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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

天使が空に SEUNGWAN side story

注意......

多分。続きモノです。
はじめて「天使が空に」を読まれる方は、contentsよりお進みくださいませ~ 

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天使が空に SEUNGWAN side story

スングァンには、たぶん抜け落ちてる記憶がある。
それはなんとなく判るのに、何が抜け落ちてしまったかは思い出せない。
それはジョンハンの髪が伸びていくたびに、ドキドキするのと似てる。そう言ったら、ドギョムは「わかる。俺もハニヒョンが髪の毛伸ばすとちょっとドキドキするから」って言ったけど、それとはちょっと違う気がする。
一緒にいたら鬱陶しがられたりして、喧嘩まではいかなくてもどちらかが不機嫌になることが多かったはずなのに、バーノンはスングァンのことを待ってくれることが増えた。
時々は無視するかのようにそっぽを向いたままだけど、時々はじっと見てくる。
ディノとだって小競り合いをすることが多かったのに、「俺はもう子どもじゃないからね」とか言い出す始末。でも「チングのようなヒョンだから、いいよね?」って聞いてくる姿はやっぱり可愛い弟だった。

ジョンハンはある日突然、長かった髪を切ってしまった。
「ハニヒョンどうしたの? 短いのも似合ってるけど」
そう言って驚いたら、「面倒なんだよ色々」って笑ってた。
そんなやり取りに、誰かが少しだけ息を飲んだのも気づいてはいたけれど、髪を切ったことに触れちゃいけなかったのかな......と思った程度。
それに気づけばジョンハンは頭を怪我してた。
そこは病院で、狭い部屋で13人で泊まったって言ってたけど、退院する日に雨が降ってたことしか覚えてない。
「あぁもう俺がしっかりしてなきゃ」って言ったら、「そうだな」って言ったのは誰だっただろう。

何かが思い出せない気がするって言えば、「あぁあるある。そういうの俺も」って言ったのはホシで、「お前は都合の悪いことは率先して忘れるからだろ」って言ったのはウジで。
「でも別にいいだろ? 大抵俺ら一緒にいるんだから、多少忘れてても誰かは覚えてるだろ」って言ったのはジョシュアだった。
「でも何を忘れてるかが思い出せないから、聞くに聞けないんだけど」
そうも言ったのに、「まぁ俺らのうちの誰かの記憶の中にはちゃんとあるだろうから、細かいことは気にしなくていいよ」とジュンが笑う。
思い出とかを共有するのは判るけど、記憶までをも共有して納得するのはどうだろう......とは思ったものの、みんながそれぞれ、「そう言えばあの時、ほら、スングァンだけ違う衣装で出てきた時」とか言いながら、忘れて欲しい色んな出来事を口にしはじめるもんだから、ギャーギャーワーワーしてる間に、そんな話も忘れてしまった。

テレビ局の廊下で、ふと知らない人がいるとドキリとする。テレビ局なんて基本知らない人の方が多いはずなのに。
ドキドキしながらも廊下を歩いて、楽屋に戻ればホッとする。メイクヌナたちがいつだって楽しそうで騒がしく、マネヒョンも声を張り上げて昼の希望を聞いてたりして、いつだってざわざわしてるから。
置かれてるお菓子、大きな鏡、水の入ったペットボトル。色んなものがスングァンの記憶の中の何かを刺激するのに、それをスッキリ思い出すまではいかなかった。
それは急かされるように移動したりリハーサルしたり、楽屋に戻ってもちょっとの時間で睡眠をとったり。そんな忙しさが日常だったからかもしれない。
静かになった一瞬に、キーンって耳鳴りがするみたいな気がして、ギュッと目を閉じる。でも次の瞬間には誰かが話しかけてくるし、抱きしめてくれるし、楽しいことがはじまる。だから気づけば笑ってて、耳鳴りなんてすぐに忘れてしまう。

誰かがいない......。13人いないかもしれない。
そう思うだけで突然襲う恐怖は、不思議すぎて笑うしかない。
大抵はマネヒョンが「番号お願いします」って言うと、エスクプスから順番に番号を口にしていって、ディノが「13」と言って、なんだ考えすぎかと安心する。
もちろん時々は「2番と10番がいない」とかマネヒョンが言うけれど、なんでか2人いないとそれほど不安にはならない。だって2人なら、きっと連れだってトイレに行ってるはずだから。

