LEFT&RIGHT
ジュン、足が長すぎる
「ジュニヒョン、足が長すぎるんだよ」
誉められてるんだか、貶されているんだか微妙だけど、文句は文句なんだろう。
遊んでると、よくスングァンにそう言われる。
まぁ、スングァンが真剣に取り込んでるバレーボールの試合でよく足元を狙われて、球を拾えないからだろうけど......。
左のスングァンに、右のミンギュ。
何故か二人はいつも張り合っていた。何をしてたって本気で言い合っていたけれど、ケンカしてるのかと言えばそうでもないし、楽しそうに笑ってることが多い。
バレーボールの試合をすると言えば、スングァンはいつだって「俺左、左コートね」と言うけれど、いつだったかディノが、「コートのこっち側にいても、あっち側にいても、スングァニは左っていうよね。それって結局、どっちでもいいってことだよね?」と呟いていた。
まぁそうだろう。
でも多分、厳密に「左」が良い訳ではなくて、それはスングァンの中での「ゲン担ぎ」みたいなものなのかもしれない。
そしていつのまにかそれに張り合うようにして、ミンギュが「じゃぁ俺は右ね」と言うもんだから、左のスングァンに、右のミンギュが定着していた。
でも13人以外に、それを知る人間なんていなかったはずなのに。
13人しか入れない場所でしか、そんな会話はなかったはずなのに。
思い出せば、あれは確か、ディエイトがいなくて12人しかいなかった日。
スングァンがバレーボールの試合がしたいと皆にお願いお願いと言っていた日。
ユンジョンハンが、出会ったばかりの人を連れてやってきた。
「親切なお兄さんが、審判やってくれるって~」って。
見た目は親切なお兄さんというよりは、ちょっとおじさん入ってたけど。
その時確か、左の、右のって話が出たかもしれない。
いつだってジュンは、スングァンに一番に選ばれる。だからジュンだって左のジュンと呼ばれることが多い。
ただただミンギュに対抗するためには身長が大事だと、「ヒョンはブロック要員だよ」とスングァンが言っていたから、本当にそのために選ばれたんだろう。
何にだって真剣になって、いつだって負けたくなくて、吠えて叫んでムキーってなって、見てるだけでも楽しいのに、一緒にいればさらに楽しくて。
「ジュニヒョンッ、ボーっとしないでッ」とか。
「ジュニヒョンッ、その長い足を有効活用してッ」とか。
「ジュニヒョンッ、シュっとしてても意味ないからねッ」とか。
なんだか酷いことばかり言われてるけれど、そんなことを言ってるスングァンは必死だし、本気だし。やっぱり笑えるし、可愛いしかないし。
だから............。
一人で出かけた夜。
本当にリアルな世界から、誰か一人を抹殺するぐらいは、できたかもしれない。
しなかったけど。
ただのゲームの世界で、そこは作られた虚像の世界で。
ホンモノでもない、ニセモノの世界なのに。
いつのまにか守りたい人たちがいて、守りたい世界になっていた。
リアルであった後にはじめてヘンガレで顔をあわせた時に、「ジュニヒョン、ほんとに足、バカみたいに長かったね」と言ってきて、また笑ったけど......。
The END
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