妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

で、殺す?

LEFT&RIGHT


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で、殺す?

一人で相手を倒せなかったことがよっぽど悔しかったのか、瓦礫を片付けながらもディノが凹んでた。

the8とジュンが鍛えたから、ディノだって相当できる方ではある。
だけどまだまだ、常識がディノを縛ってるのかもしれない。
それとも性格なのかも。ディノはいつだって、正々堂々と戦いたがるから。
それにディノの戦う理由は、誰かを守るためだから。

『で、見つかった?』

the8はウォヌにだけ伝わるように呟いた。元々はドギョムが勢いで突っ込んだのが悪いんだと文句を言いながら、瓦礫掃除も手伝いながらだから、結構器用なことをしていたかも。

『いや。まだ。でもあの直後にログインしてハニヒョンところにやってきた奴は全員IP抜いてるし、ウジがせっせと落とし穴作ってるし、シュアヒョンも水陸両用車の方から追っかけてる』

と、ウォヌからの回答があった。
水陸両用車は謎ながらも、何も知らないふりでthe8は動いてた。いつものように静かに笑ってる感じで、誰が見ても怒ってるようには見えないのに、ジュンとウォヌは気づいてたかもしれない。the8が結構怒っているってことに。

ディノのことをそれだけ可愛がっているからかもしれないし、そのディノが勝てなかったからかもしれない。

それから三十分もたたずに、結構早い段階で、ウォヌの「見つけたかも」って声がした。
それは13人にだけ繋がる通信。

物凄い頑張った感じのキラキラした見た目は、一見すれば幼く見える。初回ログインの得点ボーナスでは限界があるから、どれだけつぎ込んだのかは判らないけれど、相当頑張ったんだろう。
今日はじめてヘンガレの世界に来たんだと、NPCのようなユンジョンハンに話しかける人がいた。
今なら、新しいメンバーになれると思ったのかもしれない。
あの爆発で、自分はもちろんのこと、ホシもディノも同じように消え去ったんだと誤解してるのか、舞い上がったんだろう。

そして今、まるで運命の出会いを演出するがのごとく、そこにはいないユンジョンハンに話しかけながら、自己紹介をしてる男がいた。見た目は少年の、どこからどう見てもカワイイとしか言いようのない姿で。

「ディノや」
「ん?」
「ナイフなんてなくても、人って殺せるよ」

the8が笑って、ちょっと怖いことを言う。

「どこで戦うにしても、相手の弱点を見つけなきゃ。それから、一人でカッコよく勝とうとなんて、しなくていいんだよ。狡猾って言われても、確実に勝つ方法を見つけて動ける奴が生き残る」

そう言って、the8がジュンを連れて飛んだ。
NPCのようなユンジョンハンのもとへと一瞬で、今まさに、「あの、良かったら友達になってくれませんか」とか言ってる人がいる目の前へと。

the8はいつだって、大人しく思われる。その見た目は繊細にみられるし、弱そうにも思われるし、親切そうにも見られることが多い。別段そう装っている訳じゃないけれど、そう思われるならそれでも構わないとわざわざ親切に訂正しないだけ。

「あれ? はじめましてだね」

だからthe8はその時も、なんでもないように挨拶しただけ。
それがとても親切で優しそうで、まるで自分を迎えいれようとしてくれているようだ......と相手が勝手に思ったって、知ったことじゃない。

「あの、良かったら、皆さんと、お友達になりたいです」

ゲームの世界だから、見た目から中身なんて判らない。でも、この世界は半分以上はウジが作った世界だったから............。

「あぁ、残念だね」

the8がさりげなく言う。
でもきっと、それが相手の弱点になると、判っているんだろう。

「ユンジョンハンの友達になれるのは、見た目を弄ってない人だけなんだよ。なんでか知らないけど、ユンジョンハンにはそれが判るんだ。だから最初に挨拶した時に反応がないと、残念だけど............」

今そこにユンジョンハンがいないことを知っていて、反応なんてできないことを知っていて、本当に残念そうに言うけれど、その横には整いすぎたジュンがいて、ホンモノだとしたらそれは、圧倒的な美で.........。

運命的な出会いを演出したはずなのに。今なら、確実に仲間になれるはずだったのに。目の前ではいつも通り、NPCのようなユンジョンハンがいて、自動応答なのか天気の話を時折口にするだけ......。キラキラした見た目は、仲間になっても遜色がないはずなのに、それは作り物で、ニセモノで、嘘ばかりで作り上げたもので。

そんなことは多分、それを作り上げた本人が一番よく判っていただろう。

ホンモノだけだというのなら、いくら頑張っても、何度頑張っても、仲間にはなれないのかもしれない。そんな絶望にも襲われているだろうに、the8はさらに追い打ちをかけるかのごとく、「天使のまわりには、それこそ、心のキレイな人しかいられないっていう話だよ。嘘かホントかは、知らないけどね」と笑ってみせる。

『相変わらず酷いな......』

ウォヌの声がする。

『で、殺す?』

the8が優しく笑って、「ヘンガレには、色んな人がいるから、すぐに友達ができると思うよ」と慰めながらも、ウォヌにそんなことを聞く。
とりあえずは今の、結構つぎ込んだであろうソレも、修復不可能なぐらいに......。

 

The END
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