SEVENTEEN (세븐틴) 10th Mini Album 'FML'
— 세븐틴(SEVENTEEN) (@pledis_17) 2023年4月17日
Track List
☁ 2023.04.24 6PM (KST)
☁ 2023.04.24 5AM (ET)#SEVENTEEN #세븐틴#FML#손오공 #Super#FxckMyLife pic.twitter.com/2TrYy5yPSw
먼지
먼지 (dust)
ドギョムは時計を見た。もう夜の9時を過ぎたけど、仕事はまだ終わらない。同じフロアには何人かまだ残ってて、ドギョムは1人じゃないことにホッとする。
遅い昼飯を食べたけど、それでももう腹が空く。
でも食べに出るほどの時間はない。
だからドギョムはポケットをいつものように、タンタンタンと軽く叩いた。
そうすればポケットからはいつだって、ちゃんと個包装されたクッキーが出てくるから。
まだ小さい頃、ドギョムの前に突然現れたのは絵本で見たのとは全然似てない魔法のランプの精だった。
「喜べ。なんでも3つ、願い事を叶えてやるぞ」
そう言ったから、「ぇえい嘘だぁ」って言ったけど、「嘘だと思うなら願い事を言ってみればいいだろ」と言うから、「ポケットを叩けばいつでもクッキーが出てくるようにして欲しい」と願ったのだ。
あぁ、子供だったから。
今ならちゃんと、お金がたくさん出てくるとか、電子マネーが常に勝手に補充されているとか、当たる株が買えるとか、そういうことを言ったのに。
妖精なのか、魔物なのか、精霊なのか、天使なのか。
もっとアラブ系の名前なのかと思ったのに、普通にユンジョンハンと名乗ったその人は、酷く綺麗な人で、出会ったその日は厳かな雰囲気の韓服を着てた。
それからずっと、ドギョムのポケットからは、叩けばクッキーが出て来る。ちゃんと個包装で。しかも飽きも来ないように毎回味は違うし、クリスマスとかバレンタインとか、そういうイベントの時にはちょっと豪華なクッキーになる。
でも子供だったから、ドギョムはそれで随分長い間幸せだった。残り2つも願い事ができるチャンスが残ってるってことすら忘れて、しばらくは毎日のようにポケットを叩いてた。
友達にだってクッキーを大盤振る舞いしたこともある。
でもまぁ成長するにしたがってそんなことはしなくなったし、クッキーだってあんまり食べなくなったし、でも大人になってからは食べ損ねた日や疲れた時の糖分の補充には役立っている。
2つ目の願いは、空を飛んでみたいだった。
やっぱり最初よりは大きくなっていたけどそれでも子供だったから、一度は飛んでみたかったから。
そう言った次の瞬間には空の上だった。飛行機を大分下に見ながら空を飛んだし、行ったことのない場所まで行って、どこまでも続く海の上だって飛んだ。
残念ながら、カメラに映るわけにはいかないから、低くは飛べないし街中も飛べないと言われたけれど、ドギョムは大興奮で、こういうのは普通秘密だって相場が決まってるのに、ヌナに自慢してしまった。
そうしたらまだヌナだって子供だったはずなのに、「バカな子。3つ目のお願いは、大学受験までとっとかなきゃ」と、物凄い冷静に言った。子供にしては夢が無さすぎるが、確かに一理ある。ドギョムが小さい頃からすでにこの国では受験戦争が激しいことは有名で、お金持ちの子どもたちは小学生のころから塾に習い事に英会話にと、すでに忙しかったから。
「3つ目、決まったか?」
そう何度か聞かれはしたけど、「悩み中」と言って誤魔化した。本当に大学受験の時にお願いするのかは謎だったけど、それでも最後の1つはもう少し悩まなきゃと思ったのも事実だったから。
本当を言うと、大学受験どころか高校受験の段階でドギョムは最後のお願いをするか真剣に悩んだけれど、グッと我慢した。
勉強だって頑張って、物凄い優秀ってこともなかったけど、それでもどうにか、自力で大学に行った。
虐められてた訳でもないだろうけど、気づけば掃除を1人でしてる時があった。変に真面目なドギョムはいつだって置いて行かれてたからだろう。まだ中学生のころ。でも寂しくも辛くもなかったのは、いつだって側にはユンジョンハンがいたから。
地下鉄やバスでうたた寝をしてる間に下りる場所を通り過ぎたって、見知らぬ場所で心細くなることはなかった。1人ならちょっとした暗がりでも怖くて歩けなかっただろうに、ドギョムにはいつだってユンジョンハンがいて、一緒にいれば笑って過ごすことの方が多かったから。
「いやヒョンが俺のことを起こしてくれたら、こんなに歩かずにはすんだんだけどね」
「お? じゃぁこれからは寝過ごさないように起こすってのを、3つ目にするか?」
「いやいや、ダメダメ。しないしない」
終電を逃して歩いてた時にはそんなことも確か言ったはず。
ドギョムは3つ目の願い事は口にしなかった。大学受験だって自力で乗り切ったし、就職試験だってどうにか頑張った。決して大企業とかではないけれど、それでもちゃんと勤められたし、残業続きでちょっとブラック気味な気がしないでもないけれど、それでも心が折れずに頑張れているのは、いつでもユンジョンハンがそこにいてくれるから。
