なんとなく書いたミニマムなおはなしだったのに......
何故か続きをと言っていただくことが多かった気がする。
なので今回書いてみました。まぁ相変わらずミニマムだけどさ。
April shower
April shower 2
春。小雨。桜が満開の中、ミンギュは傘もささずに外に出る。
傘なんて持ってたって意味はないと、10本ぐらいなくしてからようやく気づいたから。
はじめはその声に惹かれたのに、気づけば全部に惹かれてた。
顔も、声も。ミンギュを見つけて笑うその笑顔も。
指先だけで振るような手の振り方も。
流行りの曲をいくら聞かせても、全然覚えない。でも聞くのは嫌いじゃないと言う。
雨の中、行く当てもなく歩くだけなのに、それはまるで誰にも邪魔されないデートみたいだった。
「濡れるのも悪くないだろ」
ウォヌはそう言ったけど、結局濡れるのはミンギュだけだった。
でも土砂降りでもない限り傘はささない。
「いつでも傘をさすと思ったら大間違いだぞって気持ちじゃないとダメなんだよ」
時々ウォヌは謎なことを言う。それは誰に対して言ってるんだよと聞けば、「え、神様じゃないの?」と笑ってた。
ただ雨に濡れないように傘を差して、誰もがどこかを目指して歩いてく。それが普通だから、ミンギュが雨の中1人で誰かと話してたって気づく人はほとんどいない。
雨の中を歩くくせにウォヌは水溜まりは嫌う。
そこに飛び込むほどガキじゃないと言う。
雨上がりの虹も嫌いだと言う。
雨があがってしまえば、せっかくの楽しい時間が終わってしまうからって。
「いざとなったら俺が雨乞いでもするよ」
結構本気でそう言ったのに、「もっと今どきの、化学の力っぽいものないのかよ」と文句を言われた。
「じゃぁそのうちドローンでも飛ばしてみるよ」
そう言ったらなんでかウォヌは目をキラキラさせて、「それで雨が降るのか」って聞いて来るから、「降るよ。局地的だけど、降る」と嘘をついてしまったミンギュだった。
雨は案外、雲が流されてすぐに止んでしまう。春の小雨なんて、特にそうで。
慣れれば雨が終わる気配だって感じられるようになった。
だからバカみたいに、雨が降る方に向かって歩く技だって身につけた。
それでも雨なんて、指折り数えてしまえば一年のうち、どれほどもないってのに。
「また会えるかな」
そう聞こえた声に、「会えるに決まってるじゃん」と答えた時にはもう雨もあがって、春の景色がキラキラと、輝いてそこにあった。
誰かがいた気配すらない。
取り残される寂しさもあるにはあるけれど、それ以上に次に思いを馳せる気持ちの方が強かった。
とりあえずミンギュは、雨の降らし方ってのをググりながら歩く。
小型ドローンの値段とかも。
雨を降らすことができなくても、ドローンを見せたら喜んでくれるかもしれないから。
The END
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