LEFT&RIGHT
ホシが空に消えてった日、晴れ
ドギョムが消えた後、ウジはひとまず、ミンギュとディエイトと自分のまわりにバリアを張った。ウォヌにそう伝えれば、「ぇえい、シールドって言えよ」と言われたけれど、バリアでも効能は同じだ。
外からは見える。だけどそれは、ホンモノではないものも含まれる。今までのフリーズした姿から、ある程度は動いているように見える優れもの。そして確実に守られる。そこにいてもいなくても。
本当は全く見えないバリアも張れるといえば張れるんだけど、そこはサービス精神だろう。
「ホシは?」
「こないだ空に消えてったじゃん。あれ以来見てないけど?」
ウォヌからの問いにそう答えれば、「あぁ~」と納得したのか微妙な返事。
つい先日、全員でホシのことを胴上げした。して欲しいというもんだから。一応ちゃんと「やめとけ」って止めたけど......。
そしてホシはそのまま空に舞い上がっていった。高く高く。高く高く高く。そしてホシは星になった......。チャンチャン。
「そう言えばさジフナ、墓標みたいに『ホシが空に消えてった日、晴れ』ってヘンガレの歴史に刻んだだろ」
言われて思い出した。面白がってそう刻んだことを。なんか楽しかったから。
「言っとくけど、あの日は晴れてなかったからな」
「いや、言うのはそこかよ」
ウォヌからの微妙な場所へのツッコみに、逆にツッコんでしまった。
まぁ確かに、曇ってたけど......。
「あれ以来ほんとに、ホシのこと見てない?」
「ぉん。それより、ドギョミから連絡は? 今右に行かせたけど」
「あぁ、会話の傍受を続けてる。ドギョミはやっぱり動きがいいから、近づいてるっぽい」
「気をつけてやれよ。あいつは接近戦にはむかないからな」
「大丈夫。そろそろチャニが来る予定だから」
ディノが来るというのなら、まぁ、大丈夫だろう。そうは思いつつも、ウジはバリアの中で早速、あちこちのプログラムに落とし穴を作り始めた。普通に遊ぶだけなら誰も落ちたりしない穴。だけどヒトタビ、誰かが何かを探ろうとしてきたら、ポカリと落ちちゃう落とし穴。
「ジフナ。あんまりあちこちに作るなよ。後で埋め戻すの面倒だから」
「ぉお~ん」
さすが付き合いが長いから、ウォヌはウジがやることが判っているんだろう。
誰かの息の根を止めちゃうようなモノだって作れるのに、いつだってウジが作るのはちょっとしたものばかり。自分の実力を知ってるからこそ......なのかもしれない。
ほんとなら全てを排除してしまえる力を持っているけれど、それをしてしまったら、この世界はたぶんつまらないものになるとも判っているんだろう。
でも仲間は守りたいから......。
「なぁ、それでさ。ホシはどうやったら戻ってくんの?」
「..................」
大概しつこい。ホシのことを呼び戻したい理由があるんだろうけど、それをウジが知ってると確信してるところが、付き合いの長さだろう。
まぁゲームの世界で遊んではいるけれど、リアルな世界でも幼馴染だからだろう。
「なぁ。まさかの時には必要だから、教えろって」
「俺が」
「ジフニが?」
「俺が会いたいって言えば戻って来るけど、まだ言わない。あいつは今反省中」
「また地味にケンカしてんのかよ。まぁ、いいけど。いざって時には、じゃぁ叫べよ」
「ぉお」
別にケンカはしてないけれど、ホシは今反省中。
しばらく呼ばない。この世界には。
まぁ、ディノがピンチとかってぐらいのことがあれば、呼ぶかもしれないけど......。
実はそんな大ピンチがもうすぐやって来るなんてことも知らず、そんなことを考えながらも、落とし穴をせっせと作り続けているウジだった。
The END
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