流れ星ピンナダについて
続きものではないけれど、ディノちゃんからはじめたセンイルおはなしが溜まって来たので、contentsページを作りました。
流れ星ピンナダ
何があっても止まるんじゃない。真っ直ぐ前だけ向いて行け。スピードは絶対に落とすんじゃないと言われたのに、ディノはその強い願いに思わず怯んでしまった。
足こそ止めなかったものの、星の光のように願いの数々が、次々にディノに降りそそぐ......。
流れ星を見かけたら願い事を言う。3度繰り返さなきゃいけないルールがある星もあるが、叫べばいいだけの星もある。とにかく、色んな星がこの世界にはあるのに、結構どこの星でも流れ星はそういうことを願われる立場だった。
「きっとさ、昔、流れ星やってた奴で、バカみたいに優しい奴がいてさ。願いを叶えちゃったんじゃないかな?」
そう言ったのはドギョムだった。
「あぁなるほどね」と言ったのはバーノンだった。
広い宇宙を駆けて行くと言ったって、流れ星はただの配達人でしかない。
神様みたいに誰かの願いを叶えてあげることなんてできない。
「ディノや。お前次どこ?」
「俺、この近くだよ。まだ慣れないからって、シュアヒョンが近場ばかりの仕事を回してくれるから」
そう言えばドギョムだって思い当たる節があったんだろう。「俺には決まった場所への配達を回してくれる」と言っていた。
届け先が見つけられなくて荷物を持ったまま右往左往することが多かったからだろう。
「あ、だからか」と言ったのはバーノンで、ドギョムと2人して「なに?」「どうしたの?」って聞けば、「俺にはだって、置き配ばっかり回してくれる」と笑ってた。
時々面倒になって丁寧な配達ができずにクレームが入ることがあったバーノンにも配慮してくれたんだろう。
「俺たち、落ちこぼれてんのかな?」とドギョムは言うけれど。
「俺は全然ちゃんとできてるけど?」とバーノンが言う。
「俺だってちゃんとできてるし、まだ新人なだけだし」と、ディノだって負けじと口にした。
でも............。
誰かの強い願いに、思わず怯んでしまった。
何もできないのに、何かできるかもしれないと思ってしまった。
「バカ、止まるな。進めッ」
近くにいたのか、そんなディノに気づいたジョシュアがディノのことを押し出すように動かしてくれた。
「でもヒョン、あそこから、行かないでって」
「うん。でもお前に言ってる訳じゃないよ」
「俺たち、本当にただ、荷物を運んでるだけなのに」
「うん。でも俺たち、夜空を駆ける星に見えるからな」
子どもの頃は大人になったら、頑張ったら、願い事を叶えらえるようになると思ってたのに。
「いいんだよ。俺たちは輝いてるだけで。それだけで、きっと救いだから」
ディノは夜空を駆ける。光輝きながら。
あちこちから降りそそぐ色んな人の思いの中を駆ける。
ジョシュアの言葉を信じて、誰かの救いになってるとディノこそが願いながら。
The END
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