妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

4月に生まれた君と嘘

 

エイプリルフールに、ウォヌは嘘をついたと言った。
「嘘だよ。朝から一緒にいたけど、ヒョンが嘘をついたとこ、俺見てないよ」
ウォヌの嘘なら絶対に判ると言わんばかりに、ミンギュが言った。

出かけに「あ、忘れ物」と言ってミンギュが「これ、こないだ買った春コート」と新しいコートを手にしてきたけれど、「春にはもう暑いって言ってるのに、いつ着るんだよ」とウォヌが言った。
「いいんだよ。これはファッションの一部なんだから。持ってるだけで」
そんな会話を朝した気がする。
でも昼には春コートはミンギュの手からは消えていた。
とりあえずディエイトは新しいものを見つけると一度は誰のものだろうと羽織ってみるから。

昼過ぎにはもう腹が減っていたけれど、スケジュールが詰まってて昼飯にはありつけず。栄養補給的なチョコバーをゲットしたけれど、ウォヌはたぶん食べないだろう。
「いる?」と聞けば、ちょっとだけ考えて「いらない」と言った。
そのちょっとの間で、お腹空いたけど、好きでもないものを食べて凌ぐほどじゃないって考えたんだろうって判る。
「多分ウォヌヒョン、これ、食べられると思うけど」
そう言ってもウォヌは首を振るばかりだった。

やっとありつけた昼飯は、夕方も大分遅くなってから。
何を食べてやろうかと考えすぎて、結果、ありきたりなものしか食べなかった。ちょっとでも時間があるなら一度家に帰ってミンギュが作ったラーメンでも食べたほうが、よっぽど安らいだし栄養補給にもなっただろうに。
「早く帰りたい」
だからそういう意味で言ったのに、なんだか違う意味に捉えたミンギュはその後、「巻いていこう。ガンガン巻いていこう」とかなり息巻いていた。

練習室にある時計だけが、夜を刻む。
外なんて見えないから時計が狂ってたら終わりだ。あぁ自分たちだけ違う次元にはまって、その間ずっと練習してるんじゃないかとか、謎なことを言いだしたマンネラインを横目に、ウォヌは踊りのタイミングがうまくつかめないと鏡の前に居続けていた。

もうすぐ真夜中になる頃、練習室は熱気に溢れてた。誰かが持ち込んだ手で握れるサイズのソフトボールを使ってハンドテニスが行われていたから。2人でペアを組んでの戦いは白熱してた。それもそのはずで、負けたペアが練習室の掃除と決まっていたからだろう。
珍しくミンギュはウォヌとペアで、2人とも体格がいいから手だって長いってのに、ジョンハンとスングァン相手に負けて、チャイナの2人に負けて、怪我してるんだからハンデをつけまくったエスクプスとジョシュアに負けた。

練習室が広すぎる。そう文句を言うミンギュに、「ほんと、広くなったよな」ってしみじみ言うウォヌに。
今度ルンバ買おうと言うミンギュに、「誰かが名前とかつけそうだよな」って嬉しそうに言うウォヌに。
電動でカーテンが閉まるんだから、電動で勝手に床もキレイになればいいのにって言うミンギュに、「そんな時代も、きっとすぐ来るよ」ってやっぱりウォヌは意識せずにミンギュの文句をいなしてた。

帰りの車の中、帰ったら先にシャワーする? とミンギュが聞けば、ウォヌは「うん」と言う。俺が先していい?って聞いても、ウォヌは「うん」と言う。目も閉じてるから半分ぐらいは眠ってるのかもしれない。
「それとも一緒に入る?」
ミンギュが楽しそうにそう聞けば、それにもウォヌは「うん」と答えた。

家の中は誰もいなかったのに、空調が整っていた。最近手に入れたスマート家電というやつで、ミンギュが操っているから。
「何かちょっとだけ食べる?」
冷蔵庫を開けながらミンギュが聞いてくるから、頷きながら大人しくテーブルで待っていたっていうのに、「ウォヌヒョン待ってる間にささっとシャワー浴びてきなよ」とミンギュが振り向きもせずに言う。料理中は振り向かないとでも決めているかのよう。
「一緒に入るんじゃなかった?」
でもウォヌがそう言えば、思いっきり振り返ったけど。