不安定なような、安定してるような。
ふわふわしてるような、もこもこしてるような。そんな何かに大切にくるまれているようでもあって、ドキドキすることは時々あっても不幸では決してなかった。

不意に非常ベルがなった。
イタズラだったのか、演出だったのか。それとも本当に火事がどこかで起きているのか。
あちこちでなんだなんだとざわざわしてる中、スングァンは一瞬でジュンの腕の中にいた。
「ぅわッ。ジュニヒョンどうしたの?」
そう聞けば、「俺非常ベルって怖いから苦手」って言いながら、ジュンはスングァンのことをギュッと抱きしめてくる。
「大丈夫だよ。本当のやつならきっと何か放送が流れるはずだし」
そう言って背中をさすってやれば、「そうだな。きっと大丈夫だな」って言いながらもムンジュニは離れない。
後からスングァンが笑って、「ジュニヒョンの方に驚いて、俺びっくりする暇もなかったよ」って言えば、みんなも笑ってた。
守られてるなんて知らずに守られている。
でもスングァンだって守ってる。きっと。ヒョンたちを。弟を。チングを。

テレビに出る機会が増えたって、人気モノになったって、音楽番組での1位の数が増えたって、セブチの楽屋はいつだって変わらなかった。大きいかと言われれば大きかったけど、13人っていう人数からすればそれなりな部屋。
何度か、局の人たちからはもっと大きい部屋を使ってくださいと、マネヒョンが言われてるのを聞いた。でも断ってしまったのか、いつだって楽屋は変わらなかった。
だからなんで大きい部屋に行かないのかなって誰にいうでもなく言えば、「そりゃそだろ。遊び場が増えて五月蝿いだけじゃん。それでなくてもあちこちでお前ら五月蝿いのに」とジョンハンが笑ってた。
確かに五月蝿い。寝てる時以外は物凄い五月蝿い。でも13人もいるんだから......。
「1回だけ、1回だけでいいから、大きな楽屋でふふふんってしてみたいよ」
そう言って頭を下げて頼んだら、願いは案外あっさりと叶った。きっと密かに全員、もっと広い楽屋を狙ってたのかもしれない。
なのに、大きな楽屋は居心地が悪かった。
入口から入って、奥深い感じ。
真ん中に大きめのテーブルが置いてあって、豪華と言えば豪華な、だけど、やっぱり広い。
本当なら入った1番奥に衣装を並べるはずが、あんまりにも奥までありすぎて、逆に面倒になったのか、衣装は入口近くに置かれてた。
「なんか、似てる」
ディノの言葉に、「何が?」って振り返った時だった。
気づかないうちに大分奥まで入り込んでいたのか、振り返ったら楽屋全体が見渡せた。
いつもはキツキツに座ってるソファとかがなくて、みながあちこちにバラけてる。
あの時みたいに、誰かがゲームをしてたり、寝てたり、楽しそうに話してたり。
あの時...........?
「逃げなきゃ............」
自分の口から出た言葉に、自分が一番驚いてたはずなのに、横にいたバーノンも、何かに似てると口にしたディノも驚いていた。

「スングァナ?」
「ヒョンッ」

バーノンとディノの声が聞こえてるはずなのに、視線は入り口から離れない。
誰がどこにいるかも判らないのに、なんでか「ハニヒョン」って口にした自分がいて、まさにそのタイミングで、どこかから戻ってきたジョンハンが楽屋の入口にあらわれた。

「ハニヒョンッ、逃げてッ!」

何から逃げるのかなんて判らない。でも逃げなきゃいけない。何かから。
スングァンが叫んだ時には、全員がその異変に気づいてた。
テーブルの上にあったペットボトルを、咄嗟に掴んで立ち上がったのはウジだった。そしてそれを何故か、入口近くに立ったままだったジョンハンに向かって投げつけた。

