妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

No War! Day After Tomorrow

注意......

「No War!」は続き物です。そして長いです。
どこかからたどり着いた方はひとまず、contentsページからどうぞ。

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No War! Day After Tomorrow

エスクプスが起きた時、隣りには誰もいなかった。
まだ朝も早いっていうのに、寝れなかったのか、それとも早く起きすぎたのか。
誰もいないような時間に散歩をするのが好きだったジョンハンは、今でも時折、1人で歩いてる。
誘えよって言ったって、「だってお前よく寝てたし」と笑うばかり。
スングァンが何もかも思い出して、泣いて笑って、やっぱり泣いて。
後は暮らしが少しずつ落ち着いていくばかりだろうと思ってたのに、畑ではよくウォヌとスングァンが揉めている。
朝から水を汲みながら、バーノンとスングァンも揉めている。
顔を合わせれば五月蝿いぐらいにディノとはやりあっていて、時折戻ってくるジュンを捕まえてはなんでかスングァンが説教なんてはじめてジュンに逆ギレされていた。
とにかく賑やかで、騒がしくて、時々は誰かが怒鳴ってて、でも笑い声もかぶってた。
幸せだけど、ウォヌは時折そう言いながら、エスクプスとジョンハンに文句を言いにくる。
ずっと一緒に畑の面倒を見てきて、ウォヌの育て方に文句の一つも言ったことはなかったのに、何もかも思い出したスングァンは、「ウォヌヒョンの畑、非効率じゃない?」とか言い出して、もっと芋を育てたいから畑をもっと自分に譲れと五月蝿いらしい。
今まではそんなこと一言も言わなかった。だからやっぱり遠慮があって、何かしら我慢していて、思ったことのうち、一体どれぐらいを飲み込んできたのか。
「幸せだけど、酷くない? 俺の畑をスングァニが侵略してこようとするんだよ?」
ウォヌがちょっとだけ悔しそうに、でも嬉しそうでもありつつも、それでも酷いとエスクプスとジョンハンに訴えてくる。
しかもミンギュに同じように訴えても、「ちょっとはスングァニに譲ってあげなよ」とか言われて逆にウォヌを諭そうとするんだと、その点にもウォヌはキレかけていた。
まぁスングァンには皆が甘かった。そんな中でも普段通りケンカを繰り返してたのはディノぐらいだったから。
「じゃぁ平和的解決として、そもそもの畑を広げよう」
そう提案してウォヌを宥めつつ、「俺がジュニに頼んでやるから」と言えば、「ヒョンが手伝ってくれるんじゃないんだ」と呆れられた。
いや俺も手伝うってって言えば、疑いの眼差しを向けられた。
手伝う気ではもちろんいる。でも何もないようなこんな場所でもやることは多かった。
何より弟たちが多いからかもしれない。
毎日がのんびりと過ぎていくように見えても、自然はいつだってあっさりと日常を飲み込んでいく。
ここで暮らすようになってからも二度、山が崩れた。大雨が降った日はなんともなかったのに、数日して突然に。
自然とはそんなもんだっていう知識もなかった最初の時は、どの山も崩れてくるんじゃないかと不安になりながらも過ごした。でもその時は全員揃ってたから、それだけで済んだけど、二度目の時にはディエイトが山に入ってた。
人間が減った分だけ山には獣が増えた。捕まえれば食料になるからありがたい存在でもあったけど、畑を踏み荒らされれば苦労して育てたものは一瞬でダメになる。
山にも食料がない時期なんだとディエイトは言っていた。自然は豊かなはずなのに、獣が増えた分だけ食事にありつけない弱い個体や、逆に味を人間の作るものを奪っていくことに味をしめた個体が山を下りてくる。それは人間の世界と、ある意味同じかもしれない。

音と振動で山が崩れたことを知った時、ジョンハンはまだ朝には遠いというのに家を走り出てって、全員の無事を確かめた。時間が時間だから、家がある場所に土雪崩が襲ってこなければ、それだけで全員は無事だろうって思ってたのに。

「全員無事か?」

後から駆けつけてエスクプスがそう言えば、「ハオがいない」って言いながら、山を見てるジュンがいた。
時々ディエイトは山に籠ってた。幾つか罠を仕掛けてるらしくて、それを周ってる時もあれば、獣の足跡を確認すればそこで待ち伏せして仕留めて来ることもある。
山になんて慣れてないのにジョンハンは探しに行くと言ってきかないし、すぐに駆けていくと思ってたジュンはただ山を見るばかりだった。ミンギュは家の中に走り戻ると、何かを持って出てきた。それは昼になるとミンギュが叩く木槌で、結構遠くまで音が響く。
畑仕事をしててもウォヌやスングァンはその音を聞いて戻ってくるほどだから、それはきっと山の中にだって聞こえるだろう。
まだ飯時でもないから、その音に別の意味があることだって絶対気づくよアイツならとミンギュは言って、必死にそれを鳴らし続けてた。

