えとえと......
2023年10月4日のジョンハンさんセンイルにあわせて、Twitterで呟きまくったおはなしです。
ちょっと毛色が違うというか。なんというか。
苦手だなって方は、ごめんなさいね。
そして、パパになるを先にお読みください。まぁ読まなくてもいけるかもだけど。
👼ジョンハンママになる👼
エスクプスと2人だけで行ったのは、健康診断に毛の生えたようなもので、でも兵役時の諸々判定される内容が事前に判ると評判だって話だった。
ジョンハンの右肘には手術跡があり、痛みは結構付き纏う。それは、その部分のレントゲンを取るって話で部屋を移動した時のことだった。
台の上に右腕全体を置いて、技師の人が撮影場所の調整をしてた時。
ちょっと待ってと部屋に入ってきたのは結構年配の看護師さんで、理由も判らずにジョンハンのレントゲン撮影は中止になってしまった。尿検査の結果だったか、血液検査の結果だったが異常だとかで。
それから別室に通されて小一時間。検査が終わったエスクプスと合流して、少しだけ不安になりながらも2人でバカなことを言って笑ってたのに。
やっと医者が来たと思ったら、想像の斜め上を行くことを聞かされた。
いやその前に、当事者以外はってエスクプスが追い出されかけたけど、拒否って良かった。
妊娠されてます。って言葉が宙を舞う。
たまにおられますよ。認識されてた性別と事実に齟齬があることは。血液型とかでもよくありますし。って言われても全然違う気がする......。
それから普通に妊娠検査薬を手渡された。この後エコー検査もすると言う。
横には魂が完全に抜けたエスクプスがいた。
腹は膨らんでもいない。バキバキではないけど、普通の人よりは確実に絞まってる。
それなのにドラマの中でしか見たことないエコーの画面には、まだ人にも見えない姿が確かに写ってた。
通常なら3週ってぐらいですが、特殊なのでもう少し検査をしないとって説明なんて、全然聞いてなかった。
「やー、クプスや、写真、写真、ほら」
ジョンハンがそう言えば、まだまだ呆けてたエスクプスがスマホを出してエコー画面を連写しだした。
「いや、動画がいい」
そう言えば、エスクプスが素直に動画を録り出した。
お医者さんは驚きつつも、でもエコー写真はちゃんとくれるとも言ったけど。
結局エコーの時にもエスクプスはついてきて、ジョンハンとしっかり手を繋いでた。
だからお医者さんは2人に向かって、通常の手技とは異なると思いますが、墮胎は可能です。って真剣な顔で言った。それも通常であれば14週までだか、社会的にはって続きそうだった言葉を遮ったのはエスクプスだった。
驚きはしても、流すことなんて1ミリも考えなかった。だからエスクプスも同じなんだと判って嬉しかったはずなのに、落ち着いて見れば戸惑いしかなかった。
産むつもりだとしても、出生前診断の結果を見てから決めたほうが良いとも言われた。はじめて聞く言葉に、先天性疾患を調べる人が多いと聞いた。
子どもはただただ愛されて産まれてくるだけだと思ってたのに、身籠った世の中の女性たちは思った以上に色んなプレッシャーの中にいるんだと知る。
普通なら母子手帳の申請ができるはずが、恐らくそれも簡単には叶わないと言われた。
でも構わなかった。落ち着いて考える時間が2人には必要だったから。
車に乗り込んでもしばらくは動かなかった。エスクプスはハンドルに突っ伏していたし、ジョンハンは助手席で呆けてたから。
当然ながら自分が産むっていう意味で赤ちゃんが欲しいなんて思ったことはない。でも腹の中にいるんだと言われたら、産まない選択肢はないような気もしてた。
「シートベルト」
大分時間が経ってから、エスクプスが言った言葉がそれだった。
「してる」
当然のようにそう答えたのに、聞かれたのはそういう意味ではなくて、「キツクないか?」と聞かれて身体を気遣われてると気づいた。
思わず「あぁそっか」ってバカみたいな声が出た。
「俺、兵役パス? ラッキー?」
疑問形になったのは、ラッキーだなんて思えなかったから。
さすがに妊娠してたら行けないだろう。でも行かないと決まった時に、どこまで公表するべきか。
兵役逃れと思われる訳にはいかないし、かと言って守らねばならないのはお腹のなかの子どもだろう。
最悪セブチの中にいる自分を諦めなきゃいけなくなるかもしれない。お腹のなかの子どもか自分の人生かキャリアか。
本当に、世の中の妊婦さんは色んなプレッシャーに晒されている。
でもジョンハンは1人じゃなかった。
「良かった。俺がいない間も、お前にはシュアがいる」とエスクプスが言ったから。
