LEFT&RIGHT
う、ヒョンごめん
ヘンガレの世界の中で、ホシに守られて助かったディノが、凹んでいた。
「ヒョンごめん」
何せディノにはヒョンが12人もいるから、ホシにまず謝ったし、後から駆けつけてきてくれたジョシュアやドギョムにも謝った。
崩壊した街中のなんだかんだの事後処理を、皆が黙々としてくれてるから。
瓦礫を片付けていく中で、お宝も出てくる。まぁゲームの世界だからだろう。それを被害にあった人たちに配りつつ謝りつつ、そんなんじゃ割にあわないぐらい被害にあったって人には別のもので対処する......なんて高度なことは、ジョシュアが主に対応してくれていた。
何せウジはまだ、地味に相手を引っかけるための落とし穴を作ってたから。
ウォヌはリアルな世界を制御するのに忙しかったし、ミンギュはまだスングァンと一緒にエスクプスとジョンハンのところで......。
落ち込んでるディノの横にはドギョムがいて、一緒に瓦礫を片付けていく。
「ごめんな。俺のこと、助けようと思ってきてくれたんだろ?」
確かにそうだった。今となっては、もっと落ち着いて行動したら良かったのに、冷静なつもりでいたけど必死だったのかもしれない。
「俺の後、トレースして飛んだんだろ? ごめん。俺ちょうど、あの店からはシュアヒョンに運ばれる形で飛んだから、俺の位置情報が、そこで途切れたんだと思う」
あぁ、そうだったのか............と、納得した。
そこにドギョムがいると思ってさらに焦ったことを、それで思い出したから。
「もっとうまくやれるつもりだったんだよ......」
ディノがそう言って落ち込んでるっていうのに、少し遠くの方では、「なんか俺ラッキー。またイイモノみっけた~」とホシがテンション高く喜んでいる。大概を破壊したというのに、罪の意識とか、反省とかっていう言葉とは無縁そう。
バーノンは手にした太陽光線が出せるソレの出力を最大限弱くして、大きな瓦礫に向けて一瞬で瓦礫を霧散させていた。地味にそれにハマったのか、片っ端から片付けはじめてる。地上だし、最大限弱い力だというのに、やっぱりバーノンだけが時々キラキラ輝いていた。
ドギョムの慰めに、「大丈夫。もう大丈夫」って何度も答えていたディノだったけど、見た限りでは全然大丈夫そうじゃなかった。黙々と働いてはいたけれど、時々その手は止まるし悔しそうだし。
「だって、もっとうまくできるはずだったのに」
そして時々は我慢できなくなるのか、そんなことも呟いていた。
ジュンとthe8がヘンガレの世界にやって来たのは、そんな時。
「後片付け手伝うよ~って、あらかた終わってるじゃん」
する仕事があんまりなくてジュンは素直に嬉しそうだった。
それでもジョシュアの傍にいき、ややこしそうな案件を幾つか引き継いでいたから、確実にドギョムよりは役立ちそうだった。
それからthe8はいつもと変わらない風情でディノの傍に来たと思ったら、「こんにちはって笑いながら近づいて、いきなり刺さなきゃ」とか物騒なことを言い出した。
「それに、いつだって自分が助かる最後の手段は用意して戦わなきゃ。生き残らなきゃ意味がないだろ」
何故かいつだってthe8は戦うことには真剣だった。まぁただの負けず嫌いだからかもしれない。ディノが教えてほしいと言えば、どんなことだって教えてくれるヒョンだった。それにみんなが「大丈夫。お前はよくやったよ」って褒めてくれてたって、the8だけはちゃんと「お前が間違ったんだよ」って鋭い一言をくれるから。
「う、ヒョンごめん」
悔しくて泣きそうになりながら謝れば、それでも「ホシヒョンが間に合って良かったよ」とも言ってくれたから............。
まぁでも後日、市街戦やら接近戦やらをやたら叩き込まれることになるディノだったけど、その時はまだ、ただただ落ち込んでばかりだったかもしれない。
The END
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