ちょっとだけ食べた。それから一緒にシャワーをした。「する?」って聞いたけど、「しない」って言われた。きっと昔なら、「何を?」って言われてた気もして思わず笑ったら、「笑うなバカ」って言われた。それからミンギュは、ウォヌを抱きしめて眠った。
数時間後には迎えに来るから、仮眠みたいな眠りだったけど......。

夢を見たような気がしたけど覚えてなかった。でも起きた時にまだ腕の中にウォヌがいて、時計を見れば起きなきゃいけない時間までもう少しで。
「あ、俺、嘘つくの忘れた」
そう言ったら、まだ寝てるウォヌが「ケンチャナ」って言う。何が大丈夫だよって思いながらも、僅かでももう少し寝ようと思って目を閉じた次の瞬間には起きる時間になっていた。

いつも通りと言えばいつも通りな。2人の日常と言えば日常な。そんな一日だったはず。
思い出せば結構色々思い出せたのに、どの場面でもウォヌは嘘なんてついていなかった。
「自慢じゃないけど、ヒョンの嘘なら俺、絶対にわかるから」
ミンギュがそう言えば、「なんだよその謎な自信」とウォヌが笑ってた。
「何年一緒にいると思ってんだよ」
「何年一緒にいたって判らないよ」
強気で言ったのに言い返されて、「なんでだよ」となったけど、ウォヌはあっさりと「だって俺が嘘ついた時、お前いなかったもん」と言い出した。
「え? それなら俺があれこれ思い出す前に言ってよ」
ミンギュが情けない顔をする。でもすぐに楽しそうに笑って、「でも俺、なんか当てられそうな気がする」と言い出した。
それから当然のように「ヒントヒント」って。
「誕生日プレゼント」
ウォヌはたったそれしか言わなかったのに、ミンギュは「あ」って言ったから、2人で過ごした時間は本当に長くなったってことかもしれない。
「判った。俺の春コートだ」
そしてミンギュはそれを言い当てた。
ミンギュが手にするだけで着もしなかった春コートに一番に食いついたのはディエイトで、スタジオの大きな鏡の前で少し大きめサイズのそれを良い感じに着こなしてみせた。
ディエイト的にはどうせミンギュは着ないんだし、これはもう俺のじゃないか......みたいな気持ちだったのかもしれない。
そこにウォヌはそそそと近づいて、「ミョンホや。今年はダメだよ。それ、ちょっと早いけど俺からの誕生日プレゼントだから」と言って、ディエイトの手から奪い返しておいた。
その後、その春コートはスングァンの手にも渡ったけれど、「ミンギュヒョンのは、俺には大きすぎるんだよなぁ」と呟くだけに留まったけどそれを見ていたジョンハンは春コートを完璧に盗んでいった。
ミンギュのものは俺のものってことだろう。
当然ウォヌは「ハニヒョン、ダメだよ。その春コートは俺からの誕生日プレゼントなんだから」と言いつつ奪い返した。
ドギョムもエスクプスも、一度はそれに袖を通していたけれど、もうその頃にはそれはウォヌからのソンムルだと知れ渡っていて、なんでかミンギュだけがそれを知らなかった。
「帰りがけにシュアヒョンが、ウォヌは趣味がいいなって俺を見て言うからさ。てっきりウォヌの男を見る目を褒めてるんだと思ってた」
そんなバカなことを言ったミンギュだったけど、ミンギュの春コートを守ったウォヌの嘘は気に入ったようだった。
「でもほんとに、別口で誕生日プレゼントあるよね? なくても全然いいけど、でもあるよね?」
とも聞いてきたけど。
ミンギュの誕生日はウォヌにとっては元から大切な日だったけれど、今は色んな意味で特別な日になったから、ミンギュは決して無理を言わない。
でもそれをウォヌだって判ってる。
「すっごい特別なソンムルを用意した」
ウォヌがそう言えば、ミンギュが嬉しそうな顔をして、「ヒントヒント」と言い出したけど、今度はウォヌは「アンデ」と言って教えてくれなかった。

The END