本当は大分前から、3つ目の願い事をするなら、ずっとそばにいて欲しいって言いたかった。もう長く一緒に居過ぎて、いないことなんて考えられなくなっていたから。
でも3つの願いを叶えたら、ランプの精はいなくなってしまうと相場が決まってる。
だから願い事なんて口にしないと決めていた。
昔は厳かな韓服がよく似合ってたのに、最近はなんだか、ダメージジーンズを履きこなしてる。いつのまにか伸びた髪をどっかの店の箸をパクったと言って、簪代わりに器用に一つにまとめて止めていた。
なんでかビットコインでひと稼ぎして、ドギョム名義でネットの口座を開設してインターネットで注文をしまくっていたりする。
大分今に染まってはいたけれど、「ダメだ眠たい」っドギョムが言うたびに、「お? じゃぁ3つ目の願いは、睡眠不足にならない身体にするか?」とか不意に聞いてくる。
そのたびに「ダメダメ。まだダメ」ってドギョムが拒否れば、笑って「お前溜め過ぎじゃね」と笑っていた。
もう一生、本当に自分が死ぬ前ぐらいにしか、願いは口にしないと決めていたのに、その日は不意にやって来てしまった。
誰も望んでないのに、毎日どこかで人はたくさん死んでいる。
戦争に、内戦に、紛争地帯に。でもそれは全部自分とは関係ない世界で、うっすらと世界平和は望んでいても、本気で止めようとは思ってなくて。
でもその日、北緯38度線で暴発事故が起こったことが原因で、一瞬で自分たちの国がそんな遠い世界の出来事だったはずの事態の中心になった。
知り合いも友達も、先輩も後輩も、年下の従兄弟たちも、たまたま兵役についてたってだけで、巻き込まれて散っていく。テレビ番組はすべて報道番組にかわって、戦時下に一瞬で変わった街は不穏な空気が流れてた。
「ヒョンなら、あの暴発事故を、もしかしたら、なかったことにできる?」
「お? 3つ目か?」
「できるの?」
「誰に言ってんだよ。できない訳がないだろ? でもいいのか? お前のことじゃなくて」
最近金髪に染めたユンジョンハンは、やっぱり楽しそうに笑ってドギョムの側にいた。
もしも、天涯孤独な身の上だったなら、絶対ドギョムはそんなこと願わなかっただろう。さっさとユンジョンハンと2人で、見知らぬ場所に移り住んでいたかもしれない。
でもドギョムには父と母がいて、嫁に言った姉にはもうすぐ子供が生まれる。
幸せに笑って過ごして欲しい人たちがいた。
「3つ目のお願いにする。ごめん無理言って、こんなお願い。大きすぎるかもしれないけど、ヒョンお願い」
「任せとけ。あ、でも時を戻すから、お前が仕上げたその仕事も、もう一度やり直しだけどな」
なんだか最後に嫌なことを聞いた。でも、ユンジョンハンは任せとけと言ってくれて、時は戻された。
確かに出来上がったはずの仕事はものの見事に消えて、テレビは今日もドラマとか恋愛バラエティとか明日の天気とか。物凄い平和な内容が流れてて、ネットニュースを幾ら検索しても、戦争のせの字も出ていなかった。
誰も知らないけど、ドギョムは世界を、この国を救った。死んでしまった人たちを救った。もうポケットをトントントンと叩いたって、먼지(埃)ぐらいしか出てこない。引き換えたのはそれぐらいだから、誇ったっていいはずなのに、ドギョムは涙が止まらなかった。
ユンジョンハンのいない世界で、どこまで自分は耐えられるだろう。
辛さとか、寂しさとか、小腹が空いた時とか、どうしても糖分が必要な時とか。
「あ? だから言っただろ? 仕事はやり直しだって、泣くなよドギョマ」
聞きなれた声は、いつもと同じ場所ら辺から響いてきた。
物凄い驚いて顔をあげたら、金髪でライダース姿の、なんだか治安の悪いユンジョンハンがいた。
「ヒョンッ! 3つ目の願いを叶えたのに、どうして?」
「あ? どうしてって何がだよ」
「だって、3つ願い事叶えたら、いなくなるんじゃないの?」
「なんで俺がいなくなるんだよ」
「え? なんでって、普通そうじゃないの?」
「ドギョマお前、こんな普通じゃない俺の存在を前にして、普通とか言ってんなよ」
ユンジョンハンはなんでか「ケケケケ」と笑って、それから消えた。
きっといつもと同じなら、どこかで寝てるんだろう。飽きたら起きてきて、ドギョムの周りでウロウロしてるか、ジグソーパズルとか始めるか。
ドギョムはドキドキしながらも、ポケットをトントントンと叩いてみた。そうしたらいつも通りにクッキーが1枚。
「ヒョンッ! 凄い! クッキーがまだ出るよ! 3つの願い事が終わったら、なくなるんだと思ってたのに!」
興奮してそう叫んだら、「俺がそんなにけち臭いことするかよッ」と怒られたけど、それはやっぱりいつものユンジョンハンだった。
The END
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