「ヤーッ! ジフナッ!」

ジョンハンが叫びながらも、咄嗟の反射神経でそれを避けた。だけどその分、水が入ったままだったペットボトルは結構な音を立てて壁にぶち当たっていたけれど。
全員その勢いにポカンとする。スングァンですら、いやナニゴト? みたいな顔でウジのことを見てた。
「え? スングァニが今叫んだだろ? ハニヒョンがニセモノだとか言わなかったか?」
「ヤーッ! こんな見た目のヤツなんて、そこらにいないじゃん。ニセモノなんてあり得ないだろッ」
「ジョンハナ。ちょっと抱きしめて見ていいか?」
プンスカ怒ってるジョンハンに近づいて、ギュッて抱きしめ出したのはエスクプスで、「なんかいつもと違うかも」とか言いながら何度も何度も抱きしめ直してて、やっぱりジョンハンからは「ヤー」って怒られていた。

「俺もたまに慌てるよ。なんかメンバーの人数数えたら、17人いる時があるから」

そんなことを言いながらスングァンに近づいてきたのはジュンで、さりげなくスングァンのことを抱きしめる。
「あ、判るそれ。みんなが動きまわるから、同じ人を何度か数えちゃうんだよね」
そう言って笑ったのはジョシュアで、「ジョンハニは確かにニセモノ臭い」とか言い出していた。
「うんうん。なんかいつもより顎も尖ってる気がするよね」
そんなことを言ったのはウォヌで、なんだかすぐに楽屋の中はわちゃわちゃしはじめた。
エスクプスに向かって「いい加減離せって」とジョンハンが怒ってるのを見て、スングァンだって結構長くムンジュニに抱きしめられたままだなって思ったけれど、離してよとはなんでか言いたくなかった。
「なんかやっぱり落ち着かない。俺らにはここ、広すぎじゃね?」
そうホシが言えば、全員が同意した。
我が儘を言ったのはスングァンだったけど、そのスングァンだって、『あぁそうか。なんか落ち着かなかったのは、楽屋が広すぎたせいなのか』って思ったぐらいだから。
「ジュニヒョン、もう離してよ」
結局バーノンがそう言って、スングァンはジュンの腕の中から開放された。
その頃には楽屋にはメイクヌナたちが入り始めてて、マネヒョンがやってきて、楽屋の広さに「こんなに広いと、いないメンバーを探すのに苦労するな」とか呟いていたから、やっぱり誰にとっても広すぎたのかもしれない。

「ジフナ、他人様に向かってペットボトル投げつけるとか、他所ではやるなよ」

そうジョシュアが真面目な顔で言っていたのも聞いたけど、ウジがそれになんと答えたかは聞いてない。答えてなかったのかも。
その日、いつもよりも何度も、番号を口にしたかもしれない。
「え? また?」
いつもは大抵ニコニコしてるドギョムですら、多すぎるんじゃないかと言い始めたほどだった。
でもスングァンは、数えるたびに当たり前に13まで進むことに、なんでかホッとしていたけど。
理由は判らなかったけど、その日、楽屋の中では誰かと誰かが目くばせしてる姿が何度か鏡越だったりで、スングァンの目に入ってきた。何度かは「なに?」って聞いたのに、「別に」って感じで話を逸らされてしまう。だから少しだけムッとして、「なんだよ一体」ってプンスカしてたら、「帰りにみんなで、肉でも食って帰ろうかって話してたんだよ。でもお前はダイエットだろ?」とミンギュが教えてくれた。
「行くよ行く行く。サラダだけ食べれば大丈夫だよ」
そう言えばあちこちからヤイヤイと、どうせ肉も食うだろうとか、米も食うだろうとか、ビールだって飲むはずだとか。
そうかもしれないけれど、別にそれはそれでいいじゃないかと言い返せば、「だってお前、食うだけ食ってから、後でなんで止めてくれなかったんだよ。信じらんない」って怒るじゃんと言われて、ちょっとだけそうかもとなった。
気づけば楽屋の中にあった机や椅子はどこかに追いやられていて、仮眠を取るための準備が進められていく。カーテンが閉められて、メイクヌナたちがいなくなる。
楽屋は広いっていうのに、全員で寝るためのスペースはなんだかこじんまりとしてた。
それに誰かは文句を言っていたけれど、全員一緒がいい。きっと、それの方がいい。

「13。全員いるよ~」

数えすぎたのか、ディノが全員を数えて自分で申告しはじめた。それにヒョンたちが笑う。スングァンも一緒になって笑ったけれど、なんでか、全員が本当にいるのか視線で数えてしまってた。
数えても数えても誰かが足りない。そんな気がして焦るばかりで、人数が多すぎる上に皆が好きに移動するから、同じ人を数えそうになったり逆に数え損ねたりして、自分が11番目じゃない時があって、そんな時は思った以上に心臓がギュッとなって震えそうになる。

