早いけど、少しずつ皆の意見を聞いていこうと思う」って事だった。

だからエスクプスは待ってましたとばかりに、「じゃあ全員に集合かける」と言ったのに、副社長はそれを止めた。

「大事なことだから、1人ずつ、ちゃんと話して、意見や希望を聞いていくから」

そう言った副社長に、「そんなの全員集合して再契約する人〜って言ったら全員手をあげるから、それで終わりじゃん」とエスクプスは真剣に言ったのに、「そんな訳にはいかないだろ」って笑われた。

「じゃあはい、俺から、俺から。再契約する」

その場でエスクプスが元気良く手をあげてそう言ったのに、今度も副社長は笑って「お前は当然最後だよ」と言うもんだから、「いつ? じゃあ俺明日ぐらい?」と聞けば、「早くて今月中じゃないか。まぁ、1回目は」と返された。

『は? 早くて今月中で、しかも1回目が?』

まだ月半ばにもなってないというのに、再契約にそんなに時間がかかる訳ないじゃんと心の底から信じてたエスクプスなのに、結局1回目の呼び出しすら、その月になかったエスクプスは途方に暮れた。

「ヒョン、忙しいの?」

そう副社長に尋ねること十数回。

笑って「まだまだだって」と言われること数回に、呆れたように「まだだって」と言われること数回に、通りすがりに縋るようなエスクプスの視線に気づいたのか、「まだ」とだけ言われること数回。

いやそれにしたって、1回目はさすがに回ってこないとおかしいのに、「誰で止まってんの?」って聞いても、副社長は「ノーコメント」ってつれない。
「ヒョンッ」って怒り気味に読んでも、「ヒョ~ン」って情けない声を出しても、「ヒョンヒョンヒョンヒョン」って拝みながら連呼しても、ダメだった。

だからそれならメンバーを地味に攻めようと、ユンジョンハンを呼び出したっていうのに、「あぁ、更新のはなしね。大分前に副社長と話したけど、そう言えば、まだ次はないな」ってあっさりしたもんだった。

「いや、お前再契約するって即答しなかったの?」

真剣にそう聞いたのに、「即答なんてする訳ないじゃん。契約なのに」って当然のように言われた。どうやらユンジョンハンは当然のように、会社相手に駆け引きをしようとしているようだった。

「お前、マフィアやってる訳じゃないんだから」って言ったのに。
「当たり前じゃん。俺らの人生かかってるのに」ってジョンハンは言う。

ちょっとだけ、「俺ら」って言ってくれたことは嬉しかったけど、ジョンハンも何を話したのか、何を待ってるのか、どうしたら再契約してくれるのかは教えてくれなかった。

当然次に捕まえたのはジョシュアで、日ごろから優しそうに笑ってくるくせにエスクプスには意地悪を言うことの多いチングは、当然のように「はいはい、再契約の話ね。副社長とは話したけど、俺はまだ保留」とか言う。
ジョシュア曰く、「アメリカ人の俺が契約するのに、すぐにサインとかする訳ないじゃん」ってことらしいが、「でも再契約は当然するんだろ?」って聞けば、「それも含めて検討中」とか酷いことを言う。

「何言ってんだよ~。そこは当然再契約するのが大前提だろ?」って言ったのに。
「俺はお前には嘘はつきたくないよ」ってジョシュアが言う。

ちょっとだけ、そんな言葉に感動しそうになったけど、結局はジョンハン同様に何も教えてくれないジョシュアだった。

エスクプスは知らなかったけど、ジョンハンは全員が困らないような契約をしたいと望んでいたし、ジョシュアは全員の望む契約期間を確認したいと思っていたし、それぞれ、副社長相手に自分が契約するための条件としてそれらをあげていた。

副社長が笑って、「スンチョリは、全員集めたらすぐに再契約が決まるって言ってたのに、お前らはほんとに」って苦笑していたほど。
もちろんエスクプスはそんなことは露知らず、今度は弟たちを順番に攻めて行き、せめて誰まで再契約の話が進んでいるかを突き止めたいとか思っていただけ......。

