妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

fire

fire

 

fire

10年前に戻れる魔法を習得した.........と言ったのはジョシュアだったけど、自分は行かないという。そしてそれをエスクプスとジョンハンで試すという。
普通なら「は? 嫌だけど」とか言いそうなものなのに、なんでかエスクプスもジョンハンも面白そうだと喜んでいた。

「なぁ、俺、10年前のお前に会ったらさ」

そう言ったのはエスクプスで、曰く、今の俺のテクニックを、10年前のジョンハンに披露したいとかイタイことを言い始めた。

『10年前なら、ギリギリはじめてヤッた頃じゃない? 俺ら』

一応周りに気をつかってか、ジョンハンにだけ聞こえるような魔法を使って話しかけてくる。内容はイタイけど、魔法使いとしてはソコソコだ。

「凄くない?」
「いやでも、初めての時に今のお前だったら、コイツどんだけ遊んでんだよって思って、俺お前と続いてないと思うけど」

物凄く自慢気に言うからジョンハンが素直にそう言えば、「なんでだよ」とムクれてる。

「いやじゃぁお前がそうするなら、俺も10年前のお前のとこ行って、イロイロしてくる? でも嫌じゃない? はじめての相手が、自分から上に乗ってくるとか」
「..................」

きっと10年前のエスクプスなら、自信喪失してしばらく立ち直れてない気がする。
お互いなんだかんだと言い合って、どっちが先に10年前のお互いを落とすか......みたいなバカなはなしをしていたら、「いや、そういうことじゃないから」とジョシュアに物凄い冷たい視線を浴びせられた。
まぁ2人ともそんなの慣れてるけど。

「ほら、これ」

そう言って渡されたのは、決して少なくはないお金だった。でも多すぎるってほどはないから、世界を狂わすほどじゃない。

「せめて俺ら、マンネラインには食べさそうって必死だっただろ」

そう言われて思い出す。10年前は確かにまだまだ苦労してた時期だった。
魔法使いって言ったって色々いて、決して王道な道を歩いてきた訳じゃない。あの有名な映画で言えば、絶対に自分達はグリフィンドールじゃなかったはずで、しかも華やかな場所と確かな道具を手に練習する魔法使いの卵たちを尻目に、誰も寄り付かないような緑の練習室に固まって、どうやって魔法で今日の食い物をゲットするかを考えてばかりいた。
今やマンネのディノなんて、飛ぶ鳥落とす勢いでこの魔法界を飛び回ってるっていうのに。

「わかった。じゃぁこれは昔の俺に預ける」ジョンハンがそう言えば、「それはないだろ」「無理」とエスクプスとジョシュアに速攻否定された。
「なんでだよ」と言ったジョンハンだったけど、かつて、必死に集めた金で博打に打ってでて、全てを無にした記憶がある。確かに昔の自分に託すのは無理だろう。

「ここは俺だろ? 統括リーダーなんだし」エスクプスがそう言えば、「お前はもっとないわ」「無理無理」とジョンハンとジョシュアに速攻否定された。
やっぱり「なんでだよ」と言ったエスクプスだったけど、いつだって先が見通せなくて、僅かなものも買ってやらずに貯めておくことに必死だった自分を思い出す。その反動か今は湯水のように使ってしまうけれど。

「ジュニとウジに託そう」

10年前の弟たちの名をあげて、ジョシュアが言う。
きっとあの2人なら、10年後の自分たちが現れても驚かないはず。それから金の出所を口にすることなく、それをさりげなく使えるはず。

ウォヌは冷静に見えて案外顔に出るタイプで、ホシは秘密が守れないタイプで、ミンギュはしっかりしてるのに飛び切りのうっかりを発動するし、ドギョムは絶対パニくるだろう。ディエイトは慌てたりはしないだろうが、手にした金を魔道具に注ぎ込みそうで、残るマンネラインの3人にはさすがに荷が重いだろうから。

「シュアや、お前は?」

ジョンハンがそう聞いて、エスクプスだって「そうだよ。お前に渡せば話は簡単じゃん」と言ったのに、ジョシュアは真面目な顔で「俺は無理。俺は自分のことを一番信じてないよ」と苦く笑ってた。

2人とも、そう言われればそうかもと思い出す。
色んな出来事があったけど、ジョシュアはいつだって平然と裏切って見せたから。孤立すると判っていても、未来が閉ざされるかもしれないのに、弟たちのためになることならなんでもやったから。
それこそ、食べさせるためには、売っちゃいけない魔道具だって作って売っていたほど。今や尊敬する魔法使いと言えば必ず名前があがるほどなのに。

「それにこの魔法、連発できるなら自分に預けてもいいけど」

そう言ってジョシュアが言うところによると、たぶんこの一度きりだろうってはなしだった。戻って来るにも相当な力がいるはずだから2人同時に送るんだとも。
決まれば3人の動きは早くて、そう話した数分後にはジョシュアが魔法を発動させていた。

2人が飛んだのは、あの緑の練習室。真夜中よりも明け方の方が近い時間なのか、誰もいないはずだからと。でもそこにはディノがいた。

「ヒョンッ」

突然現れた2人にディノが声をあげる。当時の2人とは大分違う今なはずなのに、そんなことよりも「お前なんでこんな時間にここにいるんだよ」とジョンハンが言えば、「ガキは寝る時間だろうが」とエスクプスも言う。

「だって俺だけ全然なんだもん。もっと頑張らないと」

昔からディノは頑張り屋だった。全然なんてこと、ちっともなかったのに。もっと食べてもっとぐっすり寝て、ただただ楽しいばかりで育っていれば、もっと安定して魔法だって使えただろう。

「いいから寝ろって。それからこれ」エスクプスがそう言って、ディノに小遣いをやった。驚いてるディノに「みんなには内緒だからな。これで好きなもの買って食べろ」とジョンハンも言う。
それから順番にディノのことを抱きしめた2人は、ディノに判らないようにそっと魔法をかけた。ケガをしないようにとか、健康にいられるようにとか、ディノのことをそれとなく守るようなものを。

それからエスクプスとジョンハンは、急いでジュンとウジを探した。
「何やってんだよ、ほんとに、あんたたちは」と、今と変わらず小さいウジは、2人の姿を見てすぐにそうと察したんだんだろう。金を渡すと黙って受け取った。
ジュンもほぼ同じ反応だったけど、「ヒョンたちがこうして来てくれるなら、俺らの未来は明るいんだな」と笑ってた。

ウジとジュンには、それぞれに渡したとは言わなかった。極力過去に影響が出ないようにって話だったから。
本当は10年前の自分たちの姿だってこっそり覗き見たかったけど、それだって我慢した。

「あ」

戻ろうとした時に、ジョンハンが突然言った。
「なんだよ」ってエスクプスが聞けば、「ほら、昔さ、ディノが全員にチョコバーをくれた時があったじゃん」と言う。

「あれってさ、お前がやった小遣いだったんだな。あの時ディノはお金を拾ったんだって言ってたけど」

そう言われてエスクプスだって思い出した。
なんで拾った金を勝手に使ったんだって、あの時エスクプスは怒ったことも。
でも確かあの時、「でかしたディノ」ってジュンが褒めていて、「俺も時々金は拾うよ」とウジも言っていて、それは、そういうことだったのかもしれない。

「なんだよアイツ、自分だけコッソリ栄養のあるものとか食べればいいのに」

そう言いながらも、やっぱり嬉しかった2人だった。

The END
3188moji