妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

お、お前のせいだろ

LEFT&RIGHT


sevmin.hateblo.jp

 

お、お前のせいだろ

ミンギュがでっかいソファで寛いでいて、そこでジョンハンと何やら言い合っていた。
スングァンの前にはケーキがあって、美味しすぎた。
そんなスングァンの前にはエスクプスが車イスに座ったままで、ニコニコニコニコ、楽しそうに笑ってた。

目の前にいるのはケーキを食べてるスングァンだけだというのに、あまりにも楽しそうに笑うから、逆にスングァンが心配になったほど。
でも気まずそうにしてるスングァンのことすら、楽しそうに見てるから......。

「ヒョン、何がそんなに楽しいの?」

スングァンはそう聞いてしまった。だけどすぐに後悔した。「だって誰かが遊びにくるの、超久しぶりだもん」とエスクプスが言ったから。
自由には、どこかに行けない生活は想像しても、想像しきれない。
今度は盛大に気まずい空気が流れたというのに、それでもエスクプスは楽しそうに笑ってた。

ちょっとだけどうしよう......って思ってたところに、タイミングよく連絡が入ってきた。
スングァンの家を見に行かせた人間から連絡が入って来たらしく、家の玄関が開いてて、呼びかけても誰も反応しないって......。
電話越しのウォヌの声もちょっと緊張してたけど、さっきまで言い合ってたミンギュもジョンハンも、ハッとしたかもしれない。

もはやスングァンだけじゃなく、親戚の家にまで問題が波及してるというのなら、警察にも連絡しない訳にはいかないかもしれない......っていうウォヌの声がして、部屋の中に漂う緊張感もハンパなかった。
一人気まずそうだったのは、スングァンだろう。

「あぁ、家の玄関は、常に開けてるんだよ。ネコが来るから」

何せそう言ってから、「いや、どうせ何も盗まれるものないからいいっておばさんが言うから。俺も最初は気になったけど」と言い訳なのかなんなのか。
しかもネコと言ったって、飼ってる訳でもないという。誰かが飼ってるのか野良ネコなのか、時々勝手に寛ぎにくるネコがいて、その子を可愛がっているおばさんが、玄関はずっとあけっぱでいいと決めたらしい。

「で、でも、玄関入ってすぐの戸棚が盛大に倒れてて、部屋の中も外から見るかぎりは荒らされてるっぽく見えるらしい」

玄関が開けられたままの家というのも斬新だけれども、さすがに戸棚がいつも倒れてる家ってのはないだろう。と、話題は「じゃぁやっぱり」って方向に進みかけたというのに、スングァンがすかさず、「あぁ、朝にヒョンたちがケンカしたからそれ」と言い出した。

お世話になってる親戚の家には、スングァンより年上の男子二名がいて、朝からトイレの順番でケンカになったらしい。男二人が暴れればそりゃ、戸棚も倒れて、部屋も荒れるかもしれない。だけど、そのままってことはないだろう。

でもスングァンが、「おじさんはトラックに乗っててほとんど帰ってこないし、おばさんは看護師さんでほとんど帰ってこないし、ヒョンたちはいつもそんな感じだから」と申し訳なさそうに説明してくれた。

「いやでもそうしたら、どうやって玄関から出るの?」

素朴な疑問を口にしたのはミンギュだったけど、スングァンからの返答に全員が固まったかもしれない。

「大丈夫だよ。俺の部屋はベランダだから、外には直接そこから出れるから」

言葉の意味が理解できなくて固まってる人と、意味が理解できて固まってる人にわかれはしたけれど、全員が言葉を失っていたかもしれない。

親戚の家にお世話になってるって時点で事情があるんだろうが、ベランダに住まわさられているなんて、扱いが酷すぎる............と、思ったんだろう。

「なんでお前の部屋がベランダなんだよ」

ジョンハンが最初に口を開いて、まだリアルな世界では会ったばかりだというのに、その声が怒ってた。
それがちょっとだけスングァンは不思議だったけど、でも自分のために怒ってくれてるってのは判ったんだろう。

「あ、いや、全然大丈夫だよ。だってヒョンたちが、お前は勉強があるだろって、ベランダを俺だけの部屋に改装してくれたんだよ。冬はちょっと寒いけど寝袋もあるし。それに実はヒョンたちの部屋もベランダと同じぐらい寒いから、俺だけが寒いってこともないし。ヒョンたちが頑張って、雨だけは凌げるようにしてくれたから」

たくさん語られた中に、情報が多すぎたんだろう。でも「そりゃ良かったな」なんて言える要素は微塵もなかった。そもそも雨だけは凌げるってことは、風は無理なんだろう。

ミンギュとジョンハンは驚きすぎて言葉を失っていたけれど、案外一番最初に立ち直ったのはエスクプスで、「スングァナ、お前凄いな」と楽しそうに笑ってた。

「お前んち、びっくりするほど貧乏なんだな」

しかもそんなことを笑顔で言うから、「ヤー、エスクプスッ。なんでお前はそういうことを普通に言うんだよ」とジョンハンが怒りだす。

「だいたい、お前はそういうとこあるよ」
「なんだよそういうとこって、だって、本当のことじゃん」
「本当のことだからって、全部許されると思うなよッ」

なにやら二人がケンカをはじめる。
いつの間にかウォヌとの電話はミンギュが一人で引き受けていた。
スングァンはやっぱりケーキが美味しいし......と現実逃避中。

「だいたいってなんだよ。だいたいって。それなら俺だって言うけど、今回の騒動のはじまりは、お前だろ?」
「は? 俺がはじまりな訳ないじゃん」
「お、お前のせいだろ」

二人の言い合いは続くけれど、スングァンはケーキを食べながらも、目の前の二人のケンカに思うことがあった。
多分エスクプスが車イスに乗っているからだろう。言い合っているのに、ジョンハンはその車イスから絶対に離れないから。距離を取ってしまえば、あっさりと離れてしまえるのに。言い合っているのに、ケンカ中なのに、なんだかそこには、優しさしかなかった。

The END
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