外国籍のジョシュアには兵役の義務がない。きっとジョシュアならどんなことがあったって、当然のようにジョンハンの側に居続けてくれるだろう。
エスクプスと離れてる間も。ずっと。
絶対的な味方がいる。そう思えるだけで、どれほど心強いか。
頼もしいチングの存在を思い出し、漸く車は動き出した。
車はビックリするほどトロかった。途中ジョンハンがイラつくほど。
物凄くトロそうなおばさんの車にすら割り込まれた時には思わず舌打ちしたほど。
でもエスクプスはふざけてるつもりは全然なくて、「40キロまでしかスピード出せない車とか、今の技術なら絶対作れるだろッ」と本気で言っていた。
駐車場に向かったエスクプスと別れたのは、2人揃って弟たちの前に出るのが恥ずかしかったから。まだ誰も子どものことなんて知らなかったけど。
エレベーターホールのセキュリティは今日も順調にジョンハンを認識せず、結構そこで時間を取られた。多分そこでエスクプスに抜かされたんだろう。
いつもなら強すぎるセキュリティにもっとイライラするはずなのに、現実的な問題が目の前に山とあることに気づいてしまえば、イライラすることもなかった。
いつ言うか。誰に言うか。どこまで言うか。
それ以前にどうしたいのか。
親にだって言わなきゃならない。
いつかはカラットたちも知るだろうか。
ようやく着いた楽屋にいたジョシュアと目が合う。ほんの一瞬うまれた変な間に、あぁ聞いたんだと「聞いた?」と聞けば、ジョシュアは慎重に頷いた。
まぁ気軽に流せる話でもない。だから「うん。そういうことだから」とだけ言っておいた。
チングだから、きっとそれだけで伝わる。結構信じてたのに。
全然伝わってなかった。それどころか「殴ってやる」とまで。
とりあえず殴られるのはエスクプスだろう。でも殴られるほどのことはしてない。驚いたのはお互い様だし。
だから「なんで殴るんだよ」と言ったのに、ジョシュアは本気で「俺ぐらいしか、アイツを殴れる奴がいないからだろッ」って怒ってた。
怒るジョシュアなんて珍しい。でもジョンハンが傷ついていると誤解してたから、そこまで怒ってるだなんて、最初ジョンハンは全く気付いていなかった。
本気で目の前でエスクプスが殴り倒されたって、全然、ほんとに。思わず『お前のパパ、殴られてるぞ』って自分の中の子どもに語り掛けたほどで。
ジョンハンがポカンと驚いてる間にも、頼もしく育った弟たちがしっかりとジョシュアを止めていた。
諦めの悪いジョシュアから、エスクプスは蹴られそうにもなっていたけど。
ジョシュアの怒りが相当なものだと気づいたって、本気でまだその時も、ジョンハンは自分のための怒りだなんて思ってなかった。
気づけばウジがメンバーだけの場を確保してた。
13人で微妙な空気の中にいる。
いつだって何かあれば全員で集まって、色んなことを話し合ってきた。だからこの空気だって嫌いじゃない。
でも誰もがエスクプスを見てる。
それから「クプスヒョンなにやったんだよ」って聞いたのはディエイトだった。
ここにきてようやく、「あ、俺らのことか」って気づいたほど。
だから言った。「子どもができたんだよ。ただそれだけ」って。
そうしたら全員が驚いた顔をしてた。
ジョシュアは当然のようにジョンハンの側に立つ。舌打ちしながらだったけど。
考えてみれば当然で、ジョンハンに子どもができるだなんて誰も思わないだろう。
でもまだ、ジョンハンはそんな勘違いが発生してるなんて思ってもみなかった。
ただ怒ってるジョシュアがいて、それが自分のためなんだってことにようやく気付いた程度で。
もう2人の中では当然のことだったから、エスクプスだって普通に「俺だって驚いたけど」って言ったのに、「解散危機とか空中分解レベルじゃん」とか不穏なことを口にしたのはウジで、でもそのウジはエスクプスの横に立った。
それ以上殴られないようにって気持ちだったのか、それ以外の何かなのか。
でもそれが物凄く、言葉では言えない感じの気持ちの奥の方で、物凄く嬉しかった。
自分の横にはジョシュアがいるように、エスクプスの横にもウジがいる。
何かあったって何もなくたって、何かをやってしまったとしても何もしてなくても。
側にいてくれるんだっていう嬉しさ。
思わずウルっとしたのに、真横からはまた舌打ち。
「やめろって舌打ち。無駄にカッコイイけど」
そう言ってもジョシュアの不機嫌は緩みそうになかった。
弟たちは不安そうな顔を隠さない。
「確かに過去一の大打撃だけど、解散も空中分解もないだろ。まぁ最悪脱退ぐらいで」
だからそう言ったのに。
誰かの不安げな発言の後に、「どうもこうもないよ。赤ちゃんには罪なんてないんだし」と言ったのはバーノンだった。
