妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

氷の女王様が暮らす町 -MYMY 6-

 

氷の女王様が暮らす町

ゆっくり風呂に浸かりたいとかならまだ判るが、ゆっくりトイレに入りたいとか言い出したエスクプスによって、船は一度地上に降りようって話になった。
それは数時間前のこと、船の外のトイレにはエスクプスが入ってた。当然トイレは1人用で、空を飛んでたってもう慣れたもんで。
なのにトイレは外から開けられた。
そうこのトイレはカギはかかるけれど中からも外からも開けられるようになっていたから。
「ヤー、入ってるの判ってただろッ」
とりあえず前を隠しながらも怒鳴ったエスクプスだったけど、「ごめんヒョン緊急事態だからッ」と言って、ドギョムが座ってるエスクプスの横から奥へと手を伸ばす。
そこには普段から掃除道具だったり、網とか釣り竿とか、長めのものがしまってあったから。
トイレの中が物入れにもなっているのはこの船に乗った最初からで、船の中のスペースが限られているからこそだろう。
「ごめんごめんごめんごめん」
そう言いながらドギョムが出ていったけれど、出てすぐのところで他の面々に、「トイレは今クプスヒョンがうんこ中だから、気を付けてッ」って叫んでた。
「ヤーッ! ドギョマッ!」
怒ったってどこ吹く風。本当に強い風に流されて、エスクプスの声なんて一瞬で消えてゆくから。
でもドギョムのデカイ声はちゃんと全員に届いたようで、「なに? 腹でも壊してんのか?」とジョンハンがトイレの外から話しかけてきた。
心配してくれるのは嬉しいが、トイレ中に話しかけられて気にならない人間は少ないはずで......。
でもそれなのに。「ヒョン大丈夫? 出ないの?」と声をかけてくれる優しい弟たちが、次から次へとやって来る。
「クプスヒョン、もう諦めて途中で切り上げなよ」
そう言ってきたのはジュンで、心配してわざわざ操縦席から離れてきたのかと思ったら、ただただ「俺トイレ待ちなんだけど」ってだけだった。
「途中で切り上げるってなんだよ。どうやって途中で辞めるんだよ」
そう言いながらゲラゲラ笑ってるウジの声もする。
「え、ヒョン、出てる途中なの?」
スングァンの声もする............。
「なにここ、みんなトイレの順番待ちしてるの? なんか俺もいきたくなるじゃん」
ジョシュアの声まで聞こえてきて、どう考えてもトイレの外に人が集まっている。
いやエスクプスが色んなことを気にしない性格だったとしても、絶対これは無理だろう。
「ヤー、お前らが五月蝿いから出るものも出なかっただろッ。散れ散れッ」
エスクプスがそう言ってトイレから出たら、本当にジュンがバトンタッチしてトイレに消えてった。
「で、ドギョミは? 緊急事態ってなんだよ」
さすがにトイレを開けられて怒っていても、何かがあったのかは気になったらしい。
それにスングァンが普通の顔して「あぁ、さっきホシヒョンが船から落ちかけたから」と答えたけれど、全然普通の顔で言うことじゃなかった。
慌ててエスクプスが走ってく。
ホシは無事だった。落ちかけたと言っても船の外に身体が出たりした訳でもなく、何かがあって必死にしがみついた的なことがあった訳でもなかったから。
でも「あ、クプスヒョン見てよ。あそこ」と言ってホシが指差す先を見れば、船の外側の少し下の方に何かがついていた。
ゴミなのか汚れなのかは判らない。
「いや大したことないかもしれないけど、これ、飛んでる状態じゃ無理かも。さっき掃除ブラシを必死に伸ばしてみたけど届かなかったから」
時々地上に降りた時には、船の側面やら下やらを掃除する。だからそれもあって地上に降りようと決めた。まぁゆっくりトイレに入りたいって理由もあったし、「あ、掃除ブラシを俺、落としちゃったんだよね」と悪びれもなく言うホシもいたし......。