96ラインで1番はじめに声をかけられたのはジュンだった。
「あぁ、再契約? 一旦保留中だよ」
和やかに、そしてにこやかに、あっさりサインしてくれそうなジュンまでもが保留と聞いて、ちょっと膝をつきそうになったほど。

「だってハニヒョンが、どんな条件を提示されても出すにしても、ディエイトと話し合いたいし、ハニヒョンにも相談したいって言えって言って来たんだもん」

とか言うから、どうやらバックにはユンジョンハンがいるらしい。
対スタッフたちとのマフィアチーム戦だとか、思ってるのかもしれない。

「でも、とりあえず大前提は、再契約するだろ?」

必死にそれだけ聞いたのに、「うーん、正直ハオ次第かも」とか言われて、「大前提でもないのかよ......」と落ち込んだエスクプスだった。
そして何故か「ミョンホがオッケーなら、大前提は再契約なんだな」って念押しして、エスクプスがジュンの前からいなくなった。
エスクプス的には全員集合して再契約するだろって聞いて全員が頷いてそれで終わりって真剣に思っていたのに............。

ディエイトはスタジオにいた。
最近ウジを捕まえては、歌いたい歌の空気感やら雰囲気を伝えているらしい。

「クプスヒョンごめん。今ちょっといいとこで、もう少しで全体のイメージが固まりそうなんだ」

って、まさかの何の話かも聞いて貰えない感じだったのを、「ヤー、ヒョンがちょっとだけ時間欲しいって頼んでるだろ」って泣き落としで頑張ったエスクプスだった。

ディエイトは基本優しいから、「もう、ヒョンは1番上のヒョンなのに」とか言いつつも、ちゃんと座ってエスクプスに向き合ってくれた。
だから意気揚々と「再契約のはなし、お前んとこまで来た?」と聞いたのに、「あぁ、来たけど、条件提示するのに時間がかかりそうだから、俺は一旦保留で次にいって貰ったよ」とかディエイトが言う。

「なんだよ、その条件提示って」とエスクプスは少し考えた後、「わかった。毎週日曜日は全員で中華料理食うことにしてもいいぞ」とか言い出した。

思わずディエイトは笑ってたけど、エスクプスは物凄く本気だった。
だからさらに「お茶にも付き合うけど」とも言ったけど、「そんなの条件以前じゃん」と笑われて終わった。

「いやでも、とりあえず再契約が大前提の、条件提示だろ?」

そこだけは絶対だよなって強気で聞いたのに、「いや、今まだ白紙な状態かな」とディエイトが言うから、「嘘だろ............」って言いながらもエスクプスは泣きそうになっていた。

「でも、うん。前向きに検討中だから」

ディエイトに気遣われて、そんな言葉を貰ったけれど、それでもまだ「白紙」だと言うから、喜んでいいんだか悲しんでいいんだか。

でもディエイトのところにも事前にユンジョンハンがやって来て、「どんなにバカみたいな小さいことでもいいから、夢みたいなことまで、やりたいことを全部書き出せ」と言ったから。それに「答え合わせは1年後か、2年後か、7年後か。でも望んだことが全部叶うかもしれないチャンスなんだから、絞り出せ」とも言ったらしい。

悪知恵を授けにきたのかと思ったのに、それはディエイトにとっては魅力的なものだった。未来を面白くするのは、自分自身かもしれないから。
きっとそんな言葉を聞かなかったら、ありきたりな希望と、ありきたりな落としどころに納得して、ありきたりな感じの再契約を結んでいたかもしれないから。

あぁでも、みんなで中華料理っていうのも有りかもしれない。ディエイトは楽しくなりながらも、最近色んなことを書き留めてるノートに、日曜日は中華料理って書いておいた......。