思わず「「罪ってなんだよ」」って声が揃ったのはエスクプスとジョンハンで。
もうその時には、産むことを決めていたかもしれない。
何を失たって、諦めたって。
それでもギリギリまでは全部守りたくて、「とりあえずギリギリまで黙っとく。後はおいおい考えればいいだろ」って言ったのに。
エスクプスはもうギリギリだと言う。
いやそんなはずはない。だって子どもの存在を知ったのだって今日なのに、まだギリギリのギまでも行ってないはず。
2人してギリかギリギリかを言いあっていたら、ウォヌに止められた。そして今さらながらに「クプスヒョンに子どもができたんだよね?」って聞かれる。
結局「え、俺に」って答えたジョンハンの前には、ドッキリだと言う面子と信じられないって顔してもう信じてる面子と、ただただ驚いている面子がいた。
ジョシュアはもう魂が抜けた感じになっていた。バタバタしてる空気の中、ジュンがジョンハンを座らそうとする。
見た目も男前なのに、当然のように中身も男前で。
それがまた誰かに自慢したいぐらい嬉しかったり。
それから「ハニヒョンはほんとに天使なんだよ」ってディノの一言が全てを終わらせた。
最終的にどうなるかは判らない。何せちゃんと考えたこともないから。でもギリギリまで一緒にいたい。
あぁでもセブチとして一緒にいられなくなったって、俺にはちゃんと、もう家族のようなお前たち弟がいるから大丈夫。
結構本気でそう言ったのに、なんでか「はいはい」といなされた。
それからエスクプスと2人、今日あった出来事を皆に話して聞かせた。
そしてもう産むつもりなんだってことも。
世の中の多くの女性たちと同じような悩みにもぶつかるだろうし、不安はもっと多いかもしれない。
産むとなると、覚悟はもっと必要だろうし。
「もうギリギリだけど、もっとギリを攻めるから」ってウジが言う。
いつだってみんなの意見を好きにすればいいって感じで聞いてることの方が多いってのに。
「踊らない曲でもセブチは踊る方だから」
そうも言えば、確かにと全員が笑ってた。
会社もマネヒョンも当然家族も。それから専門の医療スタッフたちも。全員でチームを組んで当たらなきゃならないと、新しい壮大な曲でも作りあげるみたいにウジが素案を口にすれば、普段は大人しい96ラインが次々と口を出していく。
ジョンハンがジョンハンとして、生きるための術を探して。
「カラットたちは心配して、それから、驚くと思う」ってスングァンが言う。
「いいじゃん。俺たちも驚いたんだし」ってバーノンが言う。
「大丈夫。カラットたちだって、やっぱり天使なんじゃんって言うから」ってディノが言う。
マンネラインたちはやっぱり楽しそうだった。
なんでか誰が一番に子どもを抱くかで、ミンギュとディエイトとドギョムは揉めていた。
「そりゃ一番は父親だろう」って誰かが言えば「じゃぁ俺はその次で」とか言って。
当然両親にはそれぞれ両親がいて兄弟がいる。だからもう一番も何もないはずなのに、3人はなんでか必死だった。
ジョンハンがそんな弟たちを見て笑ってる間にも、エスクプスとジョシュアはまたしても顔を洗いに行くという。
「ただの綺麗好きかよ」
そう言って笑ったジョンハンだったけど、「ハニヒョン、父親たちはどこの国でも出産には役に立たないって決まってるんだよ」とジュンが言う。
確かに役には立たないかもしれない。
まぁそれも、弟たちがデキ過ぎるからかも。
月に一度、ドレスコードをあわせて開催されるのは大抵飲み会だったのに、気づけば食事会に代わり、脂っこい店ですらなくなっていたし......。
座り心地の良さげな椅子にいつだってさりげなくエスコートされたりする。
空気の悪そうな場所には加湿器に空気清浄機が持ち込まれ、「ボーカルは喉が命なんで」とドギョムとスングァンが頑張っている。 それでもなんでか不安になることも、バカみたいに寂しくなることも。 でも隣りには、エスクプスがいて、ジョシュアがいて、弟たちがいる......。
「ハニヒョン、今俺らのこと端折ったでしょ」と何故か時々鋭いディエイトあたりに考えてることがバレたりする。
笑ってごめんごめんと言えば大抵許してくれるけど......。
The END
5398moji
えとえと、戻って来た......
クプスさんのパパに続き、ママも書いたんですよねぇ。
まぁ最初からパパ、ママと書くつもりでいて、予定通りではあったんですが。
私はこのおはなし、好きなんだけど、好き嫌いは分かれそうとやっぱり思う。でもまぁ、こういう話があっても良いよね?って気がする。
どだろね......。