「ケンチャナケンチャナ。ケンチャナケンチャナ」

何度もそう口にして、深く息を吐いて。それから落ち着いてもう一度数えれば、きっと大丈夫。そう信じて。
ドキドキはしても呼吸が乱れるほどまではいかない。大抵誰かが気づいてくれて、「なに? 数えてるの? じゃぁほら番号!」って、なんでもないことみたいな感じで声をあげてくれるから。そうすればエスクプスから順番に、番号を口にしていく。
時々は誰かが本当にいないけど、「ドギョミとチャニはトイレ」とか、誰かはちゃんと、居場所を把握してたから。

「なんで俺、こんなに全員いないとドキドキするんだろう」

完璧に独り言だったはずなのに、「俺もするけど?」って当然のようにジョンハンが言う。その向こう側からは、「いや、俺も結構する。特にディノがいないと」と言ったのはウォヌで、「まぁ正直なとこ、俺もする」って言ったのは、そんなこと全然なさそうなウジだった。
「ウソつくなよ」
「ウジヒョンそれは嘘でしょ」
なんでかエスクプスとドギョムから速攻でツッコまれて、「なんで俺が嘘つかなきゃいけないんだよ」とウジは対抗していたけれど、「俺も、俺も俺も」と嬉しそうに言ってくれたホシに意識を持っていかれたスングァンだった。

「11人でいいよなとかたまに思うけど、特に構成とか考えてると。でもいやいや、13人いるから俺らには厚みが出るんだって思い直すからさ。俺やっぱり、13人いないとダメだわって思うんだよな」

何やら良いことを聞いたような気もするけれど、「ホシヒョンの話、どこにドキドキがあったの?」って冷静にツッコんだのはディエイトで、面白くなったのかジョシュアが爆笑しはじめて、なんだか気づけば楽屋の中はいつも以上に賑やかになっていた。

「高速番号ッ!」

突如そうジュンが叫べば、ウジとまだ言い合ってたはずのエスクプスからミンギュまで、本当に高速で「イチ」「ニ」「サン」と数が続いて、残念、それは「え、え、え、え、」って慌ててるドギョムのところで止まってしまい、それこそ全員から「ぇえ〜い」と言われてた。

いつのまにか笑ってて、いつのまにか誰かに抱き着いて抱き着かれて。いつのまにかウトウトしてたり食べてたり飲んでたりヘアメイクして貰ってたり。2人一緒で動くルールだったから、側にはいつだって誰かがいたり。
気づけばドキドキしてたことも忘れて、1日が終わろうとしてた。

移動車が3台。突然用意されたその車を見た時には驚いたけど、「俺らが頑張った結果だな」とエスクプスが言った言葉には素直に頷いた。それ以来、スケジュールの都合とかじゃない限りは、ボカチで乗ることが多くなった。
いつだってドギョムが歌ってる。スングァンも大抵一緒に歌ってる。
ジョンハンやウジ辺りが文句を言いそうなのに、誰かが体調不良の時ぐらいしか止められたことはないし、怒られたことはほとんどない。

「俺は、お前がドキドキしてると、ドキドキする」

楽しすぎてそんな話題忘れかけていたのに、動き始めた車の中で突然そう言ったのはウジだった。ちょっと驚いて、でもその意味をスングァンが考える前に、「じゃぁスングァニがドキドキしてる時は、ジフニもドキドキしてるんだから、1人じゃないな」とジョンハンが言い、「おぉ~」と何故かジョシュアがひやかしてきて、「俺も俺も」とドギョムが乗っかって来るから。
なんだかやっぱり楽しいって空気になって、気づけば大騒ぎなボカチの移動車だった。

スングァンには、たぶん抜け落ちてる記憶がある。
それはなんとなく判るのに、何が抜け落ちてしまったかは思い出せない。
いつまでも全員の姿が見えないとドキドキする。でもそのドキドキは自分だけのドキドキじゃないことも判ってる。
天使が空に帰ったその日のことも、もう覚えてないけれど......。

The END
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