スタジオの中でホシが踊ってたら、エスクプスがやって来た。そしておもむろに、片足でダンダンってしながら、「なんでだよッ」って地団駄を踏んでいる。

「いやヒョン、もういい大人なんだから」

思わずそう言ったホシに「だってみんなが、再契約を保留にしてるからッ」って本気でムキになって怒ってるエスクプスがいた。

「お前は? お前はそんなことないよな?」

かなりホシに詰め寄ったエスクプスだったけど、「んー、ヒョンごめん」とか謝られて、思わず「お前もかッ」ってエスクプスが叫んだほど。

「いやだって俺、これでもパフォチのリーダーだよ? ジュニとミョンホのこともちゃんと考えたいし、チャニのことだってそうだし、俺の決めたことでジフニに迷惑かけたくないし。ない頭で俺だって頑張って考えてるところなんだって」

ホシが真剣にそう言ってくれたから、「じゃぁ一個だけ聞くけど、前向きに検討中ってことだよな? 再契約が大前提だよな?」とそう言えば、ようやくここにきて、「当然だろ」って言って貰えて、思わずホシのことを抱きしめたエスクプスだった。
かなりエスクプスのハードルは低くなってきたかもしれない。

ちょっとここにきて、エスクプスは大分落ち着いてきた。皆が全然再契約の話を前に進めてくれないけれど、それでも皆、それぞれ色んなことを考えてるって判ったから。

だから落ち着いた気持ちでウォヌのところに足を運んだっていうのに、「え? 再契約のはなし? 俺のとこには来てないけど」って言われて、「は? 嘘だろ?」って言葉を失う羽目になった。
まさかの、1周もしてなかった事実。

「いや年齢順じゃないの? こういうのって、ミョンホは知ってたけど」
「俺に聞かれても困るけど、ミョンホはほら、中国から来てるから、先に話が行ったんじゃないの?」

そう言われれば、そんな気がしないでもない。

「なんだよ。まだ全員はなし聞いてないのかよ」ってかなり落ち込んだエスクプスだった。
まぁでも「あぁでもさ」とウォヌが言うまでだったけど。

「あぁでもさ。ヒョン、案外これって、話し合いが面倒そうな人間から攻めてんじゃないかな? だって俺、別に何も言わずに再契約しちゃいそうだし」
「だよなッ!」

やっと仲間を得たような気持ちでエスクプスのテンションは上がる。
そんなエスクプスを見ながらウォヌも、「みんな、何をそんなに、悩んでるんだろう」と首を傾げてた。

まさかの同室のミンギュが、再契約の必須条件として「ミーニー同室永年契約」を掲げて副社長から「は?」って言われてたなんて、ウォヌは知らなかったけど............。

エスクプスはウォヌのところで機嫌が良くなったため、調子に乗ってミンギュを攻めに行く。当然のようにミンギュだって「再契約に決まってるじゃん」って言ってくれると信じて疑ってなくて、ウォヌの時のように「だよなッ!」って言えると思ってたから。
それなのに、それなのに............。

「俺、結構今、シビアなところで調整してる感じ」とミンギュが言う。

聞いてみれば、「ミーニー同室永年契約」を主張して副社長に呆れられたらしいが、それ以外にも「アイランドキッチンが欲しい」とか、「冷凍庫を用意して欲しい」とか、「宿舎の中に映像の編集機材とかを置きたい」とか。
それ以外にも靴や服や、鞄や帽子や、そんなものの専用の部屋が欲しいとかと、聞けば聞くほど山と要望を口にして、思わずエスクプスが「待て待て待て待て」って止めたほど。

「なんでそんなに要望が多いんだよ。ふざけんなよ」ってエスクプスが言えば。
「いや、逆にそういうのないの? ヒョン」ってミンギュから聞かれた。

「そんなの、全員が一緒なら、それだけで全然いいじゃん」

それが本気で本心だったっていうのに、ミンギュからは「そんなの当然じゃん。それはもう基本理念みたいなもんだよ。そこで納得しちゃダメだよヒョン」って諭された。
なんだかそう言われればそんな気もしてくるが、それにしてもミンギュは要望が多すぎる気がする。

