BitterSweet
ビタスイのミーニーの続きが書きたくて、でも長いのは書けそうになくて、ミニマムで時々、ビタスイの2人を書こうと思う............。えへへ。
ウォヌヨンが黄昏ている
春が来て、冬の間に元気を取り戻してたはずのウォヌの時間がまた少しゆっくりと流れてた。
でもそれも悪くない。
自分のそばにいてくれるなら、それを見守るだけだとミンギュが腹を括ってるのをウォヌももう知っているからか、ウォヌはミンギュに謝ることもしない。
店の後片付けをするミンギュのことを見ながら、ウォヌが「店の音楽、物凄く渋いのにしようか」とか言ってくるから、「トロットでもなんでもいいよ」と答えれば、「ジャズとかを考えてるんだよ」と笑ってた。
カウンターで頬杖をつきながら、ウォヌが「店でさ。なんか、新しいメニューでも出そうか」とか言ってくるから、「いいよ、ジャージャー麺とかでも」と答えれば、「なんでいきなり飯屋になるんだよ」と笑ってた。
「この店のコンセプトから逸脱しない範囲で考えてるんだって」
「ウォヌヒョン、店のコンセプトなんてちゃんと覚えてるんだ」
「最初の頃に聞いただろ? 適度に居心地のいい、ひっそりした場所にある案外普通のカフェがいいって」
ウォヌがそう言えば、「表向きはね」とミンギュがニヤリと笑って見せた。
「あぁ」と言って、ウォヌは固まってしまった。
きっとそう言われてそう言えばと思い出したんだろう。両親たちを説得するのに、なんだかそれっぽいコンセプト資料をミンギュが用意したことを。
店を出したいと言った時、将来を心配して反対したのは父親たちで、案外母親たちはステキだとかカワイイだとか言って喜んでいて、普通は母親の方が反対しそうなものなのにと話したことも思い出した。
母たちは2人して、「いつでもタダでカフェを楽しめるなんて、いいじゃない」とか勝手なことを言っていた。でも結局、来てくれたのは数えるほどだったけど。
ミンギュだって鮮明に覚えてるんだから、ウォヌだって同じものを覚えてるんだろう。
もしかしたらその時の言葉どころか、その声すら耳に残っているかもしれない。
カウンターで頬杖をつきながら、ウォヌがどこかを見てた。
ミンギュはウォヌが戻って来るまでの間に、店の掃除をして、明日の準備をして、それから新しいメニューを考えた。
それからしばらくして、「ウォヌヒョン、帰るよ」って声をかけながら手を引けば、黙ってウォヌはついて来る............。
The END
953moji