それでも地上に降りると決まったら、それぞれが色んな準備をする。
やっぱりいつだって食料の在庫を確認するミンギュがいたり、新しい洋服が欲しいと言い出すドギョムがいたり、本を買いたいと言うディエイトがいたり。
降り立った場所で何が見れて、何が食べられて、何ができるか。そんなことを楽しそうに話してるのはマンネラインで、96ラインの4人は降りた場所で手に入れられるものを考えはじめる。いつだって船のメンテナンスを考えているからだろう。
船が少しだけ高度を下げる。
ジュンが「次に見つけた陸地におりるよ」と言ってから、実際に地上に降りるまで、体感1日ぐらいかかってた。
船の中で色んなことに備えるジョシュアがいて、お出かけの準備を楽しむディエイトがいて、色んなものを仕入れるはずだからと、ちょっとずつ使ってたものを盛大に消費しようと言い出すミンギュがいて。
結局エスクプスが1人でゆっくりトイレにいきたいから降りるんだなんてことは、すぐに忘れ去られていた。まぁジョンハンだけは笑って、「良いトイレがあるといいよな」とか言っていたけど......。

降り立ったのは、普通の街だった。
栄えていると言えば栄えてる。でも音も光も温かさも外には漏れないような、そんな街だった。
もちろん店もある。そのドアを開ければ店の中にも入れて、売ってるものは買える。
決して排他的な場所でもなかった。
当然のように船を隠して、街には4人だけで訪れた。
エスクプスとウォヌとミンギュとディエイトで。
バラバラになることはないけれど、店の中に入れば見える範囲でそれぞれが動く。ミンギュは生活に必要なものを買うために。ディエイトは逆に売れるものを調べるタメニ。エスクプスは正攻法で街の状況を尋ね、ウォヌは何も言わずに色んなものを見ることで状況を知ろうとする。
いざとなれば戦える。そして逃げられる。走れる。
そしてそんないざがなければ確実に必要なものを買い求めることができるミンギュがいるから、もしもすぐに飛び立たなきゃいけなかったとしても、それなりに役には立つ布陣になっていた。
「なんか、乾き系が多いから、冬が厳しいのかな」
売ってるものを見て、長期保存を考えたものが多いと気づいたのはミンギュだった。
だから「ここは季節柄、冬が長いの?」と店の人にエスクプスが聞けば笑われた。
「あんたらここは、氷の女王様が暮らす町の下町だよ」
結構な街なのに、下町だという。
そもそも氷の女王様が暮らす町って?っとなってたら、「余所者でも大抵は知ってるのに珍しい」と言いつつも、町の話を聞かせてくれた。
女王様は空の上に住んでいるという。だからこの街から続く山は一年中凍っていて、綺麗な水を街に流してくれている。そんな女王様がいたら冬は雪に閉ざされるのかと思いきや、他の場所にどんなに雪が降り積もろうともこの街だけは守られていて、普通に冬は寒いだけらしい。
でもだからこそ氷の女王様に感謝して、冬の間は屋内で過ごすことが多いらしい。
見たことも会ったこともないという。でも不思議と冬の間、久しぶりに外に出ると色んなものが空から舞い落ちてきているという。古びた箒や、壊れたドア。そんなものの中にこの世界にはないような不思議なものもあって、きっとそれは氷の女王様の世界のものなんだろう。
へーとか、ふーんとか、ほーとか。そうなんだとか。とりあえずちゃんと相槌を打ちつつ色んなはなしを聞いていたけれど、ほら、こないだ落ちてきたものはコレだよと見せられたのは、なんだか船の中にあった掃除ブラシによく似てた。
「いやそんなバカな」
思わずそう言ったエスクプスだったけど、気づけばミンギュに押しのけられていた。
まさかの女王様を否定はできないだろうってことかもしれない。
「もしかしなくても、空気の流れってやつじゃないかな」
大人しくはなしを聞いていたディエイトが言った。
「ウジヒョンが前に言ってた。どこの空を飛んでても、空気の流れはいつだって同じ場所から来て、同じ場所に向かってる気がするって」
船から落ちたものも、空を自分で飛び続ける力を失ったものも、ただただ風に流されていくものも、全てとは言わないけれど、ある程度はここに流れてくるのかもしれない。
それが女王様の力かは判らないけれど............。
愛想のよいミンギュがなんだかんだと話した結果、墜ちてきた掃除ブラシを貰えることになっていた。元から自分たちのもののような気はするけれど、4人ともちゃんとお礼を言って店を後にした。


 

 

書きかけ〜m(_ _)m