「でもヒョン、俺の要望って基本みんなのためだよ。俺のためじゃないんだよ」

力説するけれど、「え? ウォヌとずっと同じ部屋がいいのが、俺らと何の関係あんの?」って言えば、さすがにそこだけは自分のためだったらしく、「いや、そこを言われると......」ってミンギュがどもってた。

「でもウォヌの再契約の条件は、一人部屋希望だったけどな」って、とりあえず、エスクプスは嘘をついてみた。
「嘘つくなよッ」ってミンギュは言ったけど、「なんで俺がお前に嘘つくんだよ」って言いつつ、心の中では『嘘だけど』って言いながらエスクプスがミンギュの前から消えてった。
ちょっとだけ嫌がらせのつもりだったけど、まさかそれで再契約のはなしが拗れるなんて、露ほども思わず............。

エスクプスは誰のもとで話が止まってるのかを突き止めるべく、次はマンネラインを攻めるつもりだったのに、最初に話を聞きに行ったバーノンの前で言葉を失っていた。

「は? え? ごめん、もう一回言って」

聞き間違いかもしれないと、わざわざ謝ってもう一回言ってもらったっていうのに、バーノンは普通の顔で声で表情で、「うん。だから、お小遣いが欲しいって言ったんだよ」って平然と教えてくれた。

「再契約の条件に? 契約金だとか、給料だとか、そういうのじゃなくて?」
「うん。そういうのはヒョンたちに任せとけばいいかなって思って。俺は給料とは別に、毎月お小遣いちょうだいって言った」

お小遣いってなんだよ......って思ったけど、まぁバーノンが欲しいと思ってるならしょうがないかもしれない。っていうか、小遣いなら俺がやるけど?って思いながら、エスクプスはおもむろにポケットから5000ウォンを取り出してバーノンに渡してみたら、「え? いいの? ヤッター」と素直に喜んでいた。

「で、お小遣いって幾ら?」
「20万ウォンぐらい?」
「少なッ。いや、1日とか? 1日とかなのか?」

バーノンが「それ副社長も言ったよ」って笑ってた。「それにこの話すると、みんな俺にお小遣いくれるんだけど」とも言っていたから、何気に小銭を稼いで喜んでいるようだった。

「いや、再契約してくれるなら、俺が小遣いぐらいやるけど」

思わず真剣にそう言ったエスクプスだった。
謎な要望ではあるけれど、バーノンが再契約の話を止めてる訳じゃないことだけは判ったから、かなり安心したかもしれない。

でもじゃぁ誰が止めてんだって思いながら、まだ話してないメンツを思い出せば、後はドギョムとスングァンとウジだった。
誰から行こうか、かなり悩んだ。だってなんかドギョムは変なところで拘ってそうだし、スングァンは平然と我が儘を言ってそうだし、ウジが何かを言い出したら会社的には無視はできないはずだし......。

でもとりあえずスングァンを訪ねたら、「俺のとこまでまだ話来てないよ」って逆にムクれられた。

「ボノニはなんでかこないだから皆んなにお小遣い貰ってるのに、俺にはそれもないんだよ」

とスングァンが必死に言うもんだから、しょうがないとばかりにエスクプスが財布を取り出す。
いやなんか、弟にたかられてる気がしないでもないが、5000ウォンを取り出したら目の前でスングァンが頬を膨らませてそれっぽっち???みたいな顔をしてるから、しょうがないからとさらに差し出して、でもやっぱりまだまだみたいな顔をしてるから、結果20000ウォンも渡したエスクプスだった。

「いやでも、お前だってすぐに再契約って言うよな?」

それだけは聞いた。そうしたらスングァンが、「セブチでもない、ボカチでもない自分なんて、まだ想像できないもん。ヒョンの弟じゃない俺なんて、俺じゃないよね?」なんて、エスクプスが舞い上がりそうなことを言ってくれたから、思わず追加で5000ウォンも渡しておいた。

