妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

April shower

 


April shower

April shower

4月。朝から雨がポツポツと振っていた日。予報では1日中雨で、昼過ぎから酷くなるらいい。ミンギュは当然、傘を持って出かけた。
最近の天気予報は外れることもない。だから当然雨が降って来て、昼には結構振っていた。だからほとんどの人が傘を持っているってのに、なんでか目の前を、雨に濡れて歩く人がいた。

お年寄りでもないし、子どもでもないし、荷物をたくさんもった女の人ってこともない。
だから傘を差し出して、「どこまでですか?」なんて声をかける必要はなかったっていうのに、雨の中をひどくのんびり歩くその人を追い抜いた時に、口ずさむ歌にその声に思わず振り向いた。

その歌が心地良いのか、その声が心地良いのか、ちょっとだけ悩んだぐらいに心地よかったから。
もしも歌なら、その歌の曲名を聞けばいい。
だけどもしも声なら......。歌ってない時の声も聞いて見たい。

「すみません。あの、その歌、誰の歌です?」

だからミンギュはそう話しかけた。
声をかけられたその人は驚いて、「え?」って言っただけだったのに、それだけの音がやっぱりミンギュには心地良かった。

雨の中でのんびり歩きながら歌うぐらいだから、ちょっと変わってる人でミンギュが話しかけるぐらい許容範囲内だと思ってたのに、どうやら見知らぬ人間に話しかけられるのはダメだったようで、物凄い警戒心を持たれてた。

「あ、すみません。凄い良かったから、歌が」

どうしてももう少し声を聞きたくて、諦めずにそう問いかけた。そしてそっと、傘だって半分差し出してみる。
その人はミンギュの言葉よりも、傘が自分の頭の上に来たことの方をより驚いていた。
なんだかそれはまるで、傘なんてはじめて見た......みたいな顔と態度に、思わず笑いそうになって我慢したほど。

「歌......」
「誰の歌かなんて、俺も知らないけど、たぶんいつか、流行ってたんだと思うけど」
「流行り? ほんとに? 聞いたことないけど」
「..................」

諦めきれずにミンギュが「歌」と口にすれば、流行歌だと彼は言う。
でもはじめて聞く曲だと首を傾げれば、傘の中、ミンギュと同じように首を傾げてみせた。
雨が強いから。このままでは2人して濡れるから。そんな勝手な理由で傘の中で距離を詰めても、後ずさりもせず、やっぱり傘の中にいる自分に驚いていた。

「傘をはじめて見る人みたいだ」

思わずそう言って笑ってしまったミンギュだったけど、実際に驚かされたのは、ミンギュの方だった。

「はじめてじゃないけど、傘の下に入るのは、随分ぶりだ」

そう言った人は続けて、「なんでお前、俺のこと見えるの?」って言ったから。
怖い話は苦手だし、今までだってそういう存在を、見たことだってないっていうのに。

「え? ぇえ? ぇえぇえええええええええッ?」

驚いて叫んだら、ミンギュは雨の中で1人だった。なんでか傘すら持ってなかった。盗られたってことだろう。まぁいいけど。
怖かったかというと、そうでもない。
もう一度会いたいとすら思った。やっぱりその声が心地よかったから。
でも二度と会えないんだろう。こういうのはそうと相場が決まってる。

なのに次に雨が降った日、ミンギュはまた出会った。しかも今度は向こうから手を振って来た。そしてまた傘を無くした。

「いや、前に持ってった傘を持って来いって」

ってミンギュの言葉には、なんでか答えてはくれないけれど、遥か昔の流行歌を歌ってくれる人は、春の雨の中、ミンギュを見つけると駆けてくるようにもなったけど......。

The END
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