仕事の帰り道。わざわざ車を止めてもらって買ったのはエッグタルト13個。
キッチンのテーブルの上に広げて、上の部屋のメンバーにはカトクで「エッグタルトあるよ」と送れば、順番にやってきては「いただきま~す」と食べていく。
「ヤー。俺ダイエット中なんだよ今」
ジョンハニヒョンはそう文句を言いながらも、しっかり食べていた。
「なんで13個? 自分は食べないくせに」
ミンギュがエッグタルトを食べながら不思議そうに聞いてくる。
甘いものがそれほど好きって訳でもないし、物凄く疲れてて糖分が必要っていう訳でもなければ、甘いものはあまり食べない。だから余る一つは誰かが「もう一個食べていい?」って言ってきた場合用。
もしも誰も聞いてこなければ、最後に後片付けをするミンギュの腹に落ち着くだろう。
だってなんとなく、買い物をする時には最低でも13個は買ってしまう癖がついたから。
カッコイイ服だって、靴だって、タオルだって、皿だって箸だって。何か見つけたらすぐに色違いがあるのかを確認してしまう。すぐに13個買えるかも一緒に。
さすがに大きなものや用途によって不必要なものは買わないけれど......。
あぁでもいつか、13個買わなくなる日が来るんだろうな......って思うと、ちょっとだけ哀しくなる。
自分が作る歌の中では、そんないつ来るかも判らない未来のことなんて考えずにって感じで歌ってることが多いのに。誰にも言わないけど、やっぱりちょっとだけ哀しくなる。
でも哀しくなったり、不安になったり、辛かったりするからこそ、曲がかけて、歌がつくれるのかもしれないけど............。
「俺のは? なんで俺の分がないの?」
しんみりしてたら、エスクプスが真顔で目の前に立っていた。
「え? 全員分買ってきたよ。ヒョン食べれてないの?」
「ない。俺の分がない」
「でも俺も食べてないから、1個は確実に余るはずなんだけど」
「でもない。俺の分がない」
時々エスクプスは自分が統括リーダーで長男でパパ的な存在なことを全部忘れて、真剣に拗ねたり怒ったりすることがある。
「ないないないないッ。俺のがないッ」
ちょっとしんみりしてた空気は霧散して、なんだか悔しがってるエスクプスを見てたら面白くなってきた。そこにミンギュが戻ってきて、エスクプスが今度はミンギュに絡みだしていた。
それから「俺のエッグタルトを食べたのは誰だ!」と、犯人捜しに乗り出したエスクプスと、それに付き合わされてるミンギュを見送りながら、思いっきり笑ったウジだった。
The END
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