ディノの人生は最近、ボーナスステージみたいな状態になっている。
知らぬ間に当たりクジでもひいたのか。キラキラ光る星でもゲットしたのか。
何に当たってもどんな状況になっても無敵のまま走り続ける状態が、ずっとずっとずっと、続いてる感じ。
誕生日には当然、12人もいるヒョンたちからなんだかんだ貰える。それはホシがはじめた方式で、自分が欲しいものを決めて申告すれば、絶対に買って貰えるからさらに良い。
しかもあれとこれで悩んでるって言えば、結果どっちもくれたりする。
12人もヒョンがいて、全員に愛されてるんだから、そういうこともあるだろう。
でもディノは根が真面目だし、そんな状況に甘んじてラッキーすぎる人生を謳歌してやろうとか、そんなことは思わない。まぁだからこそ、ヒョンたちがベッタベタに甘やかしてくるのかもしれないけれど......。
ゲームの中のボーナスステージだって、いつまでも続く訳じゃない。だからきっと今のこの状況だって、今だけの、長くたって今年で終わるはずだし、短ければ1ヶ月ぐらいのものだろう。
「ヒョンたち、俺のこともうあんまり甘やかさないでよ」
だからちゃんと、ヒョンたちにだってそう釘を指す。
もう成人したんだから......。と言い続けて早数年。あんまりヒョンたちは変わらないけど。
世界中に蔓延した謎な疫病がやっと落ち着いて、ディノだってチングたちと飲みにだって行くようになってみれば、12人もヒョンがいる生活に、やっぱり驚かれたり慰められたり羨ましがられたり。
いやでも成功した今があるだけで、そこまでに血の滲むような苦労があったはず......とみんなが言うけれど、実はそんな苦労もあんまりない。
幼かった頃はそれこそ足りないところが山とあったはずなのに、当然のように幼いからと許されてきた気がする。
ディノが大人になれば追いつくと思っていたのに、ヒョンたちは気づけば余裕やゆとりも兼ね備えた、なんでもできるヒョンになっていて、ディノとの差は縮まったりしなかった。
あんなにカッコイイヒョンたちがいて羨ましい。そう言われれば、とりあえずは「大変だよ」と否定するけど、誰も信じたりしない。
でもディノと一緒に飲んでると、大抵誰かからは連絡が来る。
『お前どこで飲んでるの?』とか、『誰と飲んでるの?』とか、『いつまで飲んでるの?』とか。カトクが来るのにディノが律儀に返信してた。
最初は笑ってたチングたちも、最終的には「いやお前は女子コーセーか何かか」と言ったほど。
あんなにカッコイイヒョンたちなのに、大変だな......。
でもそう言われると、「全然大したことないよ」と言ってしまうから不思議だ。
「でもさ。誕生日に車とか欲しいとか言われたら、どうするのかな?」
誰かが言った言葉に「さすがにないだろそれは」と誰かが答える。
ディノも笑って「そんな常識知らずなプレゼントをお願いする訳ないじゃん」と笑ったけれど、ヒョンたちは買うかもしれない。なにせ12人もいるから。
クプスヒョンがハニヒョンに買った時計の金額を知ってるから、望んだら手に入ってしまうかもしれない。
でもディノはやっぱり、こんなボーナスステージみたいな状態、いつまでも続かないと知っているから......。でもボーナスステージの終わらせ方も良く判らないまま、数年が経っている気がしないでもないけど。
カトクでは、『雨が降って来たぞ』とか、『タクシーが捕まらないならヒョンが迎えに行こうか』とか、『知らない奴にはついて行くなよ』とか。
もぉほんとにヒョンたちは......とため息つきつつ文句も口にしてたディノだけど......。
ヒョンたちが一緒にいてくれるだけでいいんだよ......そう言いながらも、しっかり今年も誕生日プレゼントをお願いしたディノもいた......。
The END
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