スングァンのところで元気を貰ったエスクプスは、調子に乗ってドギョムを攻めた。
これまでだって色々あったけど、それほど大変でもなかった。いや、一筋縄ではいかないかもしれないが、方向性は一緒だった。それに勇気を貰ってドギョムを攻めたっていうのに。

「俺? 再契約? しないけど?」
「........................は?」

目の前が真っ暗になったエスクプスだった。
でも発端はエスクプスだった。ドギョムのところにはまだ再契約の話なんて来てなくて、ドギョムだって当然「再契約? するに決まってるじゃん」って人だったというのに、エスクプスが訪ねてくるちょっと前、ドギョムはミンギュとケンカした。
それはミンギュが不機嫌だから「どうしたんだよ」って心配して声をかけたというのに、「お前は単純でいいよな」とか嫌味を言われて、「ぁあ? なんだよそれ」ってなったから。

「どうせお前は再契約の話とか出たら、何も考えずにほいほいサインするんだろ」

そうまで言われた。だからちょうどその後にやってきたエスクプスに、「俺? 再契約? しないけど?」ってことになったらしい。
ミンギュがやさぐれてたのは当然ウォヌが再契約の条件として一人部屋を望んでいると聞いたからで、ショックを隠せなくてクラクラしてきたエスクプスだったけど、これはもう自業自得でしかなかった。
しかし当然そんなこと、エスクプス自身が知るはずもない。

「ジョンハナ~~~~」

だからエスクプスは泣きそうになりながら、ジョンハンを探して見つけ出して抱きしめて縋り付いて、「ドギョミが~、再契約はしないって~」って、まるで子どもが母親に言いつけるように訴えた。

「お? ドギョミが? ぇえ~い。嘘つくなよ」

ジョンハンはそう言ったけど、あんまりにもエスクプスが打ちのめされてるもんだから、事実だと理解したようだった。
多少は色々あったってどうってことないって顔でいられるけれど、結構な色々があると途端にエスクプスは打たれ弱くなる。昔は違ったのに。最近は年を取ったせいなのか、それとも皆が一番年上の自分のことをまるでマンネかのように甘やかしてくれると知ったからなのか。

「お前がどうにかしてきてくれよ~~。ドギョミはお前のカワイイ弟だろ」

そう言えばジョンハンが、「お前にとってもカワイイ弟だろ」って言い返してきたけれど、「まぁでも、気になるから事情は俺が聞いてくる」とも言ってくれたから、ちょっとだけホッとしたエスクプスだった。
結果、最後のウジのところには、トボトボした感じで訪れたエスクプスだったけど、ウジは絶賛作業中で邪魔はできない感じだった。
忙しい時に訪れれば、ウジはいつでも「ヒョンごめん。今ちょうどイイトコで、手が離せないんだけど。それでも良ければゆっくりしてって」と言ってくれる。
今回だってそう言われてもおかしくないぐらい忙しそうだったのに、ウジは手を止めて、エスクプスを真正面から見つめて、「ヒョンどうしたの? 何かあった?」と聞いてくれた。
1番長い付き合いだから、落ち込んでるのだって凹んでるのだって、喜びだってなんだって、1番分かちあってきたから............。

