妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

愛のないセックスから生まれた愛。

 

朝、通勤通学の人がいなくなれば、コンビニは今日も暇だった。店の中のイートインコーナーには今日もチャニがいて、昔流行ったMP3で音楽を聞きながら勉強するためのあれやこれやを広げた途端、うつらうつらとしはじめていた。
店の掃除と商品の補充と、それから何かのキャンペーンのシールの準備と、電子マネーしかほぼ使わない世代に混じって、未だに現金を持ってやってくるハルモニたちのための釣り銭も用意する。
表からは見えないようになっている場所にあるカレンダーには、今日の日に◯がしてあった。
でもウォヌには何も覚えがなくて、しばらく考えていたけどそのうち忘れてしまった。
それほど忙しくないコンビニだけど、それでも1人だと忙しい時もあるから。
店の入り口は昔、ドアを誰かが開ければ音が鳴るシステムがあったけれど、今はもう鳴らない。というか、スイッチを切って久しい。多分もう鳴らないだろう。
ミンギュは店のドアを開ける度にそれが気になるらしく、「不用心だろ。音が出るヤツ入れろよ」と言う。
でも長く1人でこの店の店長をしているけれど、長らく、本当に何もなかった。
あの日突然ミンギュがやって来て、ウォヌのことを店の裏側に引きずり込んで暴力を振るうまでは。
ウォヌが店長をしているコンビニは、近所の人たちには「地下鉄の上のコンビニ」と呼ばれてた。でも地下鉄なんて近くにはないけど。
それは大分むかしのはなし。ここらに地下鉄ができるって噂があったらしく、それを信じてここにコンビニを作った人がいて、当然ながら地下鉄なんてできなくて......。
揶揄い混じりか、それとも親しみを込めてか、ここを「地下鉄の上のコンビニ」と呼ぶ人は今も多いけど、その理由を知ってる人はもう少ないかもしれない。
「地下鉄の上のコンビニってここ?」
でも久しぶりにそう聞いたのは、ウォヌがはじめてミンギュと会った日だった。
そうですって答えたのか、頷いただけだったのかは覚えてないのに、「店長ってあんた?」そう聞かれたのは覚えてる。
えぇだったか、はいだったか。言った瞬間には胸ぐらを掴まれて、バックヤードと言うには所帯じみた店の裏側に引きずりこまれたと気付いた瞬間には、ウォヌはひっくり返ってたし、見上げる間もなく首元を押さえつけられて、殴られたんだって気づいたのはもっと後だった。
本当なら殴られただけですむはずだった。その時に殴った理由をミンギュは話したはずだから。そうしたらウォヌだってそれに答えて、違った未来があるはずだった。
ただ謝って謝られてそれで終わりだったかもしれない。
今となってはどっちが良かったのかは判らない。
「愛のないセックスから、愛が生まれたんだよ」
そう言ったウォヌにミンギュは、「ごめん。これは絶対、ストックホルム症候群だよ。俺が追い詰めたから」って言ったけど、そんなのはもう関係ない。
出会いも、それからの2人の関係性も最悪だったけど、それでもウォヌにはミンギュが残ったんだから。
「ウォヌオッパおはよ〜」
カレンダーの◯印にまたふと目がいって、なんだろう......って思った時に店に入ってきたのは、近所に住んでいる女子高生のジユンだった。
両親共に医者なのに珍しく貧乏な家なのは、貧乏人相手の医者だからだと、小さなかった頃に自慢気に教えてくれた。学校に行く前にコンビニに寄って簡単に朝ご飯を食べて行くのが日課だった。まぁでも最近はバタバタと食べながら行くけど。
「お? 遅刻じゃないか?」
「遅刻じゃないよ。今日からテストだって言ったじゃん」
パンとイチゴウユを手にしたと思ったら、その場でパンの袋を開けてかぶりつく。支払い前だというのに。
もはや自分の家とでも思っているのかもしれない。まぁでもそれぐらい小さい頃からここに通ってはいるだろう。
「あ、チャニだってテストだよ。今日」
「え、ほんとに?」
「うん、不登校児クラスの進級テストの予備戦って言ってたかな?」
その謎な情報に、ウォヌが首をかしげる間にも、ジユンは自分でレジを打って支払いを済ませていた。
本戦でないなら、必ずしも行く必要はないのかもしれない。でもテストなのに予備戦と本戦がある戦いってなんだ......。寝てるチャニを起こすかどうかでウォヌは一瞬悩んだっていうのに、ジユンは気にせず「起きろ、イ・チャン」とチャニのことを豪快に叩き起こした。本当にそのまま、頭をぶっ叩いたから、「頭を叩くな。バカになるだろ」とウォヌが思わず言ったほど。
「これ以上バカにはならないよ。チャナ、予備戦だよ予備戦。絶対行きなよ。本戦で点が取れなかった時に予備戦の点数で補ってくれるんだから、今日行っとかないと絶対ダメだよ」
「あ、今日予備戦だったんだ」
起きたチャニがそう言って、広げた勉強道具を片付け出して、慌てて店から出ていった。
そんなことがあったから、ウォヌはまたカレンダーの◯印の存在を忘れてた。
