LEFT&RIGHT
最終兵器、それはthe8で決まり
ウジが「ホシに会いたい」とヘンガレの世界で口にした。
絶対に言わないと決めていただけに、それはヘンガレの世界全てにわかるように口にしなければ、機能しないように設定してたっていうのに、もはやそれどころじゃなかったから。
「おっしゃ~~~ッ」
ホシが元気に叫んでた。が、しかし、まだ空高く浮いた状態で。
遠く遠く地上の方から光が伸びてきているのが判るっていうぐらいの距離だった。
「ぅお?」
バーノンの太陽光線が早いか、ミンギュの3億が早いか。
当然ミンギュはすぐにウジに連絡して、自分の暗唱番号を伝えてた。
「いや、知ってるけど。ウォヌの誕生日だろ?」
とあっさりウジに言われ、伝えた時にはすでに3億抜かれた後だったりしたけれど。それでも「愛してる」なんて滅多と言わないウォヌの言葉を聞いて浮かれていたから、3億は惜しくなかったんだろう。
でもその時にはバーノンのもとにはジョシュアとドギョムが到着していて、太陽光線最大出力にして、ヘンガレの空を突き破る勢いのビームを発射してたりして。三人いなきゃ、逆にバーノンが地上に吹き飛ばされてたんじゃないかってぐらいの威力だったけれど、次の瞬間にはホシが目の前に迫ってた。
ホシが一瞬で世界を飛んだ。目指すはディノが闘う場所。もしも男が全てを木っ端微塵にするつもりでも、ディノだけは守ると決めて飛ぶ。
「力技ならクプスヒョンの方が断然強いだろうけど、ヒョンは優しすぎるから。その点スニョアは、考えなしで動くから、優しいけどいつだって理由は後から考えるタイプだから」
ウジがいつか言っていた。貶してるように見えて、誉めてたってことは、幼馴染のウォヌだから判ったことだろうか。
突撃して、次の瞬間にはディノを抱え込んで、そのまま全てを終わらせたホシがいた。
ディノもろとも全てを壊そうと思ってる男と、ディノだけは守って、すべてを破壊してしまえと思ってるホシと、果たしてどっちが破壊力が強くて迷惑な存在なのか............は難しいところだが、でも、きっと誰も怒ったりはしないだろう。
多少ゲームを楽しんでたユーザーからは文句は言われるかもしれないけれど、ミンギュの浮いた3億があれば、補償には十分だろう。
それに、このゲームにそこまでこだわってる人間なんて、多分自分たち以外にはいないと思うから......。
一瞬でカタがついた。
飛び込まれた場所にいた男は一瞬で弾けたけれど、きっと捨てIDだろうから問題ないだろう。まぁ捨てIDだからこそ、まだ問題は残っているといえば残っているけれど。
ホシは結構壊しちゃったな......と倒壊したビルを見て笑ってた。
ディノはナイフで頑張ってた自分が地味過ぎたと反省してた。
ジョシュアが呆れてて、ドギョムはビックリしてて、バーノンがポカンとしてて、ウジは地味に後片付けに動き出していた。
そうそう。
ジュンがミンギュとスングァンをエスクプスのもとに送り届け、部屋に戻ったのは、ヘンガレの世界でそんなことがあった一時間ほど後のこと。
the8はまだ夢の世界にいた。
ジュンに起こされたthe8は、色んな出来事を、ほぼ最後に知ったかもしれない。
「どうする? ソイツ。始末する? ウォヌヒョンに聞いてみて」
ジュンが笑いながら「どっちで? ヘンガレ? それともリアルで?」と聞けば、「どっちでも」と普通の顔で答えるもんだから、面白すぎるとジュンが爆笑したほど。
きっとウォヌにこの話をすれば、「いや、お前はアサシンかよッ」とツッコんでくれるだろう。
まぁその後、店に突撃してわざわざ男に威勢良い言葉を浴びせかけてから闘ったディノにthe8が、「こんにちはって笑いながら近づいて、いきなり刺さなきゃ」と真剣に説いていたらしいので、the8アサシン説は本当かもしれない......。
「最終兵器ならホシの方だろ?」
そうthe8は言うけれど、いやいやいやいや......と、ウォヌもウジも首を振る。
最後の最後、誰を出すかと言われれば、二人ともthe8を選ぶという。
ウォヌとウジ以外は不思議顔。まぁジュンは頷いていたけれど。
ということでまだ誰も、the8が「最終兵器」と呼ばれる理由を知らなかったけれど......。
The END
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