ウォヌはたまたま目の前にあった大皿の肉をひと嚙りして、なんか甘いと、ひと嚙りした後の肉を眺め、横に座ってたジュンの皿に置いた。
食べたものをもとの皿に戻すのはどうかと思ったし、ジュンはたまたまいなかったし、飲んでるし、自分の食べかけかなって思って食べるだろうと......。
数分後、ジュンは食べかけてたっけ?って思いながら皿の上にあった肉をひと嚙りして、なんか甘いなと、ひと嚙りした後の肉を眺め、前に座ってたホシの皿に置いた。
ホシは歌ってるウジを必死に見てたし、飲んでるし、楽しそうだし、勢いで自分の食べかけかなって思って食べるだろうと......。
ウォヌはそんなジュンのことを見てて、ふと目があってジュンだって見られてることに気づいたけれど、別段何も言わず、2人して頷きあって終わり。
さらに数分後、ホシは目の前の肉にかぶっといって、そのまま口を離す。つまりは噛んだだけなその肉を、わざわざ席を立って隣りの隣りの隣りのウジの皿に置いた。
いや多分、いや絶対秒でバレるだろうけど、なんか面白いから......。
ウォヌもジュンもそんなホシのことを見てて、でもホシはウジのリアクションが見たかったからかウジが戻ってくるのを今か今かと待っていたから、そんなウォヌとジュンの視線には気づかなかった。
そして当然、ウジは秒で気がついた。だいたいがして、ウジは一滴たりとも飲んでなかったし、食べかけの肉が自分の皿になかったことだって覚えてる。
「やー、誰だよ。俺の皿に食べかけの肉置いたの」と言いつつも、ウジの視線はしっかりホシに向いて、なんでか嬉しそうに笑ってるホシが「オレオレ」とすぐに気づいて貰えたと喜んでいる。
そんな2人の様子をウォヌが見てて、ジュンも見てて、ホシはやっぱり気づいてなかったけど、ウジは当然のように気がついて......。
「お前らもか」ってウジが言うのに、ウォヌが「だって一口食べたら甘かったんだよ」って素直に言えば、「俺も一口食べた」とジュンも隠しても無駄だとあっさり認める。それでようやくホシも気づいたのか、「あ? じゃぁ俺が食べかけてた肉じゃなかったのか。ちなみに俺は咥えたけど噛まずに放した」と自慢げに言うけれど、そんなことを堂々と言われても......って感じだろうが、クユズの面々は呆れ顔のウジも含めて笑ってる。
「なんで肉が甘いんだよ」
口もつけずにウジが文句を言うけれど、ウォヌもジュンもホシも、「なんでだろ」って首をかしげてた。
それをなんだかんだ真ん中にいて見てたのはジョンハンで、いつだって色んなことに敏いから、当然肉が甘い理由にも気づいてて、狙ってないのにバカっぽいことになってるクユズの弟たちを見て笑ってた。まぁ弟たちというよりも、肉の行方が気になっただけだけど。
「シュアがさっき、パイナップルを焼いてたじゃん。その肉、その近くで焼いてたから甘くなった部分があったんだろ」
言われてみれば、パイナップルな甘さだった気がしないでもないと、ウォヌもジュンもホシも、「あぁ、なるほど」ってそれぞれ納得してた。口にしてないウジはふ~んって顔。
でも見ればほかの肉はちゃんと大皿から順調に減っていたから、恐らく甘くなったのはその1枚だけだったのかもしれない。
残すのも勿体ないとは思いつつも、きっと誰も手をつけないだろうな......って思ってたのに、ジョンハンのほかにも見てた人間がいて......。
「あ、じゃぁ俺が貰う。ウォヌヒョンの食べかけ」
と言ってミンギュが搔っ攫っていき、何でもないような顔でその肉を食べていた。「ほんとだ。ちょっと甘い」とか言いながらも。
いやそれ俺も......と思ったのはジュンとホシだったけれど、ミンギュが嬉しそうに食べてるから、2人とも『ま、いっか』と思ったんだろう。特にウォヌもウジも気にせず、肉が片付いたと喜んでるだけで、やっぱりそれを見てたジョンハンが、クユズは変わってると笑ってた。
大きな出来事も小さな出来事も、クユズの中で起きると大抵は平和に終わる。
それはいつでも、どんな時でも。
The END
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