「まだ何も仕留めてないよ? なに? 誰がそんなに腹減らしてんの?」

ディエイトは、誰もが戻ってくると思ってた方向以外から、本当に不意にあらわれて文句を言いながら戻ってきた。
山が崩れただろとミンギュが文句を言って、それからディエイトのことを抱きしめていた。ジョンハンはディエイトが無事だったことに力が抜けたのか、その場にへたり込んでいた。
ディエイトを見て一番に喜んで笑って抱きしめに行くと思っていたジュンが、やっぱり一歩も動かなかった。エスクプスがそれを見てたのはたまたまで、それは強く握りしめていた拳が開かれる瞬間。ただそれだけだった。
でも震えるほど強く握りしめられていたからか、開くのに少しだけ時間がかかったかもしれない。見てなきゃ、気づけなかっただろう。
そこにはディエイトのことを諦める覚悟を決めたかのようなジュンがいて、諦めずにすんだことに静かに緊張を解いたジュンがいて。

見てたからだろう。ジュンと目が合った。見られていたことに驚いて、それから少しだけジュンが笑う。
驚いたのは、そんなジュンにジョンハンが話しかけたのを見たから。
きっとジョンハンも、同じ姿を見たんだろう。そしてエスクプスと同じ思いを持ったのかもしれない。
ジュンはジョンハンにも笑って見せた。照れて、大したことじゃないとでも言うように。話はそれで終わるはずだったのに、ジョンハンはジュンを抱きしめた。エスクプスだってそうしただろう。きっとぎゅっと抱きしめて、ジュンが一瞬で感じた不安や絶望みたいな気持ちを少しでも和らげようとしただろう。

「ハニヒョン、俺大丈夫だよ。ほんと、全然大丈夫だから」

そう、ジュンの声が聞こえてくる。
愛してるとか、大切だとか。幸せでいて欲しいとか。ちゃんと伝えてきたつもりだけどまだまだ足りない。そう思うのは、この世界が明日も明後日も、同じように続くとは限らないともう知っているから。

2人が過ごした2人だけの時間の過酷さは、きっと想像すらできないだろう。
慰めなんてきっとできっこない。それでも寄り添いたいと思ってて、大切な弟なんだと伝えることが大事なんだと思ってる。

全員を大切に守ってやりたいのに、ホシとウジは滅多と帰って来ない。ドギョムは時折しか帰って来ない。マンネなディノすらウロウロとしてる。
あんなことがあったって、ディエイトは山に入るのを辞めないし、ジュンはそれを止めようともしなかった。

「俺たちにできることって何かな」

ある日、起き抜けにジョンハンが言った。問いかけでもなかったから、独り言だったのかもしれない。

「幸せになろう。俺たち」

だから独り言のように答えた。ジョンハンのことを見もせずに、まだ暗い室内の、薄暗い天井の隅っこを見ながら。

笑いながら暮らす。それがある意味目標で。
幸せに暮らす。それがただただ願いでもあって。
いつかは一緒に暮らしたいけれど、それが叶うまではまだまだ時間がかかりそうだけど。
明日には、明後日には、そう思いながら生きることができることに感謝して。明日も明後日も、突然来なくなることも知っている。だからこそ毎日を大切に。
何もできないかもしれない。でも弟たちのためならなんだってできる。

「散歩行く」

ジョンハンが言う。だから「俺も行く」って手を伸ばす。そうしたらしっかりと握ってくれて、引っ張り起こしてくれる。

自然の音しかしない。誰もいない。でも遠くの空が少しずつ明るくなってくる。きっともう少ししたらバーノンが水を汲みに行くだろう。
ミンギュは起き出して火を熾すだろうし、今日もスングァンは誰かと何かをやりあうはずで。そろそろ本気で畑の拡張も必要だろう。
大変だろうけど、全員で頑張ればきっとあっという間。それから畑が落ち着く頃には、ホシとウジの働く場所を見てくると言ったジョシュアだって、きっと帰って来るだろう。

「いや、シュアヒョンなんだかんだ言ってサボってるんじゃない?」

畑の拡張中、スングァンがそんな文句も口にして、全員でそうかもって笑った。
いやいや、それはさすがにないって......って、同じ95ラインとしては庇ってやりたいところだったけれど、「でも、作業系の時にはいつもいないよね」と言われると、やっぱり全員で確かにそうかも......ってなったから。

空が青くて。風は気持ち良くて。
黙々と働くバーノンがいて、関係ない場所の土を掘るミンギュがいて、力強いジュンがいて。それから畑を拡張してるってのに、スングァンはウォヌとその拡張した分に植えるものでやりあっていて、それをただ見てるジョンハンがいた。
一応エスクプスは手を動かしながらも、ジョンハンがどっちかに味方したら、もう一方の味方をしようと思ってたのに............。

「ヤーッ。お前らがそんなにケンカするなら、畑の新しいとこには俺とクプスできゅうり育てるからなッ」

なんでかジョンハンがキレ出して笑ってしまった。

 

The END
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