水とかをバシャって相手にかけるシーンを見ながらディノが、あんなの本当にする人いるのかなぁって言った時、エスクプスがハニは俺にソジュをぶちまけたけどなと言った。思わず宿舎でだよねとスングァンが聞いたら、いや普通に店でとエスクプスは笑ってた。全然笑えないけど。
「なんでお前ら知らないの?」
そう言ったのはホシだったけど、「あの時まだ年下組はそういう席に連れていってなかったじゃん」と言ったのはウォヌだった。
メンバー全員だったり、身内みたいなスタッフたちとの席なら全員で参加したけれど、仕事の関係者との席には飲める飲めない関係なく、年下組は連れていかなかった。あと常に忙しかったウジは。
「別に黙ってた訳じゃないけど、俺らもあれは記憶から消したかったんだと思う」
ジュンがそう言えば、ホシもウォヌもジョシュアも頷いた。
「え、なんでだよ。いい思い出じゃん」
って言ったのはジョンハンで、「そうだよ。俺らの青春の1ページじゃん」と言ったのはエスクプスだった。
なにげに本人たちは楽しそうだけれど、周りはいい迷惑でしかないだろう。
「モテモテでしょうって言われたんだよ確か」
そう言ったのはジュンで、それを聞いてその場にいた全員があぁ......ってなった。
20代。これからもうモテモテになるでしょうって話だったのか、モテないはずがないって話だったのか。
それに対して当時は統括リーダーとしてもっと頑張っていたエスクプスが、「やった。俺ら、モテモテだって。20代ウハウハで過ごせるな」って言ったはず。
本気でそう思ってたのか、それとも相手に気を使ったのかは判らない。でもその発言でイラッときたジョンハンは、エスクプスにソジュをぶちまけた。手元のコップに結構な量が入っていたというのに。
そしてぶちまけた後に自分でもびっくりしたのか、「あ、ごめん」と言ったジョンハンだったけど、もっとびっくりしたのは、その場にいた他の面子だっただろう。
いつものマネヒョンとか、事務所のヌナたちとか、副社長とかならまだしも、そこには本当にはじめましてみたいな人たちだっていたっていうのに。
結局ジョシュアが愛想笑いのもと、NGワードを勝手に決めて、それを使ったら水をぶっかけられるという遊びが流行ってるんで............的なことを言って、その場を誤魔化していた。
きっと当時、なんだかんだとすれ違っていた時だったのかもしれない。
最初は比較的コッソリと揉めていたけれど、チングなジョシュアは結構な頻度で巻き込まれてた。そしてそれはすぐに96ラインに波及した。そうしたら感の良いミンギュはディエイトだって気づいた。
ちょっと鈍臭いドギョムとマンネラインだけが、結構長い間、気づいていなかったけど。
きっとジョシュアを筆頭に、本人たちよりもドキドキしたりひやひやしたり、迷惑をかけられたり......は多かったはずなのに、なんでか肝心の2人は「俺ら色々あったよな」とかしみじみしてるっぽい。
「でもあんまり俺ら、ケンカはしないよな」とエスクプスが言えば、ジョンハンはちょっと考えて、「まぁないかも」と言う。
いやいやいやいやいやいや。
思わずジョシュア筆頭に、ほとんどのメンバーが首を振ってたけれど、2人は気づいてもいなかった。
「結構長いこと、口聞いてない時あったよね?」
ディエイトが言う。
確か1000日記念日をジョンハンが忘れててエスクプスだけサプライズを準備しててすれ違ってで揉めた時だよと、本人たちも忘れてるようなことをしっかり覚えてたのはスングァンで、結局仲直りをした後に、なんでか自分のスマホにカップルタイマー的なアプリを入れて2人の記念日をチェックするようになったのはスングァンだった。
「へー、なんか俺、それの記憶はないかも」
ただディノだけがそう言っていた。
そりゃそうだろう。一番マンネなディノに色々バレないように、周りがどれだけ気を使ったことか。
甘い雰囲気がダダ漏れの時なんかは、逆に他のメンバーたちも負けずに仲良しな雰囲気を醸し出していた。そうしないと2人が際立つから。
ある意味セブチのメンバー愛が深いのは、2人のおかげとも言えるだろうし、2人のせいだとも言えるだろう。
2人がケンカするたびに、仲直りするたびに、謎にドラマチックな展開になるたびに、ウジがそれとなく曲に反映してたりもする。だからやっぱり2人の存在はありがたいとも言えるし、迷惑至極とも言えるだろう。
楽屋の中、適当についてたドラマの中では、揉めてた恋人たちがとうとう別れるって展開になっていた。
「さすがに別れは未経験でしょ」
笑ってジュンが言う。
あぁ、それを言うか......って頭を抱えたのはジョシュアだけだったけど、エスクプスが自慢気に、「いや、俺ら一回別れたよな」と言って、ジョンハンは笑って「あぁ、あったなそんなことも」とか言って、弟たちを驚かせていた。
エスクプスが酷く強気な口調で「俺ら経験値が違うから」と言ったけど、果たして自慢できることなのかは謎過ぎた。でもジョンハンも一緒になって笑ってたけど。
「お前らの謎な経験値のせいで、俺まで無駄な経験値を積む羽目になってんだろうが」
ちょっとだけガラが悪くなったジョシュアがそう文句を言えば、思うところは山のようにあったんだろう。エスクプスが慌ててジョシュアの肩を揉みはじめ、ジョンハンも嬉しそうに笑ってチングや〜とか言いはじめていたけれど。
そしてしきりに「経験値いいなぁ」って言ってたホシだけど、「じゃぁ俺らもキッパリ別れようってウジに言われるぞ」というウォヌの忠告に大人しくなっていた.........。
The END