「ドギョミが更新しないって」

本当にそれしか言ってないのに、ウジは「それ、どうせミンギュと喧嘩でもしたんだよ」って言い当てていた。

「ちなみに、さっきまでミンギュここにいたけど、アイツも更新しないって。ウォヌと喧嘩したらしいけど」

言われて、落ち込んでたエスクプスはちょっと考えた。そう言えば、自分が最後に嫌がらせでミンギュに言った言葉を。

「あ、やべ............」
「なに? ミンギュとウォヌの喧嘩の原因、ヒョンのせいなの? 契約更新の件で何かあった?」
「俺のせいじゃない」

完璧自分のせいなのに、エスクプスは否定した。でも視線は泳いでいたからきっとバレバレだっただろう。でもとりあえずとウジにも、再契約の件を確認した。

「俺? 再契約はするよ。当然じゃん。でも、条件はちゃんと出したよ」

再契約はすると言う。だから喜んで、勢いで「どんな?」って聞いてしまって、エスクプスは打ちのめされた。
だってウジが当然のように「13人全員が幸せでいられること。そのための環境整備もフォローも、今以上にして欲しいって言った」って言ったから。
泣きそうになりながらも「そんなアバウトな条件提示でいいのかよ」って言えば、「そういうの、絶対ハニヒョンがしっかり抑えてるだろうし、アメリカ人のシュアヒョンが契約ごとで油断するとも思えないじゃん」ってウジが笑って言う。

「あぁそれから、いつか13人でも余裕で暮らせる宿舎が欲しいって、言っといたから」

ウジはそうも言った。
宿舎にはウジとエスクプスの2人だけって時だってあったのに、今は13人もいる。
皆で雑魚寝したり、部屋の中には2段ベッドだらけで窮屈だったのに、今はもう宿舎が3つに分かれたこともあって、ミンギュとウォヌ以外は1人部屋になった。ちょっとだけ寂しくもあるけれど、それでも嬉しい限りなのに、ウジの願いで、いつか全員でまた一緒に暮らせるかもしれない。

「俺頑張るからさ。ヒョン、俺ら、幸せになろう」

ウジがそんなことを言うから、涙が止まらなくなった。
でもしっかりしてるウジはちゃんと、「ヒョン、ミンギュにちゃんと謝りな」とも言ったけど。
本当は「俺のせいじゃないって」って言いたかったけど、グズグズになって言えなかった。
だからまた、ジョンハンを探して見つけて、それから「ウジに泣かされた」って言いつけてやった。

エスクプスの予定では、ジョンハンが「どうした?」って言ってくれて優しくしてくれるはずだったのに、ドギョムに話を聞いてそのままウォヌと喧嘩をはじめていたミンギュの話も聞いてきたからか、「ヤー、お前のせいだっただろッ」って怒られたけど............。

「絶対俺のせいじゃない。皆がすぐに再契約してくれたらいいだけじゃんッ」

だからムクれて言ってみる。

「もうちょっとだけ待て。お前の誕生日までには、絶対ケリつけるし、お前が悲しむことは絶対にしないし、お前が絶対喜ぶ誕生日プレゼントを俺が用意してやるから」

ジョンハンがそう言うから頷けば、「お前はもうこの件で口出すの禁止な、話がややこしくなるから」とも言われたけれど............。
諦め悪く、「でも、全員集合って言って、再契約する人って言えば、全員手を挙げて、それで一発オッケーなんだって」ってまた言ってみる。

「わかってる。俺もそう思うし。でもな、勝てるゲームでも俺は油断しない派なんだよ」

ジョンハンがそう言って笑った。
いつも見慣れてる顔で、カッコイイのも美人なのもカワイイのも知ってるっていうのに、ちょっと惚れ惚れしたかもしれない。
まだグズグズしてたから、そんなこと言わなかったけど............。

結局エスクプスは、ミンギュとウォヌと、それからドギョムにも謝った。だってそうしないと、再契約の話は進まないってジョンハンに脅されたから。
でもジョンハンは嘘はつかなかった。
全員が、当然のように最後には「更新する」って言ってくれたから。しかもこの幸せが後7年も続くという。
契約期間がまだ残ってるにもかかわらず、再契約の告知を会社が出してくれた。

世界中のカラットたちが喜んでくれてる中、メンバーだけのカトクに、マンネなディノが長い長い文章を打ってくれた。
それは最初から最後まで、ありがとうって気持ちがたくさん散りばめられたもので、そんなのエスクプスの方が思ってるってのに。

「苦労かけるけど、俺らとカラットたちの統括リーダーを、もうしばらく頼むよヒョン」

そう言ってくれたのはホシだった。
それからエスクプスは、幸せでしかない。

The END
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