それからまたバタバタと過ごして、店の前の掃除をしてた頃のこと。
たまたま通り過ぎてったカップルが、もうすぐ100日目だねと言っていた。
そこでまたウォヌはカレンダーの〇印の存在を思い出した。
いや、でも、まさか............。
出会いは衝撃でしかなかった。あれは確かに寒い時期のはなしで、今は春で、しばらくは呆然と過ごしていたウォヌには記憶が曖昧な部分があって。
今はもう怖くもないし、殴られることもないし、辛かっただけのセックスだって、優しいばかりに変わってる。でも......。
ちょっと動揺しつつも働いた午後。不意に背の高い影が店に入ってくるたびにドキリとしつつ、気になってしまえば今度はカレンダーの◯印のことばかり考えてしまっていた。
「どうした? 予備戦に敗れたのか?」
気づけば夕方近く、チャニが戻ってきていつもの場所に座ったと思ったらそのまま机に突っ伏した。だからそう聞いたら、「名前しか書けなかった」と言ったから、思わず「せめて名前はキレイに書いたか?」と聞いたら驚いて、それから泣きそうになっていたから、そういうことだろう。
可哀想だったからイチゴウユを一つ買って、プラスワン分をチャニに渡してやった。
「ウォヌヒョンは? 勉強、できた?」
ありがとうも言わずにそう聞いてくるから、「ま、困らない程度にはな」と嘘にならない程度でごまかしておいた。事実、勉強ができなくてもウォヌは困ったことがない。大学には進まなかったし、難しい計算もレジがするし、代わり映えのしない日常が延々と続いてきて、これからも続いていくだろうから。
あぁでも、カレンダーには◯印があるけど。
突然ウォヌの人生に割り込んできたミンギュが、何もない日常を一瞬で変えてしまったけど......。
そうしてまたウォヌは、カレンダーを見つめる。
あの日から数えて何日目か。ウォヌは判らなかったけど、でも聞けば覚えてる人がいることを知っている。それはミンギュ以外で。
店の裏、倒れてたウォヌを覗き込んできたのはジユンの母親で、夕飯に足りなかい何かを買いに来たんだと言ってたような気がする。
店の中に誰もいないから覗いたのか、それとも物音かなにかが気になったのかは判らない。何を見られたのかも。
「トラブルに巻き込まれたようです」
倒れてるウォヌの横で、ジユンの母親にそう説明してたのは、そのトラブルを持ち込んだ張本人のミンギュだった。
「警察は? ウォヌや、起きられる?」
「あぁ、脳震盪を起こしてるようなので、そのままで。それから、自分は警察の人間なので」
遠くで聞こえる2人の会話は時折ぼわんぼわんとして聞こえなかった。それでも医者なんてしてるジユンの母親が引き下がったんだから、ミンギュの説明はちゃんとしてたのかもしれない。
殴られた顔は見られたのは確実だったけど、無理やり脱がされた服や、信じられない場所に負った傷まで見られたかは定かではない。でも気づけば自分のではないコートがウォヌの身体にはかけられていて、それを必死に握りしめてた自分がいた。
あの後、店をどうしたのかも覚えてない。でも翌日には熱があるのに店に立っていた。
最初は怒りに任せて殴られただけだったのに、突然襲われた。それは店の中からジユンの声がしたからだろう。
「ウォヌオッパ〜。朝の奢ってくれた分、お金、足りないけどおいとくね〜」
買い物をしようとした時にちょうどジユンのスマホは電池切れで、現代人としてどうよって話をしながらも気にせず欲しいものを持っていけと言ってやった。
見知らぬ全員にそんな態度を取ってる訳じゃない。子どもの頃から知ってるからの行動で、ジユンは自分の出来る範囲でちゃんと返そうとしてくる。きと足りない分だって、次のお小遣い日にはしっかりと返しにくるだろう。
そんなウォヌにしてみれば日常のどこにブチ切れる要素があったのかはわからなかったけれど、「誰にでもお前はそうやって手を出すのか」って言われたのは覚えてた。
後は痛みと、驚きと、それでも自分に何が起きてるのか理解するまでにかかった時間と、理解してしまえばさらに驚きと、それから恐怖と、でも必死に手をあげて抵抗しようとすれば殴られて、動けなくなった。
ただ揺すられるだけの間、ただ目を閉じて耐えていただけかもしれない。
自分だって男で、ガタイの差はあっても身長はそれほど変わらなくて、黙っていればいつだって怖そうとか言われることが多かったっていうのに。
もうちょっと笑いなよってウォヌに言ったのは誰だったか......。
たった一度の出来事で、それこそ犬にでも噛まれたと思って忘れればすむと思ってた。不意にあった交通事故みたいなものだって。
トイレの時間が苦痛だった。シャワーを浴びるのも辛かった。それでも普通に動けるようになって、あとは本当に忘れるだけって時に、ミンギュはまたウォヌのもとへとやって来た。











 

 

 

 

 

 

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